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(2023年3月11日更新) [ 日本語 | English ]

火山遷移動態 (Plant community dynamics on volcanoes)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

露崎史朗. 2001. 火山活動が生態系に与える影響を知るには. ガイア Newsletter 6: 4 (改変)

火山遷移 (volcanic succession), 火山学 (volcanology), 各火山 (volcanoes)
自分が関係した研究: 有珠山 Mount Usu (flora), 駒ケ岳 Mount Koma (flora), セントへレンズ山,Mount St. Helens


露崎史朗. 2001 (2013年11月28日改変). 日本生態学会誌 51: 13-22

[総説] 火山遷移初期動態に関する研究

露崎史朗

北海道大学大学院地球環境科学研究科
Abstract

Studies on the early stages of volcanic succession. Shiro Tsuyuzaki (Graduate School of Environmental Earth Science, Hokkaido University, Sapporo 060-0810, Japan). Japanese Journal of Ecology 51: 13-22. (2001)
There are many active volcanoes that affect plant community development worldwide, in particular the Pacific Ring of Fire. A number of studies have attempted to clarify the mechanisms of primary succession in the early stages of volcanic succession. Here I summarize the findings of this research, focusing on: 1) plant sources including survivors, 2) safe sites for seedling emergence and establishment, 3) abiotic factors and tolerance, 4) biotic interactions (plant-animal, plant-plant, and plant-fungi/microorganism relationships), 5) stochastic event and chance, and 6) climatic effects. Alien plants often invade the denuded areas. The importance of the above mechanisms is strongly related to the scale, frequency and type of eruption(s), and thus the plant community dynamics differ greatly among volcanoes. I recommended that studies based on permanent plots and pre-eruption surveys should be promoted to obtain direct data related to the dynamics.

Key words: disturbances, early stage of succession, regeneration, volcanoes

は じ め に


 世界には約550の陸上性火山が存在し(Francis 1993)、環太平洋火山帯に位置する日本には86の活火山がある(宇井 1997)。火山遷移は自然撹乱の主要なものの一つであり(White 1979)、火山噴火初期段階における環境は、極相と比較すると短い時間で大きく変動し、それに伴う群集変化にも著しいものがある(Miles & Walton 1993)。火山活動は、タイプ、規模、頻度により異なる影響を陸上植物群集に与えるが、また、撹乱を受ける群集側も地理的レベルでも地域レベルでも異なる(Fridriksson & Magnusson 1992, del Moral & Grishin 1999)。そこで、火山活動による撹乱後の植物群集動態についての研

Usu

究は、調査に際する多くの障害にも関わらず、各地の火山において行われてきた。ここでは、火山遷移初期植物群集の成立機構および動態について、これまでの研究を紹介したい。なお、火山噴出物が成層圏に達すると、温室効果とは逆に冷蔵室効果により地球規模での温度低下が起こり植物群集に大きな影響を与え(Woodward 1987)、また火山活動に伴う地震や津波も撹乱要因としてあるが、これらについては扱わない。

植 物 群 集 か ら み た 火 山 活 動


 火山活動は、噴出物タイプ、規模、周期等により様々に分類されるが(宇井 1997)、火山活動を撹乱ととらえれば、植物群集にとって、噴出物タイプは 撹乱 (disturbance) の質に、規模は強度に、周期は頻度としてとらえることができよう。
 火山噴出物は、その性状から大まかには溶岩、火山砕屑物(火砕物)、火山ガスに分けられる(宇井1997)。火砕物は火山岩の破片を指し、粒径により火山岩魂、火山礫、火山灰に分けられ、また大きさに関わりなく軽石とスコリア(岩滓)に分類される。火砕物が、重力により地表を降下するものが火砕流や火砕サージであり、火砕物が降下してきたものをテフラ(tephra)と呼ぶ。泥流は火砕物が水分を含み斜面を流下したものをさす。したがって、溶岩上にくらべて火砕物上は不安定で、土壌移動等により植物の定着を制限していることが多い(Kadomura et al. 1983)。また、このような基質の違いが実生の成長に差をもたらす(Kamijo & Okutomi 1995)。火山ガスは、噴火時を除けば恒常的な影響をおよぼすが、その範囲は限られており、極地の噴気孔近くには蘚苔類が優占している(Lewis Smith 1993)。山体崩壊と、それに伴う岩屑なだれも、地表面の植物体を全て除去してしまうことになる。
 噴火とは性質が異なることもあるが、火山活動による新島誕生は初期に生物が全く存在しないところからの遷移を調べる貴重な所であり、1963年に誕生したアイスランドのスルツェイ島(☛ 世界遺産)においては継年調査がなされている(Fridriksson 1987)。
  噴火規模は、植物供給起源の質と量を決める(Tsuyuzaki 1991, del Moral & Bliss 1993)。小規模噴火では、消滅を免れた種が群集回復に寄与することができ、有珠山 (Mount Usu) においては オオイタドリ (Polygonum sachalinense) や オオブキ (Petasites japonicus var. giganteus) などの草本種ですら消滅を免れ群集回復に寄与している(Tsuyuzaki 1987)。噴火被害の形状も重要である。例えば、噴火被害が帯状であれば、一種の回廊的機能を備えている。そのため、帯状に流れ出た泥流上では、面的に広がった泥流上より群集発達は早い(Halpern & Harmon 1983)。
 周期に関しては、噴火が頻繁に起こっているところでは、遷移初期段階の群集が繰り返し撹乱を受けるため地理的固有種はほとんど認められない(del Moral & Wood 1988)。

遷 移 区 分


 遷移は、土壌中に植物体(種子や栄養繁殖体)を含んでいないところから始まる一次遷移と、そうではない二次遷移の二つに分けられている。新島や溶岩上では植物体を含むはずはなく一次遷移となる(Tagawa 1964)。しかし、火山灰の堆積が薄いところや泥流上では噴火により植物群集が壊滅せずに二次遷移的となる場合がある(Antos & Zobel 1985, Tsuyuzaki 1987, Halpern et al. 1990)。1980年に大噴火した米国西海岸のセントへレンズ山(MSH)の調査中は仲間内で、「1.5次遷移だ」などと言っていたが、そのような中間段階が連続的に存在している。また、噴火と同時に植物体が供給されることもある。ドロノキ (Populus maximowiczii) などでは生きたままの落枝が爆風によりテフラ上に飛散した場合、萌芽により噴火直後から再生可能である(Tsuyuzaki & Haruki 1996)。よって、火山遷移を一次遷移と二次遷移に分けて扱うことは行わない(露崎 1993)。
 遷移初期に遷移後期に優占する種が、噴火直後から定着することもある(Wood & del Moral 1987)。ハワイ、マウナロアの溶岩上ではMeterosideros polymorphaは、遷移初期から森林構成種となり、その後林冠において優占種の入れ替わりはない(Kitayama et al. 1995)。
 また、火山遷移は乾性遷移に区分されるのが普通であるが、水分条件が十分であれば湿原群集が初期に形成されることもある(Tsuyuzaki 1997, Titus et al. 1999)。MSHにおける湿地では、噴火10年後に既に現存植生と類似性の低い埋土種子集団(seedbank)が発達していた(Tu et al. 1998)。

植 物 群 集 動 態


1) 植物供給起源

 火山活動により形成された新島などでは、大陸などの種子供給源が離れている場合、海洋が植物移入の障壁となる(Fenner 1992)。このような島嶼への植物移入は、長距離移動が可能である風散布、動物散布、水散布(海流散布)などによって行なわれ、特に大洋の孤島では水散布への依存性が高い(Carlquist 1967)。
 アイスランドのスルツェイでは構成種中9%が風散布種であり、27%が(海洋性)水散布であるが、主な植物供給源となる40 km離れたアイスランドの種の多くは風散布種である (Fridriksson & Magnusson 1992)。アナッククラカタウ島では、新島誕生直後には水散布が移入の中心を占め、動物散布がそれに次いだ(Partomihardjo et al. 1992)。
 陸上においては、種の移入は長距離散布が主であるが、主役は風散布であり、ときおり動物散布、特に鳥散布による侵入が認められる(Tsuyuzaki & del Moral 1995)。種子供給起源に関しては、供給起源からの距離が増すにつれ種子移入量あるいは実生数が減少する(del Moral & Wood 1988, Drake 1992)。ハワイ、キラウエア火山溶岩上では、Metrosideros polymorpha林の近くから侵入が始まるが(Smathers & Mueller-Dombois 1974)、林からの距離が100 mを超えると種子供給量は急激に減る(Yarrington & Morrison 1974)。その結果、実生分布パターンは植物供給源からの距離により異なる(Larsen & Bliss 1998)。しかし、土壌移動の激しい地表面では、融雪水等による二次分散により、最終的種子定着地が決まるため、必ずしも植物供給起源からの距離と実生数に明瞭な関係があるとは限らない(Tsuyuzaki 1989)。
 テフラが薄く堆積したところでは、移入のほかに栄養繁殖による植物供給が顕著となる(Tsuyuzaki 1987)。MSHで、噴火8年後にテフラを除去したところ、テフラ下に残存していた個体から栄養繁殖による回復が認められた(Zobel & Antos 1992)。さらに、テフラ下の旧表土中の埋土種子集団は長命であり(Tsuyuzaki 1995, Whittaker et al. 1995)、テフラの侵食が進み、噴火以前の土壌が出現すれば埋土種子が群集動態に関与することもある(Tsuyuzaki 1994)。
 移入種の生活型(lifeform)については、初期には溶岩上でもテフラ上でも蘚苔類、地衣等が優占することがある(Tagawa 1964, Beard 1976, 中坪 1997)。一方、MSHの岩屑なだれや泥流跡では風散布種子の木本植物が、周辺から侵入している (Dale 1989, Halpern & Harmon 1983)。御岳の岩屑なだれ跡では、風散布種による移入に加えて、残された土壌と植物体が遷移を促進している(Nakashizuka et al. 1993)。しかし、大規模な泥流になると植物群集の侵入は著しく阻害され、裸地が長期にわたり存在している(Clarkson 1990, del Moral & Bliss 1993)。

2) 定着セーフサイト

 溶岩流上では、平坦なところであれば地衣類や藍藻類が優占することが多いが(Cooper & Rudolph 1953, Whittaker et al. 1989, Mazzoleni & Ricciardi 1993)、溶岩の亀裂等に有機物等が蓄積されれば、維管束植物の定着が可能となる(Tagawa 1964)。
 テフラの堆積は、地表面の地形的多様性を減少させるが、その後の侵食によりリルやガリーが形成されることにより実生の定着機会が増し、遷移を促進することがある(Suwa & Okuda 1983, Tsuyuzaki 1994)。実際に、テフラ上に溝をつける、礫を置くなどの操作により、実生定着は促進された(Titus & del Moral 1998)。また、テフラが土壌侵食により流出すれば、その残された面には実生定着が顕著である(Kadomura et al. 1983)。これらのことは、土壌栄養よりもむしろ物理的特性が、実生定着に重要なことを示唆している(Tsuyuzaki et al. 1997)。
 降雪期に発生した火砕流上では、融雪水による群集破壊がある反面、積雪により群集が保護されるため群集破壊が軽微となることがあり(Harris et al. 1987, Chapin & Bliss 1988)、無雪期の噴火とは異なる回復様式が観察される(Antos & Zobel 1982, Halpern et al. 1990)。
 このように、微地形(microtopography)の多様性が実生定着を促進するが、その一方で実生定着適地では競争が激しくなり、初期侵入種により、後から入る種は侵入が阻害される(Tagawa et al. 1985, Wood & Morris 1990)。ニュージーランド北島タラウェラ山の溶岩上では初期にコケ類(moss)とカンキチクの仲間(Muehlenbeckia axillaris)が亀裂等の微地形上に定着した場合、他種の侵入が制限された(Clarkson & Clarkson 1983)。

3) ストレスと撹乱

 貧栄養状態という高いストレスから始まる火山遷移を促進する要因として、土壌発達があげられる(del Moral & Bliss 1993)。土壌発達のきっかけとして化学的風化は重要である(Ugolini et al. 1992)。さらに、物理的風化(del Moral 1993)、有機物降下(Edwards & Sugg1993)、土壌移動(Franklin et al. 1985, Tsuyuzaki & del Moral 1994)等が土壌発達を促進する。生物側の窒素固定の役割も大きい。火山で優占することのある地衣類Dictyonemaでは窒素固定速度は、吸水直後に乾燥時の40倍以上を示す(Fritz-Sheridan 1988)。火山遷移初期によく優占する地衣類であるStereocaulonCoraの窒素固定能力も非常に高い(Fritz-Sheridan 1987)。
 時間の経過にともない土壌は発達し、長期的には土壌の様々な要因により群集発達は規定される(Crews et al. 1995)。ハワイ火山群では、遷移初期には窒素が植物群集を規定し、加齢とともに可吸性リンが植物群集を規定するようになる(Vitousek et al. 1995)。 微地形や地表面の粒径分布により、水分を始めとする環境条件は大きく変化する(Tsuyuzaki et al. 1997)。傾斜のあるところでは、地表面の乾燥と土壌移動は長い間続く(Day & Wright 1989)。さらに、冬期間の低温と夏の乾燥は、これらの地表面では群集発達の制限要因となる(Day & Wright 1989)。
 火砕物上の遷移は、極めて遅いが土壌侵食により遷移が促進されることもある(Tsuyuzaki 1987)。しかし、そのような撹乱は、種多様性を下げ、テフラ上では土壌移動が継続する場合、蘚苔類、地衣類や、地下部の虚弱な維管束植物の侵入は困難となる(Tezuka 1961, 露崎 1993)。不安定なテフラ上では、土壌移動等の地表面の不安定性が大きな撹乱となる(Tsuyuzaki & Titus 1996)。土壌移動に対する耐性から根茎を大きく発達させる種はより生存しやすく(Franklin et al. 1985, Tsuyuzaki 1991)、植物の耐性は土壌栄養等に対してよりも物理的な耐性のほうが重要となるため、根茎を大きく発達させる大型多年生草本や木本植物などが初期から侵入する(Antos & Zobel 1984, 1985, Zobel & Antos 1986, Grishin et al. 1996)。オオイタドリなどの大型草本は1 m程度の堆積物下からでも、それを突き抜け再生することができる(Tsuyuzaki 1989)。オオイタドリの近縁種であるイタドリ(Polygonum cuspidatum)は、日本の本州以南の火山遷移初期によく優占するが(吉井 1939-40)、そのパッチをよく発達させる要因として、根茎の成長様式と対応した根茎を通じての栄養移動があげられている(Adachi et al. 1996a)。
 堆積したテフラの厚さは、定着可能な種を規定する(Tsuyuzaki 1995)。1907年に噴火したカムチャッカ半島のクスダチ山においては、テフラが70 cm程度の厚さで堆積していると、維管束植物は再生不可能となり地衣が優占しているが、それよりも薄ければ維管束植物の再生は可能で、蘚苔類や地衣類の定着がむしろ制限されていた(Grishin et al. 1996)。インドネシア、アナッククラカタウ島ではナンゴクワセオバナ(Saccharum spontaneum)は火山灰の堆積が数10 cm程度であれば生存できた(Suzuki 1984)。MSHにおいてテフラを除去した調査区と非除去区の群集構造の類似性は低い(Zobel & Antos 1997)。このように噴火堆積物の厚さは、その後の群落動態を決定づける(Antos & Zobel 1985, 1986, Tsuyuzaki 1995)。

4) 生物間相互作用

菌類・細菌類-植物
 窒素固定菌を有する植物が、遷移初期に優占し土壌改善に寄与することはよく知られている。土壌改善は、ハワイでは帰化植物であるヤマモモの仲間 (Myrica faya) (Vitousek et al. 1987)により、MSHではハンノキ (Alnus rubra) (Dale 1989)やルーピン (Lupinus lepidus) (Wood & del Moral 1988)により行なわれている。ルーピンの根系が発達したところでは根系のないところより窒素量は高かった(Halvorson et al. 1991)。しかし、その窒素固定量は高いものではなく群集発達に必要な主用窒素供給源とは思えない(Halvorson et al. 1992)。窒素固定は群集レベルでバイオマス増加を促進し、結果として遷移を促進するが、必ずしも他種の定着促進をしているとは限らない(Hirose & Tateno 1984, Clarkson 1990, Halvorson & Smith 1995)。
 植物の土壌壌窒素およびリンの取り込みに影響するため、菌根 (mycorrhiza) 発達は植物群集構造に大きく関与している(Allen 1991)。MSHでは侵入した植物の多くが菌根を発達させないため、その成長が遅く、ひいては群集発達速度も極めて遅いと指摘されたが(Allen & MacMahon 1988)、菌根接種個体の成長は、菌根非接種個体と差がなく、菌根の存在が遷移上有効であるという指摘は再検討が必要である(Titus & del Moral 1998)。
動物-植物
 火山噴火に伴ない、動物群集も大きなダメージを受ける。噴火をうまくやり過ごしても、地表面の乾燥や餌資源の枯渇により消滅することが多い(Edwards 1988)。有珠山では、噴火6年後に昆虫相調査が広範に行なわれた(春木 1988)。多くの昆虫相が噴火により消滅したが、アリやトビムシは火山灰が噴火直後に流出したところでは生存していた(Higashi et al. 1985, Sugawara et al. 1987)。飛翔性昆虫については、定着種は限られているが噴火直後既に山麓から移動してきていた(Sato et al. 1985, Okazaki et al. 1986)。これらの動物による植物群集動態への影響も無視できない。例えば、動物の植物に対す
る正の作用としては、MSHではクモの巣が種子を捕獲することが観察され(Dale 1991)、モグラホリネズミが火山灰層に穴を作り埋土種子の出現を促進していた(Anderson & MacMahon 1985)。負の影響としては、ルーピンパッチにおいては食害によりフェノロジー等が変化し、結実率が影響されるが(Bishop & Schemske 1998)、さらに食害の影響はパッチの縁で受けやすく、パッチ拡大を制限している(Fagan & Bishop 2000)。このように動物-植物間相互作用を明らかにすることも、群集動態を明らかにする上で重要である。
 動物遺体は、土壌に栄養を供給し水分条件を改善する点で正に働く(Edwards 1988, Edwards & Sugg 1993)。さらに、エルクなどの大型哺乳類の歩行により、微地形の多様性が増し植物の定着セーフサイトが増加する(del Moral & Grishin 1999)。これら哺乳類が排出した糞等により土壌改善がなされることは、土壌栄養の乏しい遷移初期において有効である(del Moral & Clampitt 1985)。また、クラカタウでは大型哺乳類が欠如するため多くの植物種が内陸まで侵入できない(Whittaker et al. 1992)。
植物-植物
 植被の低い遷移初期には定着種による他種の定着促進 (facilitation)が見られることがある。遷移初期に、コケ(moss)・地衣・藍藻等が定着した場合、この現象は顕著である(Griggs 1933, Fosberg 1959)。ルーピンは、パッチを形成し疎なパッチであれば他種の実生もパッチ内に認められるが、密にパッチを形成すると他種の侵入を阻害する(Morris & Wood 1989)。富士山のイタドリについても同様の傾向が認められる(Hirose & Tateno 1984, Adachi et al. 1996b)。タラウェラ山においては、ドクウツギ科ドクウツギ属の低木種であるCoriaria arboreaが密な藪を形成すると他種の侵入が減り多様性が低くなる(Clarkson 1990)。このように遷移初期には、既に定着している種による他種の定着阻害と促進との兼ね合いによって群集構造が決定されていると考えられる。

5) 確率事象と定着機会

 隔離が大きく、ある場所への種の移入は確率的に起こると仮定できれば、火山遷移初期における群集構造は、環境要因よりもむしろ確率事象に支配されるという主張がある(McCune & Allen 1985, del Moral 1999)。MSHではポットホールと呼ばれる窪地間の群集類似度は極めて低く、確率的にポットホールに種が供給されたためと解釈されている(del Moral et al. 1995)。パッチが散在すればするほど、パッチ間群集構造は不調和さを増している。
 クラカタウ諸島間の100年に渡る種組成変化の比較から、島間の種組成類似度の低さは、種の移入・消失が確率的事象に支配され起こるためであり、遷移系列の長期的予測は困難であることが指摘されている(Bush et al. 1992, Tagawa 1992)。
 遷移は、先駆相、途中相、極相と分けられることもあるが、明瞭な遷移系列を示さないこともある(露崎 1993)。クラカタウ(Tagawa et al. 1985, Whittaker et al. 1989), スルツェイ(Fridriksson & Magnusson 1992)、MSH(del Moral & Wood 1993)、タラウェラ山(Clarkson & Clarkson 1983)では遷移系列の予測性に乏しい。MSHにおいてマルコフモデルの当てはめを行なったところ、極めて精度は低く予測性に乏しかったが、この理由として生物、非生物両面共に年次変動が大きいことがあげられた(Childress et al. 1998)。

6) 気候的要因

2000

 火山は熱帯から南極まで分布するため、火山活動の影響を受ける群集は地球上のあらゆるところにある。したがって、火山遷移は地理的相違を生じるのは必然であり(del Moral & Grishin 1999)、バイオームレベルでの相違を考慮する必要がある。例えば、ハワイマウナロア熱帯雨林では、遷移速度は、温度と降水量に強く規定されている(Aplet & Vitousek 1994)。同一様式の火山活動の影響を受けた場合には、熱帯地域での遷移速度は速く、緯度が増すにつれて遅くなっているように思われる。しかし、熱帯において泥流や岩屑流跡では群集発達は早いが、場合によっては数種によって優占されてしまうこともある(Whittaker et al. 1989)。
 種数の年次変化を高緯度から低緯度の火山順に見ていくと、気候的相違でかなりの部分が説明できることがわかる。スルツェイ島(北緯63°)では誕生から23年経過後に維管束植物は24種であり(Fridriksson 1987)、27年後でも28種であったが、そのうち4種が入れ替わっていた(Fridriksson & Magnusson 1992)。ニュージーランド北島のタラウェラ山(南緯38°)は1886年に大規模噴火を起こしたが、1964年に63種、1974年に74種であったが、その調査間で17種が消失していた(Clarkson & Clarkson 1983, Clarkson 1990)。桜島(北緯31°)溶岩上では、初期に地衣とコケが優占し維管束植物は数種にすぎないが、47年を経過すると維管束植物は54種を記録し草本植物が優占し、さらに475年で遷移後期の森林群集となり維管束植物は76種を数えた(Tagawa 1964)。インドネシアのクラカタウ諸島(南緯6°)で、噴火後も残存した島では、噴火から100年間で約400種が記録されたが、実際には噴火により消滅しなかった種がかなり含まれていると考えられている(Whittaker et al. 1992)。一方、同じラカタ諸島内に新しく誕生したアナッククラカタウ島では(Bush et al. 1992)、誕生後60年で138種が記録されている。
 垂直分布に関しては、樹木限界の火山活動による押し下げ効果が注目される(Brown 1994)。噴火周期の短い火山や壊滅的な噴火において、押し下げ効果は顕著である(Veblen et al. 1977, Clarkson 1990)。また、上部の極相種がより低い標高のところで初期に定着していることもある(Ohsawa 1984, Masuzawa 1985)。これらの樹木限界は、土壌環境、地表面安定性の変化にともない発芽サイト増加するため徐々に上昇するが、この変化は種子移入の困難さ、積雪等による実生定着阻害のため非常に遅い(Jackson & Faller 1973, Maruta 1994)。さらに、富士山における カラマツ (Larix kaempferi) では、高標高において風により飛ばされたテフラが物理的に定着植物を破壊することによって凍結乾燥害が生じやすくなり矮性化する(Maruta 1996)。樹木限界付近で撹乱頻度の高いところでは、普通種が欠如していることもある(Ohsawa 1984, del Moral & Wood 1988)。
表. 日本の火山における噴出物と遷移初期の主な植物 (追記)
山名: 火山噴出物 (主な植物)

渡島駒ヶ岳1): 軽石等の火砕流 (ウラジロタデ・オオイタドリ・ススキ・ワラビ・ヤナギ類・シラカンバ

十勝岳2): 泥流 (オオイタドリ・ヒメスゲ)

那須茶臼岳3): 降下火山灰等 (ウラジロタデ・ガンコウラン)

浅間山4): 降下火山礫、スコリア (オンタデ・イタドリ・ミヤマウシノケグサ)

富士山5): 降下火山礫、スコリア (オンタデ・オノエイタドリ・コタヌキラン・ミヤマオトコヨモギ)

三原山 (昭和溶岩)6): アア溶岩流 (ハチジョウイタドリ・シマタヌキラン)

阿蘇中岳7): 降下火山礫、スコリア (イタドリ・コイワカンスゲ・キリシマノガリヤス・カリヤスモドキ)

桜島(昭和溶岩)8): 塊状溶岩流 (イタドリ・タマシダ・ススキ)

有珠山9): 降下火山灰・軽石 (オオイタドリ・オオブキ)


イタドリとその近縁種、イネ科、カヤツリグサ科の植物が優占する点で共通
1) Yoshioka 1966, 2) 後藤 1937, 3) 前田他 1978, 7) Tagawa 1964, 8) Tsuyuzaki 1987

帰 化 植 物


 日本同様、火山島であるニュージーランド北島火山群*ではPinusなどの北半球性針葉樹を始めに帰化植物(exotic)の侵入が著しい(Richardson et al. 1994)。タラウェラ山では維管束植物165種中30%が帰化植物であり、本来の遷移系列を変えている(Clarkson & Clarkson 1983)。渡島駒ケ岳 (Mount Koma) では、山麓の造林地から移入した非自生のカラマツの実生更新が顕著である(Kondo & Tsuyuzaki 1999, 笹岡ら 1999)。ハワイでは、帰化種であるMyrica fayaはストレスの高い生息地でも成長が早く、他の木本植物の発芽   と成長を抑制し(Walker & Vitousek 1991)、また永続的な埋土種子集団を作るため(Drake 1998)、在来種であるMetrosideros polymorpha等の定着を排除し、景観レベルで遷移系列を大きく変えた(Vitousek et al. 1987)。同様のことは、溶岩上草本群集でも認められる(MacDonald et al. 1991)。MSHでは、砂防目的に播種された外来草本の定着が、在来種の定着阻害をもたらしている(Dale 1991)。このように、一見人為干渉がないように思われる火山初期ですら広い意味での人為的影響は無視できない。

* ランギトト島 (Rangitoto Island)

お わ り に


 日本の湿原に対して富テフラ湿原という呼称が提案されたように(Wolejko & Ito 1986)、日本を始めとする火山帯地域では火山活動の影響が多くの植物群集で認められる(吉井 1939-1940, Zobel & Antos 1997)。今後、火山遷移動態をより明らかとするためには以下の2点が重要と考える。
 第一に、植物供給源の量、質が遷移初期群集を規定する鍵となることが明らかとなりつつあるが、この点を明らかとするためには、噴火前の植物群集構造を把握する必要がある(Tsuyuzaki 1995)。しかしながら、残念なことに世界的に見ても噴火前に詳細な調査がなされた事例はない(Titus et al. 1998)。
 第二に、永久調査区による長期観測は、遷移動態を実証するもっとも確実な方法として認識されている(del Moral & Wood 1993, Tsuyuzaki 1995)。有珠山山頂部には1983年に永久調査区を設置し、1999年まで継続調査が行なわれている。有珠山は、2000年3月31日に22年ぶりに噴火を行ない、現在も火山活動は続いている。もし、これらの調査区で追跡調査が可能であれば、噴火以前の状態と比較が定量的に行なえる。追跡調査により火山遷移の予測性も高まることが期待され、ハザードマップを始めとする災害予測や防災手法への応用も可能となろう。

摘 要


  1. 火山遷移における、撹乱の規模、強度、頻度と群集動態との関係について述べた。
  2. 群集動態を規定する要因を、植物供給起源、実生セーフサイト、環境圧、生物相互作用、確率事象に分け、それぞれについて議論した。また、これら要因のほかに気候的因子を加味して動態解析を行なう必要を述べた。
  1. 火山遷移初期における帰化植物の侵入が広範に起こっていることを指摘した。
  2. 遷移初期動態機構をより明らかにするためには、永久調査区による継続的調査と、噴火以前に事前調査を行なう必要性を指摘した。

[ここで引用されてない文献: 特に2001年以降] [有珠山資料 和文]

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フィールドノート(6) 火山活動が生態系に与える影響を知るには? (露崎 史朗)


 世界には約550の陸上性火山が存在し、Ring of Fireと呼ばれる環太平洋火山帯に属する日本だけに限っても86の活火山がある。2000年の有珠山噴火、三宅島噴火は、ホットなニュースであったが、小噴火をいれれば毎年、日本のどこかで噴火が起こっているといっても過言ではなかろう。これらの火山の影響は、地球レベルでは、火山噴出物が成層圏に達すると、温室効果とは逆に冷蔵室効果により地球規模での温度低下が起こり生態系に大きな影響を与え、また火山活動および、それにに伴う地震や津波は、時として大きな人災を引き起こす *。当然ながら、日本における植物群集の発達にも、様々なスケールで噴火活動の影響が強く表れている。

* このあたりのことは、 LitteraPopuli 14: 8-9 (2002) も参照

 火山噴火初期段階における環境は、短い時間で変動し、それに伴う群集変化も著しい。火山活動は、タイプ、規模、頻度により異なる影響を陸上植物群集に与えるが、撹乱(disturbance)を受ける群集側も地理的レベルでも地域レベルで異なる。そこでまず、個々の火山における、言いかえれば、地域レベルでの火山における、植物群集の動態を明らかにすることが必要である。ついで、各火山における群集動態の共通部分を見つけ出すことにより、よりグローバルなレベルでの火山が生態系に与える影響を明らかにできよう。これまで、火山活動による撹乱後の植物群集動態についての研究は、調査に際する多くの障害にも関わらず、各地の火山において行われてきた。今後は、これらの火山間における群集動態の不偏性を見つけ出すことが大きな作業となろう。そのためには、以下の2点が重要である。
(a): 有珠山フローラリスト (Tsuyuzaki 1995)は随時更新中。合州国セントへレンズ山についても1980年噴火以降のフローラリスト(Titus et al. 1998)が作成された。
(b): 2022年度まで調査完了した。
  1. 噴火前の植物群集構造は、噴火後の群集構造を大きく制約しているため、噴火前の群集を調査しておく必要がある。しかし、世界的に見ても噴火前に詳細な調査がなされた報告はない(a)
  2. 永久調査区による長期観測は、植物群集動態を実証できる唯一の方法ともいえる。現在、長期生態学研究 (LTER, Long-Term Ecological Research)データベース化が始まっている。有珠山山頂部には1983年に永久調査区を設置し、2000年(b)まで継続調査が行なわれている。有珠山は、2000年3月31日に22年ぶりに噴火を行ない、現在も火山活動は続いている。これらの調査区で追跡調査により、噴火以前の状態と比較が定量的に行なえる。追跡調査により火山噴火後の群集動態の予測性も高まり、ハザードマップを始めとする災害予測や防災手法への応用も可能となろう。
1984
1984年の有珠山火口原。多くの枯死木が立っていた。噴火前には、それなりの大きさがあった森林であった(春木・露崎 2008)

UsuA KomaB NZC
A. 1977-78年噴火の影響を調べるために有珠山に1983年に設置された永久調査区(permanent plot)
B. 1996年噴火の影響を調べるために渡島駒ケ岳に設置された永久調査区
C. 1996年噴火後ニュージーランド、ルアペフ山に設置された調査区。1997年調査。ワイカト大学(the University of Waikato)、クラークソン(Clarkson)博士が継続調査中

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