(2013年1月5日更新) [ 日本語 | English ]
• はじめに (なぜこのページを作るのか) • 総論 [ 学名 | 読み方 | 見分ける | 学名確認 | 標本作成 | 図鑑等 ] 学生の論文原稿で学名の書き方の間違いが減らないような。いい加減な学名は論文を書く時に信頼性を失う原因の一つになることは疑いない。10種くらい学名が書いてあって、そのうち3つがコケてる論文を審査させされたことがあるが、ここまでひどいとデータそのものまで疑わしくなってしまう。 もう一つの目的は、完璧に 趣味なので、植物の見分け方等も、少しずつだが書いていこうとは思う(これも趣味)。 良く聞かれることの一つに、「図鑑」は何が良いか」というのがあるが、「この図鑑」と1冊だけを薦めることはできない。というのは、どの図鑑にも一長一短がある。「これ一冊でOK」とかいう、受験参考書みたいな図鑑はない。いくつかの図鑑を比べてみるとよい。学名や分類キーがかなり異なっていることが分かる。以下のページ等を参考にしながら、自分が正しいと思う学名を使うことが重要である 分類学史 History of Taxonomyリンネ以前1400-1700: 本草の時代- 民間療法流行Caesalpinus A 1519-1603: "De plantis libri (1583)" – 科学的分類大系
Jung J 1587-1657
属genus概念創始者 Ex. Salix = willow, Populus = popular John Ray 1628-1705: 約1万8千種を記載リンネからダーウィン (From Linné to Darwin)Carl von Linnaeus (Linné リンネ) 1707-1778, 近代分類学の祖種の不変説(中世): キリスト教勢力影響強 → "種は神に対応する" = 生物は神々創造物 → 種数増減なく、形質一定(演繹法的誤解) → 種分化、変異、種間交雑と雑種 (hybrid, Gr. 神を冒涜した者)認めない = 進化的考察は殆どない 比較: 現存種 ⇔ 化石種 種不変 = 命名可能 → 生物の段階的構造(2命法)提唱し分類学基礎築く 自然分類 = 形態 → 基準標本types定め、それと比較し種決定 = 形態種 morohological species (リンネ種 Linnean) 晩年に交雑実験で中間型得る: 「自然の体系」最終版で「種の不変説」項削除 → 進化概念形成? 菌類系統は隠花植物とされる (現在隠花植物、顕花植物区分は便宜上を除き行わない)"Genera Plantarum (6th edn) 1764": 1239属 二名法確立 1. Monandria雄花1, 2. Diandria, 3. Triandria, 4. Tetrandria, 5. Pentandria, 6. Hexandria, 7. Heptandria, 8. Octandria, 9. Enneandria, 10. Decandria, 11. Dodecandria 雄花12-19, 12. Icosandria 雄花 ≥ 20、子房周位, 13. Polyandria雄花 ≥ 20、子房上位, 14. Didynamia二共雄蕊(4本中2-2で長さ異なる), 15. Tetrandynamia 三共雄蕊, 16. Monadelphia 雄蕊筒状, 17. Diadelphia二体雄蕊, 18. Polyadelphia, 19. Syngenesis, 20. Gynandria, 21. Monoecia, 22. Dioecia, 23. Polygamia, 24. Cryptogamia無花 |
Bufforn 1707-1788
"博物誌 (1749)": 生物進化を示唆 = 明瞭に種を区別できない差異存在 あらゆる形質を同等に扱い総合的に分類体系を考えるべき – 数量分類学につながる Darwin E 1731-1802, 英 (Darwin C祖父)"Zoonomia" (or the Laws of Organic Life) 1794: 生物は変化でき、全て進化能力を持つ。(ただし、)生物自身の努力によって能力が発揮される Lamarck JB 1744-1829, 仏: 博物学者Humboldt, Alexander von 1769.9.14 -1859.5.6 (Gr)
Naturalist(広義の生物学、地学学ぶ)
Ex. Fagus: ユーラシア大陸-アメリカ大陸 = 形態的に近い • 1813 de Candolle, Anguste Pyramus: de Candolle system • 1838 Endlicher, Stephan Ladislaus: Endlicher system • 1843 Brongniart, Adolphe-Théodore: Brongniart system → 各々、分類観点が異なり食い違い生じる (Mayr 1953) 分類学の歴史的発展段階
日本のフローラ研究は、西欧に遅れたが大変進む。理由: 外国から開国以前に多くの博物学者が訪れ、現存種をかなり正確に同定した。記載面、博物面からも綿密である。ソ連・合州国ではフローラ未完成 |
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命名: 名付け方が正しい手続きを経たかどうかを検討 → 分類中の位置づけ問題に立ち入らない |
分類学の命題第一命題 「原始的形質がある系統の中に幾つかの異なった分枝に相互無関係に残留していることがある」
新しい化石にしか見つからない形質は派生的である |
種内分類群変異幅(個体変異) → 種内分類群 intraspecific taxa
種は形態差のみで範囲づけられるものではなく、生殖・遺伝・生態などの面を考慮して決める必要がある
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多型 polymophism発生段階 developmental stageEx. クルマエビ (Penaeus setiferus)の変態 = ノープリウス → メタノープリウス → プロトゾエア第I-III期 →→→ ミシスI期 → 後ミシスI期 生息地条件 habitat condition
Ex. トノサマバッタ: 孤独相・群生相
Ex. ミヤマクワガタ、アキマドボタル
Ex. キチョウ: 夏型 – 中間型 – 秋型 Ex. ミツバチ |
(植物)分類学の基本的概念 界 kindgom 門 phylum (formerly division*) -phyta 亜門 subdivision -phytina 網 class -opsida, -phyceae (藻類), -mycetes(菌類)亜網 subclass -idae, -phyciade, -mycetidae 目 order -ales亜目suborder -inales 科 family -aceae亜科 subfamily -oideae 連 tribe -eae亜連subtribe -inal 属 genus 特になし亜属 subgenus 節 section亜節 subsection 種 species
亜種 subspecies - subsp. or ssp. クローン clone *: 動物学 - phylum ↔ 植物学 - division ⇒ 東京規約(1994)から植物学もphylum使用認められるがdivisionでもよい 亜種 subspecies= 地理的変異の公的認価。地理的に離れているので側所というより異所(proposed by Mayr) 連携群 race circle= 異所的亜種 polytypic species1形質に着目して亜種決定はできない
Ex. 縞(vitta, pl. -e)の有無、体色等、それぞれが異なる分布域を示す
複数形質の任意的組み合わせで幾つもの異なる亜種ができる → 信用できない 生活 卵 (nm) 主な住場 仔魚 大型卵 河川陸封 2.6-3.0 上中流 孵化 = 25-26日 走光性負 100-700粒 仔魚7.5-8.5 mm 卵黄嚢大 小型卵 両側回遊 1.5-1.9 下流 孵化 = 22-23日 走光性正 海で繁殖 600-3000粒 仔魚6-7 mm 卵黄嚢小 |
大型卵: 重く負の走光性を有し石下に潜り込む。卵黄嚢大で自力生存期間長く上・中流河川に住む 変種 variety分類群系列上、種の下に置かれた階級。少なくとも2-3の点で基準標本と形態上異なる地理的に異なる分布圏を占有するものを多く変種として扱う 品種forma= geological race: 1-2の形質で基準の群と異なるものEx. 有色花の白花品種、基準より葉の長いもの
一般に人工的に分別された農業的集団cultvarsには使用せず、天然に発見されたものに使用している Ex. アメリカコガラ: 北米産、狭い地域、競合している → 形態類似、研究の結果生殖器的差異が認められた。なわばりが原因 近縁(隣)グループでの種の置き換わり-連携種race (異所的種) (kind circle)
Ex. オーチョウ: 冠毛の差異による分類 系統 strain祖先共通とし、遺伝子の等しい個体群。クローンが栄養繁殖によるのに対し、有性生殖過程を含む実際は、系統的特徴の許容範囲内の変異を含み、自殖を続けることで著しい差を生じた集団形成時には分離し他系統とする。純系にほぼ等しいか、それほど純粋なものと考えないという程度の差異がある クローン(栄養系、分枝系) clone単細胞か個体から無性的増殖により生じた遺伝的に同一な細胞群または個体群 |
学名について、面白い一文を見つけたので、ここに載せておきたい。どこかの大学の3年または4年の試験解答に書いてあった書き込みのようである。
Latin is a language as dead as dead can be. ゼミ等で目にする過ち (気づいたらメモ)二名法 (binomial nomenclature)
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未同定種 (sp.とspp.)名前が種レベルではつけられない場合は、未同定種として扱うしかないが、その記載の仕方については、なんでもかんでもsp.をつければ良いというわけではなく、
sp. (sp) = speciesの単数形, single species
属レベルまで明らかであれば、 同種異名 (synonyms)これが一番やっかい。 |
学名はラテン語で書かれているので、読み方もラテン語であるのが本当なのだろう。しかし、今の地球上にラテン語を話す人はいない。米国では、当然、米語読みをする。しかし、ワシントン大学にいた時に、どうにも米語読みに抵抗を感じて、日本ではラテン語読みをすると言ったら、今の時代に誰がラテン語を話すのか、と問い返されてしまった。ローマ字読みをするのが、ラテン語読みに一番近いのだろうが、ここは、考えようで、ローマ字読みすると、英語圏では、全く通じない。日本でも、自分が学生の頃はPinusは「ピヌス」と言う人が多かったが、今では、「パイナス」と英語読みをする人が増えている。 |
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見分けるために形態 morphology
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生態標本を作ろう! 似た植物を比較するには、これで比べるしかない。写真では、触った感じは分からない(-写真を撮るなという意味ではない。むしろ、撮るべき-)。標本といっても、押し花そのもののことなので、子供の頃の「夏休みの学習」とかを思い出し楽しみながらながらやれば十分なので、決して難しいことではない。標本採集時には、採集日・場所(locality)を記録しておくことは、もちろんだが、上記にあるような観察事項も記録していると、きっと、良いことがあるはず。 |
学名検索データベースへのリンク 学名については、国際植物命名規約 (International Code of Botanical Nomenclature, ICBN)があることを知る。属名、種名などの表示方法とラベルの書き方というページは、園芸植物の学名の書き方を説明しているが、その中の原種記載についてのルールは全く同じなので参考になる。 個々の学名に自身がないときには、Royal Botanic Garden, Kew の学名データベースか、The International Plant Names Index (IPNI) を参照する。なお、近年のDNA解析等による系統関係については、Angiosperm Phylogeny Website等で見ることができる。ただし、分類と系統は、時として別問題となるのことに注意されたい。なお、英国自然史博物館(Natural History Museum)のホームページで見ることができるが国際分類学イニシャティブ(Global Taxonomy Initiative [ Japan , 日本版 ])プロジェクトが立ち上がり、世界中の分類学情報を網羅的に整理する試みが始まっている。 |
日本分類学会連合: この中の、 加盟学会 を見ると日本の分類学の現状が分かるはず。
植物分類学会ページの中のFlora of Japanの検索機能を使うとFlora of Japan (講談社)で用いられてる学名を知ることができる。 植物学リソース: 3000以上の植物関連サイトをテーマ別、種類別、地域別に分類したリンク集 |
[エングラー体系 (Engler's syllabus)]
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菌類は植物に入れないが... 必要なので
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植物標本植物の全体または一部を、後々までデータが得られるよう保存されたもの。
乾燥標本: 乾燥状態で保存 完全標本その植物種 (species) の特徴をおおむね全て保有した標本。種子植物の場合は、根・茎・葉と生殖器官(花または実)が揃ったもの。 |
分類学では、完全標本を理想とするが、生活史研究などでは、実生などの標本も採取・保管される。
作成目的
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Chimaphila umbellata (L.) W. Barton オオウメガサソウ |
Drosera rotundifolia L. モウセンゴケ |
Campanula lasiocarpa Cham. イワギキョウ |
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2000年8月3日、駒ケ岳南西斜面、標高550 mにて採集。標本個体はパッチ状に生育しており、この時期にはさく果を付けていた。 | 2000年8月13日、駒ケ岳南西斜面、標高850 mの礫地にて採集。 | 2000年8月3日、駒ケ岳南西斜面、標高850 mにて採集。 → 駒ケ岳の植物 Flora on Mount Koma |
スケールバーはすべて2 cmを示す。 (露崎史朗他 2001)
手順腊葉標本は、通常、新聞紙1ページを半分に折った大きさ(30 cm × 40 cm)である。採集時に、その大きさに納まるよう意識して採集すると、後の作業が楽だし、使いやすい標本ができる採集時の心がけ採集準備 (その他は野外実習準備に準ずる)野外調査道具 (field eqiupment) → 植物採取用 (collecting plants)
胴乱 または ビニール袋(一斗程度の大きさ) 作成道具
吸水紙(吸湿紙) (新聞紙可)
タヌキモ (Utricularia spp.)、キンギョモ等: タオル等で予め水を切る。海藻標本を作る要領で行なうのもよい |
照葉樹: アルコールに1日程度浸けてから標本
台紙: 上質紙B判135 kg(葉書程度の厚さ)を8つ切り(おおよそ 縦39 cm × 横27 cm) 標本ラベル specimen labels自分が使ってるもの![]() ラベルに良く使われる表記
同定者(Det., determined by) 保存高湿度を避ける。虫害防止に、パラジクロールベンゼンまたはナフタリンを適宜梱包する。複数の防虫剤を使うと変な反応が起こったりするので、必ず1種類だけを使う。実際、台紙がまっ黄色になってしまった (標本整理をしてみたり...) |