(2018年11月20日更新) [ 日本語 | English ]
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地衣酸を代謝産物とする特異な独立群として扱う 門-門共生 symbiont
地衣体thallusの大部分は菌類菌糸で作られ、それに藻類が共生 地衣体内で菌類-藻類は、個々に規則的に並び、菌類は吸器houstoriumにより藻類の一部に付着
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b
c
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コケとの見分け方
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生育形区分(系統無関係だが同定上は参考になる) → 1種で複数生育形示すこともある 固着地衣 (痂状地衣) crustose lichen地衣体痂状 - 基物に全面的に固着し下皮層欠 → 子柄あれば樹状地衣子嚢果構造、胞子形状 → 属以下レベル形態同定は特徴明瞭でない限り困難 Ex. Graphia Fig. 124. 子嚢果模式 a-b, 裸子器 a レカノラ型子器 b レキデア型子器 c 被子器 d 擬子座 Fig. 125. 胞子 a. 楕円形1室, b 2室 c, 紡錘形4室, d 石垣状多室 e 分極2室, f 針状, g 紡錘形多室, h 紡錘形4室(室は菱形) 樹状地衣 (樹枝状地衣) fruticose lichen地衣体少なくとも一部基物から離れ痂状でなく樹状 Ex. Cladonia地衣体断面は円形のものが大部分で、藻類層は同心円状に並ぶ 葉状地衣 foliose lichen地衣体薄紙状、偏平で水平に広がる。表裏区別明瞭裏面の仮根(偽根)で基物につき基物から少し浮く → 安定 Ex. Parmelia |
外部構造裂芽(針芽) isidia: 地衣体表面、多くは背面に散在する小突起 - 皮層あり皮層、ゴニディア、髄層からなる 粉芽 soredia: 髄層からできる菌糸と藻類が集まってできたもの - 皮層なし粉芽塊 soralia: 粉芽が集団をなしているもの パスチュール pastule: 裂芽の様に突起として形成→ 先端太くなり破れ粉芽に似た粉噴出 杯点 cyphella (偽杯点 pseudocyphella): 地衣体腹面に見られる孔Ex. ヨロイゴケ属 臍状体 umbilicus: 腹面中央部にある点で基物付着部分 - 繊維状の互いに固く癒着した菌糸からなるEx. イワタケ、カワイタケ 海綿状組織 spongy cushion: 地衣体腹面にある太い菌糸が網目状に並ぶ半球状突起Ex. アンチンゴケ属 頭状体 cephalodia: 地衣体共生藻(緑藻)と異なる藻類(藍藻)を中に持つ突出物Ex. ヒロハツメゴケ 内部構造上皮層、藻類層、髄層、下皮層の4層に分化皮層 cortex (上皮層 upper cortex) = 表↓ ゴニディア層 gonidial layer (藻類層 algal layer): 藻類細胞が層状に並ぶ ゴニディア(-ウム) gonidium, pl. -a: 菌類と共生している藻類 = 主に緑藻。藍藻のものもある
藻体: 単細胞か糸状体 皮層 cortex (下皮層 lower cortex) = 裏↑ 偽根 rhizine: 地衣体裏面から伸びた菌糸の束 トメンタ tomentum, pl. -a: 地衣体腹面・背面に生じる綿毛状のもの |
地衣の色を決める主な物質でもある 呈色反応法: 地衣体に試薬をつけ色変化から地衣成分見分ける 顕微化学的手法: アセトン抽出 + 試薬 → 再結晶や塩 → 顕微鏡観察 → 結晶形 → 地衣成分種決定 クロマト法: 薄層クロマト法が良く用いられる 14C, PC (生合成最盛期に), 13C NMR: これらの技術により地衣成分構造明らかとなる 1. シキミ酸経路 shikimic acid origin Ex. テルフェニルキノン類 terphenyl qauinones, プルビン酸誘導体 pulvic acid derivatives 2. メバロン酸経由 mevalonic acid origin トリテルペノイド triterpenoids |
3. 酢酸-マロン酸経由 acetate-malonate origin 高級脂肪酸類 higher fatty acids, フェノール・サルボン酸類 phenol carboxylic acids 利用リトマス試験紙 = リトマスゴケ Roccella tinctoria (L.) DC.化学成分を利用オークモス: 樹枝状地衣類(ツノマタゴケ類) → 抽出エキス = 香水原料(ムスク様) ウールの植物染色 鉄道模型等ジオラマ用樹木に利用 医薬品: ウスニン酸 → 傷薬(現在不使用) 地衣成分中に抗ガン作用? → 研究必要 |
(昔のノート)
Class Lichens 地衣綱 (Zahlbruckner 1926)生殖器官(子嚢等)微細構造、遺伝子塩基配列 → 多系統群で並行的に地衣化lichenization起こる→ 地衣類は菌類分類体系の枠組中で取扱う ICBN: Def. 地衣類学名は地衣体構成菌類に対し与える → 菌同種なら藻類に関わらず同学名→ 共生菌類 mycobiont: 大部分子嚢菌。担子菌少。菌類形態から3(4)種subclassに分類 地衣体 thallus の大部分は菌類菌糸からなる。分離は子嚢か担子器から菌を採取し寒天培養 Subclass Phycolichen Fries E 1831 (藻菌地衣, green algal lichens)
1属1種(疑問) |
Pannariaceae ハナビラゴケ Parmeliaceae ウメノキゴケ: 樹上-岩上着生 1. 皮層は異形菌糸組織
Cetraria Ach. エイランタイ 2. 偽根ある 3. 子器と粉子器は必ず地衣体背面につく
4. 背面穿孔あり、子嚢は2胞子入れる ___ Menegazzia 3. 子器と粉子器は地衣体背面に散生するが地衣体縁部にもつく ___ Asahinea 2. 偽根がない 3. 子器と粉子器は地衣体背面に散生する 4. 地衣体腹面には海面状組織ない。胞子長楕円形、子嚢は2-8個の胞子入れる
5. 粉子は頂生する ___ Parmeliopsis 4. 地衣体腹面には海面状組織ある。胞子三日月状、子嚢は2多数の胞子入れる ___ Aniza 3. 子器と粉子器は地衣体縁部につく
4. 皮層上部はI-、胞子は11-12 × 6-12 μ ___ Cetrelia Peltigera ツメゴケ (f < 1 pelta (盾)を持つ意。楯状子器付ける P. canina (L.) Willd. イヌツメゴケ P. aphthosa (L.) Willd.ヒロハツメゴケ Felt lichen, Toolik Lake Pertusariaceae トリハダゴケ Physciaceae ムカデゴケ Stictaceae ヨロイゴケ/カブトゴケ Lobaria (Schreb.) Hoffm. カブトゴケ (f < g lobos (裂片)。地衣体が多くの裂片lobeからなる) Sticta (Schreb.) Ach. ヨロイゴケ (f<g stictos(点)。地衣体裏に一面点ある) Teloschistaceae Umbilicariaceae イワブスマ Umbilicaria Hoffm. イワブスマ U. caroliniana シワイワタケ, U. esculenta (Miyoshi) Links イワタケ: 日本食用, U. cylindrica タカネコゲノリ: 十勝), Lasallia pensylvanica オオイワブスマ: 十勝 Usneaceae サルオガセ Usnea Wigg. サルオガセ (f < ar Ar語 usnea 苔から) Ramalina (f < 1 ramos(枝)縮小形。体細かく分枝) カラタチゴケ(R. intermediella Vain.コフキサルオガセ) Alectoria Ach. (f < g alektor 牡鶏, 延いて鶏冠。子器/枝端形が鶏冠状になる) Subclass Basidiolichenes 担子菌地衣担子菌が共生菌。地衣類中例外的存在Dictyonemataceae ケットゴケ Dictyonema (Ag.) Zahlbr. ケットゴケ, D. sericeum (syn. D. thelephora) ケットゴケ: 主に(亜)熱帯 Clavariaceae ホウキタケ Multiclavula Peters. キリタケ, M. mucida (Fr.) Peters. キリタケ) Agariaceae マツタケ Omphalina hudsoniana (Favre) Hendersen アオウロコゴケ Subclass Imperfecti (Deuterolichen, Lichens Imperfecti) 不完全地衣不完全菌(共生菌): 子嚢胞子形成見られない + :藻類 日本5属Racodium Pers Thamnolia Ach. Siphula Fr. Lepraria Ach. Leprocaulon Nyl. |
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地衣体から藻類の分離
培養条件: 一般に増殖速度は遅い
光 / 有機窒素(増殖速度を高める) / pH 人工的再合成: 分離した藻類と菌類を混ぜることにより地衣類を再現する試み Ex. Acarpospora fuscate-Trebouxia sp.: 粉胞子器形成に成功 |
Anzia Stizenb. (アンチゴケ), f < p, Anzi (恐らく18C, Cl)
Cetraris (ウメノキゴケ科), f < 1 cetra(小楯)。盤果形から
Evernia f<g eyernys(よく分枝した)。体分枝状態から (サルオガセ科)
Gyrophora f<g gyros(環) + phore(有する)。円盤状子器表面に明らかな環状模様ある (イワタケ科)