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困ったことに分野により訳が異なる 学生時代の講義ノートを引っ張り出したら、菌学(菌類学) mycologyと書いてあった。しかも、自分は「生物学科植物学専攻課程」に所属してたわけで、当時は、菌学は植物学の一環として講義があったが、菌類は、遺伝子上は植物よりも動物に近いことが分かっている。あげくに、粘菌や卵菌等は菌類から外れた。学生に「古い教科書読むな」という根拠の一つには使えるが、自分自身が混乱する原因となる ともあれ、菌類に関する研究の全てを指すことには変わりはないはず 糸状菌 filamentous fungi: 菌糸で構成される菌類の総称 (≠ 分類階級) 植物病害の主 観察採集採集後、実験室での分離培養等の処理必要採集区分: 菌類の大きさ - 方法
純粋培養高い再現性培地・温度・湿度・pH・光・濃度
採集 → 培地作成 → 培養 → 観察 → 分離 → 観察 → 継代培養 培地
手順1) 無菌aseptic寒天平板準備2) 直接接種法・土壌平板法等により分離する菌を決定 3) 先端を曲げた柄付針を火炎滅菌 4) 移植(失敗したら(1)からやり直し) [→ 斜面培地 → 継代培養] |
[菌根菌, 腐生植物, 分類 , 地衣類] 寒天平板からのプレパラート作成長所: 菌糸もつれにくい繊細構造となり保存状態よい。一枚のプレパラートに様々な段階みられる。培地表面・内部構造も見られる
b) a, b) スライド培養法 分離双眼実体顕微鏡_______鮮黄色粉状菌 タケリタケ: Hypomecesの子座に埋まった子嚢殻 観察分枝・隔壁・特殊構造・発育状態胞子: 胞子嚢中 = ケカビ目。裸出 (adj. exserted) = 不完全菌類 子実体の形・色・硬軟: 内部に子嚢がある = 子嚢菌類 → 菌核となる |
菌界(キノコ・カビ・酵母)に属する生物 → 真菌: 細菌との区別を明瞭にする時 古くは動菌類(粘菌)含む(現生動物界(原始的真核生物)に移動)
従属栄養生物: 糸状菌体から分解酵素 → 有機物分解吸収 栄養細胞殆どが鞭毛無無性有性段階 (asexual/sexual stages) → 形態異: 以前各々に命名したが、現在、命名規約(nomenclature)は有性段階名採用 栄養体は多くのものが菌糸集合体(菌糸体)だが特徴乏しい 栄養体は生殖細胞を形成する場でもある 菌糸 hypha菌類本体を構成する細胞の連なり
菌糸叢 mycelial pellet: 菌糸の集まり
白色・褐色・黒色 + 糸状・紐状・針金状・棒状 (直径数mm) 菌核 sclerotium: 菌糸が集まり塊状になったもの 無性菌糸: 単一の性で単核細胞のみの菌糸
融合(吻合): 単相単核の無性菌糸中、雌雄の菌糸が引合い融合すること 基本的に細い円柱状の細胞が縦につながり糸状(糸状菌) → 分枝や細胞形状変化が様々に生じる 菌糸構成子実体等を構成する菌糸の種類と構成
二菌糸型: 子実体構成菌糸が生成菌糸に加えて骨格菌糸または結合菌糸のどちらか一つが混ざる 三菌糸型: 子実体を構成する菌糸が生成菌糸・骨格菌糸・結合菌糸の3種類共の菌糸からなる 菌糸組織菌糸が成長、分裂融合し子実体等の組織を形作る部分 - 形状により分類
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異形菌糸(異形細胞)通常の細長い菌糸細胞に比べ、特徴的形状をした細胞(菌糸)
生活環 life cycle単純 → 複雑 (simple → complex)
1核中にある染色体数: → 単相 = n, 重相 = n + n, 複相 = 2n |
= 有性生殖 + 無性生殖 全実性 holocarpy: 生殖にあたり栄養体全体が生殖器官に変わる場合 Ex. ツボカビ類等顕著。宿主体内個体(1細胞)が成熟すると、そのまま遊走子嚢か配偶子嚢となる 分実性 eucarpy: 一部が分化したり新たに生殖器官が形成されてくる場合無性生殖 asexual reproduction1. 胞子 sporeDef. 胞子(用語): 曖昧「単細胞性栄養体から独立した散布体で適当な条件下では、そのまま(配偶子のように合体せず)発芽を開始しうるもの」 → 胞子は様々なもの: 胞子形成 ≠ 無性生殖
有性胞子: 有性的(雌雄により)にできる胞子 2. 栄養体生殖 vegetative reproduction
有性生殖性を異にする単相(n)核を含む生殖細胞が合体し(細胞質融合)、最終的に核も合体し(核融合)複相(2n)核を持つ細胞(接合子)を生じること 生殖細胞(配偶子)は基本的に単独では発芽・発生能力欠き、この点で無性的胞子と異なる菌類有性生殖も同概念で理解されるが単純ではない: 次の2事情が複雑で分かり難いものにしている
担子菌類(A)と子嚢菌類(B)の典型的生活環。R!: 減数分裂, P!: 細胞質融合, K!: 核融合 完全世代と不完全世代 perfect and imperfect state自然または実験室内で子嚢菌や担子菌類の生活のある局面に出会った場合
異核接合体(2核体): 複相になる単相2核の入った重相状態の菌糸。菌類以外に例がない。複相状態前の段階だ、逆に他の真核生物にあるような複相時代がない 担子菌類: 2核相菌糸は独立した栄養体をなす → 担子器果の形成開始をもって完全世代の始まり |
鞭毛菌・接合菌: 区分可能だが一般的でない → 完全世代・不完全世代の概念は核相や胞子体・配偶体の発達概念とは必ずしも一致しない ある菌が完全世代だからといって不完全世代は消滅したとは限らない 分生子 conidium (pl. -ia): 菌糸より無性的(単相細胞分裂し形成)に生じる不動胞子分生子柄: 分生子形成する菌糸が分化(2個以上の細胞)したもの
分生子柄束(束状体・コレミウム): 分生子柄の集合 Ex. オオヒラタケ 分節型分生子: 菌糸先端部分や分生柄に節状に隔壁ができ、直接多くの分生子にわかれる 出芽パターン (modified after Vuillemin 1911) - 分生子のでき方1) ファイロ型 2) ポロ型 3) バソジック型 1) ファイロ型 philospore
tamarii: 1核, carbonaris: 数核 ポロ型分生子: 分生子柄の先や既存の分生子の先が開孔し新しい分生子が出る。分生子は1または鎖状 3) バソジック型4) 出芽(ブラスト)型blastospore
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サイズ大形菌類 = キノコ主に担子菌(+ 子嚢菌で視認可能な子実体形成) 微小菌類 = カビ + コウボ接合菌、大部分の子嚢菌・不完全菌 (+ 担子菌で顕微鏡サイズの子実体形成) |
キノコ構造作るもの(キノコ)作らないもの(カビ)という区分は系統関係ではない 「菌糸組織からなる多少とも分化した胞子形成器官」 ≈ キノコ 子実体 (s.l.) = 担胞子体 (胞子を担う) 粘液細菌類・変形菌類含。ケカビ等胞子嚢柄、アオカビ等分生子柄含 栄養菌糸: 普通地中や材中で成長している顕微鏡的構造部分。いわゆるカビ子実体 (s.s.): いわゆるキノコ (担子菌と子嚢菌) 分枝した栄養菌糸に由来し、キノコはその一部から分化形成 キノコ・カビ → キノコ自体が独立栄養生活をする個体ではない子実層: 胞子を形成する層 → 子嚢器や担子器、さらに側糸paraphysis、シスチジア等が集まり層状を成す 子実下層: 襞等の実質部分(通常細長い細胞並ぶ)と子実層(様々な特徴的細胞並ぶ)の間にある多分枝の短い細胞より成る部分 子実層状被: 傘上面の表皮細胞形状で、子実層に似た形状を示すもの子実層托: 子実層形成される部分。キノコの襞、管孔、針等(s.s.)。子実体をまるごと指す(s.l.)
被実性: 子実層托が発生初期段階から最後まで子実体中に包まれ外に現われない Ex. 腹菌類
管孔: 管状の子実層托(= 網目状)。機能的には「襞」 Ex. イグチ類
子実体原基: 子実体菌糸が子実体形成時に初期段階で見られる子実体へ成長する部分。複核菌糸が融合、分裂を繰り返し子実体原基となる 胞子形成様式による子実体区分1. 担子器果 = 担子菌子実体多くの担子菌類は担子胞子が発芽し生じた単相の栄養菌糸は接合し2核相の栄養菌糸を生じる。この2核相菌糸の一部が子実体(キノコ)形成を行い、そこに担子胞子形成 = 担子器果は2核相であり2核相の栄養菌糸の生活活動に支えられる 2. 子嚢器果(子嚢果) = 子嚢菌子実体子嚢乗せた菌糸体 = 子嚢盤か子嚢殼を有する子嚢子座 子嚢殼(被子器) perithecium: 通常、中空の多細胞からなる壷 中に子嚢有する - 微小でキノコとなるのは少
閉子嚢殻cleisfothecium: 子嚢殼で口が閉じたもの 子嚢を乗せる円盤や茶碗、皿のような形の細胞組織 Ex. チャワンタケ、ノボリリュウタケ類 子嚢菌類に見られる子実体形成の有様は担子菌類ほど単純ではない
子嚢果は単相と2核相の菌糸を含み単層の栄養菌糸の生活活動に支えられる 他に分生子座、脚子座等 3. 分生子果: 単相の菌糸により形成され、単相の栄養菌糸に繋がる子実体成長・形態 growth and morphology of fungi硬質菌: 多孔菌に代表される硬質のキノコ。乾燥しても大きさ、形状等があまり変わらず保存性よい軟質菌: 硬質菌ではない一般の水分の多いハラタケ目のキノコ等
膨大部: 柄の主として下部が大きく膨らんでいる部分 – 塊茎状: 柄等で下部が膨らむさま 退色: 色褪せること → 雨等の水分、乾燥等。老成 0) 生え方単生 (孤生): 1本(1個体)のみが生える散生: あちこちに散らばり生える 輪生: 輪のように丸く並び生える 菌輪 fairy ring, fairy circle, elf circle or pixie ring: キノコが輪形に連なり生える(一連の菌糸体から子実体発生し年々大きな輪, 直訳「妖精の輪」) 子実体原基形成は同調的に誘導 = 暗培養 ≥ 4日 + 光照射 ≥ 24時間 ⇒ 光誘導 群生: 多数のキノコが群れ生える → 束生 < 叢生: 一面に生える束生の大きな株状重生: 皿を積み重ねた様に生える(主に木に生える無柄キノコへの呼称) 背着生: 樹幹等に膏薬の如く貼り付いて生える |
1) 傘の形態 cap form1: 平形 plane, 2: 半円形, 3: 丸山形, 4: 饅頭形 convex, 5: 円錐形 conic, 6/7: 鐘形(状の) campanulate, 8: 反曲した(反り返った) reflexed, 反局している deflexed, 9: 漏斗状infundibuli from (断面), 10: 中丘: 丸山形で中央隆起 umbonate, 11: 殆ど平で僅かに窪む umbilicate, 12: ほとんど平らで中央が盛り上がる, 13: 内側に捲くれた involute 2)傘表面 cap surafce上表皮層: 傘の最も上の表皮層。柵状被、短細胞被、子実層状被等の区別でき、分類上の参考1. 表面滑らか, 2. 鱗片様付着物ある, 3. 綿屑様付着物ある, 4. 繊維の張り付いた, 5. 縁に放射状の筋ある
環紋: 輪の形に色が変わっている模様。ウチワタケ等の傘表面に顕著 フリンジ fimbria (pl. –e, adj. fimbricate, fringed): 縁の糸状ぼさぼさ・ぎざぎざ飾り 圧着鱗片: 傘の表面にぴったりと付着した鱗片。サクラシメジに顕著 3) 柄 stalk中実: 柄内部が詰まる → 髄: 柄内部が骨の髄のように裂ける靭肉質: 肉質で柔らかいがもろくはなく強い性質 ↔ 中空: パイプの様に内部が空4) 傘への柄の付き型 stalk type分類上大切な特徴(キノコを中心から縦に裂くとヒダ端と柄の関係分かり易い)
偏心生: 傘の中心でなく偏った部分に柄がつく 5)壺の種類 kinds of pots6)鍔(ツバ) skirt永存性: 鍔が永く残るもの早失性(早落性): 鍔が早い段階でなくなる – 鍔の有無による同定時「つば無し」と誤認せぬよう注意必要 7) 襞 plica と傘のつき方一次襞: 襞のうち傘の縁から柄に向かい伸びる最も長いもの→ 柄の近くにまで達しない長さの小襞を2次襞、さらに短い孫襞を3次襞…
襞実質: 襞表層より中の部分で、菌糸が種により特徴ある形に集まる。個々の菌糸判別不可能 8) 胞子紋 spore print傘部分を切り取り、紙等の上に伏せておくと胞子が紙上に落下しできる模様 |
「分裂か出芽により増殖する、形態的に殆ど分化ない単相細胞体」の総称 酵母は外見的名称 → 菌糸や子実体を作る菌類にも条件により酵母状となる
稀に分裂fissionで増殖する分裂酵母Schizosaccharomycesがある → yeastはfungi taxonの様々な門に位置する つまりyeastはfungi taxonの様々な門に位置する |
酵母の生活環 (Life cycle of yeasts)K!: 核融合, P!: 細胞融合, R!: 減数分裂 __単細胞酵母_______複相酵母________単複相酵母_____不完全酵母 |
基質: 菌類生息地 = 分解・還元対象となる有機物
生息地 habitat生活に水と栄養物質と適当な環境条件が必要要因: temperature(一般に20-25C), water, aeration, mechanical properties(浸透圧等), etc. 生活空間・時間規模、種により異なる多様な能力・習性、光を要しない、多量に広範囲に散布される胞子 → あらゆる地域と場所が潜在的菌類生活場所: 栄養体微小 = 空間微小でも栄養生活可能
好高温性thermophilic (45-52°C): Ex. Thermoascus) ⇔ 好低温性 psychrophilic (5-10°C) 樹上生: 樹上に発生。一般に、生木上 ⇔ 材上生: 木材・枯木の株・切株上に生える 地上生: 地上の土の上 半地中生: 子実体大部分地中だが一部が地上に現われる状態 地中生: 地中に発生 腐生 saprobic他生物死骸等を腐らせ、その栄養分により成長
腐朽菌 decay fungi (≈ 分解菌 decomposing fungi)腐朽に関与する細菌類・菌類等総称(主に担子菌、中でもサルノコシカケ類)×系統群 腐朽(腐れ): 枯木や生木の木材質が木材腐朽菌により分解した状態 - 材腐朽し土に戻る胞子発芽 → 菌糸 → 木材中の糖・デンプン、次いでセルロース、ヘミセルロース、リグニン分解し栄養 辺材糖類 sapwood sugar: 木材腐朽の鍵 木材成分分解: 木材乾燥重量減少 → 重量減少50%に達すると木材強度ゼロ木材含水率(%) = (木材含む水分重量 g)/(水分除去木材重量 g) × 100 応用: 担子菌類にはダイオキシン等の有害物質を分解する能力木材腐朽型0. 軟腐朽: 木材表面軟化 – 腐朽菌が原因とは限らない1. 褐色腐朽菌 brown-rot fungus (セルロース分解菌) = 褐色腐れ 腐朽材 = 褐色 → 褐色腐朽菌: セルロース、ヘミセルロース分解し、褐色のリグニン残る 多湿・通風換気、低日照等で発生 Ex. オオウズラタケ、ナミダタケ、ナミダタケ、イドタケ 2. 白色腐朽菌 white-rot fungus (リグニン分解菌) = 白腐れ木材腐朽(wood decay)の90%が白色腐朽菌(殆どが担子菌)による 腐朽材 = 白色様 → リグニン分解し、白色のセルロース・ヘミセルロース残る 風雨後、日当り良で多発
担子菌では、担子菌亜門、真性担子菌網、帽菌亜網 (Phanerochaete chrysosporium = 全塩基配列決定) 侵入方法根株(心材・辺材)腐朽菌: 根株の物理的損傷部(食害含む)部から侵入感染Ex. ベッコウタケ・ナラタケ(白色腐朽)・ハナビラタケ(褐色腐朽) 幹枝部(心材・辺材)腐朽菌: 幹・枝損傷部から侵入感染Ex. コフキサルノコシカケ(白色腐朽)・ホウロクタケ(褐色腐朽) 2012 Samejima et al.: 古生代石炭紀に白色腐朽菌不在 - 石炭形成石炭紀末期: 白色腐朽菌発生 - 石炭生成減少 寄生菌 parasitic fungi一方的に栄養を奪い成長する菌内生菌 endophyte or endophytic fungi: 植物体内に共生する真菌・細菌
(s.s.) = イネ科植物に寄生する麦角病菌科の真菌 異種寄生 heteroecism: 一生のホストが2種類以上 Ex. Puccinia |
共生菌 symbiotic fungi (sg. fungus)菌類栄養依存性植物 myco(-)heterotrphic plant (MPH) (Leake 1994, Taylor et al. 2002)a) 完全 fully or obligate: 全炭素固定を菌類依存 (既知400種)
Ex. 非葉緑素含有植物 achrolophyllous plants 特異性 specificity: 植物種-菌根種の強い関係(定義未確立) 1. 菌根 mycorrhiza2. 地衣類 Lichens 菌類遷移 succession of fungi葉面菌 phylloplane fungi or leaf sruface fungi健全葉にも生息 - 葉面溢出物・付着物等を利用落葉後は別のリター菌に移行 + 季節変化 糞生菌 coprophilous fungi糞分解 - 栄養 絶対的糞食菌 obligate coprophilous fungi落葉菌 litter fungi菌類有毒物質アマニチンamanitin: S含む環状ペプチド毒成分。Amanita virosa, A. pantherina等猛毒菌が含有ファロトキシン類 + アマトキシン類 イボテン酸: イノシン酸類似構造 = 美味 = 幻覚症状毒成分 Ex. テングタケシロシビン: 幻覚症状毒成分 Ex. ワライタケ、シビレタケ コプリン: アルコール分解阻害(悪酔状態)毒 → 同時残留なければ中毒せず Ex. ヒトヨタケ、ホテイシメジ ムスカリン: 発汗作用等中毒症状。アセタケ属等含む(テングタケ微量含有) 植物病理学 phytopathology糸状菌病害(代表的)青黴病: 青カビ Penicillium Ex. ミカン果実 赤枯病: 葉が赤褐変
スギ: Passalora (syn. Cercospora) sequoiae → (進行)溝腐病 稲熱病 blast (of rice) or rice blight: イネの大幅減収と食味低下
1637 明(中国) 1704 日本 1828 イタリア x 赤衣病: 糸状菌性やさび病菌 赤星病 frogeye 雪腐病
灰色黴病: Botrytis cinerea x イエローパッチ 萎黄病 greensickness x 萎凋病 wilt 饂飩粉(ウドンコ)病 powdery mildew
葉茎がウドン粉がかかった様に白化 x 輪紋病 ring spot x 灰斑病 gray leaf spot, GLS x 角斑病 angular (leaf) spot, ALS x 褐色腐敗病: 糸状菌性のもの x 褐色円斑病 x 褐色円星病 x 褐点病 brown spot x 褐斑病 brown (leaf) spot x 穿孔褐斑病 x 褐変病 x 褐紋病 brown blotch disease, BBD x 株腐病 x 癌腫病 Valsa ambiens, Syn. V. japonica 胴枯病 canker (胴 = 幹, ↔ 枝枯病害: 主に枝が枯れる): 子嚢菌 (防除困難)
カエデ: Diaporthe (D. dubia, D. varians, D. pustulata), Phomopsis aceris-palmatis) |
菌根 mycorrhiza (pl. -e, -s): 高等植物根に菌糸入り込むか根表面に菌糸接着し形成される根-菌共生体 菌根植物 mycorrhizal plant: 菌類共生根有する植物 - 高等植物種70-80% 菌根菌 mycorrhizal fungi: 菌根形成する糸状菌 - 菌種-宿主植物組合せにより様々な形態の菌根形成 根状菌糸束 rhizomorph: 表層と内側で組織分化進む → 耐乾燥構造: = 水分少で発生。菌根菌に多 植物に菌根菌が与える効果
リン酸、水分吸収↑ → 定着促進 → バイオマス↑ → 開花↑着花数↑ |
図1.10 異なる形の菌根についての概観。MS 菌糸, EH 外部菌糸マント, IHN 細胞間菌糸ネット, IHC 細胞内菌糸複合体, V 菌糸胞, A 樹枝状体, Sp 胞子 (Gianinazzi & Gianinazzi 1988) 表1. 重要な菌根型の特徴(Smith & Read 1997) 菌根種類 内生 外生 内外 アーブ シャクジ ツツ ラン 根菌 根菌 生根 トイド ョウソウ ジ科 科菌 菌 根菌 科根菌 根菌 根 菌類(菌糸) 隔壁あり ? + + + + + + 隔壁なし + ? ? ? ? ? ? 細胞内コロニー化 + ? + + + + + マントル(菌套) + ? +/? +/? + ? ? ハルティッヒネット ? + + + + ? ? 嚢状体 +/? ? ? ? ? ? ? 非葉緑体性 ?(?+) ? ? ? + ? +* 菌類分類群 接 担/子 担/子 担 担 子 担 (接) 植物分類群 コケ 裸子 裸子 ツツジ シャクジ ツツ ラン シダ 被子 被子 目 ョウソウ ジ目 科 裸子 科 コケ 被子 接: 接合菌類, 担: 担子菌類, 子: 子嚢菌類 *全ラン科植物は初期実生期は非葉緑体性 → 成長すると大部分の種は緑。上記の構造的性質は成熟状態時であり、発達中や老化状態ではない(稀) |
A. 外生菌根 ectomycorrhiza, ectotrophic mycorrhiza, ECM主に樹木養分吸収を担う根系細根部分に形成> 6000 spp: 特徴 = ハルテッヒネットHartig's net構造 + 菌鞘(菌套) fungal sheath, or mantle 菌糸根表面を覆い、一部菌糸細胞間隙侵入 → 肉眼確認可能 任意的外生菌根 facultative: 時に腐生生活 形態: 宿主種-共生菌種で異なるEx. 形 = 根よりやや多分岐しフォーク・サンゴ状、余り分岐せず太棍棒状 色: 白、黒、茶色等菌鞘 mantle: 根表面が菌糸で覆われた部分
菌鞘から菌糸(束)が土壌中へ伸び先端に子実体形成 人工培養可能(Cp. VA菌根菌): 子実体形成稀。宿主と共生条件下でのみ子実体形成行う菌多 宿主植物生育促進効果は、VA菌根菌同様でリン酸等養分吸収促進Case. ECMで病害抗性↑ [一因] 菌鞘(稀, 菌根重量 > 40%)が宿主根覆い障壁 → 病原菌侵入防ぐ B. 内生菌根 endomycorrhiza (endotrophic mycorrhiza)菌糸: 根皮層細胞中に侵入 + 皮層細胞間隙に菌糸伸長菌根肉眼観察: 非感染根と区別無理 → 菌根染色し顕微鏡観察 a) AM菌(AM, VA mycorrhiza, VAMvesicular = 嚢状体 arbuscular = 樹枝状体 mycorrhizae根内部: 樹枝状体 arbuscule 形成 + 嚢状体 vesicule 形成しVA菌吸収過剰養分貯蔵 → 非vesicle形成種多 → arbuscular菌根菌(AM菌)と名称変更 Zygomycetes科: Glomus, Sclerocystis, Acaulospora, Entrophospora, Gigaspora, Scutellospora - 150種以上木本、草本(殆ど)、シダ類、コケ類 |
植物根内部で増殖し、根周辺で菌糸増殖し養分吸収 植物根に共生: 植物-VA菌養分交換
菌 → 植物: 土壌中養分(特にリン酸)や水分を効率良く吸収し、根中まで直接運び植物に与える b) ラン科菌根 orchid mycorrhiza (or orchidaceous mycorrhiza-)担子菌-ラン科植物菌糸: 宿主細胞内侵入。コイル状-枝状。細胞内菌糸は宿主吸収 ペロトン(菌毬) peloton: 菌が根中に作る = Basidiomycetes: Rhizoctonia多 c) ツツジ科菌根 ericoid mycorrhiza子嚢菌・担子菌-ツツジ目植物。菌糸は宿主細胞内に侵入し、コイル状菌根がリグニンを効果的に分解 – 植物利用 c') アーブトイド菌根arbutoid mycorrhizaEricaceae: Arbutus (Ex. A. unedo L.), Arctostaphylos (Ex. A. uva-ursi Spreng., A. manzanita Parry)d) モノトロポイド菌根(シャクジョウソウ科菌根) monotropoid mycorrhizaMonotropaceae = Monotropa, Monotropastrum (Ex. M. humile ギンリョウソウ) – 寄生植物Pyrolaceae = Pyrola: 葉緑素持つが光合成能力不足 → 菌根菌を介し周囲の樹木から養分吸収
樹木と共生 → 外生菌根菌形成 C. 内外生菌根菌 ectendomycorrhiza, or ectendotrophic mycorrhiza内生・外生両形態を示すマントル発達不良か全く無いが、Hartig net発達し菌糸細胞内侵入(Smith & Read 1997) |
(Koske & Gemma 1989) 一部改変
A. 材料: 植物根 B. 器具: 顕微鏡、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)、試験管(アルミの蓋付きのもの)、メスシリンダー、メスピペット、駒込ピペット、ねじ蓋付きバイアル、スライドグラス、カバーグラス他 C. 試薬(使用順):
70%C2H5OH (= 固定・保存用。生材料をすぐ処理する場合不要)
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(注: 2, 8処理時間は組織や染色の状態により変えることもあり得る) E: 観察・データー整理
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トリパンブルー染色 (trypan blue staining) |
[VA菌根菌観察 (Phillips & Hyman 1970), プロトコル (protocol)] |
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ラクトフェノール: 石炭酸(フェノール)、乳酸、グリセリンおよび蒸留水の等量混合液 (グリセリン2にその他を各1の割合で混合することもある) この液56 gにフェノール22 gとラクトフェノール22 gを混合する
注意: トリパンブルー、フェノールは有害で、誤飲、皮膚接触避ける |
Def. (classical) = 菌従属栄養植物: 菌根形成し、生活に必要な有機物を菌類から得ることで生活する植物 腐生 saprophytic: 菌類に対し使う言葉(s.s.) → 生物死体等分解し栄養とする生活形態 菌従属栄養植物
外界有機物を直接摂取するわけではなく、得る有機物の源泉多様
葉退化
Ex. ラン科・イチヤクソウ科植物 既知種(日本)大部分が単子葉植物双子葉植物Monotropaceae シャクジョウソウMonotropastrum ギンリョウソウ: ギンリョウソウ (菌根菌ベニタケ属依存) Monotropa シャクジョウソウ: シャクジョウソウ (菌根菌キシメジ属依存) |
単子葉植物Orchidaceae ランGaleola ツチアケビ: G. septentrionalis ツチアケビ(木材腐朽菌ナラタケ依存)・タカツルラン Stigmatodactylus コオロギラン: コオロギラン(紀伊半島以南) Gastrodia: G. elata(木材腐朽菌ナラタケ依存)・ヤツシロラン(関東以西) Lecanorchis ムヨウラン: ムヨウラン(東北以南) Epipogium トラキチラン: トラキチラン・タシロラン(木材腐朽菌ヒトヨタケ科の1種に依存) Yoania ショウキラン: ショウキラン(道南西部以南) Cymbidium シュンラン: マヤラン Cremastra: モイワラン(腐植分解菌ヒトヨタケ科の1種に依存) Burmanniaceae ヒナノシャクジョウ Burmannia ヒナノシャクジョウ: ヒナノシャクジョウ・ルリシャクジョウ(AM菌依存) Thismia タヌキノショクダイ: タヌキノショクダイ(中部以南) Petrosaviaceae サクライソウ Petrosavia サクライソウ: サクライソウ(中部以南) Triuridaceae ホンゴウソウ Andruris ホンゴウソウ: ホンゴウソウ(関東以南)・ウエマツソウ(AM菌依存, 関東以南) |