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(2023年5月22日更新) [ 日本語 | English ]

蘚苔類(コケ類) (moss)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

転石苔を生さず

蘚苔類 mosses (bryophytes) =

蘚類 Class Musci (moss), 18,000種 +
苔類 Class Hepaticae (liverwort), 6,000 +
ツノゴケ類 Class Anthocerotae (hornwort), 500
(古くはHepaticaeとAnthocerotaeは同じclassとして扱われた)

世界約25,000種 (熱帯(雨林)20000種分布 + 温帯-冷帯5000種分布

熱帯雨林保全はコケにとり重要
Anthocerotaeは退行中で種数も減少しつつある

生育環境: 水生、森林 (樹上、林床等) → 微妙な条件により同一の場所でも住み分けがなされる
退行進化: Rhynia等を中心とする一群から退行進化をとげ導かれたとする
化学性分chemical component: 癌薬等。油資源・エネルギー資源 (研究中)
発生
胞子発芽 → 原糸体形成

[植物分類学, 分類図鑑, 万葉集]

索引
蘚類と苔類の比較
蘚類(100%: 相対%)と苔類(10%)と葉緑体が量的に異なる
蘚類胞子体は必要養分の30%を自己生産する[胞子体の独立性]。苔類ではせいぜい1%である。従って、蘚類ではある程度胞子体培養が可能である。換言すれば、配偶体に対し胞子体がある程度非依存的である
Ex. ハミズゴケ Pogonatum spinulosum はGametophyte = Sporophyteの形をとる
表. 蘚類、苔類、ツノゴケ類の比較。分類は胞子体形態によるが、蘚類胞子体は普通1年以上腐らずに残るが、苔類胞子体は柔らかくすぐ腐ってしまうので実際の分類には配偶体の相違も用いる
蘚類苔類ツノゴケ類
配偶体 gametophyte

原糸体 protonema

よく発達し、通常長い糸状でよく分枝(稀に盤状)余り発達せず、普通塊状、盤状、又は糸状で余り分枝しない苔類と同

体制

茎葉体茎葉体、稀に葉状体葉状体

仮根 rhizoid

多細胞で分枝し、分枝よく伸びる単細胞、分枝稀(分枝しても短い)苔類と同

通常放射相称に並び深裂しない
通常中肋有
左右相称に並び通常2-4深裂
中肋はない
葉状体 thallus

ピレノイド

油体

通常有

花被

通常有

胞子体 sporophyte

蒴柄

通常硬く丈夫で蒴完成前に伸長柔らかく、蒴形成後伸びる

気孔 air pore

通常有通常有

軸性

通常有

弾糸 eletor

口環

通常あり

蒴歯

通常あり

蒴の閉口

通常蓋がとれて開口する通常縦に4裂する縦に2裂

実用的区別法 - 知っておくと便利

  1. 植物体が偏平葉状のものは苔類かツノゴケ類(殆どがゼニゴケ類かフタマタゴケ類)
  2. 褐色、赤褐色等に色づいた、固い柄のついた胞子体を持つものは全て蘚類
  3. 葉に深い切れこみのあるものは全て苔類
  4. 葉に多細胞層の中肋と呼ばれる葉脈状の筋のあるものは全て蘚類

「何々コケ」と呼ぶ植物は蘚苔植物でないもの含む。Ex. モウセンゴケ(Drosera)、サギゴケ = 顕花植物。クラマゴケ(Selaginella)、ウチワゴケ = シダ。ウメノキゴケ、ハナゴケ = 地衣類(コケ類と大きさ・生息場所似て、多くの種に「何々コケ」と和名がつけられ注意)

苔類蘚類
Marchantia
ゼニゴケ
Fmullaria
シダレヤスデゴケ
Phaeoceras
ニワツノゴケ
Haplomitrium
コマチゴケ
Sphagnum
ミズゴケ
Andreaea
クロゴケ
Funaria
ヒョウタンゴケ
仮根 rhizoid単細胞単細胞単細胞多細胞多細胞多細胞
葉状体 thallus茎・葉茎・葉茎・葉茎・葉茎・葉
背腹性 dorsiventrality+++?---
軸柱 columella--+-+++
胞子散布 spore dispersal
弾糸 elater++++---

採集と観察

野外観察
蘚苔類と判断できたら

生育形状・環境をチェック
胞子体を確認できることが望ましい
複数種が混在することが多い → 形状等が多様化する

ルーペ (10-20倍): 目に近づける

葉形・葉縁と葉先端の形状

毛尖 hair point: 毛状に尖る葉先(しばしば透明)。中肋突出する場合と葉身伸出す場合

腹葉 underleaf (苔類): 茎葉体に葉が3列に配列

背腹性あれば軸の腹面に位置する葉

中肋(蘚類)
無性芽

採取: 保全に注意 (絶滅危惧種だったということは良くある)
標本
標本とする前にも観察しておく方がよい 実体顕微鏡 (6-40倍)
生物顕微鏡 (40-400倍): 細胞観察

ピンセット、剃刀、シャーレ、スポイト、スライド・カバーガラス、キムワイプ

蘚類 (musci, bryophyta)


apical cell
1, 2, 3: lateral
4: central

1) 茎葉体 (leafy shoot)
茎と葉が明瞭に区別できる(蘚類では区別困難な種もある)
↔ Hepaticae = 葉状体 thallose
2) 茎頂端細胞(apical cell) 構造と分裂様式
時計逆回りに4面が順に分裂し分裂面から葉を形成 → 典型的な螺旋状spiral葉配列 apical cell
3) 葉序 phyllotaxis
一般に螺旋葉序と称されるが、詳細は属で異なる。ツチゴケ等は茎葉体が極めて短いが螺旋状である。例外として、ホウオウゴケ Fissidens は葉が互生するが、shoot apexを見ると(2)の底3分裂面のうち1つが極めて小さく、やはり分裂形態が特殊なだけで螺旋状の変形にすぎない
4) (2)の第4分裂面が葉を形成
Central strandの構成は羊歯とは大きく異なる
apical cell
Hébant C "Conducting tissue" 若くして自殺: EMでcentral strandを観察
→ 厚膜小形細胞はH cellとD cellの2種類があることを示す
H cellは比較的細長く、原形質連絡糸が存在し、細胞間のつながりは斜
D cellはH cellに比べて薄い皮膜でやはり原形質連絡糸が存在し、細胞間のつながりは横

両者には、膜の構成および原形質量に差があり、水分移動に関与している。H cellは導管的でD cellは師管的である。H cell、D cellは総じてcentral strandは原始的なvascular bandleと考えた(Hébant 1977)

cell
→ Central strandとvascular bandleの質的な差を調べる

Central strandはリグニン成分を含まずlipoic acidを蓄積するのに対し、vascular bandleは二次肥厚にリグニンを蓄積する。Rhyniavascular bandleはcentral strand的である

→ 蘚苔類とRhyniaのつながり

葉のつながりあるいは形成過程を見ると種子植物ではmacrophyllous typeでありleaf gapが存在する。一方、蘚苔類は特殊なもので中肋を有する。また、発生的にも異なる → コケの葉と種子植物の葉は異なるものであり、コケの葉に対しては偽葉phyllidと言う用語を用いることもある

5) 仮根 rhyzoid
→ 分類的特徴多い
1つのrhizoidは1つの表皮細胞起源であり多細胞である(コケ類では1細胞のことがある)。1つの仮根細胞は水を吸収するが、一列の細胞であるため通導組織とはいえない
仮根細胞は独立性非常に高く数細胞の断片からでも再生可能
cell
cell
6) 葉
属、種等のレベルでの分類学上重要特性。形、大きさ、構造等
横断面 cross section (破線部) H cell, D cell等の分化起こっていない == 機械的皮下組織
特殊化: costaを失った葉、翼細胞aller cellを有する等の形態

スギゴケ: 最も特殊化した1種 → 葉 - 多層細胞。Peristom発達しない
ミズゴケ: 中肋を消失した特殊型

→ これら特殊化あるいは組織分化はmesozoic始めから見られる
孔辺細胞に葉緑体なく、また開閉作用もない(進化的意味づけできていない) cell
7) 胞子体sporophyte
生活史はコケ全体でほぼ共通
Wichtige punkte
1. Sporophyteに葉緑体を含む
2. 蒴、首に気室孔air pore(stomaのmorphosisでstoma的役割を止めたもの)がある
cell

カリプトラ calyptra: 変形した造卵器の壁。苔類、蘚類、羊歯植物の胚状の造胞子を暫くの間つつむ。特に蘚類では蘚帽という

a. 蒴 capsule
蓋(蘚蓋) operculum (pl. -a): 蒴の蓋様になった頂部。口環で離脱する
蒴歯(縁歯) peristome: 外歯teeth + 内歯innter segment。16区画に分かれる → 科、属レベルでの分類上の重要なキー

湿った状態で閉じ、乾燥状態で広がるという開出運動をする。ある一定条件で急激に変化し、その際に胞子を飛ばす。蒴中の胞子数は決まっており最低4 (100 μm)、最大はシッポゴゲの10万(8-10 μm)程度である

柄: 入れ子状になっている → 柄は細胞数が決まっており、その伸長成長で柄を作る(liverwortsも同様) cp. ツノゴケ
b. 胞子 (n)
基本的に単細胞。種によって一定の数細胞からなる。大きさ: 平均10-20 μm、最大140 μm、最小5 μm
8) 原糸体/糸状体 (protonema, pl. protonemata)
胞子が発芽した結果
Protonemaの形態タイプ: fan, block, filament (= normal)
protonema

カウロネマは構造が極めてrhizoidに似て、実際filamentだけでは区別がつかないこと多
protonema
この2つが体制上の差が存在するだけなのか、機能的差があるのかは検討段階
分枝部に特殊な芽 → そこからコケ体が発生する

生活史
蘚類の生活史。胞子体は配偶体の上で生活し、配偶体より小さく、配偶体の光合成に依存している
蘚類
Fig. 蘚類: A, B: 胞子嚢(1, : 偽足, クロゴケ Andreaea rupestris var. fauriei). E: 蒴歯(キンシゴケ Ditrichum pallidum), G: 蒴歯 (ホウオウゴケ Fissidens japonicus), J: 葉細胞(12, 葉縁細胞, 13, 透明細胞 hyaline cell, J, L: オオミズゴケ Sphagnum palustre), L: 葉断面*, O: 蒴歯(11: 葉縁細胞, ヒノキゴケ Rhizogonium dozyanum)

分類

蘚類綱 Class Musci

ミズゴケ (Sphagnidae)
クロゴケ (Andreaeidae)
マゴケ (Brydae)

[サロベツ湿原]

ミズゴケ亜綱 (水苔/水蘚, Subclass Sphagnidae, peat moss)


成熟朔は偽足 pseudopodium に持ち上げられる

Order Sphagnales

茎: 先端(頭部)は、多くの短枝がでて丸い房状

頭部から下で茎伸び、茎の所々から枝が数本ずつでる → 横に広がる枝 + 茎の上に垂れ下がる枝

葉: 顕微鏡観察 → 葉の中央付近: 透明細胞 hyaline cell + 緑色細胞

透明細胞(貯水細胞) hyaline cell: 大きなサツマイモ様の形 → 細胞中身無くなり空洞化 + 表面や裏面に大小の丸い穴(孔)
緑色細胞: 透明細胞の周りを縁取るように細長い緑色の細胞

観察・同定
準備: ミズゴケから、頭部や枝が付く1本の茎を取り出す。乾燥標本なら茎を水につけ十分にもどす
肉眼・ルーペ: 植物体大小、色(緑色-赤)、枝長短、太さや曲り方、枝葉先端反り返るか
顕微鏡: 茎表皮細胞の螺旋肥厚有無、茎葉・枝葉全形、枝葉横断面形態、枝葉の孔の状態
  1. 茎表皮細胞の螺旋状肥厚 = ミズゴケ節 → 最初にまず観察
    茎の一部(5 mm程で十分)をピンセットで折り、顕微鏡下で茎の表皮(一番外側の細胞)観察
  2. 茎葉: 茎を実体顕微鏡下に置き、茎が乾かないよう少し水を差す → 頭部と枝をピンセットで取り外す
    茎葉は、茎上に、疎に茎に付着するようにつく → 1枚ずつをピンセットで取り外しスライドガラス上に並べる
  3. 枝葉: 枝は、茎の1箇所から数本でる
    実体顕微鏡下 → 横に広がる枝(こちらの中ほどにある良く成長した葉を観察) + 茎上の下垂枝
  4. 葉10枚程度を取外す - 枝葉全形、葉身細胞形態、細胞腔上の孔の状態
    枝葉横断面: 茎から横に張り出す枝1本取り出す - 枝上部から下部に向かい薄い横断切片作成
Sphagnaceae (ミズゴケ)
成熟個体: 仮根を欠く
葉: 葉緑体含む小細胞が生きていない貯水細胞と交互にある - 薄緑色
造胞体: 縁葉欠き、造胞子組織は半球状
Sphagnum L. (n < 1 古コケ名) ミズゴケ peat moss
7節、日本35種 (鈴木 1958) 約40種と考える - 主に湿原 = 泥炭(peat)
1. 茎表皮細胞に細い螺旋状肥厚。枝葉広卵形-円状楕円形。葉縁に歯 = Sect. Palustria オオミズゴケ

Sphagnum
Fig. S. palustre

S. palustre L.オオミズゴケ: 低-山地普通。湿原(酸性)。先端成長し基部枯枯死し泥炭化促進。開出枝と下垂枝からなる。鱗状の1片1片が葉。緑色細胞は三角形で底面が腹面側に開く
S. papillosum Lindb. イボミズゴケ (サロベツ)
S. magellanicum Brid. ムラサキミズゴケ

大型。AK内陸部ポーカーフラットでは普通に生える。サロベツにもいる

1. 茎表皮細胞に螺旋状肥厚はない。枝葉は卵形-披針形。葉縁は普通全辺

2. 枝葉先端幅広く切頭、横断面で葉縁細胞は小さく楕円形、背腹両側とも表面に出ない

3. 枝葉広卵形で茎葉とほぼ同長、枝表面透明細胞に大きなレトルト状細胞と無小孔細胞の2種 = Sect. Truncata キレハミズゴケ節 (S. aongstroemii C. Hartm.キレハ-: かなり大型)
3. 枝葉長卵形で茎葉よりずっと長い。枝表面細胞は殆ど全部小さくて孔がある = Sect. Rigida キダチミズゴケ

S. compactum DC. ex Lam. et DC. キダチミズゴケ (var. imbricatum Warnst.カワラミズゴケ)

2. 枝葉先端は狭く鋭頭-切頭(時に広円頭)、横断面で葉縁細胞は普通一方又は両側で表面に出る

3. 枝葉透明細胞背側に多小孔が膜に沿い並ぶ。側方枝も茎に沿う下垂枝も、ほぼ同長湾曲 = Sect. Subsecunda ユガミミズゴケ

S. subsecundum Nees ex Sturm.ユガミミズゴケ
S. guwassanense Warnst.ガッサンミズゴケ (ssp. takedae (Okam.) H. Suzuki イトミズゴケ, ssp. triseriporum H. Suzukiミツアナミズゴケ)
S. microporum Warnst.センダイミズゴケ

Sphagnum

3. 枝葉透明細胞背側の孔は数少ない。茎に沿い下垂する枝は側方に広がる枝よりずっと長く、その差明瞭

4. 葉縁細胞横断面で腹側により広く開く。植物体緑-赤-褐色、光沢殆ど無 = Sect. Acutifolia ホゴバミズゴケ節

S. girgensohnii Russ. ホソバミズゴケ (var. squarrosulum Russ.チャボホソバミズゴケ, var. strictum (Lindb.) Russ): アラスカ内陸酸性クロトウヒ林(Picea mariana forest)優占種。茎先端に造卵器つけた多数の枝生じ、個々に1個の胞子体形成(球形・黒色)。胞子体柄は茎先端が伸長したもの(この部分に葉つかない)で、配偶体の一部。他蘚類と著しく形態異なる
S. fimbriatum Wils. ex J. Hook.ヒメミズゴケ (var. compactum Warnst., var. latifolium Warnst.ヒロハノヒメミズゴケ, var. norikusae Warnst.ノリクラミズゴケ)
S. nemoreum Scop. (Syn. S. capillaceum (Weiss) Schrank) スギバミズゴケ (サロベツにいる)
S. junghuhnianum Dozy et Molk.ホソベリミズゴケ (ssp. pseudomolle (Warnst.) H. Suzuki コバノホソベリミズゴケ): 西南日本。常時、水滴る湿った岩壁上

4. 葉縁細胞は横断面で背側により広く開く。植物体緑色-黄-褐色

5. 茎葉縁には数列の細長い細胞からなる舷がある = Sect. Cuspidata ハリミズゴケ節

S. tenellum Ehrh. ex Hoffm. ワタミズゴケ (var. rufescens Grav. ex C.Jens.)
S. cuspidatum Ehrh. ex Hoffm. ハリミズゴケ (var. serrulatum (Schlieph.) Schlieph. ノコギリミズゴケ)

5. 茎葉の舷は基部に限られる = Sect. Squarrosa ウロコミズゴケ

S. squarrosum Crome ウロコミズゴケ(var. immersum Beck. ex Warnst. オオウロコミズゴケ): オオミズゴケに似るが、枝葉先端が顕著に反り返る。茎表皮細胞に螺旋状肥厚はない

クロゴケ亜綱 (Subclass Andreaeidae)


高山岩上に黒塊として生息。胞子体が苔類に似る

Order Andreaeidae

Andreaeaceae
Andreaea (m < p, 蘚類学者アンドレア)
A. rupestris クロゴケ: ハイマツ帯-高山帯岩場。匍匐部、斜上部に分かれ匍匐部は所々から多細胞仮根出す。葉は匍匐部、斜上部共に同形態。背腹性 (dorsiventrality) なく一層の細胞からなる

背腹性: 扁平で面ができその表と裏に差異があること (adj. dorsiventral)

マゴケ亜綱 (Subclass Brydae)


主に蒴歯形態により目を分類

Order Tetraphidales ヨツバゴケ

蒴歯4枚
Georgiaceae
Georgia (f < p, 露 Georgi) 廃止
Tetraphis Hedw. ヨツバゴケ

T. pellucida Hedw. ヨツバゴケ)

Tetrodontium Schwaegr.コヨツバゴケ

Order Fissidentales ホウオウゴケ

Fissidetaceae
Fissidens (< 1 fissilis 割れる + dens 歯 = 歯様な葉根元が裂けている)

Order Archidiales ツチゴケ

Archidiaceae
Archidium (n < g arche 昔 - 古型のコケであるため)

Order Dicranales シッポゴケ

Ditrichanceae キンシゴケ
Ceratodon ヤノウエノアカゴケ (m < g ceras 角 + odon 歯)
C. purpureus (Hedw.) Brid. ヤノウエノアカゴケ: 火災跡地噴火跡地に良くみられる (アラスカ蘚苔類リスト moss flora at Poker Flat, AK)
Distichium
Ditrichum (n < g di 2 + trihtos 糸)
Pleuridium
Saelania アオゴケ
Bryoxiphaceae エビゴケ
Bryoxiphium (n < g bryum コケ + Xyphium - 葉の集まり方がIris xyphiumと似る): B. norvegicum (Brid.) Mitt. ssp. japonicum (Berggr.) Löve et Löve エビゴケ
Seligeriaceae コシッポゴケ
Blindia: B. japonica コシッポゴケ
Brachydontium キヌシッポゴケモドキ
Seligeria キヌシッポゴケ

Order Dicranales シッポゴケ

Dicranaceae シッポゴケ
Arctoa B. S. G.
Brothera
Bruchia Schwaegr.
Campylopodium (C. Muell.) Besch. ヘビゴケ (C. medium (Duby) Giese et J.-P. Frahm ヘビゴケ: 暖地の火山岩や土上)
Campylopus Brid.
Dicranella (C.Muell.) Schimp.
Dicranodontium B.S.G.
Dicranum Hedw. シッポゴケ n<g dicranos(又状の)。種により葉裏主脈上に2又状の鋭刺が付く?] (湿原)
Holomitrium Brid.
Leuchonloma
Onchophorus (Brid.) Brid.
Rhabdoweisia B.S.G. [Weisia f<p Weis記念], Trematodon Michx. [m<g tremato(孔のある) + odons (歯)
Leucobryaceaeオキナゴケ
Leucobryum [n<g leuco(白い) + bryon(コケ)。全体白っぽい]

Order Pottiales センボンゴケ

Calymperaceae カタシロゴケ
Calymperes
Syrrhopodon
Pottiaceae センボンゴケ
Anoectangium Schwaergr. メンボウゴケ
Astomum Hampe ツボゴケ
Barbula Hedw. ネジクチゴケ
B. unguiculata Hedw. ネジクチゴケ
Hyophila Brid. ハマキゴケ
Timmiella (DeNot.) Limpr. センボンウリゴケ
Tortella Limpr. ヨリイトゴケ
Tortula Hedw. ネジレゴケ
Trichostomum Bruch クチヒゲゴケ
Weissia Hedw. コゴケ
Scopelophila ligulata (Spruce) Spruceイワマセンボンゴケ
Encalyptaceae ヤリカツギ
Encalypta

Order Grimmiales ギボウシゴケ

Grimmiaceae ギボウシゴケ
日本5属
Grimmia [f < p, Grimm (Col)]
G. antarctici Card. ナンキョクギボウシゴケ: 南極
Ptychomitrium チヂレゴケ
Racomitrium Brid. シモフリゴケ [n < g racos 弁 + mitra 僧帽。蘚帽基部割れ弁状]
茎中心束欠く。葉身普通1細胞層(時に葉縁で2層) (岩月 2001)

1. 葉身細胞腔上にパピラある。葉基部葉縁に矩形細胞殆どない

2. 葉パピラは毛尖だけにある。蒴柄はパピラで覆われる ___ シモフリゴケ

2. 葉パピラは毛尖を含む葉全体にある。蒴柄は平滑

3. 葉基部に高いパピラがある ___ エゾスナゴケ

3. 葉基部細胞に殆どパピラないか、あっても疎らで低い ___ コバノスナゴケ

1. 葉身細胞腔上にパピラ欠くか、縦壁上にパピラがある。葉縁基部に矩形細胞列がある

2. 葉毛尖ない。葉身細胞のパピラ顕著

3. 葉身中部細胞矩形。中肋細い

4. 体壮大、茎は長い枝持つ。葉基部に皺出る ___ ナガエノスナゴケ

4. 体中型、茎は短い枝持つ。葉基部に皺ない ___ ミヤマスナゴケ

3. 葉身中部細胞横形の矩形-方形。中肋太い

4. 葉先鋭頭-鈍頭で、しばしば極短い透明尖となる。葉は折れ畳まれる ___ チョウセンスナゴケ

4. 葉先丸み帯び鈍頭で、葉は殆ど折れ畳まれない

5. 葉卵状披針形-広披針形、中肋は葉頂に達する ___ マルバスナゴケ

5. 葉長楕円状披針形、中肋は葉頂下に終わる ___ ナミカワスナゴケ

2. 葉に普通毛尖ある。葉身細胞平滑

3. 葉上部葉縁は2細胞層

4. 中肋は葉先から超出する ___ ヒメスナゴケ

4. 中肋は葉頂下に終わる ___ ハリスナゴケ

3. 葉は普通1細胞層

4. 葉腋に多細胞で球形の無性芽もつ ___ コモチシモフリゴケ

4. 葉腋に無性芽を欠く

5. 葉縁基部細胞縦壁波打つ。葉中部細胞短い矩形 ___ クロカワキゴケ

5. 葉縁基部の1列の細胞縦壁波打たない。葉中部細胞長い矩形

6. 透明尖長い。葉縁基部の1列の波上に肥厚しない細胞は10-15個 ___ トカチスナゴケ

6. 透明尖短い。葉基部の葉縁の波上に肥厚しない細胞は10個以下 ___ テリカワキゴケ

R. lanuginosum (Hedw.) Brid シモフリゴケ: 暗緑色の葉身と白色の透明尖とで霜降り状。高山の岩上や地上に大群落。渡島駒記録あり
R. japonicum (Dozy et Molk.) Dozy et Molk. エゾスナゴケ(古くはスナゴケ): 街中-高地、園芸利用(苔玉), 有珠山西山火口
Erpodiaceae ヒナノハイゴケ
Aulacopilum Wils.
Glyphomitrium Brid. サヤゴケ [n < g glypho 掘る + mitrion 帽子。蘚帽に縦溝が掘れている] (G. humillimum (Mitt.) Card. サヤゴケ)
Venturiella C. Muel. [f < gn Venturia縮小形]
Ptychomitriaceae チジレゴケ
Aulacomitrium [n < g aulax 溝 + mitrion 帽子。蘚帽に多数の縦溝がある]

Order Funariales

Disceliaceae
Discelium
Ephemeraceae カゲロウゴケ
Micromitrium
Funariaceae ヒョウタンゴケ
Entosthodon
Funaria [f < 1 funis(綱)。朔(草冠+朔)の柄が乾くと綱状に捩れる]

brydae
雌雄同株異苞

F. hygrometrica ヒョウタンゴケ: 茎立つ。上方に蕾状に長嘴ある帽。葉身細胞疎、平滑。蒴球形-洋梨形
仮根 rhizoid: 一列の細胞よりなる多細胞(分類的特徴)
茎 stalk, stem: 直立。radial asymmetry。中肋costaは多層、端は1層
葉 leaf: 断面はcentral strand - 維管束植物ほどの組織分化ではないが、ある程度の分化はしている
雌雄同株異苞
精子 sperm: 鞭毛2本、鞭型。先に球形の付属体を持つ
Physcomitrium
Splachnaceae オオツボゴケ
Oedipodium, Splachnum, Tayloria, Tetraplodon

Order Schistostegales ヒカリゴケ

Schitostegaceae ヒカリゴケ
Schistostega ヒカリゴケ [f < g schisto(裂けた) + stegio (包皮)。植物体全体を縁の切り込んだ包葉に見立てた?]

Order Eubryales ホンマゴケ

Bryaceae ホンマゴケ (ハリガネゴケ)
Bryum Hedw.
B. argenteum Hedw. (ギンゴケ): 街中でもコケは多様である。と思った時
B. capillare Hedw. (ハリガネゴケ)
Brachymenium, Bryum (n < 1 コケ - 限定使用)
Leptobryum
Pohlia ヘチマゴケ
P. nutans (Hedw.) Lindb. ヘチマゴケ, nodding thread-moss: 郵便局前で煙草を加えてたら、目の前のコンクリー塀にに生えているのに気づく。極言すると、どこでも生えているらしい
Rhodobryum (n < g rhodon(バラ) + bryum (コケ)。葉が茎上部に車座に集まるのをバラに譬えた)
Mniaceae チョウチンゴケ
Mnium [n < g mnion(コケ・海藻等を一括し古くGrで呼んだ名を転用 → mnoos (柔らかくする)に関係], Orthomniopsis, Plagiomnium ツルチョウチンゴケ (P. acutum (Lindb.) T. J. Kop. コツボゴケ), Rhizomnium, Trachycystis [f < g trachys(ざら付く) + cyst (袋)]
Aulacomniaceae ヒモゴケ
Aulacomnium (Hedw.) Schwaegr ヒモゴケ. (A. palustre オオヒモゴケ, 湿原. A. turgidum フトヒモゴケ)
Rhizogoniaceae ヒノキゴケ
Rhizogonium [n < g rhiza(根) + gonion (膝)。茎下半が立ち上がり,その上一面に根生ずる]
Timmiaceae クサスギゴケ
Timmia
Bartramiaceae タマゴケ
Bartramia タマゴケ (f < p, 北米植物学者W. Bartram 1739-1823)
B. pomiformis Hedw. タマゴケ: 松島御島にて。コケを研究している人の気持ちが少し分かったような気がした
Philonotis
Plagiops

Order Orthotrichales タチヒダゴケ

Orthotrichaceae タチヒダゴケ
Anphidium, Macromitrium [n < g macro (大きな) + mitria (帽子)。子嚢の帽子形から], Orthotrichum, Ulota, Zygodon

Order Isobryales イヌマゴケ

13科 → 蒴歯形状が1-3間で異なる
1. 水中や水際で茎が長く伸びて生育 ___ カワゴケ
2. 林床の腐植土上。茎が腐植土中をはい、先端が樹状に立ち上がる

Climaciaeae コウヤノマンネングサ

Climacium コウヤノマンネングサ, (n < g klimax(階段)。内縁歯に孔が沢山一列に並び階段様): C. japonicum Lindb. コウヤノマンネングサ: 図鑑で「美しい」と説明されるコケ

Pleuroziopsidaceae フジノマンネングサ, Pleuroziopsis (f<gn Pleurozia (gn) + opsis 似たもの) (+ 1部のオオトラノゴケ科)

3. 樹幹や岩上など乾燥し易い環境 → 他10科
a) 2次茎が長く伸び、樹幹や枝、岩壁から垂れ下がる

Cryphaeaceae イトヒバゴケ: 葉身細胞がより短く菱形。Cryphaea (f < g cryphio(隠れる)。胞子嚢が葉に隠れる), Cyptodontopsis, Forsstroemia, Pilotrichopsis (f < gn Pilotrichum属に似た)
Meteoriaceae ハイヒモゴケの一部: Barbella (f < 1 barba(髭)縮小形。体細いから), Aerobryopsis (m < gn Aerobryumに似たもの), Meteorium (n<g meteoron 星や宇宙の → 子嚢形星形), Pseudobarbella

b) 2次茎が羽状-不規則羽状の枝をもち、樹幹や岩壁から垂れ下がり、先端部が上方に湾曲する

Cryphaeaceaeの一部
Pterobryaceae ヒムロゴケの一部: Meteoriella, Myuriopsis, Pterobryum
Neckeraceae ヒラゴケ: 葉平坦に付く。Bissetia, Calyptothecium, Homalia, Homaliadelphus, Neckera, Neckeropsis Reichdt. リボンゴケ(日本3種) (f < gn Neckeraに似た), Thamnobryum

c) 葉身細胞乳頭持つ → ヒジキゴケ科、ムジナゴケ科、ハイヒモゴケ科の多く

Hedwigiaceae ヒジキゴケ: Hedwigia (f < p, 独隠花植物学者Romanus Adolf Hedwig(1772-1806): 低地の日当りよい岩上にしばしば生育。葉や雌包葉、蒴が特異な形態もち、肉眼区別可
Trachypodaceae ムジナゴケ: Duthiella, Pseudospiridentopsis, Trachypus
Lembophyllaceae トラノオゴケ: 葉卵円形-卵状楕円形で船状に窪みpitted、葉先短く尖る。葉形や中肋が1本(シトネゴケ目アオギヌゴケ科と間違い易いが蒴歯形態異なる。Dolichomitriopsis, Isothecium

乳頭(状突起) (パピラ, papilla. pl –e): 茎葉体の葉表面にある突起
Rhacopilaceae ホゴケ
Rhacopilum
Fontinalaceae カワゴケ
Dichelyma, Fontinalis L. ex Hedw. (f < 1 fontis(泉)。泉や清流中に生える)
Prionodontaceae タイワントラノオゴケ
関東以南の石灰岩壁。極稀
Leucodontaceae イタチゴケ
2次茎が尻尾状で殆ど枝出ない。樹幹や岩壁から下垂し、2次茎先端が上方に湾曲
Dozya, Leucodon
Pterobryaceae ヒムロゴケ
一部に2次茎分枝少ない(枝が見えない)が、葉形が特徴的で区別は容易

Order Hookeriales

Distichophyllum, Hookeria, Hookeriopsis

Hypopterygiaceae クジャクゴケ
Cyathophorella, Hypopterygium (n < g hypo(下に) + pteris (翼)。腹葉が茎下面に並ぶのを翼に見立てた), Lopidium

Order Hypnobryales シトネゴケ

Theliaceae ヒゲゴケ
Fauriella
Fabroniaceae コゴメゴケ
Fabronia, Habrodon, Schwetschkea
Leskeaceae ウスグロゴケ
Leskea, Okamuraea
Thuidiaceae シノブゴケ
Abietinella, Anomodon, Boulaya, Claopedium, Miyabea, Thuidium
Amblystegiaceae ヤナギゴケ
Amblystegium, Campylium (C. polygamum (Schimp.) C.E.O. 周極), Calliergon, Cratoneuron, Drepanocladus (D. uncinatus (Hedw.) Warnst. カギハイゴケ 周極), (Repanocladus fluitans ウマミカマゴケ, 湿原), Hygrohypnum
Brachytheciaceae アオギヌゴケ
Brachytecium ネズミノオゴケ: (n < g brachys(短) + theca (箱)。胞子嚢短い) (B. plumosum (Hedw.) Schimp. ハネヒツジゴケ)
Bryhnia
Homalothemium
Myuroclada
Rhynchostegium
Entodontaceae ツヤゴケ
Entodon, Orthotecium
Plagiotheciaceae サナダゴケ
Aptychella, Brotherella, Clastobryella, Heterophyllium, Sematophyllum
Hypnaceae ハイゴケ
Ctenidium, Homomallium, Hypnum, Ptilium (partially syn. Hypnum), Stereodon (m<g stereo硬直な + odons歯)

Ptilium crista-castrensis (Hedw.) De Not. (syn. Hypnum crista-castrensis) ダチョウゴケ feather moss

Rhytidiaceae フサゴケ
Gollania Broth.ラッコゴケ, Rhytidiadelphus (Limpr.) Warnst.フサゴケ, Rhytidium (Sull.) Kindb. フトゴケ (R. rugosum (Hedw.) Kindb. フトゴケ, n = 10, 腐植土壌上, ヒマラヤ-北米)
Hylocomiaceae イワダレゴケ
日本8種, 中型-大型
1. 茎に毛葉(パラフィリア paraphyllia = 葉間茎表面に生じる不規則分枝した小形葉状物)ある

2. 茎葉に強い横皺、葉先部基部くびれない、枝葉中肋はは中部以上に達し先は1個の刺
2. 茎葉に縦皺なし-不明瞭、葉先部基部に普通くびれ、枝葉の中肋は2本で中部以下、先は刺にならない: Hylocomium Schimp, Loeskeobryum

H. splendens (Hedw.) Schimp. イワダレゴケ, step moss, (splendid) feather moss, fern moss): 北半球, NZ

1. 茎に毛葉ない

2. 中肋2本,、葉中部以下で終わる: Pleurozium Mitt., nom. cons., Macrothamnium, Rhytidiadelphus

P. schreberi (Brid.) Mitt. タチハイゴケ, red-stemmed feather moss, n = 5: 茎赤色長い。北半球。イワダレゴケとともに亜高山帯針葉樹林林床に大きな群集を作る

2. 中肋1本、葉中部かそれ以上に達する: Phytidium, Neodolichomitra

キセルゴケ亜綱 (Subclass Buxbaumiidae)


1目: 煙管(キセル)様な胞子体
茎短く、円形に開く葉により殆ど見えない。葉の中肋は葉先端より長く糸状に伸びる。蒴は円形で葉の間に埋もれる

Order Buxbaumiales

Buxbaumiaceae
Buxbaumia (f < p, コケ研究家 Buxbaum)

Subclass Diphysciidae (イクビゴケ)

キセルゴケ亜綱から独立(1科1属)させる時
Order Diphysciales (イクビゴケ)
Diphysciaceae (イクビゴケ)
Diphyscium D. Mohr (f < g di 2 + physcium 胃袋。胞子嚢形似る), Theriotia

スギゴケ亜綱 (Subclass Polytrichidae)


杉小枝様葉

Order Polytrichales スギゴケ

Polytrichacae スギゴケ (杉苔/杉蘚)
仮根束 rhizoid bundle: 仮根が太い束を作る

処々から芽を出し、芽が成長すると基部から仮根束を出す

Atrichum P. Beauv タチゴケ (syn. Catharinaea (f < p, Catharin): A. crispulum Schimp. ex Besch. チジレスギゴケ, A. rhystophyllum (C.Mull.) Par. ヒメスギゴケ, A. tenellum (Roehl.) Bruch et Schimp. in B. S. G. ミヤマチョウチンゴケ, A. undulatum (Hedw.) P. Beauv.ナミガタスギゴケ, A. undulatum var. gracilisetum Besch.ムツスギゴケ, A. yakushimense (Hor.) Miz. ヤクシマスギゴケ
Bartramiopsis フウリンゴケ: B. lescurii (James) Kindb. フウリンゴケ
Oligotrichum Lam. et Cand. タチゴケモドキ: O. aligerum Mitt.イボタチゴケモドキ, O. hercynicum (Hedw.) Lam. et Cand.フナバハグルマゴケ, O. parallelum (Mitt.) Kindb. タチゴケモドキ, O. parallelum f. laxifolium Nog.エゾタチゴケモドキ
Pogonatum P. Beauv. ニワスギゴケ (n < g pogon (髭)。地面に密生するのを髭に見立てた?): P. camusii (Ther.) Touw ヒメハミズゴケ, P. capillatum, P. cirratum (Sw.) Brid. ホウライスギゴケ, P. contortum (Brid.) Lesq. コセイタカスギゴケ, P. dentatum (Brid.) Brid. ケスジスギゴケ, P. inflexum (Lindb.) Lac. コスギゴケ (茎直立、茎葉分化、雌雄異株), P. japonicum Sull. et Lesq. セイタカスギゴケ, P. neesii (C.Mull.) Dozy ヒメスギゴケ, P. nipponicum Nog. et Osadaシンモエスギゴケ, P. otaruense Beschチャボスギゴケ, P. spinulosum Mitt. ハミズゴケ, P. urnigerum (Hedw.) P.Beauv. ヤマコスギゴケ
Polytrichastrum G. L. Smith ミヤマスギゴケ: P. alpinum (Hedw.) G. L. Smith ミヤマスギゴケ, P. formosum (Hedw.) G. L. Smith オオスギゴケ, P. formosum var. densifolium (Mitt.) Iwats. et Nog., P. longisetum (Hedw.) G. L. Smith ホンスギゴケ, P. ohioense (Ren. et Card.) G. L. Smith エゾスギゴケ
Polytrichum Hedw. スギゴケ hair moss or haircap moss (n < g polys多 + trichos毛。地上に密生した状態を毛に譬えた?)
1. 葉縁全辺

P. piliferum Hedw. ハリスギゴケ: 駒ヶ岳山頂部の1996年水蒸気爆発の影響を受けた地域に設定した永久調査区内に見られる
P. juniperinum Hedw. スギゴケ (ssp. strictum (Brid.) Nyl. et Sael.)

1. 葉縁鋭歯

P. formosum Hedw. オオスギゴケ (var. densifolium (Mitt.) Osada オオスギゴケモドキ)
P. ohioense Ren. et Card. エゾスギゴケ
P. commune Hedw. ウマスギゴケ (var. swartzii (Hartm.) Moenk. ホソバスギゴケ): 2004年に大規模火災のあったアラスカ内陸部ポーカーフラットでは、火災数年後に先駆的優占種となった (Tsuyuzaki et al. 2013)

稀(分類キーとは別): P. sphaerothecium (Besch.) C. Mull. タカネスギゴケ, P. gracile Dicks. in Menz. ホソスギゴケ, P. norvegicum Hedw.

Order Dawsoniales

Dawsoniaceae ネジクチスギゴケ

苔類 (Hepaticae), liverwort


形態 morphology

1. 茎葉体 leafy shoot

liverwort
Takakia

基本的発生過程 = 四面体3辺から葉を出すのはMusciiと共通
liverwort
L = L and (L = V, or L > V)の3分裂にはサイズ上の関係がある。MusciiのFicidensでも3辺のうち1辺が極端に小さくなるものがみられた

腹葉 ventral-origin leaf
側葉 lateral-origin leaf
L = V: primitive ex. Takakia, コマチゴケ
L > V: evolutionary → 一般的

Vの大きさはグループによって異なり、側葉と同じ型、異なる型、形成しないというような形質に分かれ、1つの分類基準となっている
a. 茎
表層以外の分化はない。稀に菌根細胞が存在するが、これは菌類が寄生し2次的に分化したもの liverwort

割と大きな柔組織を有する。D cell, H cellがその個体のparenchyma中に存在する。Takakia, Plagiochila, Bazzania等のグループではcortex, parenchyma分化が明瞭でD cell, H cellが散在しているのが良くみられる。他のliverwortsでは未詳。茎が退化し、断面で3-5細胞のみからなるものが苔類では割と多い。クサリゴケ科Lejeuneaceaeの約半分の種は茎退化型で、普通の茎断面では直径上に10-30位の細胞が見られる

b. 分枝 branching
頂生分枝terminal branching: 頂端細胞が分裂したもの (primitive)

liverwort

側生分枝 lateral branching: Musciiは全て側生分枝。頂端細胞は分枝に関係しない場合(evolutionary)

liverwort
付根に必ず表層残存物skirtがつく。その付き方(= 表層の破れ方)が種の発生上の特徴(laterla branching)

rhizoid c. 仮根 rhizoid
単細胞。Rhizoidは決して分裂しない。ものに当たると分枝するだけ
葉緑体はほとんどなく、液胞が大部分を占め、生理的機能はほとんどない
Rhizoidからの培養は現在のところ不可能
d. 葉
側葉 lateral leaf
腹葉 under leaf
蘚類に比べて単純で lateral leaf, under leaf ともに単層の葉。例外的に葉の縁に2-3層構造を示すものがある。葉の形は変異性に富む

leaf
leaf
実験で、様々な処理を施し葉の変異を起こさせ、これらの形態系列を作ろうという試みがなされている

leaf 葉細胞含有物

葉緑体 chloroplast
油体 oil body: 油体の色、形、大きさが変異に富む

→ 苔類の90%が油体を有する
化学成分はテルペン類
油体は生細胞でないと観察されない
熱帯系苔類の油苔構造は研究途中

1'. 葉状体 tallose
茎葉の区別なし
頂端細胞は4面体。各分裂面は等質で、体組織だけが形成される。当然、L, Vの区別ない。しかし、2次的な表皮細胞の変化した器官、例えば、鱗片のようなものはできる。だが、これは発生上関係がない。したがって、体制上は組織分化がまったくないものから著しいものまでの間に様々な段階の種がある

組織分化なし: ミズゼニゴケ類
leaf

僅かに表皮の分化が認められる程度

中肋的なものが分化: クモノスゴケ類、フタマタゴケ類
leaf

中肋的_________________体の中心に中肋様のものがある

数層の組織が分化: ゼニゴケ類
leaf leaf
rhizoidは中肋部からしかでない__吸収器官(毛細管現象)

l.m.: lateral merophyte: ここからも頂端細胞から離れ成長するとrhizoid出す

↑↓ 両者のrhizoidは形質的に異なる

v.m.: ventral merophyte

leaf
同化組織は葉緑体が多く油体等を含む。貯蔵組織は葉緑体が少なくデンプン粒が多い。大まかには3つの組織があり生理的分業がなされている
ゼニゴケは苔類の中で極めて特殊化の進んだものである。3億年前の化石記録からは苔類の器官分化は大して起こっていない → それ以降に特殊化が進んだものか?

2. 繁殖器官
有性生殖、無性生殖: 基本的には蘚苔類全般同じ
a. 雌雄性
: 雄性器官は外側に多いがあろうとなかろうと = antheridium
: 雌性器官の外側に被服細胞jaket layerのあるもの = archegonium (雌性器官の外側に覆いのないもの = oogonium)

leaf
Archegonium (pl. –nia): 成熟するとneck canal cellとventral canal cellが崩れ頸部neck先端が崩れて開き粘液物質gelatious substanceとなり分泌される(精子誘引物質を含んでいる)

造卵器植物 archegoniatae = 羊歯植物 + コケ植物 → archegoniumの体制は共通
受精後に卵が造卵器の中に留まることがコケ以上発達した植物(シダ、種子植物)では普通に見られる(藻類との相違点)

leaf
位置 種によって位置だけでなく形状も異なる
• 茎葉体
leaf
造卵器は茎、枝の頂端細胞から形成される。受精卵が発達して、配偶体先端部に胞子体ができる
• 葉状体
leaf
頂端細胞が造卵器を形成する – acrogynous (adj. 頂生の)
頂端細胞が造卵器を形成しない(大部分) – anacrogynous
• 造精器antheridium → sperm (EMで解析されつつある段階)

leaf
シダ: 普通は左の様だ
が種によりコケ的なも
のもある

• 精子 sperm: 鞭毛9 + 2型
先に球形の付属体: 球状の付属体を利用して泳ぐ → 羊歯の精子: 系統的関連

b. 胞子体 sporophyte
葉緑体が僅か → 独立性低く寿命短い
Air poreは存在せず、組織分化していない
朔中に胞子と弾糸を形成

弾糸はMusciiでのperistome的役割を果たしていると考えられる

原胞子細胞 → cell

leaf

4つに分裂し胞子を飛ばす
例外は多く6, 8つに分裂したり裂けるだけというのもある

c. 原糸体(糸状体) protonema: 数細胞の糸状体 → 分枝は外圧加わらなければしない

protonema

(Inoue 1975)

系統 phylogeny

Class Hepaticae (苔類綱)

Subclass Calobryidae (コマチゴケ亜綱)

Order Takakiales
Takakiaceae Stech et W. Frey ナンジャモンジャゴケ
Takakia S. Hatt. et Inoue ナンジャモンジャゴケ
T. lepidozioides Hattori et Inoue ナンジャモンジャゴケ

1952 高木典雄: 白馬岳にて採取
1958 服部新佐、井上浩: コケ (否定: 佐藤正巳 地衣、岡田喜一 藻類)

thallusが分裂し成長する栄養生殖のみが知られる
分布: 北海道(大雪山)、本州(白馬岳、立山)、ボルネオ(キナバル山)、カナダ(太平洋岸)、ヒマラヤ

1958 Persson: 造卵器archegonium確認 ⇒ 蘚苔類 (有性生殖未確認)
1861 Mitten W: Lepidozia ceratophylla Mitt. (ゼニゴケ類と考えた)

= Takakia ceratophyllaTakakia 1属2種確認

1966 Schuster: 染色体 n = 4
1993 Smith & Davison: ⊂ 蘚類

1989 造精器antheridium発見  1990 胞子体sporophyte発見

退行進化: n = 5 ⇒ n = 4

Order Calobryales
Haplomitriaceae Ded.コマチゴケ
Haplomitrium (Syn. Calobryum n < g callos 美しい + bryum コケ。小野小町意訳)
H. mnioides (Lindb.) Schus. コマチゴケ: 背腹性わずかにあり。仮根なし

Subclass Jungermanniidae ウロコゴケ亜綱

苔類の大部分: 世界(科/属/種)56/309/7500、日本37/113/580
植物体形態多様。葉身細胞に油体。造卵器は花被に包まれる
茎葉分化する = 茎葉体体制

造卵器頸部: n細胞列(横断面: 中心の1細胞周囲をn個の細胞が取巻く)

n = 4 → コマチゴケ目 ⇔ n = 5 → ウロコゴケ目

茎葉分化しない = 葉状体体制 - フタマタゴケ目: 造卵器頸部5-9細胞列
Order Jungermanniales (Acrogynae) ウロコゴケ
Herbertaceae Fulf. et Hatch. キリシマゴケ
Herberta
Blepharostomataceae
Blepharostoma, Pseudolepicolea
Isotachidaceae ヤクシマゴケ Isotachis
Ptilidiaceae テガタゴケ
Mastigophora Nees オオサワラゴケ, Ptilidium Nees テガタゴケ (n < g ptilon(柔羽毛)縮小形。体全体の感じ) (P. pulcherrimum (Web.) Vainio オオサワラゴケ, 針葉樹樹皮. P. ciliare (L.) Hampeケオオサワラゴケ, ハイマツ林縁地上に緩いマット形成, 北米, NZ)
Neotrichocoleaceae
Neotrichocolea )f < g + gn neos 新しい + Trichocolea (gn), Trichocoleaとの比較で付いた名), Trichocoleposis
Trichocoleaceae
Trichocolea ムクムクゴケ (f < g thrix, trichos 毛 + colea 莢)
Leidolaenaceae
Lepicoleaceae
Lepidoziaceae ムチゴケ
Bazzania (f < p, コケ学者Bazzani), Kurdia, Lepidozia
Calypogeiaceae ツキヌキゴケ
Calypogeia, Metacalypogeia
Lophoziaceae
Anastrepta, Anastrophyllum, Barbilophozia, Chandonanthus, Eremonotus, Gymnocolea, Hattoria, Jamesoniella, Lophozia, Tritomaria
Jungermanniaceae ツボミゴケ
Cryptocoleopsis, Jungermannia, Mylia, Nardia (N. succulenta (Rich ex Lehm et Lindenb コスタリカ、アレナル火山 the volcano Arenal) Spreng), Notoscyphys, Jungermannia vulcanicola (Schiffn.) Steph. チャツボミゴケ Gyrothyraceae
Marsupellaceae
Gymnomitrion, Marsupella
Scapaniaceae
Diplophyllum, Macrodiplophyllum, Scapania (f < g skapeion 掘るもの。円形様葉をシャベルに譬えた?)
Balanthiopsidaceae
Schistochilaceae
Schistochila
Delavayellaceae Lophocolaeaceae
Chiloscyphus, Geocalyx, Harpanthus, Heteroscyphus, Lophocolea Plagiochilaceae ハネゴケ
日本12種
Pedinophyllum
Plagiochila (f < g plagios 斜めの + cheilos 唇。歪む葉の2片を唇に譬えた)

P. sciophila Nees ex Lindenb. コハネゴケ, P. hakkodensis Steph. ミヤマハネゴケ

Plagiochilion
Xenochila
Acrobolbaceae T. A. Hodgs.
Acrobolbus
Antheliaceae
Anthelia
Cephaloziaceae
Alobiellopsis, Cephalozia, Cladopodiella, Hygrobiella, Iwatsukia, Nowellia, Odontoschisma, Pleuroclada, Schiffneria, Zoopsis
Cephaloziellaceae
Cephaloziella
Adelanthaceae
Jackiella, Marspidium
Perssoniellaceae
Radulaceae
Radula
Pleuroziaceae
Pleurozia (n < g pleura 肋 + ozia 枝。体両側に肋骨状に多枝を分かつ)
Porellaceae
Macvicaria, Porella
Frullaniaceae Lorch
Frullania Raddi (f < p Frullan)
F. tamarisci シダレヤスデゴケ

枝先端にperianthつき出てsporophyte保護。先端裂けspore, elatorが出る。枝下部には単細胞の仮根をつける
Archegonia: bract, 花被perianth, perigyniumからなる
葉: 3列。側葉lateral leaf, 腹葉ventral leaf (amphygastria)分化 = 背腹性

Goebelliellaceae
Jubulaceae (Lejeunaceae) ヒメウルシゴケ
Jubula, Neohattoria, Nipponolejeunea, Archilejeunea, Dicranolejeunea, Lopholejeunea, Mastigolejeunea, Ptychanthus (m < g ptychos 襞のある + anthos 花。花被に縦皺がある), Ptychocoleus, Spruceanthus, Thysananthus, Trocholejeunea, Tsuzibeanthus, Cheilolejeunea, Drepanolejeunea, Lejeunea, Leptolejeunea, Leucolejeunea, Cololejeunea (f < g colo 短縮 + Lejeunea (gn)), Colura, Tuyamaella
Order Metzgeriales (Anacrogynae) フタマタゴケ
Phyllothalliaceae ウロコゴケダマシ
Treubiaceae トロイブゴケ: Treubia
Fossombroniaceae ウロコゼニゴケ: Fossombronia
Blasiaceae ウスバゼニゴケ: Blasia (f < p, Blas), Cavicularia (f < g cavicule 孔 縮小形。体先に半月形孔ある)
Dilaenaceae ミズゼニゴケ: Calycularia, Makinoa (f < p, 牧野記念し三宅驥一博士命名), Moerckia, Pallavicinia (f < p, Pallavicini), Pellia (f < p, Pelle)
Aneuraceae スジゴケ
Aneura Dumort. ミドリゼニゴケ
Riccardia S. Gray スジゴケ

R. multifida クシノハスジゴケ, R. canaliculata (Nees) Schiffn.

Ricciaceae ウキゴケ
Riccia L. ウキゴケ: 枝状、archegonium, antheridiumはthallus中に埋もれ形成

R. glauca L. ハタゴケ: 表皮細胞には葉緑体がない
R. fluitans L. ウキゴケ
R. michelii Raddi, R. ciliata Hoffm.

Ricciocarpos Corda イチョウウキゴケ

R. natans (L.) Corda イチョウウキゴケ: Ginkgo-typed thallus、先端に紫色のscale、田などの水中に生育

Metzgeriaceae: Metzggeria (f < p, Heidelberg 植物園長Johann Metzger 1852没)

Subclass Marchantiidae (ゼニゴケ亜綱)

植物体は多細胞層からなる葉状体体制 → 普通、葉状体背面に気室孔と気室が発達(肉眼で小さな白点)
仮根は単細胞。葉状体腹面に複数列に規則正しく配列した鱗片(しばしば濃赤紫色に着色)と仮根が発達
造卵器と造精器は特別の枝(= 雌器托と雄器托 → 葉状体が変形した部分と解釈される)につく。造卵器は偽花被で包まれる
蒴壁1層 (ウキゴケ科では造卵器も造精器も葉状体に埋もれ形成され、蒴も無柄でゼニゴケ類では特異な形態)
Order Marchantiales
Monosoleniaceae: Monosolenia
Targioniaceae: Targionia
Cyathodiaceae: Cyathodium
Grimaldiaceae: Asterlla, Mannia, Plagiochasma, Reboulia (f < p, 19C前半,伊植物学者Eugende Reboul)
Conocephalaceae ジャゴケ(蛇苔): Conocephalum (n < g conos 円錐形 + cephale 頭。雌株に生ずる雌器托が円錐形)
Lunulariaceae: Lunularia
Sauteriaceae: Athalamia, Peltolepis, Sauteria
Marchantiaceae ゼニゴケ
Dumortiera (f < p, 植物学者 Barthelemy Charles Dumortier ベルギー, 1797-1887)
Marchantia L. ゼニゴケ (f<p Nicolas Marchant 仏, 1678没, Bt)
1. 腹鱗片約6列、葉状体内部に厚膜細胞ない ___ セニゴケ M. polymorpha
1. 腹鱗片4列、葉状体内部に厚膜細胞がある

2. 杯状体外面は平滑、腹鱗片の付属物は全縁でない

3. 葉状体背面中央縞なし ___ トサノゼニゴケ M. tosana Steph.
3. 葉状体背面中央黒色縞あり ___ ヒトデゼニゴケ M. cuneiloba Steph.

2. 杯状体外面に小乳頭がある。腹鱗片の付属物は全縁 ___ ツヤゼニゴケ M. paleacea Bertol. ssp. paleacea (フタバネゼニゴケ - ssp. diptera (Nees et Mont.) Inoue

M. polymorpha ゼニゴケ: ゼニゴケ中最も分化
雌雄異株: ♂ = 雄器托(造精器托) antheridiophore, ♀ = 雌器托(造卵器托) archegoniphore

♂: n = 8 + Y, ♀: n = 8 + X

胞子体 sporophyte: 無葉緑素であり完全に寄生的
Protonema stageは短く、数細胞程度でdiscになる
葉の表に杯状体cupuleを作り、その中に無性芽gemmaを作る

札幌街中でも生える(2009.10.26)。火山でも生える。森林火災跡でも生える。先駆種でもある

培養

培養法 (大和他 2009)

光量: 連続光 50-60 μmol/m²/s (20-30 cm離し2-3本の40W白色蛍光灯)
温度: 22°C (30°Cでは成長阻害)
液体培養: 1M51C液体培地
固体培養: 無菌0M51寒天培地 開放培養: トレイ中にバーミキュライト

M. papillata Raddi. ssp. grossibarba (Steph.) Bischl. (Syn. M. tosana Steph.): 関東以西から報告されていたが北海道有珠山で確認した.本亜種は有珠山では噴気孔周辺の土壌上に生育していた.本種がより高緯度地域に分布し,国内では暖温帯での生育が知られるが,冷温帯噴気孔周辺にも生育する.(樋口・露崎 2023)
Marchantia emarginata Marchantia emarginata Marchantia emarginata
有珠山噴気孔近くにて。[左/中] 2021年6月17日 [右] 2022年4月25日
Preissia アカゼニゴケ (Marchantiaから分ける場合)
Wiesnerella アズマゴケ
Exormothecaceae ジャゴケモドキ
Ricciaceae ウキゴケ: Riccia ウキゴケ(f < p, 18C伊貴族 P. F. Ricci), Ricciocarpus イチョウウキゴケ(m < g Riccia(gn) + carpon (果実)。子嚢形がRicciaのに似る)

ツノゴケ綱 (Anthocerotae)


種少: 本質的に蘚類・苔類と異なる点多。全てthallose。組織分化ない
細胞内に葉緑体が1-3個であり、大型のものがある。葉緑体数は属段階で決まっていることが多い。EMレベルで見ると、この大型葉緑体は小型の葉緑体が集合aggregateしたものに見える(Proskauer 1953)。いずれにせよ、この葉緑体はcompoundである。胞子体は1-3個の葉緑体を有し独立性が強い
anthocerotae

Sprogenous tissue → 偽弾子 pseudoelator: 細胞肥厚に螺旋状に数個の細胞が連なる

生殖器官(♀♂)
Acrogynous, Anacrogynousと関係無しに葉状体の組織内に沈生する。造卵器、造精器、精子は蘚苔類と同

anthocerotae
♂が先に排出を♀は後にそれを表皮まで生殖器官から作る

(Inoue 1975)

系統

説1. ツノゴケは蘚苔類中最も原始的
説2. 蘚苔類と同じ門divisionに入れるものではなく、別なAnthophyteという門におくべき

Class Anthocerotae

Order Anthocerotales
Anthocerotaceae: Anthoceros (f < g anthos(花) + ceros (角)。角状の胞子嚢付く), Dentrocedros, Megaceros, Notohyllas, Phaeoceros

Phaeoceros laevis (Syn. Anthoceros laevis) ニワツノゴケ: 庭・畑等の土上にロゼット形成。裏面にunicellular rhizoid形成。世界各地

生態 (ecology)


(中坪 1997)

変含水性 poikilohydric: 湿度に応じ細胞内含水率を変動させる

細胞外の水(湿度)
高: CO2拡散抵抗↑ ⇒ 光合成速度↓
中: 光合成速度最大
低: 脱水・水ポテンシャル↓ ⇒ 光合成速度↓ (停止)

栄養塩: 体表から吸収
根系未発達: 土壌が不安定な立地には定着できない

蘚苔類の起源 (origin of moss)


1) 藻類起源説

淡水藻、特に緑藻あるいは車軸藻が起源
  1. コケ植物が形態的に原始的primitiveで水生に適応した形質が多い - 維管束が蘚苔類にはない
    生殖器官の保護器官が存在しない。高等植物はcarpelあるいはovaryを有する。外生的生殖器官は水中に適した体制である。有性生殖の際には水の存在が必要
    生理的水分要求度が高い。葉は単層構造をなし、表面から常に蒸散しているため要求性が高い
  2. 光合成産物、光合成色素が淡水産緑藻と同じ: 生産物 = デンプン、色素 = クロロフィルa, b
  3. 多細胞からなる特異な構造の有性生殖(特に車軸藻): 雄配偶体spermの構造が同じ。鞭毛9 + 2。S字型有性生殖細胞形成(車軸藻)
  4. 胞子の発芽初期における原糸体protonemaの形成(車軸藻)
  5. 藻類に存在しないと考えられていたフラボノイド化合物が輪藻植物門(Charophyta)のNitella, Charaで確認される。固定されたフラボノイドはglycoflavons(コケ植物に広く存在)とluteolinである
→ コケ植物は陸上植物としての最初の侵入者であり、その起源は淡水産緑藻であると考える

緑藻 → (上陸) → コケ → (気孔、維管束、外皮獲得) → 羊歯

反論
  1. コケ精子と同構造を持つ一部羊歯植物(ヒカゲノカズラ類)がある。羊歯でもマツバラン、トクサ、ミズニラ等の古い形質有したものほど共通性がある
  2. 光合成色素は陸上植物全体に共通
  3. 形態的には水に適応性の高い陸上植物である
  4. 反論ではないが、車軸藻に起源を求めなくても可能性はある
→ コケ類の起源は藻類ではなく、原始性を有する向上進化をしたものの中に求めるべき → 化石比較必要
コケ化石
古生代上部デボン紀: Hepaticites devonicus W Hueber 1949
→ 体制は現世クモノスゴケPallavicinaに良く似て、葉状体腹面に仮根がある
デボン末期-石炭紀のコケ化石は現世コケと共通体制を有するものが殆ど
moss1 moss2 moss3
図1. 古代デボン紀化石コケ植物Sporogonites exuberans復元(Andrews 1960)。葉状体は比較的薄く維管束系は見当たらない
図2. 古生マツバランRhyniaからツノゴケ類への進化(推定) (Schuster 1966)
図3. 中生代三畳紀化石コケ植物Naiadita lalnceolata復元(Harris 1939)。葉分化見られ、無性芽器も示される
進化一般法則 = 複雑化complex
⇔ コケ: 化石記録を見る限り向上進化できなかったように思える。進化速度が遅いか、あるいは0といえる。問題は、なぜ進化方向が他系統群と異なるのか説明できない(環境要因、淘汰圧等を調べる必要)

藻類起源説ではコケ → 羊歯への進化がコケ出現後に起こらねばならないが、その間にはギャップが多い。例えば、生活史が極端に異なり連続的変化の接点見出せない。また、そのほかの体制も異なる

2) 古生マツバラン起源説 (退行進化説)

a) Psilophytales or Psilopsidaはコケ型の形態および生活史を有する
b) 生活史の進化

古生マツバラン類 [化石植物] ex. Rhynia
Rhynia S = G → Pteridophyta S > G
_______________↘ Bryophyta S < G
コケ、羊歯に共通する起源として古生マツバランが考えられる

c) コケ生活史の進化

(i) 新生説 antithetic theory: 胞子体Sは有性生殖の結果生まれた。それ以前は配偶体Gのみの生活史だった。Gは原始的か地史的に古いもので元来Sは存在せず有性生殖過程で生じた2n個体が特殊化したのがSだとする

= コケ起源説 (藻類 → コケ → 羊歯)

(ii) 相同説 homologous theory: S, Gは同形質を持ち独立であったので、基本的には同じもの。このSとGが陸上化に伴い癒合した。藻類等と比較すると、この説の方が有力である。即ち、藻類ではS, Gが独立し存在し、対等の立場にあり陸上化の説明はhomologous theoryでないと説明できない

= 退行進化説 (古生マツバラン → コケ/羊歯)
S (2n) □□□ → 癒合
G (n) □□□ _
RhyniaはS = Gで癒合したもの(同じ生活史の藻類にシオグサ)

S = G (水中) → Rhynia型 (G/S癒合) → (S複雑化/G縮小) 羊歯型
________(terrestrial)______________↘ (S縮小/G複雑化) コケ型

遺伝子量: S = 2n, G = n → 複雑化するには遺伝子量の多い2nの方、つまり胞子体の方が有利であり進化速度(変異速度)が速い。一方Gを複雑化したコケは進化速度が遅い。それと関連して羊歯から種子植物が生まれたと考えられる。進化観点を複雑化からみるならば、2n (= S)を複雑化させることになる。ところがコケにおいてはSを単純化させており、この点からはコケは退行進化している
藻類から陸上化を説明するギャップは大きく未詳。藻類 → Rhynia、藻類 → コケ、両方に関して言え、一つのmissing linkである

d) 化石記録: コケ化石は残りにくい - データ乏しく今後の研究に期待

蘚苔類化石
Ex. デボン紀 = Hepaticites, Sporogonites
Ex. 石炭紀: Thallites

退行進化 (コケの系統)
moss

古生マツバランのSporogonitesはコケであるという説もある

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