(2013年2月10日更新) [ 日本語 | English ]
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植物枯死体 → 有機物層: 完全には分解されず堆積 泥炭 ≡ 表面植生を除いた有機物層部分
植物枯死体蓄積速度 > 分解速度 (= 湛水による嫌気性条件) 熱帯湿原: 木質遺骸 → 熱帯泥炭(木生泥炭・木質泥炭) woody peat 木・潅木の木質残体を多く含む (Nishimura et al. 2007) 泥炭(土) = 植物遺体が肉眼的に判定可能 (→ 黒泥)≡ > 20% (d.w.)の有機物を含む土壌 (農学上)
黒色泥炭 black peat
自生泥炭 autochthonous peat: 植物生育地点で泥炭形成
→ 特に未分解のミズゴケを含む泥炭(s.s.)
20-50% (d.w.)の有機物を含む(しばしば肥料に利用) |
泥炭構成植物による区分→ 物理・化学的特性: 構成植物種類、形成、堆積時以降の水分状態、地形的場所や気候要因等で決まる高位泥炭 high moor ≈ ミズゴケ泥炭 Sphagnum peat: 主に殆ど未分解なミズゴケからなる ミズゴケ・ツルコケモモ類 中間泥炭 transitional moor: ヌマガヤ・ワタスゲ・アカエゾマツ類低位泥炭 low moor ≈ スゲ泥炭(ヨシ泥炭) sedge peat, or Carex peat (reed peat, Phragmites torf): 主にスゲの茎、葉、地下茎、根からなる。体積で50%以上のスゲを含む場合に限り用いることも ヨシ・ハンノキ・ヤチダモ・イワノガリヤス群 泥炭発達過程と泥炭区分 process of peat development日本: 植生による区分普通 → 泥炭地型 peatland type: 通常、植生で分類した泥炭地単位発達過程 植生区分 Fen: 出来立ての水面下泥炭 沈水植物(ヨシ・スゲ) 低位泥炭 ↓ ハンノキ・ヤナギ侵入 中間泥炭 ↓: 水面に出る Bog ミズゴケ定着 高位泥炭西欧泥炭区分 = 植生 vs 合州国泥炭区分 = 土質(黒泥を除く) |
物理・化学的特性: 構成植物種類、形成、堆積時以降の水分状態、地形的場所や気候要因等により決まる
化学特性 chemical properties泥炭化学分析: C, H, O低位泥炭: 50.16-60.10, 4.44-5.86, 30.61-39.41 高位泥炭: 55.38-58.58, 5.10-5.83, 33.46-38.03 → 成分 (表1) 日本(北海道)中位泥炭まずない黒泥 muck もない(泥炭に火山灰の混じるもの = muck → 西欧と異なる) 泥炭に含まれる他物質パラフィン類: ヘントリアルコンテーンアルコール類: アルコステロール・ファイトステロール エステル類: グリセリン化合物・樹脂エステル類 |
酸類: 核酸・コハク酸・サッカリン酸・クロトン酸・ハイドロステアリン酸・安息香酸 アルデハイド類: サリチルサンアルデハイド・バニリン・トリチオベンゾアルデハイド 炭水化物: マンニトール・ラムノース・ペントーザン ピリミジン誘導体: シトーミン プリン塩基: キサンチン・ヒポキサンチン・アデニン・グアニン ピリミジン塩基: ピコリンカルボン酸 アミン類: トリメチルアミン・コクン・クレアチニン 有機燐化合物: ヌクレイン酸・レシチン アミノ酸類: アルギニン酸・ヒスチジン・リジン 日本石灰含量の望ましい値
畑: 300-600 mg/100 g |
水分 | 有機物 | 粗灰分 | 土砂分 | ベンゾール アルコール 抽出物 | 水溶性 有機物 | ヘミセル ロース | セル ロース | 腐植酸 | リグ ニン | 蛋白質 | |
83.73 | 11.07 | 5.16 | 2.66 | 7.45 | 15.14 | 3.29 | 0 | 56.70 | 5.26 | 19.60 | |
中位 | 81.37 | 11.75 | 6.88 | 3.82 | 4.71 | 9.51 | 3.51 | 1.29 | 57.90 | 5.02 | 15.48 |
高位 | 85.85 | 9.79 | 4.36 | 2.76 | 5.10 | 11.36 | 5.31 | 5.10 | 53.70 | 4.63 | 15.46 |
平地 | 83.69 | 11.02 | 5.29 | 2.85 |
物理特性 physical properties構成植物種類、形成、堆積時以降の水分状態、地形的場所や気候要因等により決まるスゲヨシ泥炭 (スゲ潅木泥炭, 非材木泥炭) sedge-reed peat, sedge-shrub peat, or non-forest peat スゲ、ヨシ、その他の草本で構成。薄層、繊維質、絡み合ったりフェルト状になること多い。通常、余り分解すすんでいない。低木組織を含有することもあるが、木の幹や木片は含まない 繊維質泥炭 fibrous peat: 主にスゲやそれに類似した残骸からなる泥炭回帰面 recurrence surface, RY: 泥炭形成条件変化を示す泥炭層 Ex. 下層の分解進んだ泥炭と上層の比較的未分解なミズゴケ層の明瞭な不連続面 |
泥炭特性分解 - 収縮 - 圧密収縮度 degree of shrinkage (degree of contraction), S 地耐力 bearing capacity, breaking strength, carrying capacity: 土の強度を数値化したもの
Ex. 岩石 = 50 t/m²。粘土や粘土の混じったシルト = 1 t/m²程度しか支えられないこともある コーン指数(コーン支持力) cone index: 先端に円錐型コーンが付く棒に力を計るプルービングリング probing ring (プルーフリング proof ring)というバネばかりが付くものを一定速度(1 cm/sec)で土に押し込み、その抵抗を読み取り、コーン面積で割った値 |
本来は全ての泥炭と泥炭を形成する植生(泥炭地 = moor) ドイツ: 酸性、アルカリ性に関わらず、厚い泥炭層のある場所 英国: 標高のある所でツツジ科潅木に覆われた土地 (しばしば好酸性exyphilous植生) マスケグ muskeg (米国先住民アルゴンキン語由来, 米国): 多少ともミズゴケ類、スゲ類、潅木の疎林に覆われた自然状態で撹乱のない泥炭地
小斑状泥炭地 small pox muskeg: 湿原中で以前湖・池だった所の水が抜け皿状が特徴。以前の岸は低木・潅木が繁茂し、痘痕状となる 高さ2 mに達するシュトラング(ridge, ribs, laniers)とフラルクが交互に並ぶ フラルク: 通常、湿潤か湛水した溝状窪みで、斜面横断方向に並び水の動きに直角(rimpi, flashettte, mare, hollow)。時に平行、クモの巣状、湾曲、網状パターン 平坦な流域では、フラルクは大きさ、形状一定でない湛水シュレンケへ拡大 |
シュトラングは降水涵養性多く、主にスゲ、ミズゴケによる。トウヒ、カラマツ、カバ、ヤナギ、ツツジ科潅木等もある。その間にフラルクは鉱物質涵養性で、浅水面かスゲ、Drepanocladus-Calliergon群落を含むこともある。典型的形状は高木限界線近くで生じる 農学上泥炭深 = 未排水合 > 45 cm。既排水 > 30 cm (灰分ignition residueが80%以下の泥炭層)
降水栄養性ombrotrophic = nutrient poor: quaking, floating, rasied bog, strings, palsas, mound, plateaus 泥炭地複合体 peatland complex泥炭地の分布する比較的広い範囲の地域
個々の小泥炭地が水平的拡大により成長融合し、多くのタイプの泥炭地があり、時には相互に影響し合う aefja: 藻類に覆われた地表 |
露崎史朗. 2010. 湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として- . 公開講座
直接的利益 direct (wetland) benefits利用して得る利益
間接的利益 indirect (wetland) benefits人が利用せずとも得る利益(公益)
泥炭を利用するためには採掘(cut peat)されねばならない!
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泥炭地開発
含量(%) (%) (80%) (%) (50%) /100g /100g 低位泥炭(27)3 3.8 33.8±6.6 0.26 0.186 81.4 0.930 7 0.372 62.8 358.4 (12.8) 中位泥炭(14) 3.7 30.8±7.4 0.27 0.193 80.7 0.965 3.5 0.386 61.4 255.4 (9.12) 高位泥炭(15) 3.3 16.5±9.8 0.22 0.157 84.3 0.785 21.5 0.314 68.6 344.4 (12.3) 1: KCl法, 2: 乾重/単位容積, 3: サンプル数。孔隙はどれも80-90%有する。比重1.23-1.51(av. 1.4)程度 孔隙率: [1 - 容積] × 100 (%)
排水路の影響Ex. サロベツ泥炭地
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