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(2023年6月19日更新) [ 日本語 | English ]

土壌形成過程 (soil formation process)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

土壌形成 (soil formation): 風化 → 層化
土壌材料
一次鉱物(造岩鉱物): マグマ冷却過程で形成される無機物
二次鉱物(粘土鉱物, s.l.): 一次鉱物が風化を受け生成 → 粘土化

可視サイズ Ex. 石灰、鉄結塊 concretion、石膏、塩類結晶
微視サイズ = 粘土鉱物, s.s.

1. 風化 (rock) weathering

地殻表層岩石が営力により破壊されルーズな含水物質(土砂)生じる作用
Ex. 花崗岩風化                                                                                           
                            SiO2  Al2O3 Fe2O3 MgO  CaO Na2O K2O   H2O   Total
新鮮花崗岩         68.75 17.59  1.40    0.64   3.25  4.54  3.27   0.56 100.00
風化花崗岩         57.04 26.04  1.91    0.17   0.75  1.91  2.41   9.77 100.00
Al2O3不変          38.50 17.59   1.29    0.11   0.51  1.29  1.63   6.59   67.51
    とし計算
100 g花崗岩の  -30.25   0.00  -0.11  -0.53  -2.74 -3.25 -1.64 +6.03 -32.49
    獲得/損失                                                                                                 
表. 日本における土壌の地質系統別面積比率%
花崗岩質土壌 12.7: 深成岩起源
火山岩質土壌 20.8: 火山岩起源風化土
先石炭系土壌 4.0: 地滑地 Ex. 三波川変成帯土壌
古生層土壌 14.4: 山間地域 Ex. 秩父帯土壌

輝緑凝灰岩質土壌: リン含量高
珪岩質土壌: 肥料保持力低

中生層土壌 8.2: 頁岩、砂岩、礫岩等。狭く急峻な地形
第三紀土壌 20.5: 砂岩、頁岩、凝灰岩主。殖質土壌多
洪積層土壌(第四紀古層土壌) 7.1: 水積土や火山灰土壌。段丘・台地・丘陵等

古土壌 paleosol: リス・ウルム間氷期に生成された土壌

沖積層土壌(第四紀新層土壌) 12.3: 河川流域、海岸等の平坦な低地
a. 物理的(機械的)風化physical (mechanical) weathering
各鉱物体の温度変化に伴う体積膨張率の差
→ 破片化(= 母岩崩壊) → 砕屑物 clastic material

土 = 鉱物質(一次鉱物, 母岩) parent rock + 有機物(岩石溶脱量で不足栄養分は主に植物等から供給)

要因: 温度 + 大気 + 水 (+ 氷河: 氷蝕作用 ice erosion)
b. 化学的風化 chemical weathering
酸化 + 溶解 + 炭酸化合 + 水和 + 加水分解 等
CO2 + 水(雨) = 炭酸水 → 石灰岩 (Ca + 2H2O) → 崩壊 (CaCO2 + H)

鉱物の水、酸素、CO2による変質のし易さ – 石英は最も変質しづらい
増加成分 = H2O(+, -)とFe3+ → 水和と酸化oxidationが重要な化学変化
岩石成分溶脱のし易さ(= 可動性): Ca, Mg, Na > K > Si > Al, Fe3+(他成分減少 → 相対的増加)

順序は、水のpH(普通4-8)での各元素の水酸化物溶解度(イオンポテンシャル = イオン半径/陽荷電)、コロイドへの吸着・固定、共存CO32-の影響等で決まる

化学的風化進行度合は各元素の多少を反映
カンラン岩                                     石灰斜長石
        輝石↖                                ↗石灰-石灰斜長石
        角閃石↖                         ↗アルカリ-石灰斜長石
            黒雲母↖     カリ長石↗
                          ↖白雲母↗
                              石英
. 一次鉱物の風化に対する抵抗性 (Goldich 1938) (下=強 → 上=弱)

索引
c. 生物的風化 biological weathering
1st step: 微生物(菌根菌等)、コケmoss, 地衣類lichens

→ 化学成分分泌 → 溶出 → 粘土と呼べるもの生成される

2nd step: 維管束植物侵入invasion of vasccular plants → 土壌(土)
気候条件
多雨・高温熱帯多雨地域で速い ↔ 寒冷地域遅 + 水の地中浸透も風化促進
氷河気候型: 地表付近凍結 → 化学的風化遅、物理的風化優勢。侵食進み厚い風化殻形成されない
乾燥気候型: 物理的風化卓越 + 蒸発↑ → 地表水総イオン量大 + 高pH。風化殻には溶脱帯・集積帯存在
湿潤気候型: 化学的風化 > 物理的風化 → 厚い風化殻形成しやすい

2. 運搬・堆積

土壌侵食(浸蝕) soil erosion
表面侵食 sheet erosion + 溝状浸蝕 gully erosion
母材
a. 残積土 residual soil: 運搬されず、その場で土壌化

母材 = 変成岩、固結火成岩、非固結堆積岩、第三紀層-古生層、中生層等の固結堆積岩
母岩容易に得られる Ex. 藻岩・手稲: 安山岩

b. 運積土 ransported soil: 土壌母材は他所から運ばれてきた

= 他の場所へ運搬堆積し土壌化 → 運搬堆積様式で土壌特性異なる

i. 崩積土 colluvial soil: 母材風化崩壊し斜面に匍行creepしつつ堆積 →

各種母材混合し粒径不均一

ii. 水積土: (沖積世に)水により母材運搬堆積 → 沖積土 alluvial soil: 肥沃

水力源明らかな場合の細区分
河成土 fluvial soil: 河成堆積(主に増水氾濫による平野) = 壌質土多
湖成土 lacustrine soil: 湖成堆積 = 壌質土多
海成土: 海成堆積 = 砂質土多
河海成土: 三角州 delta、河岸段丘 river terrace、洪涵地等の土壌
扇状堆土 fan detritus: 沖積扇(砂礫扇状に広がる)に堆積

iii. 風積土 aerion soil: 風の力で運搬堆積

土粒-風速関係(例): y = 0.0268x1.568

y: 移動可能土粒最小直径 (mm), x: 風速 (m/s)

火山性 = 非固結火成岩(主に火山灰)
※ 再堆積時に水作用弱いなら風積 - 水作用強いものは除く

Ex. 黒ボク、多湿黒ボク

非火山性 = 砂土(黄砂等) Ex. 砂丘、レス loess
洪積世堆積: 洪積世に堆積したと見なせる地層で、時期や位置で砂質から粘土質まで変化するが、母材混合せず粒径均一な場合が多

iv. 氷積土(氷河土) till: モレーン(堆石) moraine = 氷河により運搬された岩礫

側堆石: 氷河両岸から落ちて氷河に混じるもの
底堆石: 流底に混じった石礫
堆積地形区分: 終堆石、野堆石、堆丘、流洗原outwash plain、谷堆石等

Def. ローム loam: 砂と粘土がほぼ同量含まれた風化堆積物

関東ローム(関東火山灰), s.s.: ロームの粒度組成に近い赤土

集積: 低温過湿による酸素不足等で植物遺体が分解されず堆積

Ex. 泥炭土、黒泥土等

土壌形成要因 factors on soil formation


(Jenny 1941)

S = f(Cl, O, r, p, t, h, …)

S: 土壌   Cl: 気候   O: 生物   r: 地形   p: 母岩   t: 時間   (h人為)

Cl 気候 climate
a. 温度 temperature

寒地: 低温度 = エネルギー不足 → 土壌生成困難

Ex. 南極: 層化殆どなく融雪水等で砂が多少移動しその沈殿にカビ等が蓄積する程度

温度日変化: 地表面での岩石の物理的風化に影響 – 砂漠は風化激しい

生物活動に影響 → 腐植分解や土壌形成速度に影響

b. 雨量 precipitation

極低雨量 → 土壌生成不可能
農業成立土壌条件: 雨量 > 500 mm/yr + 雨の降り方も土壌生成に関連
rainfall Ex. 乾期・雨期(多雨) → ラテライト形成
Ex. レグール Indean cotton soilはラテライトよりやや乾期長い所に形成

c. 蒸発散 evapotranspiration: 温度-雨量関係

→ 土壌中や植物からの蒸発散関与
→ 土壌中の洗脱層・集積層の形成の有無、厚さ等変化
+ 生物は貴重な有機物供給源

O 生物 organisms
= 植物 + 動物 + 微生物
根圏 rhizosphere: 根周囲 → 周囲の土壌よりも多くの微生物成育

微生物は根を通じ植物と密接に関わる

Ex. 病原菌、共生菌(根粒菌・菌根菌)

区分: 内根圏 endorhizosphere: 根表皮・皮層細胞間隙等、根内部環境

  根面 rhizoplane: 根表面
  外根圏 exorhizosphere: 根周辺の土壌領域

土壌微生物 soil microbe: 重量では土壌有機物中の1%程度
  • 細菌類: 大部分はバクテリア bacteria、菌類 (他に藻類、原生動物 protozoa、放線菌 actinomyces、糸状菌、ネマトーダ等)
    → micro-flora/faun構成 → 有機物(leaf, woods, etc.)分解
  • 小動物: 線虫、ミミズ、クモ、ダニ、ムカデ(節足動物)、モグラ、ネズミ - ダニ、トビムシの順に多い
    ミミズが転耕する土壌量 = 38-55 ton/a/yr – 土壌団粒化に寄与大 (+ 場合によりシロアリ強力)
    環形動物(ミミズ)骨形成なし - Caの殆ど排泄 – 微生物利用 – 土壌改良
土壌・有機物(leaf, woods, etc.)混合物mixture形成 - 土壌転換に結構有効

特定微生物を土壌環境内の状態で捉えたり有機物を無機物へ転換するシステムとして捉える場合、微生物個体数だけでは不十分情報。土壌内で生じる微生物作用の方向と強さの測定必要

窒素動態: 硝化作用・窒素固定作用・脱窒作用・アンモニア化成作用
硫酸還元作用: 硫酸還元菌 = 硫酸還元細菌 + 硫酸還元古細菌

嫌気性呼吸
酸化型無機硫黄化合物(Ex. SO32-, S2O42-, S2O32-, S3O62-, S4O62-, S8, Sn2-)を還元

鉄マンガン代謝
有機酸代謝
ガス代謝
土壌呼吸 = 微生物 + 動物 + 植物根 (現在分離困難)
測定: 炭酸ガス発生(酸素吸収) – 精度高

logR = aT + b, R: 土壌呼吸, T: 温度 → 温度と直線的関係

+ 有機物含量, pH, N, P量等と相関があることが多

呼吸活性最大値は菌数と必ずしも一致せず、活性先行すること多
嫌気的土壌等の条件によりC/O比は1にならない

土壌が植物に与える影響 (Mansden-Jones & Turrill 1938)

6. (根)毛量
7. 乾燥・霜害や寄生者に対する感受性
8. 1個体当り着花数
9. 花期

1. 発芽能力
2. 大きさと直立性
3. 活力度 vitality
4. 茎木化度
5. 根系深さ

菌糸及び菌根

α: 鉱質土壌中に多く分布。土粒とからみ細粒構造を形成し鉱質土壌上層部に菌糸網層形成。疎水性であって雨水を殆ど通さず強乾燥状態を維持

β: F-H層に菌糸多。この部分でスポンジ状の菌糸網層形成。長期雨ではスポンジ状に保水するが内部への浸透は少なく乾燥促進

γ: 菌糸量多くなく深く鉱質土壌内分布し菌糸網層形成しない。疎水性強くなく、乾燥土壌でなくても見る

α, β形態: 樹木種、菌種で異なり植物が土壌に与える大きな影響
Ex. マツ林: α型多、コジイ林: β型多

根 root: 分布はそれに関与する土壌動物や水の移動様式を規定

林野調査: 記載に当たり、草本木本に分け、木本は細(< 径2 mm)、中(2 mm-2 cm)、太(> 2 cm)に区分

酸化還元電位 (oxidation-reduction potential, ORP): 酸化還元状態の目安

+ → 酸化反応進行
– → 還元反応進行 → 微生物活動推定
水中物質存在状態推定できる Ex. Fe(OH)3沈澱かFe2+溶出か, SO42-存在かH2S発生か

強還元状態 = Eh 0.3 V
(一般に)pH低下 = Eh上昇

溶存酸素dissolved oxygen, DO: 水中に溶けた酸素 – 根の成長

(一般に)湿原周辺等の水停滞地 = 樹木成長悪 ↔ 流動水の所 = 成長良
土壌水分湛水・停滞 → 溶存酸素量多く、根の呼吸代謝作用が十分に行われるため
測定: 溶存酸素計(酸素センサー)

ガルバニ電池式
ポーラログラフ式

r 地形 relic
土壌侵食差 → 北・南斜面で腐植humus厚も差
微地形 microtopography: 集積度の差で腐植層厚に差

relic

標高        高(尾根) 中 低(谷)
土壌湿度 乾          適  湿
集積度     低          中  高     

p 母岩 parent material
母岩性質により形成土壌異

玄武岩: Mg, Ca多 = 褐色土になりやすい
花崗岩: K, Na多 = podozolできやすい

t 時間
世界中の大体の土壌形成は第4紀最終氷期(16000年前)と、その後に成立
→ 氷河等のなかった所の土壌はより古いはず(14C年代測定)
Def. 成熟土壌 mature soil: 土壌特性と植生が一致する土壌

= 発達十分な土壌 developed soil ⇔

未成熟土壌 immature soil = 発達不十分な土壌 undeveloped soil


土壌呼吸 soil respiration

土壌CO2発生測定法
野外: ガス捕集鐘respiration bell (21.5 cm φ, 16 cm hのアクリル板平型円筒。底部無底)による濃度測定

平坦にした土壌に呼吸鐘を約1 cm埋めこみ安定するまで上部開放放置
測定時間及び数は10-30分(Lundegardh; 赤塚)、連数は2-3が通常だが、野外条件により適宜変える

室内: (古) 電導度法 (Wolf et al. 1952)、比色法 (Snell & Snell 1957)、容量法 (Blom & Edelhausen 1955)、重量法(Piper 1950)、混濁度法 (Snell & Snell 1957)、滴定法 (石沢 et al. 1957)、検圧法 (ワールブルグ検圧法、バークロフト検圧法) (Umbreit et al. 1945)
機器分析法

赤外線吸収スペクトル、ガスクロ、質量分析、ガス分析法

ガス分析法

測定期間: 初期発生増大期logarithmic stage終わり定常発生時点で打切る

農地で通常2-3週間、林地で200日を越える事もある

酸素吸収量測定法
原理: チャンバーに収納した土壌は密閉系で呼吸を行い、酸素を吸収し当量的に炭酸ガス発生

⇒ チャンバー内のO2あるいはCO2の濃度変化速度を測定
吸収が直線的増加の場合 → 時間の積算吸収量又は吸収速度で表す
チャンバー内気圧を一定にする必要

操作: 土壌は風乾土や原土を目的により使い分ける

風乾土: サンプリングに便利。風乾処理による微生物相攪乱・土壌有機物変化に注意

土壌形成過程 soil formation process


土壌形成過程又は反応の区分 (物質移動・変化): 定義

1a 溶脱 eluviation (移動): アルビック層のように土壌断面のある部分の外へ物質が移行する

1b 集積 illuviation (移動): アルジリック層やスポディック層のように土壌断面のある部分に物質移行する

2a 洗脱 leaching, depletion (損失): ソーラムから可溶性物質が洗い流されたり溶脱されたりする(一般用語)

2b 富化 enrichment (添加): 土壌体への物質の添加 (一般用語)
3a 侵食(表面) erosion, surficial (損失): 土壌表面からの物質除去

3b 積層堆積 cumulization (添加): 風・水の作用による無機質粒子の土壌ソーラム表層への添加

4a 脱石灰化 decalcification (移動): 土壌の1以上の数の層位からCaCO3が除去される過程

4b 石灰化 calcification (移動): Ca層、時ににその他の土壌層位へのCaCO3の集積過程

5a 塩類化 salinization (移動): 塩類に富む層salic layerにCa, Mg, Na, Kの硫酸塩や塩化物のような可溶性塩の集積 5b 脱塩類化 desalinization (移動): サリック層からの可溶性塩の除去

6a アルカリ化 alkalization (移動): 土壌の交換座でNa+の集積 (ソロニゼーション, solinization)

6b 脱アルカリ化 dealkalization (移動): ナトリック層からのNa+や塩の洗脱(ソロディゼーション solodization)

7a 粘土溶脱 lesslvage (移動): A層位からB層位へ微小鉱物粒子の機械的移動 → 相対的な粘土富化がB層位に起こる(アルジリック層)

7b 土壌撹乱 pedoturbationv (移動): 生物的、物理的作用(凍結-融解/湿潤-乾燥繰返し)による土壌物質混合や循環 → ソーラムを様々な程度に均一化

8a ポドゾル化(珪酸富化) podozolization (移動, 物質変化): Al, Feもしくは有機物の化学的移動 → 溶脱した層で珪酸増加(= 珪酸富化)起こる

8b ラテライト化 (移動, 物質変化): 土壌ソーラムの系外への化学的珪酸移動 → オキシック層oxic horizonの様にソーラム中で三二酸化物(ゲータイト、ギブサイト等)増加 + 鉄結石ironstone (ラテライト、硬化プリンサイトplinthite)やそのための結核を形成することがある

9a 分解 decomposition (物質変化): 鉱物や有機物の分解
9b 合成 synthesis (物質変化): 新しい鉱物粒子や有機物の形成

10a 有機物暗色化 melanization (添加, 移動): 淡色無機非固結物質が有機物添加により暗色化する過程(Ex. 暗色のA1層、モリック層、アンブリック層)

10b 有機物淡色化 leucinization (移動): 暗色有機物が物質変化により淡色化や除去され、暗色土壌層位が淡色化する過程

11a 落葉落枝積 littering (添加): 無機質土壌表面上に落葉枝と伴う腐植物質等の堆積過程(厚 < 30 cm)

11b 腐植化 humification, winning (物質変化): 原材料となる有機物が腐植物質へ変化する過程、あるいはその程度 (度合い = 分解度 humidity)

11c 湿地有機物集積 paludization (物質変化): 土壌生成作用というより地質作用とみなす人もいる。黒泥や泥炭(ヒストゾルhistosol)のような厚い(> 30 cm)有機物堆積をもたらす

11d 熟成 ripening (物質変化): 有機質土壌で積有機物に空気侵入し微生物活性高まり、それに伴って起こる化学・生物・物理的変化

11e 無機化 mineralization (物質変化): 有機物分解 → 無機物遊離する過程

12a 褐色化 braunification, 赤褐色化 rubifaction, 赤色化(鉄富化) ferrugination (移動, 物質変化): 一次鉱物から遊離した鉄が鉄酸化物粒子となり土壌中に一様に分布する過程。鉄酸化物の酸化や水和の過程に応じ土壌はそれぞれ褐・赤褐・赤色示す

12b グライgley化 (移動, 物質変化): 滞水化土壌の嫌気的anaerobic条件下で鉄還元し土壌基質matrixが青灰色-緑灰色となる過程。黄褐・褐・黒の斑文mottlesや鉄、鉄-マンガン結核が見られることがある

シアリット化作用(褐色土化作用, 粘土化作用) sialitization
土壌形成過程で岩石が粘土化する段階

有機物: 腐植酸石灰 mull - この段階になると微小生物(昆虫等)生存可
→ 腐植層薄い土壌(=褐色森林土)形成
これより雨量多く溶脱層形成 - 土壌酸性化(pH ≈ 6) Ex. 酸性褐色森林土

レシベ化作用 lessiversiion or illimierisation
レシベ形成: 雨量多く粘土までが水により結合破壊され下方へ移動

→ そこで集積 → 粘土層(B層)薄い = Lessiv (仏)やパラ褐色土(独)
溶脱から全層pH低く5.8-6.0

water
アルカリ土:

乾燥気候帯では降雨量より蒸発量がはるかに高いため地下水が上昇し最も水に可溶のNa化合物は下層から吸い上げられ表層に集積する → A層 = 集積層

黒色草原土:

アルカリ土地帯と比べ降雨量やや多いが、蒸発量の方が多い所ではNa化合物は全く洗脱する。しかし、より溶解度の低いCa化合物は洗脱しきらず下層にCaCO3の溜まった層ができる。降水量 ≈ 500-600 mm/yrの温暖地では森林発達せず草原となる。A層は多量のhumin有し黒色。土壌はCa飽和の団粒構造をとり畑作理想地

褐色土・赤色土

降雨量が蒸発量より多くなりアルカリ分洗脱が激しく酸性化が起きる

ポドゾル podozol: 腐植が洗脱の主な役割を果たし出来た土壌

土地表面は針葉樹粗腐植積もる + 表層色が成分である鉄が抜けるため表層土下部が灰白色呈する

[問題] 火山灰土壌位置付け未確定、沖積土は土地により異なり一括困難、等

層化 (stratification)


地上部と下層部間で物質移動力の差により層が形成される

土壌(s.s.): 層化のみられるもの → 砂漠に土壌はない

岩石崩壊による形成部

除荷作用: 温度と水により岩が砕ける作用
cf. 山ハネ現象: 炭鉱孔部分の岩が砕ける

rock
岩礫層: 礫
種類:        角礫                                礫                             円礫
                 鋭い稜角持つ  やや角張ったangulate稜角持つ  丸み帯びる
礫の土壌中に占める比率
   5%    5-10    10-30    30-50                      50%以上
乏しい   含む     富む   頗る富む   礫土(他土壌成分には拘らない)

(Buol 1973)

4過程

1. 添加 addition
土壌体へ添加 = 水(+ 水溶成分) + 大気中成分
2. 損失 loss
土壌体からの損失 = 溶脱・流出、蒸発散、脱窒、有機物分解等
3. 物質変化 transformation
土壌体内での物質変化 = 化学的作用、生物的作用
4. 移動・集積 translocation and accumulation
土壌体内移動

土壌断面 soil profile (層位 horizon)

rock

岩石崩壊による形成部より上に表層部土壌形成

L ↓ リター litter: 葉の面影の残っている段階 (O ≈ A00 + A0)

F (腐葉 humus): 葉が砕け形のない部分

H↓ 水が大分混じり土様かつ腐植様な部分 (O = F + H)
A ↓ 有機物が多い一般に黒い土の部分(腐植)

≈ A1(土壌表面) + A2(溶脱層 eluvial horizon) + A3(漸移層)

E (ellunium 洗脱): A-B層間にFe等の洗脱により白い層できる場合
B ↓ A層からC層に移る土壌的に中間の部分 ≈ 集積層 illuvial horizon

≈ B1(A-B漸移層) + B2 + B3(B-C漸移層)

C ↓ 母岩が砕けて小さくなった部分

母材: C層(当然様々な岩石特徴がある) →

酸性岩・中性岩・塩性岩(相対的) - 区分は鉱物組成から

酸性岩: Si等を70-71%以上含。K, Na(アルカリ金属 - 水に溶け易い)多

KはH+での転換率最大

中性岩: 50-70%。Na, Ca多
塩性岩: 50%以下。Ca, Mg多

D ↓ 母岩 mother rock or parent rock
G (グライ層 gley or glei): 土壌物質が酸化還元繰り返す(酸化は水位低下時)

Gley
Ex. 石狩グライ: 深い堆積部(数km掘ると母材出る)。結核 → 格子構造: 根が酸化還元を受けた結果

石狩
Fig. 石狩
C: これらは母材ではなく第三紀からの
堆積物 → 厳密なC層ではない
IIC/IIIC → 別時期に堆積の記載
IIC1/IIC2 → 同一時期に堆積の記載

A, B, C層見分け方
1, 腐植含量 = A-C
2, 粒子サイズ = B-C
3, 集積物存在
4. 土壌色(要因様々だが多くは以下)

腐植: 黒・褐色・灰色・一般に暗色
鉄: 赤・橙・黄・褐・青灰・緑
珪酸: 白
→ 色度 chroma: 土壌の灰色が増すにつれ減少する他の色の相対的度合い [土色帳]

土色 soil color

色相(赤・青・黄) + 明度(明暗) + 彩度(鮮やかさ)
主な土色の要因は腐植と鉄

腐植: 多 → 黒味↑ (土壌中比率は、現地観察では色に頼る以外ない)
鉄: 化合形態により、褐-赤-黄-青

測定値 林野土壌野外測定記載 判定

記載   乏しい          含む                   富む             頗る富む      腐植土
腐植   < 2%             2-5                    5-10               10-20          ≥ 20
色調    鮮明 やや濁色調帯びる 暗褐色-褐黒色 暗褐色-褐黒色   (黒)

土壌温度
温度変化 ↔ 土色変化: 土壌の比熱・伝導率 → 受熱 + 放熱

昼: 大気 → 土壌 ⇔ 夜: 土壌 → 大気
黒(白): 放射吸収大(反射大) → アルベド
地形: 入射量に関与

比熱: 土壌粒子 ≈ 0.2、有機物 ≈ 0.4 (水 =1) (容積比熱 ≈ 0.5-0.6)
熱伝導率: 土壌密 → 伝導率↑ ⇔ 粗 → 伝導率↓

腐植 humus

A層まで
Def. (土壌)有機物
(s.l.) 土壌が含む動物遺体・植物残渣、これらを分解する微生物遺体やその分解産物、また分解産物から再合成された腐植物質
(s.s.) 有機物(s.l.) - 動物遺体・植物残渣 (∵ 植物利用しない)
Def. 腐植(s.l.) = 土壌有機物(s.s.)
_______ (s.s.) = 土壌微生物により作られた暗色無定型高分子化合物
有機質土壌 organic soil: 富有機質 ≥ 5%程度 (泥炭・湿地土・沼地土等含)

⇔ 無機質土壌 inorganic soil

機能
植物養分供給: 分解し成分放出
植物養分保持: カルボキシル基等由来の高陽イオン交換能 - 養分吸着保持
植物生育促進: 土壌物理化学性改善 - 根系発達(酸性土壌ではAl不活性化)
団粒形成: 土壌微生物活性化に伴多糖類・ウロン酸等の増加
粗腐植 raw humus, mor, duff (米): 陸棲腐植形態 → 殆ど分解されず構造的に保持された細かい植物残骸

強酸性 → 酸性腐植土発達促進
冷涼多湿気候 + 酸性貧[Ca・Mg・塩基物・栄養・鉱物質コロイド]土壌 → 陸上腐植形成上、最悪条件
森林粗腐植断面は厚いリター層に特徴 → 分解遅く数年にわたりリター層堆積し厚い層形成
リター層下に発達したF層必ず存在 ↔ H層は粗腐植形成される悪条件下では、殆どか全く存在しない
植物残査、動物遺体、微生物遺体が、土壌中小動物、微生物により分解・合成されたもの

無機化過程の中間生成物(代表 = 腐植酸) → 土壌肥沃度高める
腐植集積形態
陸成腐植 terrestrial humus: 陸地で集積した腐植

粗腐植型(モール型) row humus or mor: 冷温帯森林土壌
ムル型 mull humus: 草原土壌 Ex. チェルノーゼム
モーダー型 moder: 粗腐植型とムル型の中間

半陸成腐植 semi-terrestrial humus = 泥炭 peat (+ 黒泥 muck)

低位泥炭 low moor、中間泥炭 transitional moor、高位泥炭 high moor

水成腐植 sub-aqueous humus: 水中で集積した腐植 Ex. ユッチャ(gytja)

土壌有機物(簡易分類)

                       ↓(薄)アルカリ液抽出
土壌有機物 不溶部               = フミン humin
                                    ↓酸性化 - 沈殿
                   可溶部    する    = 腐植酸 humic acid
                                  しない = フルボ酸 fulvic acid

(真正)腐植酸 (s.l.) echt humic acid = フミン + 腐植酸

フルボ酸 fulvic acid
フミン酸よりMW小。水系存在フミン物質の多く
pHに関係なく全溶液に溶解(沈殿しない)
腐植酸/フミン酸 humic acid (s.l.)
平均MW ≈ 数10万 (半径60-100Å)、無定形高分子。黄褐色-黒褐色
成因による区分
天然腐植酸

土壌腐植酸
石炭系腐植酸

再生腐植酸: 褐炭や風化炭を化学処理し工業的に得る Ex. ニトロフミン酸
腐植生成過程
一般に高温では分解早く腐植蓄積しない

例外: 嫌気的条件下では高温でも泥炭発達(熱帯泥炭)
humus
humus

腐植化測度
腐植測定: 3-DEM spectra, HP SEC
色調係数: 赤/青吸光度比↓ = 腐植化↑
安定度係数: NaFとNaOHによる抽出液の青吸光度比↑ = 腐植化↑
相対色度. RF = 比色値/酸化値 × 100↑ = 腐植化↑

比色値: 供試液の青吸光度/標準腐植液の吸光度(%)
酸化値: 供試液のKMnO4消費量/標準腐植液の消費量(%)

沈殿係数, PQ = (a - b)/a × 100 (%) ⇒ 腐植酸の割合を示す

a: 浸出液KMnO4消費量
b: 浸出液に酸を加え沈殿しない部分(= フルボ酸)のKMnO4消費量

腐植化度: 浸出液の硫酸可溶沈殿物中で酢酸緩衝液に溶ける物質の割合

= 真正腐植酸のKMnO4消費量/

(アンモニア可溶物質真正腐植酸 + 腐植物質)消費量

Ex. 稲藁の腐植化過程

humus
全N = 腐植(仮定): 腐植生成量 < 500 × 0.005 × 10 = 25 (kg)
→ 実際: 作物吸収、土壌吸着等で、数分の1程度が腐植となる

[鉱物学]

粘土化と粘土 (argillation and clay)


一次鉱物 primary mineral

一次構造(一次鉱物): 砂・シルトの殆ど

clay
珪素(珪酸, Si)四面体__アルミニウム(アルミナ, Al)八面体
○: 珪素原子(左)、Al原子(右)。●: 酸素(O)原子(左)、Oか水酸基(OH)(右)

二次鉱物 secondary mineral (≈ 粘土鉱物 clay mineral)

普通盤状・層状である。層状単位は主として珪素・アルミニウム
二次構造: 結晶性粘土鉱物の二次構造

clay
アルミニウム_________________●は上の場合も下の場合もある

8面体 → 原子価、ボーア半径の関係

Si-O四面体がOを共有しつつ層状となる
同様Al-Oも層状をなし、それらが重なり合う

             ↙端面
█████ Al layer
█████ Si layer
1:1型

A. 1:1型(2層型)鉱物 kaolin
 • カオリナイトkaolinite = Al2Si2O5(OH)4: 陶磁器原料
 • ハロイサイト(hydrated) halloysite: Al4Si4(OH)8O10·4H2O
 • メタハロイサイトmetahalloysite: 脱水されたハロイサイト
 • ジッカイトdickite、• アノキサイトanauxite、• ナクライトnacrite

█████
█████
█████
2:1型

B. 2:1型(3層型)鉱物
i)   非膨脹型 • イライトillite: KyAl4(Si8-y·Aly)O20(OH)4, y = 1-1.5
ii)  膨脹型
 • バーミキュライト vermiculite
 • モンモリロナイト(群) montmorillonite (≈ スメクタイトsmectite)

日本: halloysite (+ kaolinite)多 - 乾燥地ではsmectite, vermiculite増す

 • ビーデライトbeidellite
 • ノントロナイトnontronite: スメクタイトのAlがFeに変わったもの
 • サポナイトsaponite
 • ヘクトライトhectorite
 • ソーコナイトsauconite
C. 混層型鉱物: 1:1型と2:1型の適宜混じり合ったもの
i)   規則型(2:1:1)鉱物 • クロライトchlorite
ii)  不規則型
D. 鎖状型鉱物 • アタパルジャイトattapulgite
E. 酸化鉱物
i)   酸化アルミニウム • ギブサイトgibbsite
ii)  酸化鉄 • ヘマタイトhematite
iii) 酸化マンガン
F. 無定型鉱物 • アロフェンallophane: 火山灰土壌の粘土主要部分
(+ • ハライト(岩塩))
全体: 粘土になるまで
KAlSi3O8 + 8H2O → Al(OH)3 + 3H4SiO4 + KOH
2KAlSi3O8 + 11H2O → Al2Si2O5(OH)4 + 4H4SiO4 + 2KOH
K + 長石(KAlSi3O8) + HOH → H長石 + K+ + OH
_____________________________移動
≡Si-OK-Si≡ + H+ → ≡Si-OH-Al≡ + K+
粘土 clay: 岩石が雨水により溶解し再結晶 - 通常粒子径 ≤ 0.002 mm
粘土成分: 粒径 > 0.1 mm = 石英含む ↔ < 0.1 mm = 石英含まない

結晶性粘土鉱物、Fe, Alの非結晶質含水酸化物 (Ex. FeOOH, ClOOH)
↔ シルト・砂 (= 石英主体) ≠ 化学的風化 Ex. 砂土: 低電荷 ≠ 養分保持
粘土は土壌に可塑性や凝集力を付与する

二次鉱物タイプ
カオリナイト鉱物結晶構造 (Wear et al. 1948): ○酸素, ◎水酸基, ●Si, ● A

clay

モンモリロナイト鉱物結晶構造: ○酸素, ◎水酸基, ●Si, ● Al, Mg

clay

粘土の遷移: 時間と共に生成・移動・変質 → 土壌肥沃性も変化

Ex. 温暖多雨地域: モンモリロナイト → カオリナイト(安定) → ギブサイト

粒子電荷

clay
縁(●)にわずかに構造上の荷電が生じる(一般に負の電荷)

Kaolinite = 5-10 mg eq/100 g

粘土鉱物: (一般)珪酸層Si4+にAl3+、アルミナ層Al3+にMg++, Fe3+が置換

全体として陰電荷帯びる - 粘土粒子周囲に陽イオン吸着(吸着陽イオン、交換性陽イオン)
植物根は陽イオンを直接吸収

陽イオン交換 cation exchange (塩基交換 base exchange)

Ex. Ca-colloid + NH4Cl ⇄ NH4-colloid + CaCl2
交換性陽イオン exchangeable cation Ex. Ca++, Mg++, K+, Na+
Ex. モンモリロナイト: H+, K+, Na+, Ca++, Mg++, Al3+, Fe3+等が入る

Def. 塩基(カチオン, イオン)交換容量 cation exchange capacity, CEC

≡ 中和に必要な物質mg当量 = 土壌が吸着し得る(陽)イオン最大量 ⇒

当量式 ∴ つく物質に関係なく荷電量表わす (単位 mg eq/100 g, me/100 g)

= 土壌保肥力のパラメータ
Ex. 1価イオン(Na+, Cl-, etc.) = 100 g土壌中6 × 1020個イオン含む

電荷はずすには周囲イオンを1つの分子(原子)で置き換える必要

Ex. H2O2 6%溶液で腐植洗い落とす。ヘキサメタリン酸ソーダ Na-hexametaphosphateは周辺残基が全てNaに変り腐植が分解する

飽和コロイド saturated colloid: 土壌コロイド表面が延期で飽和 ⇔

未飽和コロイド unsaturated collid: 土壌コロイドが交換性H+含む

Def. 塩基飽和度 base-saturation degree, V =

S/T × 100 = (T - (T - S))/T × 100

S = 交換性塩基量   T = 陽イオン交換容量

Def. pH依存荷電: 溶液pH等により荷電量が正負を含め変化する荷電

土壌コロイド → 両性コロイド (→ 等電点)

Ex. カオリナイト kaolinite: 熱帯に多い風化の進んだ粘土

単位胞   6(OH)   4Al    4O + 2(OH)    4Si     6O        Total
電荷         -6      +12         -10            +16    -12    +28 – 28 = 0
⇒ Kaoliniteには荷電が単位胞としてはない

Ex. 硫安等をこの土壌に入れるとKがCa, Na, Kの位置で入れ代わり出てくる

clay
→ 植物は放出された豊富なイオンを土壌中から得られる

Ex. 腐植

酸性: -COO·H[腐植のカルボキシル基] + OH- ↔ -COO- + H+·OH- (= H2O)
アルカリ性 -O·H[腐植のフェノール水酸基] + OH- ↔ -O + H+·OH- (= H2O)
_______________________________低 ⇐ pH ⇒ 高
⇒ 酸性でもアルカリ性でも負に帯電 = 肥沃土壌はpH緩衝作用大

Def. 潜酸性 potential acidity: 中性塩加えると現れる酸性 (≠ 水浸出)

= 置換酸性 exchange acidity + 加酸性 hydrolytic acidity

Def. 加酸性: 弱酸塩を加えると生じる酸性
Def. 置換酸性: 両性コロイド + 中性塩溶液 → 遊離酸 ⇒ pH↓

⇔ 置換塩基性 exchange alkalinity

リン酸固定: リン酸単独 = 負イオン ↔ 土壌中 Ca, Fe, Al等と結合し塩 ≠ 移動
植物の土壌リン酸利用率 = 5-20% - 大部分が固定され使えない

粘土鉱物: 鉱物先端(-)↔(+)Ca++(+)↔(-)H2PO4- ⇒ 結合
化学結合: 塩基性増すとAl, Feにより加水分解困難な難溶性化合物形成

バリッスシア石 variscite Al(OH)2·H2PO4
ストレング石 strengite Fe(OH)2·H2PO4
針鉄鉱 geothite ⇄ ストレング石

FeO(OH) + H3PO4 ⇄ Fe(OH)2·H2PO4

土壌微生物 Ex. 乾重で2.5%が P2O5 → 吸収集積

第1リン酸カルシウム Ca(H2PO4)2: Caとの結合弱く植物に有効
第2リン酸カルシウム CaHPO4: Caとの結合やや強いが植物に有効
第3リン酸カルシウム Ca3(PO4)2, リン酸アルミニウムAlPO4:

Ca, Alとの結びつき強く植物は利用できない

リン酸第二鉄FePO4, リン酸第一鉄Fe3(PO4)2: 比較的利用可能
有機リン: 腐植と結びついたもの = 様々
窒素化合物

アンモニア(正イオン) → 土壌に保持される
硝酸(負イオン) → 流亡しやすい

永久荷電
常に負に帯電し溶液条件により変化しない荷電
Ex. Montmorillinite

6O__4Si__2(OH) + 4O__3Al + Mg__2(OH) + 4O__4Si__6O_____Total
-12__+16_____-10_______+11________-10_____+16__-12__-44 + 43 = -1

clay Total = -44 + 43 = -1 ⇒ 補償イオン必要 – 同型置換
⇐ 水が層間に入る。H2Oが何層重なるかが粘土(土壌)の保水力の決め手になる
→ montomollinite: 単位層の重なりの間に水分子と陽イオン入る
粘土 + 水 → 高粘性物質 ⇒ 層間に多量の水を吸引したため

Ex. Montomollinite: 各層間に最低4層の水分子が入り、水が豊富だと10数層になる。土壌肥沃化には様々な塩基(C.E.C.高く、保水力高い粘土)を有することが一条件

保水力高い = イオンを効率良く運ぶ土壌

土壌構造 soil structure

土壌粒子存在状態および集合状態
  • 単粒構造: 凝集せずバラバラ Ex. 砂土、水田土、重粘土、C層
  • 壁状構造 massive: 断面が孔隙間ない壁様。掘取ると鍬の大きさに取出され特定形に砕けない緊密さ Ex. 粘土コロイド・腐植コロイド極めて多
  • 塊状構造 blocky: 立法形で稜角が丸み帯び表面は艶ない大型の構造
  • 堅果状構造 nutty: 稜角も面も明瞭な角張った立法形構造。イメージとしては氷砂糖
  • 粒状構造 granular: 比較的小型立法形のもの。面も稜角も不明瞭な丸み帯びた緊密な粒状構造
  • 団粒(状)構造 crumb: 比較的丸みある柔らかに集まる構造 Ex. チェルノーゼム
  • 火山灰土: < 1 μmの粒子(1次粒子)が30 μm程度の団粒(2次粒子)を作り、さらに数mmの団粒形成(3次粒子)
  • 細粒(状)構造 loose granular: さらさらした粉状、又は微細土粒が菌糸で綴られた状態。玉があるメリケン粉様
  • 特別構造発達しない: 堆積状態のまま外部影響を受けず構造未発達状態 Ex. 崩積土下層

粘土構造 structure of compound ped

団粒(粒団) aggregate, s.l.
土壌粒子が陽イオンや粘土鉱物、有機物(腐植)等の作用で結合した集合体
ペド(砕塊, 微細団粒, 粘土粒) ped
団粒形成基本単位(最小単位)。粘土の集合したもの
高所から土壌落下 → 概ねバラバラになった1粒1粒のこと (≈ 5-10 mm Φ)
ペド形成過程

a. ペド接近: 乾燥 → 粘土周囲外液濃度↑ → 拡散2重層による斥力↓ → 分子間力働く
b. ペド間接着物質 = 非結晶質Al, Fe酸化物(さらにCaCO3、水酸化鉄)

ポリペド(粗団粒) polyped
pedのまとまった固まり - 微細団粒とシルト粒子が互いに結合したもの
clay
団粒特性: 様々なサイズの間隙を有することが、団粒特性を決める
1. 小間隙: 水もち良。大間隙 → 水はけ良

⇒ 水持・水はけ共に良 Ex. 鹿沼土

2. 小間隙: 養分保持性が高い
3. 大小間隙: 様々な生物の生息地を供給

結果: 作物収量↑ – 畑地に牧草・麦藁を鋤き込み団粒構造発達させる
「いなご土」: 百姓伝記(江戸時代)に見る高収量得られる土 = 団粒土壌

土壌単位(ペドン) pedon
ポリペドンpolypdeon: pedon複合体。深さは母岩が出るまで(= 母岩含まない)
clay

↑ 表面又は流れに沿って物質(腐植、CaCO3、水酸化鉄等)が沈着 → この物質を粘土皮膜skinと呼ぶ
qutanという用語をskinの替わりに用いること多(この分野の研究をmicropedologyと呼ぶ)
skin or quatanの区分: argilan(humus), sesquan(Al2O3, etc.), mangan(Mn), salan(塩類)
skinの存在は溶脱あるいは洗脱がその土に対し行われていることを示す

ファブリック fabric: 土壌特性要因を総称した用語。それらの様式も含め用いる

fabric = 粘土粒 ped + 孔 pore + qutan

シリーズ series: 土壌調査時の単位はこれが普通

family - great group (成帯土壌の規模)

土壌構造形状 types of soil structure
表. 土壌構造の型とクラス。型(自然構造単位の形と配列)
板状、1ディメンション(垂直方向)限られ、他2方向より著しく小; 水平面の回りに配列; 面は大部分水平

板状 platy
極小(極薄)_ 小(薄)_________ 大(厚)___ 極大(極厚)
極小板状__ 薄板状__ 中板状___厚板状___ 極厚板状
< 1 mm___1-2 mm__2-5 mm__5- 10 mm__> 10 mm

柱状; 2ディメンション(水平方向)が限られ垂直方向よりもかなり小; 垂直線の周りに配列; 垂直面は明瞭; 頂点は角ばる

円頂がない

角柱状 prismatic
極小角柱状_小角柱状_ 中角柱状__大角柱状__極大角柱状
_ < 1 mm___1-2 mm__ 2-5 mm__ 5- 10 mm__ > 10 mm

円頂がある

円柱状 columnar
極小円柱状_小円柱状_ 中円柱状__大円柱状__極大円柱状
_ < 1 mm___1-2 mm__ 2-5 mm__ 5- 10 mm__ > 10 mm

塊状; 3ディメンションはほとんど同じ大きさ、点の回りに配列

塊状: 塊か多面体状で、回りの構造単位の面により作られた鋳型と鋳物の関係にある平面か湾曲面をもつ

面平坦、大部分の頂角は鋭く角張る

(角)塊状1 angular blocky
極小角塊状_小角塊状_中角塊状___大角塊状__極大角塊状
_< 5 mm___5-10 mm_10-20 mm__20-50 mm__> 50 mm

丸味を帯びた面と平らな面の混ざりで頂角は多く丸味帯びる

亜角塊状2 subangular blocky
極小亜角塊状_小亜角塊状_中亜角塊状_大亜角塊状_極大亜角塊状
__< 5 mm____ 5-10 mm__ 10-20 mm__20-50 mm___> 50 mm

球状か多面体状で、回りの構造体面と殆ど又は全然関係がない平面か湾曲面をもつ

比較的孔のない自然構造単位

粒状 granular
極小粒状_ 小粒状__ 中粒状___大粒状___極大粒状
< 1 mm__1-2 mm__2-5 mm__5-10 mm__> 10 mm

多孔質な自然構造単位

軟粒状 crumb
極小軟粒状_小軟粒状_中軟粒状 (大・極大はない)
_< 1 mm___ 1-2 mm__2-5 mm


1 堅果nutとも呼ぶ。名前中の角は省いてもよい
2 堅果状nuciborm, 堅果nutまたは半角堅果subangular nutとモいう
堅硬度(結持性, コンシステンシー) consistency
水分状態により土壌の力学的挙動が変化 → 変化する性質全般を指す ☛

Ex. 吸水 absorbtion → 土壌液状化 → 脱水 desorption

粘性 stickiness: 飽和水分以上に水を加えた土壌で高い
塑性 plasticity: 土壌水分減少するにつれ強くなる (堅硬度指数に関与)

塑性上限(液性限界) liquid limit, WL: 形状維持できない含水量の最高値
⇔ 塑性下限(塑性限界) plasticity limit, WP
塑性指数 plasticity index, PI = WL - WP

≡ 塑性を表す含水量の範囲の大きさ Ex. 埴土 > 15%

剛性 rididity (= 堅結性 coherence): 土壌乾燥し堅くなる

易砕度 friability: 剛性-塑性水分の中間 (半固体) - 耕作容易

膨脹 swelling ⇔ 収縮 shrinkage (収縮性 shrinking): 水分移動による
Def. コンシステンシー指数 consistency index, CI

= (WL - W)/(WL - WP) = (WL - W)/PI
⇒ 1に近い(W = WP)ほど土壌安定(逆も成立)

(粘土)活性度 colloidal activity of clay, Ca = PI/Cc

Cc: 粘土含量 ⇒ 粘土の性質を反映

分散係数 Puri's dispersion coefficient, Dc = A/B × 100 ⇔ opp. 団粒係数

A: 土壌を24時間振盪後 - 0.002 mm以下の粒子量
B: 完全分散させた時 - 0.002 mm以下の粒子量

分散率 Middleton's dispersion ratio, Dr = A/B × 100

A: 土壌に100倍量の水を加え20回振盪 - 0.05 mm以下の粒子量
B: 完全分散させた時 - 0.05 mm以下の粒子量

[植物にとっての]

土壌物理学 (soil physics)


土壌水分

土壌水 soil water

結晶水 crystalized water: 化合物成分となっている水 (植物利用不可)
吸着水(吸湿水) hygroscopic water: 間隙微細粒子表面に固着した水

= 分子間力により粒子に吸着保持されている水

植物は利用不可 = 有効水ではない

吸着水量(W) ∝ 土壌表面積F: 土壌1 gでは ⇒

F = W/100 × 1/(2.5&middo;10-7) (cm2) = 4 × W (m2)

潤熱 wetting heat: 乾燥土壌に水加える → 熱(水遊離エネルギー)

吸着水量 ∝ 潤熱 ∝ 土壌表面積 ⇒ 熱量計(カロリメータ)測定

毛管水 capillary water: 毛細管現象(表面張力) - 土壌粗孔隙内の保持水

小さな間隙は凹面形成し、水はその両端の毛管力により引っ張られる
= 負圧: 液体内部圧が大気圧より低い場合 (シャボン玉の逆)

土壌水で飽和時以外は常に負圧発生 ⇒ 水分↓ ⇒ 負圧↑

植物が主に利用する = pF 1.5-4.2

hrg = 2σh = 2σ/rg

h: 水柱高  σ: 水表面張力  r: 毛細管(土壌間隙)半径  g: 重力加速度

r-1 h → 半径3 μm毛細管では5 mの水柱可能

内部毛管水(膨潤水) imbibition water: 毛管水で粒子表面に近いもの

コロイドミセルの浸透圧で保持された水 (植物殆ど利用しない)

外部毛管水: 内部毛管水外側で主に表面張力で保持されるもの

重力水(過剰水) gravitational water: 土壌保水力を越える過剰な水

粒子間結合力ない水 = 自然落下

(植物一般に利用不可) + 滞留すると根腐れ等障害

浸透水 infiltration water: 地下浸透する水
地下水 groundwater: 不透水層により停滞した水

地下水 (groundwater, s.l.)

陸地表面より下にある水 = 堆積物の粒子間の隙間や岩石割目等に存在 ⇔ 表流水: 河川・湖沼など陸上にある水

北極地方: 地下水凍結 = 凍土
一般には、地下水はその地方の年平均気温に近い温度を保つ

地下水面 (water-table)
これより下層は岩石間隙が完全に地下水で満たされる
自由水帯 (vadose zone, 循環水帯): 地下水が重力降下する範囲 → 地表-地下水面(地下水面以上の部分)
飽和水帯 (phreatic zone): 地下水面よりも下の空洞が水で満たされた部分

地中水

= 地下水 (s.s.) + 土壌水 → 地表面の下にある水全て
地下水 (s.s.)
= 地層水 formation water, 間隙水 interstitial water
地下水面(groundwater table)より深い帯水層と呼ばれる地層に水が満たされて飽和した部分の水
≈ 地下水面より深い部分の水 (湿原などでは、これでよい)
土壌水 (soil water)
地下水面より浅い場所の土壌水帯(soil warter zone)にあり、水が満たされず不飽和である水
湿原 (wetland)
水の状態: 水の物理・化学・生物的要因が湿原植物の定着を決める
好気性 aerobic: 酸素有する状態 ⇔ 嫌気性 anaerobic: 酸素有さない状態

三相分布 (three-phase distribution)


Def. 三相 three phase: Vs + Vl + Va → 土壌生態系構成に不可欠

三相の比率 = 土壌物理性表わす

V = Vs + Vl + Va   (V: 土壌容積)

Vs: 固相 solid phase = 固体容量 (2.5-2.7*)
Vl: 液相 liquid phase = 液体容量 (1.0) → H2O + 土壌微生物a
Va: 気相 air phase = 気体容量 (0.0) → O2供給b

a: 比重 specific weight (g/ml)  b: 生物体への役割

比重差大: 容積比 (≠ 重量比) → 容積比重(仮比重) bulk density

孔隙率(間隙率) porosity, ε
ε = (VVs)/V → 土壌の湿性を決める

Ex. 関東ローム固相 = 18-22%

間隙比 voids ratio, ε'
ε' = (VVs)/Vs (多孔系土壌でよく使用)
土壌水分 water content, θ
θ = Vl/V
Def. 飽和度 θs = Vl/(VVs)
質量基準(w)なら: w = ml/ms (ml: 土壌水質量, ms: 乾燥土壌質量)
乾土壌: 乾燥土壌重, ms = W (生土壌) – wl (水分) (→ Vl = ml)
Def. 土容量 (固相体積) = 乾土壌/比重
Def. 空気容量 (気相体積) = 全体 - (土容量 + 水容量)
Def. バルク bulk (= みかけの質量 apparent density), ρb = ms/V
θ = (b)/ρ (ρ: 水密度 = 1, c.q.s.)

Ex. 農業適土壌(一般のヨーロッパ) → 固相35(50)%、気相30(25)%、液相35(25)%位が畑地に良い
Ex. 北海道柔粘地(粘土): 固相多(60-65%) = 固く農業不適
Cp. インド黒棉土、チェルノーゼム (佐々木, 私信)

固相 solid phase

土壌粒子+ 有機物 (≈ 固相率は大きく変化しない)

一次鉱物 → 岩片: 細粒化  → 物理的風化/加水分解
  (鉱物粒)     = 表面積増加 → 物質吸着面積増
水和物                         ⇓
新生鉱物酸化物 → 二次鉱物: 主に土壌微細部分(特に粘土)構成
        (粘土鉱物)
岩水酸化物

∴ 土壌化学組成 ≈ 岩石組成
∴ 無機成分 - 植物吸収元素給源 Ex. ポドゾルpodzol (podsol): 蒸発 > 降雨

1) iron podozol: 集積層まで腐植humus流される
2) iron-humus podozol: 流されない
葉を通し地下移動する水にはキレート化合物等が含まれる可能性がある(キレート化合物定量 - Ca定量)
three phase O層: わずか
漂白層(白い土): 洗脱受ける
集積層: Fe, Al蓄積
Na, K, Ca, Mg: 洗脱される

粒子数・表面積
pn (粒子数, 粒径均一仮定) = ws/wp = ws/(1/6·πd3 × gs)

ws: 土壌重量 (g)   wp: 単一粒子重量 (g)   d: 粒直径 (cm)   gs: 真比重

       [拡張] (粒径不均一),(ws = 100 g ⇒
pn = 1/(1/6·π2.65)·(p1/d13 + p2/d23 + p3/d33pn/dn3)

pi/di3: i部分の平均粒径   di/di3: i部分の含量 (%)

as (表面積) = πd2 × pn

粘土含量↑ → 表面積↑ ⇒ 化学特性に影響

液相 liquid phase

≈ 水: 液相多すぎると植物に湿害 (水ポテンシャル)
浸透, s.l. (浸潤) infiltration: 水が地表面を横切って下方移動
浸透, s.s. (降下浸透) percolation: 浸潤後の水が土壌中を(地下水面に向かい)下方移動
浸漏 seepage: 地下水体-地表水源間の水移動
蒸発 evaporation: 土壌 → 大気 (気象)

土壌表面微細 = 表面積大 = 蒸発面大 → 蒸発量↑

マルチ mulch: 地表を覆うもの Ex. 藁・草刈 → 蒸発↓

蒸散 transpiration: 気孔から発散する水

要水量 water requirement: 植物1 g物質生産に必要な水量 = 300-500

成育期間↑/温度・水↑/土壌養分↓ = 要水量↑
→ 乾地農業 dryland farming: 水効率 Ex. 深根性植物 = 耐乾性↑

気相 air phase

大気と比較: CO2濃度10倍 + 水蒸気圧高

[日本] 土壌表面を除きほぼ水蒸気で飽和される +
           CO2濃度低い - 土壌呼吸 soil respiration: 根・微生物

根毛: 表面積大 - 水吸収 → 根毛発達に気相(空間)は重要
孔隙 pore: < 0.0001 mm - > 0.1 mm

動物(ミミズ等)により作られた更に大きな孔もある + 形様々

ここに液体・気体保持 → 孔壁表面に様々な物質が付着あるいは吸着

土壌三相測定法

1. 生重測定 (採取は100 cc採土管)

標準: 105°C 24時間乾燥 → 土壌によって調整 (暴れる乾燥器で105°Cで泥炭乾燥させると燃えることがある。80°C 3日位乾燥させてもよい - 大容量だと、もっと時間がかかることもある)

2. 乾重測定
3. 液相率 = 生重 - 乾重
4. 固相率 = 乾重 / 真比重

真比重(土壌粒子密度, particle density)は、ピクノメータ等を用い測定するか土壌による目安値を用いる。測定した方が正確ではある

真比重 (g/cm3): 有機物が多いと低くなる
火山灰土壌: 2.4-2.7
無機質土壌: 2.6-2.8
有機質土壌: 1.2-1.5 (泥炭: 1.4-2.3)

5. 気相率 = 100 - (液相率 + 固相率)
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