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(露崎担当分 2019年10月31日更新) [ 日本語 | English ]

公開講座「北海道の自然環境再考: その危機的現象をとらえる」
湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として-




有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[2010年度 シラバス] [ 2002年度: 緑のない山が緑になるまで ]

2010(平成22)年度 北海道大学大学院環境科学研究院 「公開講座」

《北海道の自然環境再考: その危機的現象をとらえる》

湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として-

Conservation and restoration of wetlands - in the case of Sarobetsu mire -


Poster
湿原の植物と保全 P

概要: サロベツ湿原は、原生花園とも呼ばれるように、様々な植物が生育している。また、ラムサール条約に登録され、水鳥保護上も貴重な湿原である。しかし、世界の至るところで、主に人為により湿原は減少の一途を辿っており、地球温暖化が、その減少に追い討ちをかけている。ここでは、サロベツ湿原の中でも大規模な撹乱を受けた泥炭採掘跡地の遷移過程を、水、埋土種子リター定着促進効果絶滅危惧種というキーワードでまとめ、保全と復元について考えたい。

Poster
研究概要(2019) P

Poster
「撹乱」に対する湿原植物の応答 P

レジュメ 湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として- P

内容 (2010年9月7日 18:30-20:00)


スライドタイトル
  1. 湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として- (はじめに)
  2. I have a dream today ... P
  3. 湿原とは what is wetland?
  4. (泥炭)湿原を脅かすもの threat to peatland
  5. サロベツ湿原 Sarobetsu mire
  6. 泥炭採掘跡地 post-mined peatland
  7. サロベツ湿原の絶滅危惧種 endangered species in Sarobetsu mire
  8. モウセンゴケ属2種の分布 distribution of two Drosera species (Hoyo & Tsuyuzaki 2013)
  9. 温度と種子発芽 seed germination temperature and seed germination
  10. 水と種子発芽 water and seed germination
  11. 種子繁殖と栄養繁殖 sexual and vegetative reproduction
  12. 植物植被面積(被度)・種数の変化 temporal changes in species richness and plant cover
  13. 優占種の被度変化 changes in dominance on dominant species (Nishimura & Tsuyuzaki 2014)
  14. 優占種の変化 changes in dominant species
  15. リターと泥炭 litter and peat
  16. リター初期成分と堆積量 chemical components in the initial litter and litter accumulation
  17. リター分解速度litter decomposition rate

summary

  1. 微生物分解過程は植生よりもリターで異なる litter determines microbial decomposition more than vegetation
  2. 植生と埋土種子の関係 relationship between vegetation and seedbank (Egawa et al. 2009)
  3. 埋土種子の分布 distribution of seedbank
  4. 発芽と生存 seed germination and survival
  5. 実生成長 (播種2年後) seedling growth (for two yeares) (Egawa & Tsuyuzaki 2011)
  6. 定着促進効果 (ファシリテーション facilitation) (Koyama & Tsuyuzaki 2010)
  7. 谷地坊主の実生への効果 effects of tussocks on seedlings (Koyama & Tsuyuzaki 2012)
  8. 地下水の物理・化学特性 physical and chemical properties of groundwater
  9. スケール依存性環境要因 scale-dependent environmental factors (Nishimura et al. 2009)
  10. 富栄養化 eutrophication
  11. 施肥によるバイオマス(植物の重さ)変化 effects of fertilization on biomass (Nishimura & Tsuyuzaki 2015)
  12. 遷移(回復)機構は見えてきた (おわりに) light for understanding the mechanisms of succession (or revegetation)
講座で紹介できなかった研究・講座後に発表された研究

2000年 - 2010年 面積 (ha) (2011/ 3/15 さっぽろ自然調査館)


泥炭掘削跡地における植被分布


31 【ホロムイスゲ-イボミズゴケ群落】0.8 - 0.8

植生定着が最も進行した群落である。イボミズゴケが高被度で生育し、ホロムイスゲ、ヌマガヤ等の草本が優占する。初期に採掘・埋塞されたエリアでまとまってみられる。

32 【ホロムイスゲ-ヌマガヤ群落】 27.2 - 33.3

植生定着が比較的進行し、ヌマガヤ、ホロムイスゲ等が優占する群落である。

33 【ミカヅキグサ群落】

ミカヅキグサが優占し、その他の生育種が少ない単調な群落である。ペースト状の泥炭で形成れた浮島上に分布する。

34 【ミカヅキグサ-ヨシ群落】 17.9 - 20.9

ミカヅキグザ群落と類似するが、優占するミカヅキグサに加えヨシが比較的高被度で生育する。ミカヅキグサ群落と同様な立地に分布する。

35 【ミカヅキグサ-イボミズゴケ群落】 23.8 - 27.0

ミカヅキグサ優占する単調な群落だが、イボミズゴケが生育する。ベースト状の泥炭で形成された浮島上でやや湿性状態が保たれた場所にみられる。

36 【ヨシ-スゲ群落】 6.8 - 5.4

浮島が浅く冠水した場所にみられる抽水植物群落である。優占するヨシ、スゲ頼をはじめカキツバタ等の抽水植物、沈水植物ヒメタヌキモ等もみられる。

37 【ヨシ-ミズゴケ群落】 9.8 - 10.0

ヨシが優占し、地表にはミズゴケが密生する群落である。冠水しないが過湿状態が保たれた浮島上にみられる。

19 開放水面___52.6 - 51.5 ▲ 1.1
21 裸地_______36.3 - 26.2 ▲ 10.1
____________175.1 - 175.1

[ 稚咲内 ]

サロベツ湿原史 (hisotry)


天塩川 + 支流サロベツ川下流域: 低地部に泥炭堆積 - サロベツ湿原

4-5千年: 日本海沿岸部砂丘帯 + 古サロベツ湖(宗谷丘陵が囲む潟湖)

縄文前期: 遺跡 - 居住始まる
明治: 開拓使 (天塩地方は移住開拓困難と判断される)
I. 明治30年代-第二次大戦前

明治30-40年代: 国有未開地無償貸付

明治38年 岐阜団体兜沼入植 (次いで山形団体等)

II. 第二次大戦後

緊急開拓事業: 豊富町350戸入植
昭和36年 総合開発事業

昭和43年 サロベツ放水路完成 - 水害緩和

昭和40年代以降: 大規模開発(農地開発事業) - 湿原面積急速に減少
泥炭採掘 (※ 昭和15年頃も採掘 - 防毒マスク吸着剤)

上サロベツ湿原
三面利用 = 農用地 + 工業用地 + 保全活用(湿原)
農用地: 酪農 - 粗飼料生産基盤整備
動物相
哺乳類: エゾシカ・キタキツネ・エゾユキウサギ・トウキョウトガリネズミ
爬虫類: コモチカナヘビ(宗谷海峡以北)等
鳥類: 渡り中継地 = マガン、オオヒシクイ等、繫殖地 = チュウヒ、オジロワシ、アカエリカイツブリ、ツメナガセキレイ、タンチョウ等
魚類: イトウ、エゾホトケドジョウ、ヤチウグイ、エゾトミヨ等
昆虫(湿原種): カラカネイトトンボ、オゼウンカ、キタアカジマウンカ、エゾコガムシ、ゴマシジミ、ヒョウモンチョウ等

利尻礼文サロベツ国立公園

Sarotetsu
利尻礼文サロベツ国立公園線引

語源

1950 利尻・礼文 - 道立公園指定
1965 利尻・礼文 - 国定公園指定

指定面積 21222 ha (特別保護地区 3332 ha)

2003 原野部編入

1971 総合開発構想(開発局): サロベツ = 高生産性の酪農畜産地域
1974 国立公園指定
1987-2004 サロベツ原野保全対策事業: 乾燥化調査 + 対策試験
1989 幌延ビジターセンター開設
2002 サロベツ再生構想策定検討会設置

2004 サロベツ再生構想

2003.01 自然再生推進法 - 2003.04 自然再生基本方針
2004 特定非営利活動法人サロベツ・エコ・ネットワーク設立
2005 ラムサール条約登録 (サロベツ原野) 2011 サロベツ湿原センター移転
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