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(露崎史朗a・北山太樹b)
Shiro Tsuyuzakia and Taiju Kitayamab: Hypochoeris, a misspelling of Hypochaeris (Asteraceae)
植物研究雑誌 (1996) 71: 302-303 を元に改変
米国西海岸で広く使われているHitchcock and Cronquist (1973)の「Flora of the Pacific Northwest」ではブタナ(あるいはタンポポモドキ)の学名の綴りはHypochaeris radicataとなっている.一方,日本の図鑑等(北村・村田・堀 1957, 長田 1972, 1976, 大井 1975, 奥山 1977, 佐竹ら 1981, 小野・林 1987, 沼田・吉沢 1988)ではHypochoeris radicataとなっている.つまり,属名の7文字目の綴りが米国ではaとなり,日本ではoとなる傾向がある.唯一,原色日本植物図鑑(北村ら, 1957)の索引の部分のみがaの方のHypochaerisを用いていた(但し,本文中ではHypocaerisとなっている).牧野(1977)にはこの属の記載はなかった.そこで,いずれの綴りが正しいのかを明らかにするために,原記載等を調べてみた. この属の原記載は,"Species Plantarum"中にLinnaeus (1753)によってなされ,その学名はHypochoerisではなくHypochaerisとなっている.しかし,この綴りはLinnaeus (1754)の"Genera Plantarum"においてHypochoerisとなっており,これが現在に至る綴り間違いの始まりとなっているようである.命名規約上は"Species Plantarum"の名前が優先されることになる(ICBN Art. 13.4)のでブタナの属名はHypochaerisが正しいことになる.ただし,語彙上は-choerosが「子豚」を意味するギリシア語を起源とする(豊国 1987)ため-chaerisは誤植かリンネのミススペルである.実際にSprague (1929)は言語学上の理由からHypochoerisが正しいと主張したが,この意見は採用されずHypochoerisは保留されていない.1905年以前は命名規約がなかったので西欧でも"Genera Plantarum"に拠って研究を進めた人はいるようで,1888年に-oとしたイギリスの文献がある(Forbes and Hemsely 1888, p 478).最近でもMabberley (1987)は-oとしている.全体的に西欧ではこの綴りには修正が入れられており,"Index Nominum Genericorum (Plantarum)" (1979)やZander (1994)ではHypochaerisをHypochoerisと並べた上で採用しているので,今後-oとしたミススペルが見られることは減るであろう. |
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[1] 2015年6月24日に札幌市東区北28条東2丁目で見た巨大ブタナ。この年は、全体に大きいのが多い。[2] 2009年7月31日、東海大第4高校近くの光風園にて。[3] ブタナに一面覆われた芝生。2011年7月11日、東区北20条東1丁目にて。[4-5] 2009年8月30日、東区北28条東4丁目の空き地にて。[6] 2009年8月31日、同。
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[7] 2012年7月8日、渡島駒ヶ岳南西斜面にて。登山道から数10 m離れたところ。シラタマノキ(Gaultheria miqueliana)と一緒に生えていて気持ち悪い。[8] 2019年6月6日、札幌市西区北24条東1丁目ビル脇。
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[1/2] 2012年9月18日、神戸空港到着ロビー前の駐車場にて。[3] 2024年6月25日、北海道大学和歌山研究林裏庭にて。
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補
(a北海道大学大学院地球環境科学研究科, |
ヒメブタナ (姫豚菜) / ケナシブタナ (毛無豚菜) / ボウズネコノミミ
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[1-3] H. glabra. 西オーストラリア、マーガレットリバーにて2004年2月7日撮影