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(2021年10月18日更新) [ 日本語 | English ]

多様性 (diversity)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

種の豊富さ species richness

ある群集あるいは調査区内の種数(≈ 種密度 species density = 単位面積あたりの種数)
種数の相対的豊富さ

熱帯 → 種数多 → 多様性高
冷帯 → 種数少 → 多様性低 (それでいいの?)

多様性 diversity (Shmida & Wilson 1985)

ある群集がどれほど多くの種から構成されているか
種数 richness
均等性 evenness or equitability
空間分布 spatial distribution
この3要因のうち1つ以上を含むパラメータ
群集多様性のレベル
  • 点 point: ある点における多様性
  • α多様性 (α-diversity): 種多様性 (species diversity)
    あるサンプル(調査区)または群集中の多様性
  • β多様性 (β-diversity): 生息地間多様性 (between-habitat diversity)
  • γ多様性 (γ-diversity): 景観多様性 (landscape diversity)
  • ε多様性 (ε-diversity): 地域多様性 (regional diversity) → γ多様性よりさらに広大

[多様性指数, 種数面積関係, 生物多様性]

索引
多様性 diversity
自然保護へ応用: 群集安定性-相互関係の安定性 → 気候的極相 (climatic climax community)
安定群落 = 資源量も安定 → 資源保全上好ましい群集

捕食安定 - 種多様性維持
競合・共同 - 群落種構成・構造性の保持

原始林・原生状態 = 気候的極相(climatic climax)保全必要性
実際の群集は不安定かつ中期(intermediate stage)が一般的: 雑木林・二次林・草地・湿地・河畔林等
→ 中規模撹乱理論 (intermediate theory): 遷移途中相が最も多様性高い(保護必要)。極相を疎かでよいという意味ではない
島の生物地理学 (island biogeography): 保護区域の考え方
仕組み
  1. 物理的要因 → 複合要因 (complex factor): 遷移 (succession), リービッヒの最少律 (Liebig's minimum law), 種間・種内競争 (inter-and intra specific competition)
  2. 物理的要因と地形: Holdridge system of life zone
  3. 齢構成 age structure

多様性指数 (diversity index)


α多様性 (α-diversity)


= 生息地内多様性 (within-habitat diversity or habitat diversity): 生息地 (habitat) における多様性

多様度指数推定法

得られたデータの性質を考慮
1. 群集小さく、全サンプル識別が可能で個体数カウント可能

1集団における多様性指数なのでαおよびγ多様性の指標となる → 各多様性式がそのまま適用できる

2. 群集大/ランダムサンプル (Basharin 1959): 期待値を求める必要

E(H^') = H' – (Q – 1)/2N = –Σi=1npilnpi – (Q – 1)/2N

Q: 全群集の総種数推定値 →
対数正規分布(Preston 1948)か負の二項級数則(Brain 1953)のあてはめ
S = Q[1 – (N/kQ + 1)k], law of Brian's negative binomial series (Brian 1953)

E(J^') = E(H^')/lnQ = (H' – (Q – 1)/2N)/lnQ

3. ランダムサンプルではない

各調査区内サンプルの順次累積により計算されたH'が調査区増加につれ頭打ち時のH'を採用

Type 0
種数 number of index = species richness
Type 1
種数と総個体数のみに基づく多様性指数

Gleason, Margalef, Menhinickなど

Type 2: 異質性指数 heterogeneity idnex
(a) 均等度 (evenness): 群集における各種の個体数のバラツキを考慮

種-優占度曲線 (species-dominance curve)
Whittakerの均等度指数 Whittaker's evenness (Whittaker 1952)
Bullaの均等度指数 (Bulla 1994, Feisinger et al. 1981)
Simpson (1949)

(b) Def. 情報量(情報エントロピー): Shannonの情報量
仮定: サンプル = ランダムサンプリング + サイズ無限 + サンプル漏れない
Ex. 1: トランプ: A 2 3 4 5 6 7 8 9 10 J Q K

任意に1枚とり、それがどれであるかを知るまでに必要な情報量 = 可能性の数W
log2W: bit (底2 = bit, e 自然対数 = nit (or nat), 10 常用対数 = dit) → 見やすさを考慮し底を決める
トランプ W = 13 → log213 ≈ 3.70 < 4
最低4 bitの情報量(うまくいけば3 bit)で知れる ⇔ トランプシステムはlog213の情報量を持つ
全てが等確率で起こる → log2W = –log2(1/W) = –log2p

p: 任意の1枚を引いた時に正解である確率

Ex. 2 くじ:______1等__2__3__スカ

_確率 (pi):__p1__p2__p3__p4
普通のくじ(1等が一番あたりづらい) → p1が一番情報量高い
平均情報量 H = –Σipilog2pi → くじの平均情報量はHである

Shannon's equation (Shannon-Weaver equation), H and H'
H = –Σi=1s(ni/N)·ln(ni/N)

(Shannon-Weaver 1949, Good 1953, Pielou 1966)

I = 1/N·ln(N!/n1!n2! … ns!) (ブリローウイン式 Brillouin's equation)

(Brillouin 1951)

[Ni = piN, Nは十分大 → N! ≈ (2π)1/2·NN+1/2·eN, スターリング近似式]

I = ln(N!) – Σiln(piN)!

= –NΣipilnpi – (S – 1)/2·lnN – 1/2Σilnpi – (S – 1)/2·ln2π

H' = limN→∞(I/N) ≈ –Σipilnpi ≡ Shannon's equation [pi = ni/N]
H (or Dn) = I/N, J (or Dm) = I/(NlnS) (S = total number of species)

(Margaleff 1957, 1958)

Hurlbert (Hurlbert 1971)

均等度指数
VH' = (H' - H'min)/(H'max - H'min)
N → ∞, H'min ≈ 0, H'max ≈ (S - 1)/S, VH' = H'/H'max
多様度指数:
DI = Σi=1s[(ni/N)·{(Nni)/(N – 1)}]

McIntosh (1967), U, Dm, Em: U = √Σi=1sni2

→ 多様性, Dm = (NU)/(N - √N) → ユークリッド距離に関連
→ 均等度, Em = (NU)/(NN/√S)

May (1975): Berger & Parker (1970)を発展], d, or 1/d
Renyiの一般化された情報エントロピー式 generalized entropy

N[a] = [(p1ω1 + p2ω2 + … + psωs)/(ω1 + ω2 + … + ωs)]1/(1 – a)

= 1/(1 – a)·log[Σkpka/ωkpk]

1/N[2] (arithmetic mean) = log(1/ΣΠ2)
1/N[2] (geometric mean) = exp(-Σi(pi·logpi))
1/N[2] (harmonic mean) = logS

Bulla (1994): DI = E·S, E: Bulla's evenness index
SHE解析, SHE analysis (Hayek & Buzas 1997)
  1. 多様性(H) = 種数(S)と均等度(E)の組み合わせ → これを如何に合理的に行うか = SHE analysis
    H' = lnS + lnE (0E ≤ 1なのでlnEは常に負) → lnSから均等度の総和を引いたもの
  2. サンプルサイズ問題を切り離す(の解決)
    実験的にはサンプルサイズ大きくなってもH'は大きく変動しない → 種数面積曲線形を考えよ
Jack-knifing diversity index (Quenouille 1956, Tukey 1958, Zahl 1977)
分布型考慮不要 + サンプル漏れ認める + ランダムサンプリングの仮定不要

→ ジャックナイフを行なうため複数サンプルの抽出必要

Pielouの均等度指数(Pielou 1969), J' → ジャックナイフに似る
p1 = p2 = … = pS = 1/S

H'max = -Σ(1/S·ln(1/S)) = lnS → S↑ → H'max
H'min = lnN - (N - S + 1)/N·ln(N - S + 1) = N/(N -1)·{(2N - S)(S - 1)}/N2
J' = H'/H'max = H'/lnSJ'max = 1 [H'max = lnS]

真の多様性 true diversity
闇の多様性 dark diversity
偽の多様性 pseudo-diversity

(Warwick & Clarke 2001)

分類学的区分指数 taxonomical distinctness index
多様性(5属から計5種5個体) < 多様性(5科から計5種5個体) ⇒
種間距離(ωij)に荷重

同種 = 0 (当然), 異種同属 = 1, 異属同科 = 2, 異科同目 = 3, …

Average taxonomic distinctness for presence/absence data, Δ+

= Σi=1SΣj=1Sωij/{S(S - 1)/2},__ij, 1 ≤ Δ+L - 1 (L, 分類群階級数)

Taxonomic distinctness for abundance data, Δ*

= Σi=1SΣj=1Sωij·ni·nj/ Σi=1SΣj=1Sni·nj,__ij, 1 ≤ Δ*L - 1

系統多様性 phylogenetic diversity, PD
系統樹(phylogenetic tree)に基づく多様性

Ex. 葉緑体rbcL遺伝子塩基配列に基づく分子系統樹
系統多様度自体が理論・概念上論争中 (使うな!)


空間異質性理論と競争・捕食仮説

多様性-安定性仮説 diversity-stability hypothesis
時間理論と生産力仮説 time theory and productivity hypothesis
1) 時間説 (time theory)
多様性の時間的変化(植生遷移系列における多様性の変化)
植物群集は遷移が進むと種数増す → 時間と共に多様性増加

Connell & Orias: 環境安定性 → 群集複雑化
Pielou: 群集安定性 → 群集多様性
Connell & Orias: 多様性は生産力に依存するのではなく環境の予測可能性に依存する

             N1   N2   N3   N4   N5   Total Simpson Shannon (H')
            100    0     0     0     0     100    0             0
              70  30     0     0     0     100    0.4242    0.2653
              50  50     0     0     0     100    0.5051    0.3010
              80  15     5     0     0     100    0.3384    0.2662
              34  33   33     0     0     100    0.6733    0.4771
              50  20   15   10     5     100    0.6718    0.4736
              20  20   20   20   20     100    0.8081    0.6989

一般に多様性は種数とともに増加。均等に分布するほど大きい
→ 遷移が進むにつれて種数増加、均等度増大が起こると予測(否定)
→ 競争により優占種が出現する場合には成り立たない
少なくとも環境安定性ないし環境予測可能性は遷移を保証し群集多様化に寄与する

初期遷移段階に関する多様性変化に関しては不明の点がある
遷移初期における多様性決定要因に関する仮説
植物供給源による制限 restriction from plant source
植物供給源の量・質に群集の個体数・種数は大きく支配される
遷移初期: 供給起源により多様性が決定されやすい(Tsuyuzaki 1991)

↓ 定着様式による多様性の変化

Scramble competition = Niche先取り説(生存資源に関する競争)
Contest competition = Random niche boundary説(この場合は、種-優占度曲線が折れ棒型になる)

→ ニッチ重複モデル (overlapping niche model): 間接的な競争である

2) 空間異質説 (theory of spatial heterogeneity)
空間的に異質なところでは多様性が高い (β-diversity)
多様性 diversity
群種を構成する要素のバライエティ
→ ある群集の競争状態を反映するもの(non-equilibrium theory的立場)
複雑性 complexity
diversity ⊂ complexity
空間の相互作用
多様性 + 要素間の関係(競争等)
密度変動型: stability, predictability → constancy
安定性 stability: 定義複数
1. 撹乱に対し系が平衡にとどまる能力
2. 元の平衡への復元能力
3. 安定性は

恒常性
予測可能性 predictability
復元性 (弾力性) resilience
永続性 persistence: 個体群の時間的な経過での存続性

の4基準の1つ以上で計られる(Watt 1973)
複雑性-安定性ドグマ
群集安定性尺度 (Nicholson 1954, MacArthur 1955): 食物網を通って高次の消費者へ流れるエネルギー経路の選択の数 → エネルギーが食物網のあるリンクに停滞することが多い

___________
_____↗1/3________↖2/3
__________________
__↗2/3_↖1/3____↗1/4_↑1/4_↖1/2
q1_____q2__q3___q4___q5

q1 = (1/3)(2/3) = 2/9, q2 = 1/9, q3 = 1/6, q4 = 1/6, q5 = 1/3
H' = –Σi=1sqilog2qi

外から入ったエネルギーがどの経路pathを通るかの確率を求めたもの: MacArthurはこれをstabilityと呼ぶ
→ このフロー(or path)がどの位あるのかはcomplexity = stability
経験的事実 (Elton 1958): 群集を人為的に多様化 → 我々にとって望ましい
    高次 安定性 多様性
         ↓     ↑×
    低次 多様性 安定性
Watt (1973)のドグマが単純ではない理由
  1. ある一つの栄養段階の安定性が高いと下位の栄養段階はむしろ不安定になる
  2. 生物の空間分布は安定性に対して多様性と同様に重要な関係を持っている
  3. 単に種数のみでなく群集構成種それぞれの系統分類上の位置が安定性に対して重要である

→ 一つの栄養段階内での種間競争がその栄養段階を安定化する機構として働く
⇔ 共通資源を巡る競争は競争排除原理によって最終的にただ1種の独占に帰着するはずであるが、競争以外の種間関係(共生や捕食など)と環境変動作用がこれを妨げているので群集全体は多様化し安定化する
1栄養段階単独では不安定になるが他栄養段階の影響により群集全体として安定になり得る(Paine 1980)

3) 競争説 (競争仮説, competition hypothesis)
競争は共存に通じる

競争の激しい所ほど多様性高い ↔ 最も競争に強い種が存在すると種間競争小さくないり、その種が優占し種数は減るため、種間競争の激しい状態の方が種数は多い

種間競争を検出するための手順
  1. 生命表分析 → 密度依存性を示す
  2. 同じ環境条件下でいずれかの種除去 → 残りの種の個体数変化
  3. 他種の存在がそれ以外の種の密度を制限していることを示す
4) 捕食仮説 (predation hypothesis)
捕食者の存在が、捕食者がいなければ最も優占する種を減少させることにより、食べられる側の種間競争を軽減させ種数を増大させる(Paine 1966)
5) 生産力仮説 (productivity hypothesis)
生産量↑ → 多様性↑ (Tilman 1982)
種内競争の効果の方が種間競争の効果よりも強い時に安定共存生じる
生物多様性の緯度勾配 = 一般に、生物の種数は熱帯地域で多く、高緯度地方にいくにほど少ない

アメリカ大陸熱帯雨林木本種数: しばしば300種/0.1 ha ↔ カナダ・アルゼンチン森林: しばしば20種以下
→ 主に森林生産力や構造の違いによると考えられる。一年中強い太陽光が降り注ぐ熱帯雨林では階層構造が発達しやすく、色々な高さや樹形の樹種が共存できるのに対し、冬が長く太陽光も斜めから射し込む高緯度地方の森林では階層構造が発達しにくく、多樹種が共存できない

用語
adaptability: 適応性
innovation: 革新性
rebustness: 頑強性
responsiveness: 応答性・感応性
redundance: 冗長性・余剰性
radpidity: 迅速性

(Connell 1978)


熱帯雨林、珊瑚礁における種多様性


平衡に近い状態で維持 (Diamond 1978) – diffuse competition → niche
種間競争: もともと効率のよい競争者となれるハビタット – 資源優占
自然撹乱頻度、環境変化速度はperturbationからの回復速度よりも遅い – non-equilibrium
あまり効率的でなく適応もうまくできない種の競争排除は、確固たる予測性ある過程ではない。何か他の力が平衡への回復過程を後戻りさせたり、偏らせたり、遅らせたりしている
→ 平衡理論を群集生態学に適用することの有効性疑問視
仮説: 植物および固着性動物において

群集は平衡状態に達することはなく高い多様性は連続的に変化した結果
→ non-equilibrium hypothesis
撹乱から回復した高い多様性は様々な機構により平衡状態で維持
→ equilibrium hypothesis

非平衡仮説

1) 中規模撹乱仮説 intermediate disturbance hypothesis
richness
  1. 素早く成熟する種。たまたま繁殖器官を生産し、しかも近くに定着していた種
  2. 資源の搾取、他個体の妨害能力においてまさる競争者が残りのものを消滅させる。競争能力は同じでも物理的撹乱や天敵に抵抗力のある種が大部分の空間を占める
1947 Eggeling: ウガンダの森林

colonizing-mixed-climaxの3ステージに分け多様性調査

1956 Jones: ナイジェリアの森林を調査

→ 高い多様性は森林遷移のnon-equilibrium intermediate stageで見られた
→ mixed rain forestは熱帯に普通に存在するので、撹乱が地域の大部分を非平衡状態を維持するのに十分なだけ頻繁に生じている可能性が高い

Cf. 放牧等による捕食が植物群集の生産量に与える効果 effects of herbivorous damages on plant communities

2) 等機会仮説
α-多様性は実在する種数と個体群密度の関数であると仮定するならば、
全種は空いた空間へ移住。侵入者に対する抵抗、物理的撹乱、天敵の変化に対する生存能力は等しい
種は様々な能力において異なり、その違いが環境傾度に沿った種の予測性のある分布パターンとなる

→ 熱帯雨林には合わない

(Hutchinson 1957, 他)

3) 段階的変化仮説 gradual change hypothesis
種はそれぞれ異なる時期に競争的に優勢になる
種間競争で勝つ能力が環境変化により他種の能力以下になる以前に他者を消滅させるだけの時間はない

→ 多種共存

平衡仮説

1) ニッチ多様性仮説 niche diversification hypothesis
光・水・栄養における量的変異の傾度
土壌型
撹乱によって作り出されるハビタット

→ 熱帯: 100種以上の種が平衡状態で共存できるのか

→ 実際に森林では平衡状態に近づくと単一樹種が優占する

熱帯雨林ではniche diversificationは共存に対してあまり寄与していない

2) 循環ネットワーク仮説 circular network hypothesis
A < B < C < A → 循環遷移 cyclic succession (Watt 1947)
3) 死亡率補償仮説 conpensatory mortality hypothesis
死亡率が頻度依存であれば競争排除は無限 (predation-avoidance hypothesis)

補償による死亡は、ある場合に起こるがmixed tropical rain forestの高多様性維持に重要とは思えない

相対的な重要性は異なるが6つの仮説はいずれも高い多様性を維持するのに貢献している

撹乱 + gradual climatic change → local assemblageの変化 → 劣勢競争者消滅回避 → 多様性

→ 平衡仮説、非平衡仮説は相互に排他的なものではない

ある程度のα-diversityは平衡状態でも存在する
気候変動、撹乱 → 競争的階層、競争過程に影響 (intermediate disturbacne, equal chance, gradual change)

[クラスター分析 (cluster analysis)]

β多様性 (β-diversity)


β多様性 (および系統的多様性) → β多様性の減少 = 均質化
群集比較 interspecific association and similarity between communities = 群集間種間類似度測定(β多様性)
→ ニッチを反映した多様性、あるいは個体群・群集間多様性
→ 群間類似度等により評価

群集類似度(群間類似度) community similarity

二元データ
Similarity Stand A + / B + → c (= Σi=1nmin(xi, yi): 定量的データ
Stand A + / B - → a
Stand A - / B + → b
Stand A - / B - → d
二重ゼロ対偶 (double zero match): dは両方になく、これの解釈で類似度の性質は異なる

Ex. 類似度行列 similarity matrix
         A         B        C        D   
  B  0.074
  C  0.113  0.136
  D  0.059  0.144  0.135
  E  0.130  0.117  0.119  0.069

群集間類似度選択: 各類似度の一般的性質考慮し選択決定

計量的 (metric)
以下の4つの計量空間基準(metric space axiom)を満足する量d(A, B)は計量的である
  1. A = Bd(A, B) = 0
  2. ABd(A, B) ≠ 0
  3. d(A, B) = d(B, A)
  4. d(A, B) ≤ d(A, C) + d(B, C) - 三角不等則 (triangle inequality axiom)
計量的尺度長所: 2サンプル類似性をS次元空間中2点間距離で表現 → 平均値や重心間距離概念に適合
半計量的 (semimetric)
基準1-3を満たすが4を満たさないもの

Ex. 計量的 - ユークリッド距離, 半計量的 - キャンベラ測度

距離 (distance)
ユークリッド距離 Euclidean distance
distance
サンプル A, Bにおける種iの優占度をniA, niB

(Σi|niAniB|)1/x ≡ オーダーxのミンコフスキー測度 Minkowski metric

= パワー距離 (power metric)

x = 1: マンハッタン測度 Manhattan metric (or city-block metric)
x = 2: ユークリッド距離 Euclidean distance

3種からなるサンプルABの間のユークリッド距離AB

重みつきユークリッド距離: (Σiwi|niAniB|)1/2, wi: 重み

Ex. wi = 1/sii, sii: 変量iの分散

単純マッチング類似度 simple-matching similarity measure

ダイスの類似度 Dice similarity measure
ハーマンの類似度 Hamann similarity measure
ロジャーズ・タニモトの類似度 Rogers-Tanimoto similarity measure
ラッセル・ラオの類似度 Russel-Rao similarity measure
ソーカル・スニースの類似度 Sokal-Sneath similarity measure
クックの距離 Cook's distance

i番目のデータの推定値に及ぼす影響 – 感度分析に利用

チュビシェフの距離 Chebyshev distance
マハラノビスの距離 Mahalanobis generalized distance, dij

ユークリッド距離を分散で正規化したもの
dij = Σk=1nΣl=1nskl(xkixkj)(xlixlj)
skl: 分散共分散行列sklの逆行列(k, l)の要素

非計量的 (non-metric)
森下のCλ指数: 重複度 degree of overlapによる指数 (Morisita 1959)
Cλ = 2Σi=1Sn1in2i/{(λ1 + λ2)/N1N2} (0 ≤ Cλ ≤ 1),

λ1 = i=1S{n1i(n1i - 1)}]/{N1/(N1 - 1)}
λ2 = i=1S{n2i(n2i - 1)}]/{N2/(N2 - 1)}
N1, N2は地域1, 2の総個体数、n1i, n2ii番目の種の地域1, 2での個体数、Sは区分の組数(無限大も可)
Cλは方形区毎のnの値を用い2種の存在の連関を調べるのに用いる

添字1, 2は地域ではなく種の番号、iが方形区(地域)の番号となる

変数: 個体数の他に各種の重量や被度、Brawn-Blanquetの被度階級等を入れてもよい

利点 = niche overlap式にも用いる (Horn 1966)
  1. Simpson(1949)式が元のCλ示数は、分布型に関わらず2つの群集の類似度評価を与える
  2. 四分表やCSは個体数を無視する。個体数の判明しているデータにおいては個体数の少ない種(稀種)の存在を反映させうるものとしてこの指数を用いるのはよい
情報量による指数 (Horn 1966)
XおよびY群集におけるShannon-Wiener平均情報量は、それぞれ

H(x) = Σi((xi/X)log(xi/X)), Σixi = X
H(y) = Σi((yi/Y)log(yi/Y)), Σiyi = Y

両群集を1まとめにした場合には

H(X + Y) = Σi(xi + yi)/(X + Y)·log[(xi + yi)/(X + Y)] … (1)

ここで(1)式の両群間情報量和の最大値Hmax(X + Y)は

Hmax = Σi=1(xi/(X + Y)log((X + Y)/xi) + yi/(X + Y)log((X + Y)/yi)

である。一方、Hmin(X + Y)は、X = Yのときであるから(1)式より

Hmin(X + Y) = Σixi/(X + X)·log{(X + X)/xi} + Σiyi/(Y + Y)·log{(Y + Y)/yi}

= Σixi/X·log(X/xi) = H(X) = Σiyi/Y·log(Y/yi) = H(Y) … (2)

となるが一般にXYであるので最小値はXYの大きさによって比例配分して

Hmin(X + Y) = Σixi/(X + YH(X) + Σiyi/(X + YH(Y) … (3)

と表現し、また観測地をHobsとすれば

Hobs = H(X + Y) … (4)

Hobsは常にHmax(X + Y)とHmin(X + Y)の間をとる →
重複度Roは次のように定義できる

Ro = (Hmax(X + Y) – Hobs)/(Hmax(X + Y) – Hmin(X + Y)) … (5)

式(5)に(2), (3), (4)を代入しの分母・分子に(X + Y)を乗ずるとRoの分子は

-Σxilog(xi/(X + Y)) - Σyilog(yi/(X + Y)) + Σ(xi + yi)log((xi + yi)/(X + Y))
= Σ(xi + yi)log(xi + yi) - Σxilogxi - Σyilogyi

+ log(X + Y){Σixi + Σiyi - Σi(xi + yi)}

= Σi(xi + yi)log(xi + yi) – ΣixilogxiΣiyilogyi

分母は

-Σixilog(xi/(X + Y)) - Σiyilog(yi/(X + Y)) + XΣi(xi/X)log(xi/X)

+ YΣi(yi/Y)log(yi/Y)

= Σixilog(X + Y) + Σiyilog(X + Y) - ΣixilogX - ΣiyilogY
= (X + Y)log(X + Y) – XlogXYlogY
Ro = i(xi + yi)log(xi + yi) - Σixilogxi - Σiyilogyi)/

((X + Y)log(X + Y) - XlogX - YlogY)

構造的規則性による指数
a. Resemblance equation (Prestonのz指数、類似式) (Preston 1962)

(a/S)1/z + (b/S)1/z = 1, (0 < z ≤ 1)

S: 2地域(群集)をまとめた総種数、a, b: 2地域個々の種数
z = 0 → 同一群集構成(上式不成立)
z = 1 → 両群集構成が全く異なる

導入 [前提] 種数-面積関係: S = kAα

S1, S2の種数面積関係: S1 = kA1α, S2 = kA2αと表せる

if S1+2 = k(A1 + A2)α → 両地域は生態的に均一な地域と考えられる
上式が成立しない場合にS1+2 = k(A1 + A2)α'となるα'をとればαα'の差は両地域の生態的相違の大きさを表すと考えられる
面積についてはA1 + A2 = A1+2であるが、種数については単純加算であることは全く構成種が異なるときにしかありえないので
S1+21/z = S11/z + S21/zまたは1 = (S1/S1+2)1/z + (S2/S1+2)1/zという式を考える。1/z = 1の場合は全く構成種が異なるときであるので1/zは常に1以下であり、S1+2S1 + S2と表せる

b. 森下のE指数

E = (α1 + α2α1+2)/α1+2, 0 < E < 1
ただしα1 > α2, α1, α2はそれぞれの地域における多様度指数、α1+2は両地域を合計した多様度指数

c. Mountfordの類似度指数 (Mountford 1962)

Williams modelにおいて総個体数がAおよびBである2サンプルが同一群集から得られたものであれば

a = αln(1 + A/α), b = αln(1 + B/α)

が期待される。aおよびbは2つのサンプルにおけるそれぞれの総種数。cを2つのサンプル間の共通種数とすると、種数(a + b - c)における個体数(A + B)のサンプルとの間には

a + b - c = αln{1 + (A + B)/α}
lne(a + b - c)/α = ln{1 + (A + B)/α}
e(a + b - c)/α = 1 + (A + B)/α

の関係を得る。同様に

ea/α = 1 + A/α, eb/α = 1 + B/α

また

ea/α + eb/α = 1 + {1 + (A + B)/α} = 1 + e(a + b - c)/α

を得る。ここでI = 1/αと定義すると

eaI + ebI = 1 + e(a + b - c)I

となる。ここで求めるIがMountfordの類似度指数

非類似度 (dissimilarity) ⇔ 類似度 (similarity)

QS (類似度) = 2a/(b + c + 2a) ⇒
QSd = 1 - QS (非類似度) = 1 - 2a/(b + c + 2a)

= (b + c - 2a)/(b + c)

図示
計量群集間類似度 → 類似度行列表示 [多群比較は視覚的に困難]

類似度行列: 数値記入法と線影表示する場合を見る

群分析表示 = 全体像把握容易

[ 景観生態学 ]

γ多様性 (γ-diversity)


生態系または景観単位あたりの多様性 (s.s.)
(比較的広範な)対象地域の種多様性 (s.l.)

α, β, γ多様性間の関係

(relationships between α, β and γ diversities)

    Community 1: A B C D E F
    Community 2:       D E F
    Community 3: A B     E F G

α1 = 6, α2 = 3, α3 = 5
γ = 7

(Veech et al. 2002)

αavg + β = γ

β = 7 - (6 + 3 + 5)/3 ≈ 2.33

(Baselga 2010)

αavg × β = γβ = γ/αavg

β = 7/{(6 + 3 + 5)/3} = 1.5

種数関係 (species relationships)


種数-面積関係 (species-area relationship)


species-area
調査区サイズ (plot size)
種数-(島)面積関係 species-area curve
N = CSα → logN = logC + αlogS

N: ある分類群の種数
S: 島の面積 → 島の生物地理学 (island biogeography)

一般的傾向

同面積なら種数は 大陸 > 島
島に比べて大陸の傾き(α)は大
面積増大 → ニッチの増大 → 種数増大

(Darlington 1957, Preston 1960)

種数-優占度関係 (species-dominance relationship)


等比級数則 (geometric progression or series)

= ニッチ先取説 (law of Motomura's geometric series)
1943 内田: Simple competition model

M個の部分からなるある範囲 (area with M compartments)
種 (species): A > B > C > D > … (相対優占度 relative superiority)
n: 各々の種の個体数 (individuals of each species)

    |ACD|BD|ADF|ACDE|CE|BCD|             |A|B|A|A|C|B|
    ------------------------             -------------
    |CDF|AC|BD |BFG |FG|CEF|     ⇒      |C|A|B|B|F|C|
    ------------------------ competition -------------
    |DF |AD|BF |AB  |DG|ADE|             |D|A|B|A|D|A|

A: n → B: n(1 - n/M) → C: n[1 - n/M - n/M(1 - n/M)] = n(1 - n/M)2 → D: n(1 - n/M)3
→ 等比級数則 (ratio 1 - n/M)
大きさMの空間にs種の生物がある時、第1位種が空間のうち比率k (0 < k < 1)の部分を占め、第2種は残りの1 - kの部分のkを占めるとすると、s種までの種が占める空間は初項Mk、公比1 - kのgeometric seriesとなる

1932 本村: Geometric mean

logMi = logM1 + log(1 - k)i-1
logMi = logM1 + (i - 1)log(1 - k)
y = b + (i - 1)a

勾配 -a, 切片bの一次式となる(∵ M1 and k = constant)

logN = -axn + b (i - 1 = xi)

一次変数なので最小二乗法によりoptimal model決められる

a 群集複雑性 community complexity

大 - 順位第1位の種が多く単純な群集 ↔ 小 - 複雑な群集

前提:
1) 各構成種の出現確率等しい = 繁殖機会等しい
2) 種間に優劣差ある = 資源(光・栄養塩等)に対する種間競争ある → scramble competition
⇒ 条件満たすには生活型が類似していること
群集全体では成立しくく生活型を層化すると見られる (MacNaughton 1968)
厳しい環境下の少種数群落でよく成立 (Reiner et al. 1971) → resource competition (= scramble competition)
この式は発散する - 理論上の難点

調和級数則 (law of Corbet's harmonic series)

1943 Corbet 1943

Sn = C/nm (n = 1, 2, 3 ...)

Sn: n個体よりなる種数
S (総種数) = ΣnSn (n: 個体数, c, m: constant)

両辺の対数をとると
logSn = logc - mlogn (generally m ≈ 1)

m: 群集複雑性 (a parameter of community complexity)

勾配 -mの一次式: geometric seriesは式的にはharmonic seriesと同等
→ この式は発散する → 理論上の難点

折れ棒モデル (broken-stick model)

= ランダム・ニッチ境界説 (random niche boundary hypothesis)
ニッチ空間が直線に例えられると直線上のランダムな点がその直線を分け各線分の長さが各種の占めるニッチに相当する。各線分の長さ、即ち各種の占めるニッチの大きさ(優占度)Aj

Aj = A/S·Σi=1j1/(S - i + 1)

A: 積算優占度 (cumulative dominance)
S: 総種数 (number of species)
j: 優占度の小さい方から数えたときの種の順位 (jth species counting from the minimum dominant)
優占度の小さい方から数えたときの種の順位

前提: 競争(contest competition)の存在
Ex. 競争は個体群の安定化に寄与する(MacArthur 1957): なわばり等(植物群落では認めづらい) → contest competition

対数級数則 (Fisher's logarithmic series)

1943 Williams

S1(1 + x/2 + x2/3 + …) = S

S = αloge(1 + N/α)
α, xn: constant, x < 1 (但し1に近い)

α: SNで決まる常数 → α-diversity index

対数正規則

競争 + 多様な要因 → 多種生存に関与する時に成立する傾向(Whittaker & Woodwell 1969)

SR = S0·exp(-(aR)2) (a: constant)
⇒ 対数級数則そして等比級数則を包括する規則性と考えられる

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