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(2013年1月22日更新) [ 日本語 | English ]

書評・コラム (Book reviews and columns)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

雑録 [ 報告書 | 植物学会 | 生態学会 | 講演(含 他学会要旨) | 書評・コラム | 報告書 ( 温室 )| 参考文献 ]

 書評は、最初の頃は、本代節約のためにやっていたけど、そのうち趣味の書評となってるような気がする。年に1つは日本語の原稿を書くと誓いを立てて、立ちそうにないと利用されてもいたが、空しくなったので止めてしまった。


書評

コラム

書評


復刻・拡大版 植物学ラテン語辞典


ISBN: 978-4-324-08862-3 価格12600円(税込)

 本書は、日本で初めて本格的な植物学で利用されるラテン語を整理する目的で作られ1987年に至文堂より出版された、タイトル通りの「植物学ラテン語辞典」の復刻版である。植物学に関するラテン語を詳述した書籍としては、英書ではBotanical Latin (4th edn.) Stearn WT (1992)があるが、日本語のものでは現在でも他に類書を見ない貴重な辞典となっている。復刻にあたり、元板はA5版で字が小さく見づらかったが、B5版となり格段に見やすくなった。植物の新種を発表する時には、「国際植物命名規約」によりラテン語の記載文を伴わないと正式発表とは認められない。したがって、分類学に関連する研究上では、ラテン語の単語と文法を知ることは必須となる。ラテン語は、特に日本では、日常使われることはまずない言葉であり、とっつきにくい感もあるが、本書を読むことで決してそのようなことはないことが理解されよう。
 生態学分野においても、少なくとも講座に1冊は備えておくべき書であろう。種生物や植生に関する論文での種名で、著者は学名として書いているのだろうが、そのような種は地球上に存在していなかったりする。そのような間違いは、単語と文法のあやふやな記憶から来ていることが多いが、辞典を調べることで減らせるはずであり、せっかく書いた論文の価値を下げずにすむだろう。また、旧来の植物の範疇を扱っているため、菌類などの学名に使用される言葉も載っているが、むしろ、これはこれで楽しめる。
 内容は、辞典部と文法部の2部構成からなり、辞典部は「ラテン語から日本語へ」と「日本語からラテン語へ」の両方を調べることが可能で、約7800語の単語が収録されている。実際に、好きな学名の中でも長めのものを選び調べてみた。「Sanguisorba tenuifolia Fisch. ex Link var. alba Trauv. et Mey.」(和名、ナガボノシロワレモコウ)は(以下は本文をそのまま引用)、
Sanguisorba, -ae (s.f. I) ワレモコウ属。sanguis (血液) + sorbere (吸収する)。バラ科」、「tenuifolius, -a, -um (adj.A) 薄い葉の (tenuifolius; thin-leaved)」、「albus, -a, -um (adj.A) 白い、白色の (white)」となっており、「血液を吸収する仲間の中で薄い葉の種だが、その中でも白色となる変種」という意味であることが分かる。実際に、ワレモコウは、古来、止血剤として利用されていたそうである。本書を用いると、これらを調べるのは一瞬であった。
 文法部は、植物学におけるラテン語の書き方に重きを置き、長すぎず短すぎない分量で学名に関連した文法を適切に解説されている。見返しにある豊国さん(1992年死去)のオリジナルと思われる「植物ラテン語特徴記述簡便チャート」と「植物ラテン語記載簡便チャート」も便利で、名詞や形容詞の語尾変化等の間違いを避けることが容易となる。さらに、文法部を読むことで、このチャートの意味は、より理解される。Betula maximowicziana Regel (ウダイカンバ)とPopulus maximowiczii Henry (ドロヤナギ)では、なぜ、ウダイカンバの語尾は-anaで、ドロヤナギは-iなのだろう。Polygonum longisetum Bruijn とPersicaria longiseta (Bruijn) Kitagawaはイヌタデの同種異名だが、属の見解が異なると、なぜ種小名の語尾が異なるのだろう。それらの答えも、文法部を読むと、(自分も含めた)第二外国語が苦手であった人でも容易に理解できる。
 さらに、用例が豊富であり、種子植物の属名および主要な種小名の説明もあるところがいい。本書は、辞典という性格上、値段が張るのは残念なことだが、植物学に関連する研究を行う者ばかりでなく、植物に興味ある全ての方が読むことのできるよう、少なくとも各教室や図書館に配置され、そして財布に余裕のある人の座右の書となることを望む。

(北大・院地球環境 露崎史朗)

リンネと博物学 -自然誌科学の源流- (増補改訂)


 植物・動物に興味がある人は,一度は手に触れたい本である.リネーの方がより正しい発音と本書中にあるが,二名法を広め分類学の父と称されるリンネの功績を,生誕300年を記念して集大成したものである.本書を開くと,学生時代に牧野富太郎標本見たさで高知(2008年植物学会開催地)に出かけた時の記憶が蘇ってきた.その牧野をはじめとする生物学者の思想の源流に,手を触れることができる.本書は1994年出版の書に大幅な増補改訂を施したもので,種多様性研究の原典といえる「自然の体系(初版)」原文とその対訳などが新たに掲載された.これだけで十分に満足してしまうのだが,さらに,多くの千葉県立中央博物館収蔵リンネコレクションが掲載された.カラーを含めた満載の図版は,手にして見ることはできないものばかりである.これらを見ていると,リンネは,「神の財産の帳簿作り」を目的に動植鉱物を全て平等に扱うスタンスをとっていたことが,頭よりも目で理解できる.さらに,16名の執筆者が,それぞれの視点から,甘口あり,辛口ありの味付けでリンネの研究を批評しており,これらの論考が本書の価値を高めている.コラムは,いろいろなエピソードが面白く書かれている.論考・コラムの内容は,是非とも読んで確かめて頂きたい.生物多様性の貴重さが,改めて叫ばれているが,その源流と本質を理解するためにも,本書は読んでおきたい.

(北海道大学大学院・地球環境 露崎史朗)

田園景観の保全。景観生態学、戦略、実践


 原書は1996年発行"Countryside Conservation - Landscape ecology, planning and management (3訂版)"である。全体を通じて人間の快適さを高めるのためには、適切な環境の計画および管理の必要性を説く。構成は3部からなり、まず環境問題を景観生態学的視点からとらえ、田園地域(countryside)の生態的、歴史的、文化的側面からの意義について述べている。この部分で、群集生態学の要点がまとめられており、生態学入門書としても十分な価値がある。ついで、環境問題に関わる各団体、政府、地域住民の取組み、および計画策定や環境影響評価などの政策面について述べている。この部分を読むと、生態学的な背景あるいは根拠が計画策定に如何に必要であるかがわかる。最後に、各論として耕作地、草地、森林、湿地、海岸地帯など様々な景観単位における実践例について解説されている。各論の内容から分かるように、田園地域内およびそれに接する様々な景観単位が扱われている。また、訳注が豊富であり、初出の単語については英語が併記されており理解の助けとなる。本書は、田園地域にとどまらず、農林環境と自然環境との境界を研究するものにとっては必読の書となるし、また自然環境と人間との調和に関心がある全ての方々に、基礎(原理)と実践の書として一読をすすめたい。

(北大・院地球環境 露崎史朗)

地形植生誌


 地形植生誌という、私にとって聞きなれない言葉に興味を持った。読後感は、まさに、表題通りの内容であった。本書は、ともすれば循環論法となりがちな地形と植生の対応関係を、地形が植生の分布を規定するという切り口から、様々な地形上に成立する植生を記載し、それらの植生の成立要因を幅広く拾い出している。扱った植生は、大規模スケールのものを除けば主に日本のものに限られる。しかし、本書を読むと、その日本の中だけでさえ、多様な地形に依存した多くの植生が発達しているかがよく分かる。特に、日本の地形形成の重要な要因となる"水の動き"に伴い形成された地形とそれに対応した植生発達を中心に話を進めているのが特徴である。即ち、山の頂上から最終的には海に至るまでの水の動きに沿って話が進む。その意味では、流域生態学のテキストとしても優れ、十分に活用できる。

 水の動きであるから、まず雨や雪により供給された水が浸透する部分(浸透域と呼んでいる)から始まり、それらの水で地表が流出し(侵食域)、それらの物質を運び(運搬域)、溜まる(堆積域)部分に分け、それら個々に成立する植生に関し論じている。地形というと長期間にわたり不変な印象を受けるが、地形は、水の作用により時間とともに変化するという観点から、様々な時間単位での時間軸に沿った植生の動きについても触れている。

 地形と一言でいっても様々な規模(スケール)での地形定義があるが、スケール問題は、現在の景観生態学における最大課題の一つともなっているように議論の余地が残されている。本書では、この点に関しても、「スケールの異なる現象の重ね合わせ」として扱うことを忘れてはいない。大規模なものとして、地球規模から山脈・山地規模までの地形をあげ、これらの規模では主として地形に影響された降雨量、積雪量等の気候分布パターンが植生発達に大きく関係していることを指摘する。さらに、グローバルレベルでの地域間の植物相および植生型の比較から各植生成立には、地史的規模での時間軸を考慮する必要性に触れている。

 ついで、本書の主題ともとれる、一つの山地(あるいは流域)規模での地形と植生発達の関係について、様々な観点から論じている。特に、斜面は、水とそれに伴う土壌の動きをもとに、上部から下部へ、流域についても上流から下流に向かい、それぞれに発達する植生をいかに地形が規定しているかを論じている。具体的には、斜面(上部・下部)・谷頭・谷頭凹地があげられている。そこでは、様々な斜面崩壊が見られ、それに対応した独特の植生が発達する。さらに、水は河川へと移動し、河川の上流から下流に向かい、それらの地形を平野・三角州・海浜に分け、それぞれの植生をまとめている。

 最近、聞くことの少なくなった植物社会学分野からの引用が多いが、これは、多くがこの分野で発展された研究が多いためであろう。しかし、これらの用語に慣れない者でも、さほど違和感なく読める構成になっており、専門家でなくても十分に読める。

 生態系群集の発達を理解するためには、地形要因を考慮することは不可欠であり、それを知るための入門書として、あるいは、教科書として適し、学生ばかりでなく広く一般の人にも十分理解できるまとめ方をしていると思う。さらに、現在、明らかにされていない今後の課題となる部分の指摘も随所になされており、植生と立地の対応関係を研究対象としようとする学生には是非とも一読を薦める。

(北大・院地球環境 露崎史朗)

生物群集の多変量解析


 本書の「まえがき」に記されているように「多変量解析は研究の目的そのものではなく、そこ(生物群集の時間的・空間的・機能的な構造を明らかにする)に至る手段にすぎないけれども、方法が不適当であれば正しい目的に到達することも期待できない」ものである。しかしながら、これまで出版されてきた「多変量解析」の名前を冠した書籍の多くは多変量解析そのものの解説書の域を越えるものではなく、また群集生態学への応用のためには多変量解析に関する数式のかなりな知識を要求された。群集研究の分野では「群集生態学入門」(武田・木元)の先行書があるが、群集研究における多変量解析についてここまで詳しく述べられた書は日本においては過去に例を見ない。本書は群集生態学において使用される多変量解析に関する本が待ち望まれていた時に出版されたタイムリーな書であるといえよう。特に生物群集データを使用した具体例を数多く用いて説明されており、数式が苦手な人でも実際に具体例を自分で解くことによってその数式の意味が理解しできるよう工夫がなされている。更に本書に触れられている解析手法の一部はDOS版のN88-Basicで作製されたプログラム(MULVAC Ver. '95)がフロッピーディスクで1500円で別売されており、こちらも有効に活用できるものである。

 本書は全体6章から構成されている。第1章「生物群集の構造と調査データ」では調査方法とサイズの持つ性質と多様性が扱われ、α, β, γ多様性の関係等について触れられている。第2章「群集サンプル間の類似性尺度」では類似性尺度の一般的性質および個々の類似性尺度の特徴についてまとめ、類似性尺度には二元データと量的データに基づくもの、計量的なものと非計量てきなものに区分されることを述べている。更に、これらの指数の選択基準について触れられている。第3章「種間の分布類似性尺度」では種間の種連関や分布の重なり合いを表現する指数について紹介がなされている。第4章「生物群集の分類」ではクラスター分析について触れ、各手法の短所、長所について検討している。第5章「生物群集の座標づけ」において現在の群集解析の花形ともいえるオーディネーション(座標づけ)の様々な手法を紹介し、それらの個々の短所、長所についてまとめている。特に、多くのオーディネーションにみられる馬蹄効果(あるいはアーチ)について触れ群集データのオーディネーションとしてはDCA(本書では除歪対応分析と訳されている)がPCA(主成分分析)よりも適していることについて述べている。第6章「ニッチ分析」で様々なニッチ幅と重なり合いの指数について解説し、ついでそれらをもとにしたクラスター分析とギルドの検出法について記し、更に種間競争による間接的共同作用の検出と競争を仮定した群集の中立モデルの検証方法に触れている。

 本書において特筆すべき点は、群集研究で多用される多変量解析手法個々の長所と短所に触れられていることである。例えば、前述のオーディネーションにおけるDCAの有効性や、群集サンプル間の類似性尺度としてはサンプルサイズに依存しない指数が有効であり、ClやC'l等を使用することを推奨している。多変量解析を行うにおいて、我々は常にいずれの尺度が得られたサンプルにおいて最も適当なものなのかに頭を悩ませることになるが、その指針として本書は極めて有効である。また、これまであまりこのようなことを検討せずに解析を行ってきたことが多いことへの戒めとも受取れる。

 一言苦言を述べれば、引用文献をみると紹介されている解析手法はほとんどが1980年代までに開発されたものであり、やや古い感じを受ける。特にオーディネーションの章では、現在多くの植物群集生態学者が採用しているcanonical correspondence analysis (CCA)やDetrended CCAについて触れて欲しかった。「今後も新しい方法がつぎつぎと提案されるであろうから、機会を捉えて補ってゆきたい(まえがきより)」と述べられているように、統計および多変量解析手法の発展はまさに日進月歩の発展を遂げており、1980年代までの手法に限定したのは、まず基本的な手法に限定しようとした著者の意図なのかもしれない。この点を考慮しながらも、まさにタイトル通りの「生物群集の多変量解析」手法に関してこれだけ多くを紹介した総説は日本語のものとしては見当たらず、群集生態学を学ぶ者に一読を薦める。

(新潟大学大学院自然科学研究科 露崎史朗)

多雨林と火山 インドネシアの自然と人々


 インドネシアと聞くと,熱帯雨林を思い浮かべる人が多いだろうが,そればかりでなく火山の影響を大きく被っている国である.1815年のタンボラ噴火では餓死・病死者を含めると10万人近くの死者を出している.ほかにも,クラカタウ・メラピ・アウなど多くの火山が人災を引き起こしている.私の専門が火山植生であり,昨年インドネシアを訪れたこともあり個人的に興味ある書籍であった.

 本書は,インドネシア360と命うった1992-93年に行われた探訪の記録をまとめたものであるて.随所にトピックとウィットをちりばめ,読んでいるうちに本書のタイトルの世界が開けてくる.当然ながら5年を経過していると若干違和感を覚える点もあるが,それはむしろ発展著しい国においては必然のことなのであろう.本書の卓越した点は,随想のように読めながら,豊富な現地観察と資料収集に支えられた動植物,社会,民族,地理,歴史(個人的には大戦前後の日本が関与した部分が好きだが)の記載に長けていることである.インドネシア360の行程順に章が組まれているため興味ある地域だけを読んでも十分に価値ある情報が得られる.突然インドネシア語や専門用語が登場し戸惑うこともあるが,それもまた一興であろう.東南アジアを観光以外の目的で訪れるあるいはおとずれた人には予備知識と再発見の書として,そして広い意味での(生物)地理学に興味を持つ人に一読を勧めたい.

(北大・院地球環境 露崎史朗)

Plant Ecology


 植物生産力研究の大御所Schulzeの本なので「植物生態学」とはいえ生理生態学・生物地球科学一辺倒か、と思いつつ開いてみた。すると、憶測は大きく外れていた。1章は、ストレス生理学と題し「やはり」という観があったが、実は、光、温度、酸素、水、塩類等に対する植物の適応について分子・細胞レベルからの知見を交えつつまとめ、次章以降のバックグラウンド的な章となっている。2章以降は、個生態学: 個体レベルの生態学(2章)、生態系生態学(3章)、空間・時間軸上での群集(群生態学)(4章)、地球視野での植物生態学(5章)である。全体を通じ、異なるレベル間の関連性の重要性を示し、最終的には地球レベルの現象をそれで説明できるか、というSchulze流の展開だが、それがうまく生かされ、章間のつながりがよく読みやすい。生態学上の諸問題や政治・経済などの関連分野についても流れに逆らわず適切な位置で解説され、本のタイトルに相応しい内容である。図表がカラフルなのは当たり前の時代だが、さらに1つ1つの図や表に様々な工夫がなされ、複雑な問題を視覚的に整理し容易に理解できる点がよい。実際に、講義で使いたい図表が多く、今期の講義が始まる前に読みたかった。学生には通読する価値は十分あり、学部・大学院のゼミ等で使うのに適している。生態学関連の講義担当者、農学・工学分野の研究者には、質の高い参考書として勧めたい。

(北大・院地球環境 露崎史朗)

コラム


エコパン


台風18号の爪跡

 2004年9月8日、北海道に上陸した台風18号は猛威を奮い、ポプラ並木では、この台風で20本近くのポプラが倒れた。地球温暖化が進むと台風が大型化するというが、それが原因なのだろうか。個人的には、ポプラ(和名セイヨウハコヤナギ)、ニセアカシア(またはハリエンジュ)、ネグンドカエデなどの帰化植物と呼ぶべき植物が減る分には新聞で騒ぐほどの問題とは感じないが、ハルニレを始めとする在来樹種の多くも倒れたのは残念である。特に、大きな木ほどまともに風を受け、老朽化が進んでいるものも多いため、被害が出やすい。昔、北大構内における主要樹種で1番背の高い木の位置を調べたが(図1・表1)、これらのうち、幾つが倒れてしまったのだろう。さらに、上にある木がなくなれば下に生えている植物に注ぐ光の量なども大きく変わるため、徐々に下草も変化していくことだろう。本読本中に、現況を記録しておくことは今後の植物の時間的な変化を知る上での貴重な資料となる。

(露崎史朗)

2009年版差し替えバージョン

 2004年9月8日、北海道に上陸した台風18号は猛威を奮い、ポプラ並木では20本近くのポプラが倒れた。地球温暖化が進むと台風が大型化するというが、それが原因なのだろうか。個人的には、よく倒れた樹種の中では、ポプラ(和名セイヨウハコヤナギ)、ニセアカシア(ハリエンジュ)、ネグンドカエデなどの非在来植物が減る分には新聞で騒いだほどの問題とは感じない。しかし、ハルニレを始めとする在来樹種の多くも倒れたのは残念である。大きな木ほど、老朽化が進み、また風を受けやすいため、被害が大きかったようである。北大構内で1番背の高い木の所在を調べたことがあるが(表1.・図1)、それらのうち数本は、やはり倒れてしまった。2009年度より全学教育「エコキャンパス-植物編」演習が開講される予定である。本演習中に、過去の記録が残されている北大キャンパスの利点を生かすことで、植物群集が時間とともにどのように変化しているのかを理解できる良い機会としたい。(地球環境科学研究院 露崎史朗)

キャンパスの木: 私の学生時代と現在 (2003年, 2005年版再掲)

 私の北大入学年は1980年で、それから20年以上が経つ。当然、その頃小さかった木々も大きく育っている。逆に、老齢や諸般の事情から、北大から消え去った木々も多い。環境科学研究科(当時)の前に生えていたシラカンバは、苗木という言葉に相応しい大きさであったが、今では立派な親木となった。ハルニレ・ポプラ伐採問題は、そろそろ寿命と囁かれながらも、それほど顕在化はしていなかった。院生時代には、桑園近くに下宿し、大学の行き帰りに、毎日、同じ道を通るのもつまらないので、できるだけ道を変えて通っていた。せっかくなので、どこにどのような木が生えているかを、樹高と辺りの状況と一緒に野帳に書いていった。それらの結果が、図1と表1の元板で、図表に示された木々は、おおよそ15年前の北大構内で、樹高が1等賞の木ということになる。これらの図表の現在版を作り、過去と比較すると、結構変わっていて面白いはずである。さて、木々の世代交代の主な原因は何であろうか。

(露崎史朗)

2009年版差し替えバージョン

 私の北大入学年は1980年で、それから30年近くが経つ。その頃小さかった木々は大きく育ったが、消え去った木々も多い。環境科学研究科(当時)の前に生えていたシラカンバは、苗木という言葉に相応しい大きさであったが、今では立派な親木となり、たくさんの種子を飛ばしている。ハルニレ・ポプラ伐採問題は、そろそろ寿命と囁かれながらも、その当時は、顕在化はしていなかった。院生時代は、桑園近くに下宿し、大学の行き帰りに、毎日、同じ道を通るのも癪なので、できるだけ道を変えて通っていた。せっかくなので、どこにどのような木が生えているかを、樹高と周囲の状況とを一緒に野帳に書いていった。その結果が表1と図1で、図表に示された木々は、おおよそ30年前に北大構内で樹高が1等賞であった木ということになる。これらの図表の現在版を作り、過去と比較すれば、結構変わっていて面白いはずである。さて、木々の世代交代の主な原因は何であろうか。(地球環境科学研究院 露崎史朗)

火山における植生回復過程に関する基礎的研究


露崎 史朗 (北海道大学大学院地球環境科学研究科・助教授)

研究歴 (履歴書参照)

● 研究目的・動機

 高校教科書では、火山遷移は裸地から始まる一次遷移の代表例として示されている。その遷移はコケや地衣類などの植物の侵入から始まり、ついで一年生草本が侵入すると習う。教科書では、一次遷移はすべてがこうであるような書き方をし、入試問題にもよく出題される。ところが、1977-78年に噴火した有珠山では、地衣やコケはほとんど定着せず、噴火直後から大きな地下部(根)を発達させる多年生草本が火山灰を突き破り地表面に現れ優占していた。また、土壌侵食でできた沢では噴火以前の土壌中に埋もれていた種子が発芽していた。このように、有珠山では二次遷移的現象が広範に起こっている。 火山遷移は必ずしも一次遷移となるわけではなく、遷移動態および機構には不明の点が多い。これらを明らかにする一手段として、複数の火山において噴火初期から変動を追跡調査し、共通にみられる現象を解析するという方法がある。北海道には多くの活火山があり、特に今回の駒ヶ岳噴火直後の植生推移は格好の比較材料となるものであり、早急に本調査地において研究に着手する必要がある。

● 研究の現状と今後の展望

Koma

 土壌や光のような環境要因は噴火直後から極めて大きく変動する。また、環境変化に伴い植物の種組成も変化する。したがって、群集構造の動態特性を明らかにするためには噴火直後からの永久調査区を始めとする追跡データの採取が必要不可欠である。ところが、世界的には1980年に噴火した米国セントヘレンズ山においては永久調査区を用いた精力的な研究がなされているが、国内においてはそのような研究は有珠山を除くと見られない。駒ヶ岳の調査結果が、有珠山やセントへレンズ山における遷移と比べてどのような一致点や相違点を見せるかは今後の火山遷移機構を明らかにする上で貴重なものとなることは疑いない。

● ひとこと

 火山遷移は一次遷移かと問われれば、「答えは今のところ保留だが、少なくとも教科書は間違いである」と答える。遷移は、世代を超えた長いスパンで起こるものであり、長期継続研究が必ず遷移機構を明らかにすると信じる。

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