(2019年2月15日更新) [ 日本語 | English ]
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異種個体間相互作用 (interspecific interaction)拮抗作用(敵対作用) [-/-, -/0 or -/+]生活上少なくとも一方は害を受ける寄生 parasitism: (+ parasite, – host)宿主(ホスト) hostと寄生者(ゲスト、パラサイト) parasite間で寄生者が食物や空間を一方的に受けている場合
利害関係は一方的だが寄生者は宿主と平衡な生存期間があるので持続的搾取でもある
労働寄生 labor parasite: サムライアリPolyergusがアカヤマアリFormica幼虫・蛹を取り上げ育て奴隷化 半寄生 semi-parasitism ヤドリギ: ヤドリギ自身も葉緑体を持ち、光合成を行なう – 宿主に完全に依存しているわけではない 共生 symbiosis (+, + or +, 0)地衣類共生のように2種を分離すると独立生活困難となる段階から、共生関係が見られないで生活している方が多いヤドカリとイソギンチャクの例まである。一時的なものと、一生続くもの、生育のある時期にだけ見られるものがある。生物の助け合う関係は全体的には共同作用と呼ばれ、共生作用はその内異種間のものを指す双利共生 mutualism (+, +)双方の関係がなければ生きていけない結合共生: 個体間が常時接しているもの = ほとんどが双利共生
一方が他方の養分獲得上必要なある過程を補い、その物質交代を助け、他方はその養分や生活場所を得ている関係が多い Ex. アリ植物-アリ(アリ共生myrmecophilous)、虫媒花-花粉媒介昆虫 アリ植物には熱帯産のアリノストリデのようにアリに棲家を提供し、植物はアリによって他の昆虫の害を免れる例と、シクラメン-スミレのように種子分散にあずかる例がある。Ex. アリ-アリマキ 原共同作用 (+, +)片方が存在しなくても生存可能
Ex. ヤドカリ-イソギンチャク: ヤドカリは体に合わせ殻を変える。抜殻となった巻貝殻中にゴカイ類が住み込み、ヤドカリ分泌物を得るとともに、殻掃除の役目をし3者共生とも見れる。イソギンチャクはヤドカリに運ばれ、ヤドカリはイソギンチャクを恐れる海産動物から身を守ることができる 片利共生commensalism (+, 0)一方の生活規模が大きく他方の寄生により影響を受けない例があり、寄生との区別が難しい (区別する必要はあるのか?)Ex. サメ-腹部着生コバンイタダキ、フジナマコ-直腸に住むカクレウオ、ケトプテルス(ゴカイの1種)の穴を利用し住むカニ 中立作用Ex. 草食動物 = 食草十分な時に見られる種間関係Ex. 一つの花において、ハナムグリ・ハナバチ・ミツバチ等が平衡して花粉や蜜を集 (アフリカ草原のジラフ・シマウマ・ダチョウは相互に敵発見に対する能力の増加と逃避信号となりあう点で原共同作用ともいうべき性格を持つが、中立作用の例にあげられる) 捕食作用 predation (+, –)自然界の構成上最も重要な食物連鎖の基礎をなす。他の拮抗作用とは異なり、一方の生存のために他方の生存を許さない関係。一般に被食者は捕食者からの逃避活動を行うための機能が、また捕食者は被食者の発見と捕食活動を行うための機能が著しく発達している |
侵害作用抗生物質生産生物と、それにより生育停止する微生物の関係 - 一方的競争作用に近い
抗生物質生産が目立つのは放射菌であるがカビにも多くの例: すみわけ2種以上の個体群が時間的・空間的に生活の場を分ける現象。品種や同種間にもみられる近縁種でも、主な生活の場をすみわけたり、食べ物を食いわけたりしてて競争を避け、共存可能となる a. 環境要因に対する適合の相違による小麦の入った同じ容器の中にコクヌストモドキ属甲虫2種(a, b)を同数ずつ入れ、6つの異なる温度・湿度条件下で飼育する。a種は湿度が高く温度も高い条件下で、b種は湿度が低く温度も低い条件下で競争に勝ち残る割合が高い。種間競争力は環境条件に左右されることが多く、環境条件が周期的に変動する場合は生活要求の似た近縁種の共存も可能であることを示している b. 個体群間相互作用による
Ex. アパラチア山脈におけるサンショウウオ (Hairstone 1951) Ex. 2. コロラド川大峡谷を挟んでネバダ側にハタリスCitellus eucurus、アリゾナ側にC. parrisiiがいて、環境要因の差というより地域の機械的境界が生活場所を区別する要因となる(Hall 1946) くいわけ同一場所でとる餌を変えることにより共存する場合
Ex. ヒメウとカワウ 3種が好む水温は多少異なり、オショロコマは知床山系水源域、イワナは山地渓流から本流上流域、ヤマメは本流の中・下流域を主な生息域とするが、しばしば共存する水域もある。そのような共存域で3種の食性を調べると、お互いに異なった内容の食物を食べている 共進化 coevolution密接な生態的関係を持つか、遺伝子相互交流のない2(以上)の集団(分類群)の共同進化(Ehrlich & Raven 1964)。相互に働く淘汰圧により一方が他方の進化に一部依存して進化している (s.l.)植物と動物(植食動物 herbivore, 花粉媒介動物 pollinator)の相互依存的進化関係 (s.s. 一般的) |
寄生虫名 | 系統 | 寄生部 | 侵入経路 | 中間宿主 |
肝臓ジストマ | 扁形動物門 | 肝臓 | 口 | 第一中間宿主 マメタニシ 第二中間宿主 タナド・モロコ |
肺ジストマ | 扁形動物門 | 肺 | 口 | 第一中間宿主 カワニナ 第二中間宿主 淡水産のカニ |
日本住血吸虫 | 扁形動物門 | 血管 | 皮膚・口の粘膜 片山貝(宮入見ともいう) | |
ミゾサナダムシ (広節裂頭条虫) | 扁形動物門 | 腸 | 口 | 第一中間宿主 ケンミジンコ 第二中間宿主 サケ・マス |
カギサナダムシ (有鉤条虫) | 扁形動物門 | 腸 | 口 | ブタ |
カギナシサナダムシ (無鉤条虫) | 扁形動物門 | 腸 | 口 | ウシ |
回虫 | 円形動物門 | 腸 | 口・鼻 | なし |
コウチュウ (十二指腸虫) | 円形動物門 | 腸 | 口・皮膚 | なし 寄生するのは主として空腸 |
ギョウチュウ | 円形動物門 | 腸 | 口 | なし |
![]() スイッチする捕食者スイッチングの要因
1. 餌個体の隠れ場所の確率
2種の餌 N1, N2 齢を考慮した捕食幼体と成体youngs (eggs) and adults: 幼体の方が捕食されやすいPopulation: young = X, adults = Y
________βY ![]()
相互作用には他に共生があるが、数学モデルはあまり導入されていない(寺本1984)
_______u(r12) |
捕食の進化的帰結一次防衛戦略(間接防衛)近くの捕食者有無に関わらず絶えず防衛しているEx. 隠遁、カムフラージュ、警告 擬態 (= mimicry + mimesis)= 対象(捕食者や被捕食者)をだますこと隠蔽型擬態(カムフラージュ) mimesis: 隠れるための擬態 保護色 Ex. コノハムシ、ナナフシ、ヒラメ 標識型擬態 mimicry: 目立つための擬態 ベーツ型擬態 Batesian mimicry: 無害な種が有害(不味)な種に似る(行動様式含む)
Ex. ジャコウアゲハ(有毒)に似るオナガアゲハ
近縁種間での収斂現象に限定して使用
サンゴヘビ種群(南アメリカ): 18属約75種(有毒なのは1属のみ)
捕食効率を高める擬態 – 捕食者からの防御機構ではない 広い意味では以下のような特性も擬態に含める
化学擬態 Ex. ナゲナワグモ – 餌となるガのフェロモン擬似物質を出し獲物をおびき寄せる 二次防衛戦略(直接防衛)Ex. 隠れ家への退却、逃走、威嚇、擬死、攻撃のはぐらかし、反撃集団防衛: 集団生活をする生物は、その集団生活そのものが防衛目的にかなっていることが多い 同盟防衛: 2種以上の生物が防衛関係をつくる。ただし、利益は一方の種のみでもよい 植物生息地の石や土壌に色・形を似せ捕食から逃れる
Avonia (Portulacaceae): A. papyracea - 色や模様が石英岩に似る |
競争 competitionSolomon (1949)
機能的反応 functional response
効率良い捕食は個体群維持には賢い捕食ではない(分別ある捕食が重要) → 餌再生産を最大にする捕食 競争的排除則 (Gauseの定理): すみわけ、くいわけを行えば共存 ↔ 同一生活様式ecological nicheをもつ2種は共存できない 種内競争と種間競争の均衡Ex. Palamecium caudatum vs. P. aurelia (Gauze 1934), センモウチュウ類, ショウジョウバエ, コクヌスト等, 害虫天敵と害虫の個体数の変動関係(高橋・瀬川 1983) ![]() _____: 害虫侵入とその後の個体数変動. _ _ _: 天敵侵入とその後の個体数変動 A, B, C: 侵入の時間間隔がA-B-Cと長くなる。D: 天敵の侵入数が多いとき。E: 安定した群集への害虫の侵入(害虫がその群集に応じる)。F: 天敵不在で薬剤防除を行う → 防除(Mutsaers 1989, 1991) 植物競争(相互作用)モデルd2Wi/dt = (d2Wi/dt)max(1 – Σjn(dWj/dt)/A)
(d2Wi/dt)max: 単一植物個体の成長率の可能性のある最大変化(つまり競争のない状態) d2W/dt2 = (1/Ru·dRu/dt)·dW/dt + Ru2W(1 – n/A·dW/dt)
Ru: その生活を通じて(d - 1)競争を除外して成長しているときの同齢植物の相対成長率 数理モデル2種系種間競争動態 intra-specific competitive dynamicsロトカ・ボルテラ式 Lotoka & Volterra(捕食方程式): もっとも古典的で有名な2種間競争式dN1/dt = r1N1(1 – (N1 + αN2)/k1) 餌種の増加率: logistic成長から餌-捕食者接触の度合いを引いたもの dN2/dt = r2N2(1 – (N2 + βN1)/k2)
N1: 餌動物の密度 変形 dN1/dt = (r1 – λ1N1 – μ2N2)N1 dN2/dt = (r2 – μ1N1 – λ2N2)N2
λ1, 2: intra-specific
![]()
共存条件: r1 = r2 → λ1 > μ1, λ2 > μ2 ⇒ 種内競争 > 種間競争 (この意味付けはできていない) |
環境収容力の比 (k2/k1) 種が共存できる類似限界2種間競争の強さはそれらが利用する資源がどれだけ重なっているかによって大きく左右される。共通資源を利用することによって競争が生じている場合には似たものを利用する種ほど共存が難しくなる。2種の資源利用の違いをZで表わし、競争係数μ1とμ2とがzの減少関数α(z)だとする捕食圧のあるもとでの共存 coexistence under predation pressure●Predator Y⇓ ○ Sp. 1 ⇔ ○ Sp.2___k(N1) = kN1 dN1/dt = [(r1 – P) – λ1N1 – μ2N2]N1 dN2/dt = (r2 – μ1N1 – λ2N2)N2
Case 1. λ1 = λ2 = 1, μ1 = μ2 = 1/2, r1 = 3, r2 = 1 捕食者-被捕食者系 prey-predator system![]() dN1/dt = r1N1 – k(N1)·N2 dN2/dt = -r2N2 + k'(N1)·N2 k(N1) = kN1: Lotka-Volterra dN1/dt = (r1 – kN2)N1dN2/dt = (-r2 + k'N1)N2
⇔ limit cycle: 変動が回復しやすい(Goodwin 1951, 1967) – この系の存在が個体群維持上必要となるはず ![]() 種内競争dN1/dt = (r1 – λ1N1 – kN2)N1dN2/dt = (-r1 + k'N1 – λ2N2)N2 N1 = 0 → r1 – λ1N1 – kN2 = 0 N2 = 0 → -r2 + k'N1 – λ2N2 = 0 種内競争 ⇒ 安定化 共存k(N1) = kN1/(1 + N1)dN1/dt = [r1 – λ1N1 – kN2/(1 + N1)]N1 dN2/dt = [-r2 + k'N1/(1 + N1) – λ2N2]N2 ![]() アイソクライン法変数xの増減から平衡状態とその安定性を求めることをせず、変数が2つあるので数直線の代わりにxとyを記した数平面を考えた解法。xの増加速度dx/dtの2つの領域をわける直線は、
競争実験と地理的分布陸上植物は個体サイズが大きく変動するが、xやyとして個体数ではなくバイオマスを用いることがある標高や緯度・降水量・土壌成分などが、場所によって連続的に変化する勾配(もしくはクライン)を考える。即ち、2種の動態はそれぞれの地点で競争方程式(2.1)に従い、2種の環境収容力Kとの比率、競争係数aとbなどが場所ごとに変化する。観察される種の組成はそれぞれ平衡状態にある。第1種が生息している地点から第2種がだけが生息している地点に移り変わるときに、中間地点での力学系が図のようになるならば、2種は共存を経て移り変わる 3種系1) Two-prey + One predator
___N3_______predator Volterra: k1N1, k2N2, …, k1(N1, N2), k2(N1, N2) Switching: k1(N1, N2) = k1N1/(N1 + N2)·N1, k2(N1, N2) = k2N2/(N1 + N2)·N2 k2(N1, N2)/k1(N1, N2) = k2/k1·N2/N1k2(N1, N2)/k1(N1, N2) = k2/k1·(N2/N1)2 dN1/dt = (r1 – k1N1N3/(N1 + N2))N1 dN2/dt = (r2 – k2N2N3/(N1 + N2))N2 dN3/dt = (–r3 – (k'1N12 + k'2N22) /(N1 + N2))N3
Switchingの場合: 3種共存の実現 – 種間の競争のみを入れたときswitchingによって3種共存が可能になる |