Top
ヘッダー

(2021年6月30日更新) [ 日本語 | English ]

生活環 (life cycle)・生活史(life history)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[ 生活型 ]

≈ 生活環 life cycle (生態学では)
 個体の出生から死亡に至るまでの過程 → 生活様式に関する諸問題(環境・形態・生理等)を軸に生物の一生を表現
 植物は、種子から発芽定着することにより生活史が始まると考えがちだが、生活史は生活環と言われるように1つのサイクル(life cycle)を有する。

Ex. 植物が最も移動できるときは花粉と種子の段階であり、動物でいえば種子は大人である。生理生態の解明を目的とするならば、次世代への適応戦略を頭に置くことが必要

世代 generation
世代単位は、(無性繁殖を除けば)個体の有する遺伝子に変化が起こった時と考えるなら、種子(あるいはそれ以前の胚の発生段階)が新しい世代の始まり [ 蘚類 | 羊歯類 ]
鶏が先か卵が先か: 生活環はどこから初めてもよい。ただし、個体の始まりを起点とするなら卵から
索引

生活史段階

実生 seedling
発芽-成熟までの期間 → 植物生活系(一年生・多年生・木本等)により具体的期間は異なる

繁殖までの成長様式が重要であり、関与する環境要因・競争関係の調査が繁殖成功測定にに必要

1932 Boysen-Jensen: 実生のジレンマ

成長最適環境と発芽最適環境は異なることがある → 自分の生存により有利な生息地を選ぶならどちらかを犠牲にせねばならない(Aguiar et al. 1992)

1970 Janzen: 母樹からの距離と実生数(再加入数)の理論的モデル

seedling
木の近くでは全種子が種子食動物に食べられるが、木から離れるに従って摂食者減り、種子生存確率が増す。母樹からの距離に従って散布される種子数は減少するにもかかわらず、再加入率は木からある距離離れた地点で最大になる

生活史戦略 life history strategies


グライムの三角形 (Grime's triangle)
耐性 stress tolerance
撹乱 disturbance
競争 competitive ability

一年生植物 annuals

種子から種子までの生活を1年以内で終える草本植物 - したがって越年生は1年生に含まれる

夏型
冬型
短日(エフェメラル)型

⇒ 究極の一回繁殖
1991 Barbieer et al.: 野生イネ2種16系統

乾燥地域において多年生 → 1年生進化

2005 Evans: Oenotheraの21種を種間比較

降水量の少ない生息地に1年生草本が多い

開花のタイミング
Q. 繁殖活動と栄養器官成長との間で、光合成獲得物質をどのようなスケジュールで分配するのが最適か
A._ dx/dt = (1 – u(t))g(x)

dy/dt = u(t)g(x)

x: 栄養器官のサイズ
g(x): 純光合成速度 → 時間tとともに増大
u: 繁殖活動に分配される物質の比率 →
1 - u: 栄養成長に分配される比率
g(x), u: 時間tによって変化
y(t): 時間tまでになされた繁殖活動(花・果実を生産維持する)の総量

多年生植物 perennials

2年以上にわたって生育する植物 = 一年生・二年生植物以外の全て
宿根草 (≈ perennial)
ストレスの高い時期(冬期や乾燥期)に、地上部を枯らし地下部で生存する戦略をとる多年草

宿根: 多年生植物の地下部

フェノロジー (生物季節学, phenology)


季節変化に伴う動植物の行動・状態・形質等の変化

Ex. 発芽, 開葉, 開花, 紅葉, 落葉

: 太陽光変化に影響される生理的・生態的過程 (Chazdon 1988)
1) 時間スケール
  • 秒-分: 瞬間的な光合成応答・気孔応答・葉温・種子発芽・形態発生
  • 分-時: 光合成組織・気孔応答・葉緑体の移動・葉温・葉の移動・種子発芽・形態発生の誘発
  • 時-日: 光合成能力・気孔応答・葉のフェノロジー・種子発芽・形態発生・光周性反応の変化
  • 日-週: 光合成能力及び葉の生化学性・葉の成長及び形態・植物成長・実生定着・生存率・繁殖の変化
  • 週-月: 光合成順化・個体全体の成長・フェノロジー・林冠構造・葉形態・バイオマス及び栄養の分配・繁殖
  • 月-年: フェノロジー・葉の回転率・個体全体の成長・アーキテクチャー・生存率・繁殖・栄養分のサイクル
周性 periodicity: ファイトクロームphytochrome関与多

Ex. 光周性 + 生物時計(体内時計 Ex. 日周期 diurnal, or サーカディアンリズム)

2) 空間的スケール
  • 葉中の細胞: 光の減少と吸収・葉緑体の移動・光合成
  • 葉の一部分: 光合成・物質移動・気孔密度・光形態形成・食害・エネルギーバランス
  • 葉: 光合成能力・エネルギーバランス・葉移動・葉形態・葉展開・光競争・光形態形成・食害
  • 林冠: 栄養・水・炭酸同化物移動・葉間の被陰・葉齢構成・葉群分布様式・分岐パターン
  • 植物個体全体: バイオマスの分配・定着・成長・アーキテクチャー・生存率・繁殖・競争
  • 個体群: 生態型ecotypeの分化・齢構造・個体群成長・リクルートメント
  • 群集: 遷移・更新・植生構造・種多様性・栄養循環・水利性
温度: 生物適当温度0-35(40)°C
  • 春化(バーナリゼーション, ヤロビザニア) vernalization: 花芽形成の発生初期に低温期間必要
    春化処理: 人工的に種子に低温処理を数週間行い花芽形成を起こさせること。農業上は高収穫目的で行う。コムギは5°C位で数十日間処理
  • 黄葉・紅葉
    黄葉: クロロフィル分解 - カロチン、キサントフィル色表れる
    紅葉: クロロフィル分解 - 細胞液中にアントシアン形成
  • 落葉: 蒸散少なくするための適応。オーキシン生成低下により離層発達
  • 浸透圧変化: 冬はデンプンを糖に変え浸透圧を大きくし氷点降下による凍結防ぐ
  • 年輪: 春材、秋材
  • 鳥類の渡り・魚類の回遊
  • 季節形: チョウの春型と夏型。ライチョウ、エチゴウサギの羽毛や毛の色。淡水産シジミの形態
  • 温度と動物: 動物 [発熱量/体重] 温度適応。物質交代
    恒温動物 [大] 体温調節作用発達 – 呼吸量調節(化学的調節) + 毛・体毛・皮下脂肪・汗腺による調節(物理的調節)。冬 > 夏
    変温動物 [小] 体温調節作用発達せず、冬眠、蛹、卵等で越冬。冬 < 夏

春植物 (spring ephemeral)

= 早春季植物
春先に植物群集上層部の葉が展開し光量が急に低下する前に葉を広げ、開花結実し、光量が低下時には地上部を枯らし休眠状態に入る (例, examples)
熱呼吸
= 開花時寒冷対策

春、花芽成長時に数cmの雪を被るが、発熱で融雪し氷雪にトンネルを掘り、花軸が伸び、その上につく花芽が雪上に出て開花する
エチレン(ethylene, C2H4)がホルモン的に働き呼吸促進
CO, CNはエチレンが低濃度ならむしろ呼吸促進傾向がある。農学上は果実の同時成熟等に利用される

展葉

落葉性植物の葉の開葉・落葉戦略は2タイプに分けられる(菊沢 1986)

一斉展葉タイプ: 極相林など安定な場所
順次展葉タイプ: 攪乱を頻繁に受ける場所

最適成長スケジュールモデルを開葉パターンに適用 (Iwasa & Cohen 1989)

個体小 → 遅くまで葉を展開 ⇒ 大きくなるにつれ次第に展葉早めるよう変化(予測)
小さい未成熟個体の展葉停止時期については、光や水分等の資源が豊かで高い光合成速度が保障されるときには、かなり遅くまで展葉し続ける順次展葉型になるが、非生産的な環境で光合成速度が小さいときには早い時期に展葉を打ち切る一斉展葉型になる (ヤツデでは)

花の寿命 longevity of individual flowers

他殖率(c)の推定式(Primack 1995): 直接開花数が花の寿命に影響していることを仮定

c = 1/(fp)

c: 他殖率 outcrossing rate
f: 日での花器の寿命 flower longevity in days
p: 一日当り生産花器数 the number of flowers produced per day

Ex. f = 3(日), p = 10(個)

c = 1/(3 × 10) = 0.033 ≈ 3%
if: 他殖率が100%、p = 10 → 1 = 1/(f × 10), f = 0.1(日)となる

[ 繁殖/生殖 ]

(sex)


植物での進化仮説

自家交配回避 - 近交弱勢回避
花粉補償
捕食者回避
ディスプレー (雄花)

雌雄

雌(♀): 大型で養分を多量に含む配偶子を作る個体 – 初期の発生を賄う
雄(♂): 小型で運動力に優れた配偶子を作る個体 – 養分ほとんどなし

性型 sexual form

Case. 植物
雌雄同株(単性雌雄同株・雌雄異花同株・雌雄混同株・雑居花・雑性花) hermaphrodite and monoecy (synoecious): 雌性配偶子と雄性配偶子が1個体に作られる
= 両性花雌花又は雄花 male flower (staminate flower)が同一株につく

雄性先熟 protandry
雌性先熟 protogyny
→ 動物でもある

両性花 hermaphrodite flower, bisexual flower: 雄蕊 + 雌蕊 (一般的)

雌雄同熟花 adichogamous flower
雌雄異熟花 dichogamous flower
中性花: 雄蕊・雌蕊が退化し不完全で結実しない – 形態的区分、性型上は両性花

装飾花(不稔花) ornamental flower: 特に大型で美しい Ex. ガクアジサイ、ヤブデマリの装飾花

雌雄異花同株 monoecism, or monoecy: 単性花を形成 (♂/♀)

単性花 unisexual flower: ♂f = 雄蕊、♀f = 雌蕊 → 一方のみ有する Ex. カボチャ、キュウリ、スイカ

雌雄同花序 androgynous: 花序に雄花・雌花が混在するもの

三性同株{(雄性雌性両全性同株) androgynomonoecious, trimonoecisous: (♂/♀/♂♀)
雄性同株(雄性両全性同株・雄花両性花同株) andromonoecious: (♂/♂♀)

自家交配を避ける
花粉不足を補う
捕食者を回避する
花粉媒介動物を誘引する

雌性同株(雌性両全性同株・雌花両性花同株) gynomonoecious: (♀/♂♀)
雌雄異株 dioecism, dioecy: 雌性配偶子個体(雌株) + 雄性配偶子個体(雄株)(♂)/(♀) Ex. ホウレンソウ、Morus, Ginkgo、ソテツ、スギゴケ、ゼニゴケ

三性異株(雄性雌性両全性異株) androgynodioecious, triecious: (♂)/(♀)/(♂♀)
雄性異株(雄性両全性異株) androdioecious: (♂)/(♂♀)
雌性異株(雌性両全性異株) gynodioecious: (♀)/(♂♀)

雌株は花粉を作らない分、より多くの種子を生産できる
雌株に近交弱勢はない ↔ 両性花

(不完全雌雄異株 subdioecy, 雌雄混株のsubdioecious)

→ 多系 (雌雄混株・雑居性雌雄異株) polygamous, polygamny: 離性内の不完全雌雄異株のうち雄性異株・雌性異株を除いたもの

polygamomonoecious: 多性polyecy (adj. polyecious)が一部見られる不完全な雌雄同株
polygamodioecious: 多性が一部見られる不完全な雌株異株

Case. 動物
雌雄同体 hermaphrodite, or monoecy (monoecious): 1個体に卵巣と精巣を持ち、卵と精子を作る動物(普通卵成熟期と精子成熟期が異なり自家生殖起こらない) Ex. ミミズ、マイマイ、サナダムシ、ジストマ、ホヤ

常時雌雄同体 simultaneous hermaphrodite
連続的雌雄同体 sequential hermaphrodite

雌雄異体 dioecy: 有卵巣個体と有精巣個体が別。一般的 cf. dioecious (adj)

性決定 sex determination

[ 細胞遺伝学 ]

性染色体 sex chromosome
環境 environment
雌ホルモン, 酵素, 年齢, 水温等
  1. ボネリア(環形動物): 受精卵: 母親に付着発生 = ♂、単独発生 = ♀
  2. クロダイ: 体長 < 5 cm = 全て♂;、10-20 cm = 雌雄同体(2-3年)、> 20 cm = ♀と♂(4-5年) ⇒ ♂ → ♀/♂ → ♀ or ♂ → ♀/♂ → ♂
  3. マムシグサ: < 4 g (地下茎重) = 葉のみ、4-21 g = ♂、> 21 g = ♀ - 前年の地下茎養分量により決定
  4. モクズガニ: 雄にフクロムシが寄生 → 雌化
フッター