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(2023年2月13日更新) [ 日本語 | English ]

個体 (individual)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

個体 organisms or individuals

一個の生物として成り立つ機能をもつ最小の単位 (biol)
それ以上質的に分割できない統一体 - 分割されれば固有性失う (phil)

個体性 individuality: 個体として認識できること

クローン clone: 1個体(の植物)より栄養繁殖によって生じた集団全体

純クローン pure clone: 等しい遺伝子型を持つクローン (Du Rietz 1930)

植物の個体性
ジェネット genet: 1種子に由来するクローン集団
ラメット ramet: 生理的独立性(完全に分離した個体)を有するもの, 1クローンに属する個体

遺伝的マーカーの必要性

索引

効率 efficiency

供給エネルギー(物質)中で有効に使用されたエネルギー(物質)の割合 (%表記が多い)
水利用効率 water use efficiency

[ 発生学 ]

個体発生 (ontogeny)


個体発生 → 個体の発達・存続
環境との反応(環境適応 adaptation to environment)
1) 嫌避 avoidance - escape
2) 抵抗 resistance
3) 適応・順応 adaptation and acclimation
4) 破壊 destruction

[ 細胞周期 ]

世代交代と核相交代


世代 generation: 体が多細胞からなる場合 → 単細胞(胞子・配偶子等)は考えに入れない
世代交代: 生殖法に注目
生殖法の異なる世代(普通、有性生殖と無性生殖)を交互に繰り返すこと
有性世代(有性生殖) ? 無性世代(無性生殖) → …
核相交代: 核内の染色体のもち方(nか2n)に着目
単相世代と複相世代を交互(あるいは不規則)に繰り返すこと: 単相世代(n) → 複相世代(2n) → …

多くの植物では世代交代と核相交代が一致する

繁殖 (生殖, reproduction)


繁殖: 生物の個体が増えること
生殖: 生物が自らと同じ種に属する個体をつくること

I. 有性繁殖
II. 栄養繁殖(無性繁殖)

多回繁殖性 iteroparous vs 一回繁殖性 semelparous

Ex. 一年生草本, オオウバユリ, 竹・笹

1954 Cole: 一回繁殖性の進化

1: 子を1増やす ⇒ 多回繁殖性種と同程度に増殖
- 成熟個体と子の生存率を一定と仮定 = 不適切

1973 Charnov & Schaffer: Coleを修正

1 - (成体生存率)/(子の生存率)
成体の生存率が低いと一回繁殖性が有利

I. 栄養繁殖 (vegetative reproduction, 無性生殖/無性繁殖, asexual reproduction)


A. 無性配偶子生殖
= 細胞レベル(細胞生殖の総称)
B. 栄養生殖 vegetative reproduction
= 組織レベル
a. 分裂
b. 出芽
c. 栄養体生殖 propagule

アメリカスギ: 針葉樹であるが根から芽を出し繁殖
Ex. Jepson (1923): ある森林では80%が栄養繁殖で更新

森林中心部 = clone増殖 ↔ 林縁部 = 有性繁殖

Ex. Quercus: 吸根suckerを有する
Ex. Populus termuloides: ユタ州で25 × 0.4 haに15000個体のclone

ユタ州では8000年前から種子繁殖が不可能な状態だった

Ex. Festuca rubra: rhizomeにより増える – 風媒介受粉wind-pollination

自家不和合性self-incompatibility高い (adj. self-incompatible)

Ex. Spartina patens: 200 mのtransectから101のgenotypeが得られた
Ex. Elodea canadensis カナダモ: 雌雄異株 – shootに冬芽をつける

1840 欧州に♀のみ移入 → 以後♀のみで増え続けている

萌芽 sprouting: 植物の根元や切株から発芽し次世代の稚樹が育つこと
ひこばえ: 樹木の切株や根元から出るシュート

根萌芽 (root-sprouting): 水平根からの萌芽 Ex. Populus tremula

無融合種子形成 agamospermy: 受精なしに発達した種子を生産し繁殖する
胞子生殖 sporogenesis
胞子が単独で発芽し新個体になること
  • 遊走子(動胞子) planospore: 緑藻・褐藻・藻菌等で鞭毛持ち遊泳する無性生殖行う胞子。遊泳後固着し、鞭毛失い発芽し新個体形成
  • 不動胞子 aplanospore: 鞭毛なし
  • 子嚢胞子 ascospore: 子嚢菌(ex. 酵母)が作る有性胞子
  • 担子胞子 basidiospore: 担子菌で接合核減数分裂後、その細胞(担子器)の外に形成される胞子
  • 四分胞子(四分子) tetraspore: 褐藻と紅藻の一部で、1胞子母細胞が減数分裂しつつ4個に分れる不動胞子
  • 単胞子 monospore: 胞子嚢内に1個のみ生ずる不動胞子
  • 分生子(分生胞子) conidiospore: 菌類で、菌糸から出た柄先にできる無性的胞子 = カビの色

[]

II. 有性繁殖 (有性生殖, sexual reproduction)


親体の一部から配偶子形成 → これが普通2個合体し新個体 = 2親から半分ずつ遺伝子を送り新遺伝子組合わせを持つ個体となる
生殖細胞: 新個体を作り出すため作られる細胞

胞子 spore: 単独で新しい細胞を作る (= 無性生殖)
配偶子 gamete: 2つの細胞が合一して、それから新しい細胞を作る

有性生殖支配的になる → 有性生殖の起源(不明)
→ 遺伝子混合: 個体群レベルで有利 → 自己遺伝子セットを次世代に残す(=個体淘汰レベル)には損
A. 接合 conjugation: 同型配偶子の合一

Ex. アオミドロ: 細胞レベルで雄雌的区別あるが雄株雌株区別ない。接合で移動された側の細胞を雌と定義
Ex. ゾウリムシ: 分裂で増殖の大半行ない、時に接合する。n核を相手に渡し別のn核を相手からもらう

B. 受精 fertilization: 異型配偶子の場合
異型配偶子 = 雄性生殖細胞(小さく能動的) + 雌性生殖細胞(大きく受動的)

Def. 受精: 異型配偶子が合一すること

1. 両性生殖: もっとも普通
2. 単為生殖 parthenogenesis: 社会性昆虫進化の要因
a. 童貞生殖: 植物雄性配偶子が単独に細胞分裂し発達 → 胚形成

Ex. Oenothera, Erica等の種間雑種に見られる
雄核発生 androgenesisis: 卵に精子侵入 - 卵核と接合せず単独発生

自然界で雄核発生は極稀(雌雄同体・自家受精する日本産マシジミ C. leana。タイワンシジミで確認)

雄核単為生殖雑種 androgenesis hybrid

b. 処女生殖

雌核発生 gynogenesis: 卵に精子侵入 → 卵核が単独で発生(結局、精子は使われない)

アポミクシス(無融合生殖) apomixis
有性生殖で生じる繁殖体が、受精せず無性生殖で生じる繁殖体に置換

Ex. 球根、ムカゴ (× 挿木)

被子植物: アポミクシス = 無融合種子形成(無融合生殖) agamospermy
配偶体アポミクシス gametophytic apomixis: 熱帯に多い傾向

不定胚形成 adventitious embryony: 北方系
apomixis
antipod → antipodal embryo


synerig → [agamospermy] → synerigid embryo


種によっては、(精核 + 極核)までをgametophytic apomixisを行なう = pseudo-agamospermy
→ obligate agampspermy vs facultative agamospermy (Ex. Hieracium)

無融合性複合体 agamic complex

自家不和合性(= 他殖多)

複相胞子生殖 aneuspory: 胚珠内倍数性大胞子から胚嚢が作られる Ex. Taraxacum

無配偶生殖 (apomixis)

無胞子生殖 (apospory)

大胞子を経ず倍数性の珠心等から倍数性胚嚢が作られる Ex. アカソ

絶対他殖と絶対自殖 obligate allogamy vs obligate autogamy

obliage allogamy → [spectrum] → obligate autogamy
Ex. Gilia ハナシノブ科

G. capitata captata中のある個体群にobligate allogamy
G. captitata tomentosaでは、やや他殖がみられる

Ex. Festuca microstachys: obligate autogamy Ex. Polemonium micranthum: obligate autogamy

蕾の間に受粉。強制他家受粉しても稔性なし

他殖: 1-2%は自殖が行なわれるのが普通らしい
自殖: 1-2%は他殖が行なわれるのが普通らしい = predominant autogamy
自殖 = ホモ接合体 ⇔ 他殖 = ヘテロ接合体 heterozygote

自殖の種は純系化が進んでいると考えられる
現実には環境圧や適応を考慮しなくてはならない

Ex. Phaseolus lunatus, Avena fatua, A. burbata

predominant autogamyだが適応により多様なgenotype

1) 双親性biparental reproduction
≈ 異株性 heterothallism: 性的に自家不和合生あり、有性生殖においては親和性のある2株(個体)を必要とすること
交配機構mating systemの発達
. 自家不和合性の分類と植物例
異形花型

サクラソウ科、カタバミ科(カタバミ、スターフルーツ)、タデ科(ソバ)

同型花型

胞子体型
アブラナ科(カブ、キャベツ、ダイコン)、ヒルガオ科(サツマイモ)
配偶体型
ナス科(観賞用タバコ、野生ペチュニア)、ケシ科(ケシ)、バラ科(ナシ、オウトウ、リンゴ)、イネ科(ライムギ)

2) 単親性 uniparental reproduction
= autogamy, vegetative propagation and agamospermy (clone)
近交系 inbred line

組み換えシステムの損失

1) 遺伝的損失: 親より弱い遺伝子を作っていた
2) エネルギー損失 Ex. 花粉の多産、花の巨大発達
Ex. Ornduff (1969): 系統的に近いもので比較

他殖    萼大・花柄長  花数多  花色多数  蜜腺・芳香発達
自殖    萼小・花柄短  花数少  花色地味  蜜腺・芳香なし

Open res: これらの問題を補ってもさらに有利な点がないと維持されないはず
Ex. Cruden (1977): 胚珠内花粉数

5859粒: obligately allogumous plants - 797粒: fucultatively allogamous plants - 108粒: predominantly autogomous plants - 28粒: obligately autogomous plants

同系交配 inbreeding: 互いに近接した個体間で優先的に交配 vicinism
自家受粉 self-pollination (自殖/自家生殖 autogamy, adj. autogamous): 同系交配の最も排他的な形

隣花受粉 geitonogamy
⇔ 他家受粉 cross pollination (育種では、開放(放任)受粉 open-pollination)

純系 pure strain or line (s.l.): 遺伝子型がホモである1個体から自家受精autogamyにより生じたい個体の集団

(s.s.) 突然変異体を含まず遺伝的に均一な純系 (Du Rietz 1935)

閉鎖花 cleistogamous flower → 純系形成(完全な儒家受精)

Ex. Epipactis helleborine, Viola mandshurica, Festuca danthonii

育種学 (breeding)


1903 横井時敬: 育種学という言葉を使用
s.s. 生物を遺伝的に改良し、新品種育成に必要な理論とその応用
対象による分類: 植物(作物)育種学 動物(家畜)育種学 林木育種学

水産生物育種学 微生物育種学

s.l. 野生生物も対象 - 生物の生殖質を遺伝的に解明、利用
育種(品種改良 breed improvement)の目的
(1) 少数個の遺伝子をある種から他種に導入
(2) 両親にはない形質発現
(3) 新しい複2倍体を合成
(4) 種間類縁関係を決定

植物育種学 plant breeding

挿木 cutting
枝挿: 枝の一部分を切り挿穂とする (最も一般的)
葉挿: 葉(1枚)を挿穂とする Ex. 多肉植物
根挿 rooted cutting: 根の一部を切り挿穂とする
遺伝子バンク(遺伝子銀行) gene bank
遺伝資源: 遺伝子工学・育種技術で強耐性作物作り、医薬品生産利用生物の種子・遺伝子の総称
→ 各国・国際機関が遺伝子銀行設置し、栽培作物野生種や近縁種を中心に野外探索と種子等保全に取り組む

遺伝子資源の多くが存在する発展途上国は遺伝子資源に関する自国の主権を主張すること増えた

林木育種 (forest tree breeding)


精英樹 (elite tree): 同じ土壌条件の地域に生息する同種・同齢木に比べ、形質が特に優れた成長をしている樹木
1. 有性繁殖
播種: 播付け床に種子を播くこと

採種園: 種子生産目的に精英樹等から採種木を育成する樹木園
苗畑(苗圃): 苗木育成のための畑

山引き苗(山取り苗・天然苗): 苗森林からや天然稚樹を採取した苗木

普通、根系発達に苗畑で1-2年育成させ利用

山行き苗(山出し苗): 苗畑で育成した苗を掘り取り植樹造林用に準備した苗木
2. 無性繁殖
クローン clone: 同形質(遺伝子)を持つ集団(個体群) → 品種維持等に応用
挿木 cutting: 親木の一部(幹・枝・葉・根等)を切取り、土等に挿し繁殖

挿し穂 cutting: 挿木に用いる樹木の一部(幹・枝・葉・根等)

解決すべき問題点
  • 作物・品種により挿し木困難 + 親木樹齢増すと発根低下
    Ex. 容易: スギ、サワラ、ネズコ、アスナロ、ポプラ類等 ⇔ 困難: 他種
  • 挿し穂を大量準備困難
  • 穂木の状態や挿し穂の条件により活着率変化 [発根促進剤]
  • 作物・品種により側枝性残り、心立ちが悪く樹形乱れる場合
  • 高齢木挿し穂や品種により初期生育遅れる場合
  • 側根性となり発根方向にムラができる場合
  • 開花早くなる場合

cutting
荒穂___________________________挿し穂____. 挿穂の調整
採穂園: 大量生産目的で挿穂採取のために設置された樹木園

取り木: 親木の一部(枝等)を地面に伏せ発根させ、その部分を切り取り苗木に仕立てる技法。伏条と、枝・茎の一部を土や水ごけ等で包み発根させ、その部分を切り取り苗木に育てる方法がある

取り木苗: 取り木の技法を用いて育てられた苗木

伏条(圧条): 母樹根元に近い部分から出た枝を土中に押し曲げ発根させ、独立の林木とし育成する方法
圧条: 枝茎の一部に傷をつけ、そこを土壌や水ごけで被い発根させた後、親木から切離し増殖する方法 Ex. Prunus × yedoensis = クローンザクラ

種間雑種 → 全国分布するP. × yedoensisは1クローン = 遺伝情報同じ

病気や環境の変化に弱
寿命60年と短い → 一斉絶滅ありうる

カルス (callus): 植物体(一部)をホルモン培地で培養 - 無定形細胞塊形成

カルスは、適当な条件を与えると分化せず活発に成長 → 成長部分をとり定期的に植え継ぎ、無限にカルス状態で成長する。カルスをある条件下で培養し、不定芽、不定根を分化させ多量のクローンを生産できる

接木(接ぎ木) grafting
別々の植物体を接合し1体とする技法
台木 = 接ぎ穂接着させる根のある方(基盤の方) ↔ 穂木(接穂) = 接合方

挿穂台木・採種台木: 挿し穂や種子をとるため仕立てた樹木)

増殖目的: 接穂 + 台木 ⇒ 接着 → 独立個体に生育: 人工栄養繁殖の一方法

主要果樹の殆ど、一部の花木・庭園樹・果菜類等で行われる

接ぎ穂(接穂) scion: 接木に用いる植物体の一部 ⇔ 台木: 接着させる他の植物体

[接木繁殖の特色]

品種特性維持される(栄養繁殖共通)
実生苗に比べ開花・結実促進され、挿木難しい植物も容易に繁殖できる
台木選べば特別な栽培目的(樹勢調整、環境適応性向上、病虫害回避、果実品質・結実率向上)達成可
品質更新可

接木活着: 台木、穂木間に親和性必要 → 穂木・台木双方の接着面の主に形成層にカルスが分化し抱合

N M

双子葉では形成層cambium発達しているため、内側に分裂し木部形成
→ いかに形成層を広く滑らかに接着させるが重要
⇒ 上下維管束が正確に合えば問題ないが、実際にはそうはいかない

→ だが、やがて両者維管束結びつく(単子葉で難しい)
休眠期接ぎ: 穂木は休眠期に採取貯蔵したもの、台木は接木時活動状態にあること

接木後の外的要因: 適温(20-25°C)、穂木、接木部の乾燥を防ぐ意味で高湿度条件

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