Top
ヘッダー

(2024年10月22日更新) [ 日本語 | English ]

生活型 (lifeform)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

(Billings 1957)

生理生態学 physiological ecology (or ecophysiology)

生態的及び進化論的観点から植物の生理を考察 (Fitter 1981)

生態学 ecology + 生理学 physiology: 生体作用ないし機能を研究対象とする科学
生理生態学はこの両分野の橋渡し

生活型 life form
ラウンケア

生活型 life form
世界標準生活型スペクトル life form spectrum in the world
ラウンケア Raunkiaer, Christen Christensen

沼田の生活型 Numata's life form
クリンカの生活型 Klinka's life form
休眠芽と生活型 bud dormancy and lifeform
索引

顕在性

. 植物の顕在性について予測される相互関係
  • 顕在性植物 vs
    非顕在性植物
  • 普通種で通常目立つ vs
    稀少種で通常短命
  • 木本性多年生植物 vs
    草本生1年生植物
  • 成長が遅く競争に強い vs
    成長早くしばしばその場限りの種
  • 植食動物に見つかりやすい(時間的、空間的にエスケープできない) vs
    時間的、空間的に植食動物から保護されている(それでも広域に分布する多食性食動物には発見される)
  • よりエネルギー消費多い相対的な抗植食動物防衛物質(堅葉、タンニン)生産 vs
    エネルギー消費少ない絶対的な化学的防衛物質(毒素等)生産
  • 量的防衛は、植食動物に対し有効な生態的障壁をなすが、多分、質的防衛が追加されない限り進化的な隔離機構としては弱い vs
    質的防衛も植食動物が有効な解毒機構を共進化させることで、進化史的時間の間には破られて行く(結果として寄主植物に特異的な植食動物生まれる)

生活型 (life or growth form as phytometre)


生活様式 life mode

各種が備える生態的形質ecological characteristicsを組合せ個体維持する方法(林 1975)
生態的形質
種子重・種子生産数・散布型・発芽行動・耐陰性・地上部地下部重量比(T/R ratio)、葉茎重量比、全重量に対する種子重量の比、等のように個体レベルで計測可能な属性
→ 生態的様式 ecological schemes
仮定: 生活型様式は鍵となる淘汰圧に反応し適応した単位となるCertain aspects of growth forms represent a set of adaptation evolved in response to key evolutionary pressures
Ex. ラウンケア生活型 → adaptation to their unfavorable season

生活型

生活様式を生物の形態や構造を手掛かりとして類型的にとらえたもの。野外調査で形態・構造はとらえやすく、同時に生理的な機能と外部に現れた形態・構造とは切り離せない関係にあるためでもある。広義の生活型には、代謝型とか立地型なども含まれてよい。
→ 生活環境条件(温度、降水量等)と生活型を結び付けて考案されたRaunkiaer分類が普及しているが、古くはAristoteles時代から生活型分類は試みられている。
生活型life formと生育型growth formは意味を分けて用いる人もいる。

生活型: その植物が成長している場所での形態
生育型: その植物の潜在的な成長および形態の能力

[ 形態学的定義 ]

草本と木本
  • 二次成長の有無
  • 葉と茎でどちらが優勢か
草本系: 生きた非光合成系を持った植物
1年生草本(植物) annuals: 1年内に生活環完結。生殖成長(種子形成)後に光合成系・非光合成系全て枯死

2年生草本(植物) biennials: 葉をつけたまま劣悪期を越しその後実を結び枯死する。1年生草本の1種

多年生草本(植物) perennials: 生育期が過ぎると光合成系・非光合成系枯れるが、地下茎・塊根等で次代へ同化産物を渡すことができる

永年生草本
常緑性草本

木本系: 非光合成系地下に残るが、その大部分は死組織からなる植物

一稔(一回結実)性 monocarpic: 木本・草本を問わず

生活型・生育型の進化 evolution of life form
光合成型の進化に関連

生育型 光合成組織の比率 =

(光合成組織photosynthetic tissue)/(支持組織support tissue) ratio
草本 herbs____high
低木 shrubs___intermediate
高木 trees____ low

草本植物の方が、より効率よく光合成組織を生産している: 木本植物 → 草本植物

光合成に関与する要因=光・土壌栄養 (Tilman 1988)

地上部の競争 = 光競争
地下部の競争 = 土壌資源(栄養分・水)競争

植物 → これらの資源獲得により有利な形態を進化適応
栄養獲得様式の進化 (Tilman 1987)

ラウンケアの生活型 (dormancy form of Raunkiaer)


= 休眠型
大気候macro-climateを取り上げ、気候条件と生活様式の関係を見る生活型区分。植物の成育(生存)にとって悪条件の季節のやり過ごし方、即ち休眠芽の位置に着目し整理し、生態地理学に新分野を開いた。世界各地から1000種の植物を選び生活形標準表を作り、この標準表と各地の生活形組成を比較し、その地方の特徴を表わした
不利な時期: 寒冷 - temperature / 乾燥 - water (precipitation)
  1. 生態的振幅ecological amplitude - tolerance
  2. plant life form
  3. morphology and function
Raunkiaerのlife formの特徴
  1. 生活中で重要な形態的特徴示す適応性 → 種の環境に対する適応の相対的強さ表れる
  2. わかりやすいシステム
  3. life formは集まって1つのhomogenous systemとなる
これらの基本的なguidelineを行使したRaunkiaer大系は実用価値高い
分類
地上植物 Phanerophytes

大型地上植物 Megaphanerophytes
中型地上植物 Mesophanerophytes
小型地上植物 Nanophanerophytes

地表植物 Chamaephytes
半地中植物 Hemicryptophytes
地中植物 Geophytes
水生(沼沢)植物 Helophytes
一年生植物 Therophytes

着生植物 epiphyte: 土壌から離れ樹上・岩盤等に根張り生育 → 熱帯多
硬葉植物 sclerophyte: 厚く硬い葉を作り乾季を耐える常緑樹

※ 熱帯降雨林樹種の多くは芽鱗を持たない
種々の地域のフロラ life form spectrum in the world
高緯度地方・高山地方: 地中・半地中性木本、地中植物、多年生植物*と長日植物の割合増す
多(越)年生植物は冬期間に葉(ロゼット葉)を地表に出し植物体形成準備ができており、一年生植物が種子から植物体を形成する前に成長した体を作り物質生産を行える

*: 一年生草本より多年生草本の方が生存に有利 → 多年生草本は種子から植物体を形成するのに比べ短時間で成長した植物体を作り上げる(あくまで傾向)

(Axelrod 1966)

落葉性の起源
仮説: 落葉性広葉樹: 白亜紀前半に北半球中・低緯度の暖帯気候地域で発生

白亜紀前半: 高温多湿な熱帯または隣接地域 - 不規則な乾燥気候出現
→ 落葉性: 冷涼な季節の乾燥状態に適応的 - 温帯林に特徴的
→ 内陸乾燥地域および冷涼気候地域に分布拡大
新生代にはより気温年較差の大きな地域へも分布が広がる

沼田 (Numata)


もう使う人はいないと思うが、(日本の)古い文献だと目にすることもあるかと
散布器官型 disseminule form (Numata 1947 1950)
= 繁殖型 migrule form
散布器官を有さない(D4)
落下散布種子(重力散布種子) gravity-dispersal: 単純落下

*: 隠匿散布 cache: 真の重力散布は存在する? - 分布域変化する可能性は低

散布器官を有する
風散布種子 wind-dispersal: 冠毛や羽根を持つか、風で飛ぶ微細な種子(D1)
水散布種子 water-dispersal: ヤシなど水により移動する種子(D1)
自発(自動)散布種子 sefl-dispersal: 朔果のように朔の展開等により飛ばされるもの(D3)

自動運搬型 autochoares, transporteurs
自動放出型 autochores, physiologigues
機械的放出型 balochores
自動匍匐型 autochores, rampantes
Ex. カタバミ・ムギクサ・スミレ・カモジグサ・フウロソウ

動物散布種子 animal-dispersal, zoochore: 動物付着・食用等による(D2)

内動物散布種子endozoochore: 動物食料となり散布(奬果等)
外動物散布種子epizoochore: 動物の毛等に付着し散布

人為散布種子 brotochore, brotochory: ヒト仲介する種子(帰化植物多) (D2)
むかごなどの栄養繁殖体を生じて広がる散布 (D5)
生育型 growth form
ラウンケア休眠型はマクロな環境レベルで有効だが、局地的条件を表現するときは必ずしも有効ではない。地上部生育形態の外形的特徴を類型化したもので、樹木でいう樹相もこれに含まれ、群落立地条件との関連を考えるのに有効な生活型分類である。繁殖型も同目的で作られた
植物はこれらの生育型一つだけを有するとは限らない
  • 記号 (生育型): 状態
  • e (直立型): 地上部の主軸のはっきりした直立性のもの
  • pr (部分ロゼット型): はじめロゼット型で、後に直立型となる
  • ps (偽ロゼット型): ロゼット葉をつけたまま葉をつけた直立茎がのびる
  • p (匍匐型): 匍匐茎をのばし地上を這うもの
  • t (叢生型): 根元から多くの茎が叢生する Ex. Poaceae, Cyperaceae
  • b (分枝型): 地上部の主軸のはっきりしないもの
  • r (ロゼット型): ロゼット葉で過ごし、花茎には葉のつかないもの
  • l (つる型): つるを伸ばし、巻きついたり寄りかかったりするもの
  • sp (棘型): 棘をつけるもの
地下器官型 radicoid form
根・地下茎・匍匐型などによる広がり方を類型化
母体から見てどの範囲まで地下器官を広げ連絡体を作るかによって区分
  • 記号 (広がり), 名称
  • R1 (d > 100 l), 根茎植物
  • R2 (100 l > d > 10 l), 根茎植物
  • R3 (10 l > d), 根茎植物
  • R4 (匍匐型や不定根によって栄養茎を作る), 匍匐茎植物
  • R5 (根茎や匍匐茎によって連絡体を作らない), 単立植物

lは根型の広がりを直径で表したもの(cm), dは地上茎-母体の高さの平均(cm)

クリンカ Klinka


クリンカの生活型 life form (Klinka et al. 1989):
生活型-生息地の結びつき重視 + 常緑・落葉性の違いに重点

針葉樹 coniferous trees (CNTR)
落葉樹 broad-leaved trees (BLTR)
常緑低木 evergreen shrubs (EGSH)
落葉低木 deciduous shrubs
羊歯 ferns and allies (horsetails, clubmosses, and selaginellas) (FERN)

禾本草本植物 graminoides (grasses, sedgges, and rushes) (GRAM)
広葉草本植物 forbs (non-graminoid herbs) (FORB)
寄生および着性植物 parasites and saprophytes (PASA)
コケ mosses (MOSS)
着性コケ liverworts (LVRT)
地衣 lichens (Lchn)
(寄生植物 / 半寄生植物: 緑葉持ち、寄生植物であるが自身で光合成も行なう)

指標種 (indicator species)


生物指標 biotic indicator (指標生物 indicator organisms, indicator species, or index species): ある環境の指標となりうる生物(垰田 1974)。環境条件に対し狭い幅をもつ生物種(狭適応種)など環境条件を示す種。個体の成長差や変化等により、生理学的な指標化も可能だが個体群全体を通した変化を把握し指標生物を考えることが多い

(s.l.) 生物を用いて環境を測定する方法

指標植物 indicator plant: ある特定の環境に特に敏感な植物
Ex. 気候指標植物: エゾマツ、トドマツ、タチハイゴケ - 亜寒帯指標
Ex. 土壌指標植物: リョウメンシダ、ミゾシダ - 高生産力、ヤマツツジ - 低
Ex. 湿地指標植物: Typha latifolia, Phragmites australis
Ex. 公害指標植物: 大気汚染 - アサガオ。水質汚濁 - チトセバイカモ

汚染指標植物: ヘビノネゴザ - 微量金属
検知植物 Ex. 亜硫酸ガス - 低耐性(ソバ、イヌタデ) ↔ 高(ススキ)

都市大気汚染: 公園樹(ケヤキ、アカマツ、シラカシ等)使用した

指標植物計 phytometre、指標生物計biometreを指標計(単位)として提案(沼田1969)

(本来) 環境を総合的に把握する ⇔
(現在) 少数の環境要因に着目 - 環境要因実測の方が優れること多

生物指標を求める方法と手順
  1. 植生の抽出 sample the vegetation
  2. 重要ではない種を除く omit indifferent species (usually common species)
  3. スペクトラムアプローチ spectrum approach
    Frequency species (j) in attribute category (k) (e.g., moisture 1 → 6)
    F = [sum of species (i)j, k]/[total of all cover(ΣiΣjCi, j, k)] × 100, sum of species (i)j, k = Cijk
  4. 指標インデックス(indicator index II) ... weighting factor analysis
    weight = Zj ... この重み付けの仕方に様々なものがある
    IIk = Σ(each species weight)/Σ(all species weight) × 10

汚染指標種

生物に対する影響は、生物で測る

汚染のジレンマ: 強汚染種 - 生存 vs 弱 - 衰退死滅 ⇒ どちらを育てる

汚染に弱い種が育つ環境を作ることが大事なのではないか

地衣砂漠 lichen desert・着生砂漠 epiphyte desert: 定着見られない都市部

日本: 大都市中心部・工業地帯 - ヒートアイランド関与?

土壌乾燥化 → アルカリ化 → 植物組成変化

帰化植物 (exotic plants)
帰化率(種による帰化率) = (帰化植物種類数)/(植物全種類数) × 100 (%)
帰化率は侵入余地を作った地域で高くなる

都市化指標: Taraxacum officinale, Plantago lanceolata, Achillea millefilium

樹木活力
着生蘚苔類地衣類 (epiphytic mosses and lichens)
高等植物: 主に夏活動 → 大気公害レベル低下 = 汚染物質拡散され影響少 + 秋冬は最も敏感な器官である葉を落とし種子・地下茎で休眠する
+ 針葉樹等常緑維管束植物: 一般に大気汚染に強く指標に不適
⇒ 蘚苔類: 高等植物に比べ成長遅く、回復に時間がかかる = 一般に高等植物に比べ公害の良い指標 (Barkman 1969; 垰田 1976)
  1. 樹皮上成育 - 土壌の影響弱
  2. 体表面にクチクラ層や調節可能な気孔なし → ガス変化を全表面で行う
  3. 大気の公害効果は雨水に溶けた形で影響 → 雨水を体全表面で直接受け取る ↔ 高等植物は土壌を通した間接的影響が表れる
  4. 多年生常緑の種は、一年中汚染の影響を受ける
大気(空気)清浄指数 index of atmospheric purity, IAP
= Σi=1nQf × 1/10 (LeBlanc & De Sloover 1970)

n: 地点の着生植物種数
f: その種の優占度
Q: 生態指数(ある種と共存する種類の平均)

→ SO2の着地濃度と良く一致

「一般的に」ということであって、必ずしも成り立つものではない

大気汚染指標としての地衣類 (関東地方以西)

ウメノキゴケ、マツゲゴケ

大気汚染指標としての蘚苔類 (関東地方以西)

ハリガネゴケ、ギンゴケ、サヤゴケ、クチベニヒメゴケ、ヒメシワゴケ、コゴメゴケ、イワイトゴケ、ミノゴケ、コモチイトゴケ、ハイゴケ、ナガハシゴケ、ヒロハツヤゴケ、カラヤスデゴケ、フルノコゴケ、コクサリゴケ、ヒメトサカゴケ

フッター