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(2013年2月10日更新) [ 日本語 | English ]

種子発芽 (seed germination)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

休眠解除 ≠ 発芽
休眠解除シグナル + 発芽シグナル → 発芽

発芽パターン: 発芽する前に分化が起こっている →

物質代謝: 異化過程 catabolic process, 同化過程 anabolic process

[ 発芽と成長 ]

発芽刺激

水 water
物理的吸水 + 化学的吸水

種皮(または果皮) - 水分不透性高いままだと休眠継続
過剰だと酸素欠乏 - 発芽力低下

hilum: 種子は種皮全体ではなく特定部位から主に給水する種が多い
温度 temperature
温度要求性/発芽可能温度域は発生(生理状態)と共に変化
湿層処理(冷湿処理) cold stratification
変温効果 temperature fluctuation
ガス gas
酸素: 酸素分圧↑ (発芽呼吸に多量の酸素必要) → 休眠打破 → 発芽↑

無気呼吸: 酸素を必要としない呼吸 - 発芽初期に多い →

種によっては無気的環境が休眠打破 - 無気呼吸関与

物理的種皮処理 mechanical scarification: メス等で種皮に傷をつける - 多くのマメ科植物で有効 - 酸素取り込み促進

酸素分圧が極端に高いと発芽抑制が多くなる

二酸化炭素: CO2↑ → 発芽↓ (種による)
エチレン: 休眠打破 - 発芽誘導
light
(a) 光発芽 positive photoblastic:

野生種子 = 光の発芽への影響大 ↔ 農作物種子 = 光要求性低
発芽促進: 播種後の覆土薄くする

Ex. セロリ、ミツバ、レタス、シソ、ニンジン、ゴボウ

⇔ 暗発芽 negative photoblastic: 光が発芽抑制

系統的束縛がある
Betula pubescens発芽: 15°C - 長日, 20°C - 短日/長日, > 25°C - 暗黒
索引
Tsuga canadensis発芽: 17-20°C - 短日, 27°C - 長日

⇒ 光発芽性種子でも光は発芽誘導に本質的には必要ではない
ファイトクローム phytochrome関与

光発芽種子: 近赤外光 - 発芽抑制 ↔ 赤色光 - 促進

照射エネルギー量依存発芽種子 energy integrating seeds: 照射されたエネルギー量が閾値を越えると発芽する

連続照射 ↔
間欠照射 intermittent irradiation: 連続照射より低いエネルギーで発芽誘導

照射時間依存発芽種子 time integrating seeds: 照射時間閾値越えると発芽

長日性種子long-day seedsに多

(b) 暗発芽(光抑制)
長時間白色光照射で発芽抑制 → 短時間光(赤色光)で発芽促進

発芽抑制: 播種後の覆土をやや厚くする
ファイトクロームの作用は光発芽種子・暗発芽種子で同じ
+ 種子ファイトクローム - 暗発芽種子に特殊
Ex. Solanum、キュウリ、クロタネソウ、ヒモゲイトウ、Allium, ダイコン

heat
乾式処理: 乾燥器に放り込むこと

Desmodium, Stylosanthesから7種: 80° 30分 - 効果は種により異なる
ササゲ: 70°C 7日間/75°C 4日間 - 効果なし (長井・竹内 1987)
ラッカセイ: 70°C 2日間/70°C 3日間 - 効果なし

湿式処理: 湯につけること。熱湯に数分から数時間が多い
smoke

種子発芽 (seed germination)


始動期 awakening step = 浸漬期間 imbibition period

基礎代謝 essential metabolism: 全ての種子に見られる代謝
特殊代謝 specific metabolism: 特殊な種子にのみ見られる代謝

a. 物理的吸水: 膨潤の速さ + 平衡時の含水量

吸水は数時間から数日で一端停止 - その後(幼根成長による)再給水

b. 貯蔵小器官・高分子物質再活性化

リボゾーム、プロテアーゼ等 - 加水のみで機能するものではない
mRNA/tRNA - 長命mRNA (long-lived mRNA)が種子中には存在

c. 酵素

乾燥種子の段階で多くの酵素が存在 - 給水により活性化
コムギ・オオムギ: 酵素活性化に活性剤(ジベレリン)必要

(Gummerson 1986)

発芽時間の水ポテンシャル-温度モデル

Hydrothermal time model (HTT model)

発芽に温度と水ポテンシャルの閾値thresholdがあることを仮定
1. 温度
1986 Covell et al.: 1/t = [TTb]/θ1

t: (積算)時間 (days)
Tb: 基準温度 base temperature (これより低い温度 ≠ 積算温度)
T: 与えた温度
θ1: 発芽必要時間 thermal time

2000 Moot et al.: gr = b0 + b1x (発芽-時間関係が直線となる範囲)

Tb, Tt(熱を与えた時間)は下式で与えられる
Tb = -b0/b1
Tt = 1/b1

2006 Black et al.: 2000 Moot et al.改変版

積算温度 thermal time (°C d) = Σ{(Tmax + Tmin)/2 - Tb}

Tmax, Tmin: 日最高・最低気温 (Tmin > Tbでないと変だが)

2. 水ポテンシャル 給水: [土壌] → 水ポテンシャル → [種子] → 代謝活性化

↓ 吸水期: 吸水し膨潤
↓ 発芽始動期: 吸水緩やかとなり代謝系活性化(タンパク質合成)
↓ 成長期: 幼根・幼芽成長開始

3. 水ポテンシャル-温度 hydrothermal time
2009 Meyer & Allen, 2009 Blooming et al.

θHT = (ψψb(g))(TTb)tg

θHT: HTT要求量 → 発芽に要するHTT積算量
tg: gにおける発芽までの時間
ψ: 水ポテンシャル
ψb(g): gにおける発芽までの水ポテンシャル
T: 発芽までの温度
Tb: 基準発芽温度(積算温度を求める場合にゼロとする温度)

→ プロビット変換
Probit(g/gm) = [ψψb(50) – θHT/((TTb)tg]/σψb

g/gm: その個体群中にある生存種子率
ψb(50): その個体群中での基準水ポテンシャル平均値(中央値)
σψb: その個体群中での基準平均水ポテンシャルの標準偏差

種子発芽実験 seed germination experiment

いろいろあるが、共通して気にすべき点は、温度・水・光・(土壌栄養) ☛ 栽培
準備: 種子、土壌、ポット(トレイ)、光(自然光含)、(肥料)、水(スプリンクラー等)、必要に応じ除虫剤・除菌剤
温室発芽実験 greenhouse experiment ☛ 温室報告書

埋土種子発芽実験では最も普通

ファイトトロン(恒温器)発芽実験 phytotron

植物を一定気候状態で育てる観察装置

[ 種子形態 | 埋土種子 | 休眠 ]

種子休眠 (seed dormancy)


発芽に適した条件下でも発芽しない (環境適応の結果) ⇒
種子が不適当環境で発芽 → 幼植物死亡率↑
植物は成長に適した環境においてのみ発芽成長する (循環論法?)

True dormancy: 何をしても休眠が打破できない場合
Main rest or middle rest
Predormancy:成長能力を完全には失っていないもの
dormancy
このようなものでは、真の休眠は存在しない(Vegis 1964)
Ex. Amaranthus: 発芽ピーク40°C, Betula: 30°C = 時間とともに発芽温度域徐々に広がり0-30°Cで発芽

種子休眠類型 types of seed dormancy

※ 休眠要因は1つとは限らない
一次休眠 primary dormancy
胚を取り巻く構造

種皮の水不透性 Ex. 大賀ハス

機械的損傷(ヤスリで削る)、剥離、濃硫酸処理などで発芽促進可能

種皮のCO2, O2不透性

胚自体

未熟

後熟種子: 胚完熟に散布後数週間-数か月必要 Ex. ヤブイチゲ、キンポウゲ、セイヨウトネリコ

代謝阻害(発芽抑制)

光発芽種子
低温誘導発芽

二次休眠 secondary dormancy

発芽可能な種子が発芽不適環境により休眠再開 - 代謝阻害

上胚軸休眠 epicotyl dormancy

Ex. Quercus、ボタン: 上胚軸は低温刺激を受けない限り休眠状態
Ex. Trillium: 低温1年目 = 幼根休眠解除 → 2年目 = 上胚軸休眠解除

分類(は色々あるが)
  1. 自発休眠 innate dormancy (一次休眠primary dormancy, simply dormancy): 種子発達段階で既に休眠機構形成されたもの
    1. 種子形成後一定の後熟期間必要
    2. 発芽に生化学的引金(ホルモン等)必要
    3. 種子中に発芽抑制物質を貯蔵し、これが減少すると発芽する
    4. 種皮が物理的に水分やガスの種子中への吸収を抑制しているため休眠する
  2. 誘発休眠 induced dormancy (二次休眠secondary dormancy): 親個体から離れた後の環境要因により種子内部に変化が起こり誘引された休眠

    種子休眠 seed dormancy (s.s.): 種子を傷つけたり胚を取り出すと発芽する
    胚休眠 embryo dormancy: 胚を取り出しても発芽しない

    = 強制休眠 enforced formancy: 光・水欠如・環境中発芽抑制物質の存在等により強制的に発芽抑制された休眠

    発芽必須3条件が揃えば発芽する種子は光非依存種子 light-independent seeds

    1. 光 light → 発芽促進種子 light-sensitive seeds / 発芽抑制種子 light-hard seeds
      ファイトクローム phytochrome 関与 - 発芽促進種子は雑草に多
      レタス種子における光要求性種子発芽の研究
      光: 土壌数 cmで届かない → 深所への種子移動は短寿命種子に生存上不利(Roberts & Feast 1972)
    2. CO2

(Harper 1977)

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