Top
ヘッダー

(2024年2月5日更新) [ 日本語 | English ]

代謝 (metabolism)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

☛ [生産力| 光合成 ]

代謝 metabolism

生体内に取り込んだ分子の酵素等による変化 = 物質代謝 + エネルギー代謝
生物が栄養物からエネルギーを得て、エネルギーを細胞物質に使用する時に必要とする一連の化学反応
主機能:
  1. 環境からエネルギー(光・栄養物等)取出し
  2. 細胞構築単位の合成確保(アミノ酸、ヌクレオチド等)
  3. 構築単位からの組立て(タンパク質、核酸等)
  4. 生体機能必要部分の合成確保(ホルモン・ATP等)

          ATP             有機物質             ATP
          ↑ P ↓ ----------→ ↓↑ ----------→ ↑ P
          ADP             無機物質            ADP
             ┇                                            ┇
光合成における光リン酸化  呼吸における酸化的リン酸化

生命活動: 生合成、運動(アメーバ、鞭毛、繊毛、筋肉)、体温(発熱)、能動輸送(Naポンプ)、発光 Ex. ウミボタル、発電 Ex. シビレエイ

エネルギー代謝 energy metabolism
生命現象に伴う(原因となる)エネルギー出入input/outputや変換translation
特徴: 化学結合エネルギー(呼吸発酵)や光エネルギー(光合成)が直接熱転化される前にATP等の高エネルギー結合に捕らえられる

転化効率30-60%で、熱転化部分は体温保持や蒸散による冷却補償に充てられる
電気エネルギー: 植物も発生。Ex. 障害を植物に与えると負傷流が表れ回復と共に消失する。動物と植物では電位差は、ほぼ等しいが時間経過が植物ではゆっくり進み遠方伝達殆どない

機構: Bernsteinの膜説
物質代謝 substance metabolism
同化作用 anabolism: 原料物質の化学的複雑性を増加させる化学変化。通常、吸エルゴン的過程で、平行して進行する発エルゴン反応(異化作用)から吸収される自由エネルギーにより反応進む

独立栄養生物は外部からこのエネルギーを吸収
独立栄養生物(緑色植物等): 外部無機物 → (光合成等) → 自己有機物
従属栄養生物(動物等): 他の生物の有機物 → (消化) (合成) → 自己有機物

             炭酸同化 窒素同化 取入れる養分形                 
細菌            ×             ×        無機物、炭水化物、アミノ酸
菌類            ×             ○        無機物、炭水化物
緑色植物     ○             ○        無機物
動物            ×             ×        無機物、炭水化物、アミノ酸

索引
異化作用 catabolism: 複雑な物質をより簡単な物質に分解する反応(化学的複雑性の定義曖昧)。異化作用は化学的単純化の語感があり、一方にディシミレーションdissimulationがあり、こちらは老廃物化の感が強いが、2用語使い分けは人による。一般に、化学的複雑性増加は自由エネルギー増大と関連し、便宜的に自由エネルギー損失を伴う過程(発エルゴン反応)を異化作用、逆を同化作用という。呼吸は異化の一種
Q. 次のa-dの4組の述語をanabolismまたはcatabolismに通常関係づけられているように分類せよ
a) 合成、分解
b) ADPとPiからのATP生成と連関、ATP分解と連関
c) エネルギー消費、エネルギー合成
d) NADからNADHの生成と関連、NADHからNAD生成と関連
エネルギー源

光栄養
電子源
+ H2O: 酸素発生型光合成
- H2O: 酸素非発生型光合成

化学物質

化学栄養
有機炭素

従属栄養
端末電子受容体
+ O2: 好気的従属栄養
- O2: 嫌気的従属栄養

無機化合物

化学無機栄養 (化学独立栄養)

図. 自然環境中の微生物は代謝により様々な機能群に分類できる(Fenchel & Blackburn 1979)

生合成 (biosynthesis)


生体が構成成分(生体分子)を作ること
  • 一次代謝 primary metabolism: 多種共通基本化合物(アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸等)合成経路

    Ex. 解糖経路, クレブス回路, ペントースリン酸回路

  • 二次代謝 secondary metabolism: 特定種群特有化合物(ホルモン、フェロモン、毒素等)合生経路

生合成研究

  1. fundamental polymers: 単量体component monomer
  2. 天然物(s.s.): secondary metabolism
生細胞でより簡単な基本的前駆体からある定められた分子を合成する際に関与する中間体の化学的性質、反応系列、各反応を触媒する酵素等の性質を明らかとする

基本技術: 生成物阻害product inhibition – allosteric, homosteric

基本ポリマーの生合成
  1. group activation (and transfer): 転移と転位。endergonic reaction
  2. chain elongation (transfer): 生合成では最初複雑なものがあり、徐々に簡単な構造のものに作りかえられていく
    1) coenzyme as carriers of activated molecular subunits
    2) homo-or hetero-condensation
    3) reaction step: i) initiation (need initiator), ii) elongation (=propagation), iii) termination
  3. patternization: 生合成では全く異なる経路で同じ合成物を生成することが種および個体オーダーでよく見られる
    conservation and transfer
    formation of pattern:
    i) assembly-line mechanism (block-polymer)
    ii) template mechanism
protein → (protease) → amino acid (AA) + peptide [逆反応はproteaseではなされない]

ΔG0' < 0, ΔF
AA + peptide → protein
プラスティン反応: 生合成経路としては起こらないが、AAとpeptideの濃度をかなり高くすると起こりうる

代謝における正常生合成経路
= 無傷な系intact / 成熟した系mature / 老衰していないnot senecent (正常な系は1つとは限らない)
  1. 正常な中間産物 intermediate → 最小培地 mimimal medium
    最小培地で、その生体が生産し利用する化合物。normal intermediateを使う反応系列の中間体を持つ
  2. 単一酵素で次のより高次なintermediateに移る
  3. 最終的に目的の化合物になる: 途中にintermediateの蓄積poll or storageがあってもよい
Q. (a) ある生物の生合成系で化合物Pが化合物Yに変換する。中間体の種類・順序は不明である。この系で、それぞれ異なる化合物を蓄積する6種の変異株a-fが見出され、蓄積化合物はa → R, b → Q, c → V, d → W, e → T, f → Pである。次にこの生物はYを成長に要求するので各変異株に各蓄積化合物を1つずつPに共存させた時の成長の有無を調べた
    株   成長有                 成長無
     a   T, Q, W, Vのどれか     R
     b   V, Wのどれか           R, T, Q
     c   W                      T, V, Q, R
     d   -                      Q, W, R, T, V
     e   W, Q, Vのどれか        T, R
     f   R, Q, V, W, T          -
 これらのデータから生合成経路を構成する原理を説明し中間体の順序を決めよ。ただしP → Yの変化に関係する反応は全て速く事実上逆行しない
__(b) (a)でなされた構成が成立するには大きな仮定が3つある。これを説明せよ
Q. ある細菌の生合成系の調節は図のようになっている
    ┌──────────────┐
          ♦            ♦↗ E → F
        A ⇉ B → C → D 
          ♦            ♦↘ G → H
    └──────────────┘

化合物A-H、各段階の反応、またはそれを触媒する酵素を1-7、♦はフィードバク阻害を示す。

a) 今過剰のHをこの細菌に与えた時にA-Hの反応のどれが減少するか。ただし反応|hは正常量のHを合成するのに必要なだけのBを合成する
b) 大過剰のDをこの細菌に与えた時に起るA-Hの変化を全て述べよ
c) 今酵素 |f を欠く変異株が存在する時、これに過剰のFを与えた時のA-Hの変化を全て述べよ

呼吸 (respiration)


呼吸とエネルギー代謝 respiration and energy metabolism

自家呼吸: 高等植物は細胞内に糖質、脂肪等養分を多量に貯え呼吸材料を与えなくても呼吸は長く持続可能
⇔ 細菌等貯蔵養分の少ない生物は、自家呼吸は比較的短時間で衰退し種々物質を与えると、これを材料に酸化を行い呼吸回復する。呼吸材料は糖が最もよく使用される
生体における酸化還元反応
呼吸系に置ける酸化還元:

C6H12O6 + 6O2 = 6H2O + 6CO2 + ATP
___└ 段階的分解 → チトクローム系

ATP = energy, 普通は38ATP, 688 kcal

cytochrome

エネルギー効率

C6H12O6 → 6CO2 + 6H2O______ ΔG0 ≈ -686 kcal (-2872 kJ)
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2___ΔG0 ≈ -54 kcal (-226 kJ)
ΔG0: ギッブスの自由エネルギー変化量

A + B ⇔ C + D
K'eq = [C][D]/[A][B] = -2.303RT·logK'eq … 平衡定数
ΔG = ΔG0 + RT·ln([C][D]/[A][B]) … 平衡状態ではΔG0は0
ΔG0 = -RT·ln([C][D]/[A][B])

… ΔG0: (1 mol変化時の)標準条件下自由エネルギー変化量)

ΔG = ΔH - TΔS

ΔH = エンタルピー変化量

= [A, Bの内部エネルギー] - [C, Dの内部エネルギー]

T = 絶対温度
ΔS = エントロピー変化量 (cal, J)

ΔH = ΔE + PV … ΔE = 総エネルギーの変化量
PV = RT: ΔPV → 0とするとΔH = ΔE
∴ ΔG = ΔE - TΔPS, ΔE = ΔG + TΔS

__K'eq_____ΔG0_____Reaction
___1_______0
K'eq > 1___ΔG0 < 0___Exergonic (発エルゴン反応)
K'eq < 1___ΔG0 > 0___Endoergonic (吸エルゴン反応)

ΔG0 < 0: 反応は自発的spontaneousに進行 = Exergonic、エネルギー放出反応
ΔG0 > 0: 反応は外部エネルギーを加えると進行 = Endoegonic、エネルギー吸収反応

生物生体反応: 標準エネルギーをpH 7.0, 1 mol, 25°C時を標準条件とし示す

K'eq__________0.001__ 0.01___0.1__1.0___10__ 100__ 1000
ΔG0 (cal/mol)__+4089_+2726_+1363__0__-1363_-2726_-4089
_____ (J/mol)__17120_11413__5707__0

高エネルギー結合体 high-energy compounds
加水分解時の遊離エネルギーの大きいもの

ATP
ATP

~: 高エネルギーリン酸結合
α, β, γはP部位を明示するため用いる
5環の部分がribose

ATP + H2O → ADP + Pi 反応早く平衡見分けにくい

Condition: ph 7.0, 37°C, excess Mg++, Hexokinase

ATP + glucose H.K. → ADP + Glu-6-P

K'eq = 66.1, ΔG10' = -4 kcal (-17 kJ)

Glu-6-P + H2O phosphate → Glucose + Pi

K'eq = 171, ΔG20' = -3.3 kcal (-13.8 kJ)

ΔG0' = ΔG10' + ΔG20' = -7.3 kcal/mol (-30.6 kJ/mol)

高エネルギーリン酸化合物 (high-energy phosphate compound)
ATPの生体内での働き
ATPは生体内で多様な働きをしている
エネルギー獲得反応(還元反応)

供給体 electron donor: 還元剤
受容体 electron acceptor: 酸化剤

donor ⇔ acceptor + e-

酸化還元電位 (oxidation-reduction potential, or redux potential → 起電力 → ATP形成

A + 2e- + 2H+ → AH2
ADP + Pi → ATP + H2O, ΔG0' = 7.3 kcal/mol (30.6 kJ/mol)

呼吸 respiration: 異化の一種

基本式
有機呼吸aerobic respiration

AH2 + 1/2O2 → A + H2O
AH2 + O2 → A + H2O2

無機呼吸anaerobic respiration

AH2 + NO3- → A + NO2- + H2O
発酵 fermentation, 解糖 glycolysis

Glucose → Luctose
Glucose → Ethanol + 2CO2

呼吸単位・呼吸速度

呼吸率 respiratory quotient, QO2
μl O2/g weight/hour(min)等の単位重量・単位時間あたりμl O2吸収量(呼吸の強さ)
- CO2の出入を考慮していず呼吸を表現するのは不十分
QCO2: μl CO2/g weight/hour(min) etc. - 単位重量・単位時間あたりに何μlのCO2を排出するかを表す

ニンジン________________成熟葉__ 若葉
QO2 (O2 μl/g fr w/hr)__25-30___440___1133
乾重 dry weight: 水の影響をとる → 生重 fresh weight: 直接
タンパク質 (mg protein): 酵素単位
窒素 (mg N): タンパク質単位

Def. 呼吸商(呼吸率), RQ = CO2/O2 (分子数)
炭水化物(glucose): RQ = 6CO2/6O2 = 1

∵ C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O

タンパク質 RQ ≈ 0.8
脂質 (glycerol triolate): RQ = 57/83 = 0.69

∵ C57H104O6 + 83O2 → 57CO2 + 52H2O

アミノ酸 (citrate): RQ = 6/4.5 = 1.33

∵ C6H8O7 + 4·1/2O2 → 6CO2 + 4H2O

⇒ 呼吸基質の割合推定可 = 呼吸基質に何が使われているかを推定可

馬: RQ = 0.96 (草食) > ヒト: 0.89 (雑食) > 犬: 0.79 (肉食)

Ex. : C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O ∴ RQ = 2/3

酒が全て体内燃焼 - RQは2/3に近づく (実際には体温維持に使われる)

測定方法: 原理 = 排出CO2量か吸収O2量を計る
measurement 1. 検圧法manometric method

反応 → アルカリ O2 uptake, CO2 evolve
→ アルカリによるCO2吸収量を測定
液面変化をアルカリを入れたときと入れないときで測定し差をみる(ガス圧低下)

2. 酸素電極法oxgenelectrode

- Pt________2O2 + 2H2 + 4e- → 4OH-
+ Ag, AgCl__4Ag + 4Cl- → 4AgCl + 4e-

3. 赤外線ガス分析法 CO2 analyzer method

CO2: 赤外線(IR)を強く吸収 - IR吸収量測定でCO2量変化(= 吸光量)推定 → 光合成量測定でも利用

呼吸研究


1791 Lavoisier: 静脈・動脈色違う ⇒ ヘモグロビンhemoglovin構造の違い

1840 Schoenbein: オゾン(O3)発見 ⇒

生体内酵素活性化説 activated oxygen theory → 生体内O3発見されず否定 1884 MacMunn

Keilin (1925)が実験結果を当時の技術で示し色素存在指摘。筋肉中ミオグロビンと異なる色素存在に着目し、その異なる色素は鉄を含む物質と考えたが、発見できず実際若干異なる物質であったためミオヘマチンmiohematinと呼ばれる。類似現象は酵母でも発見され、これが呼吸に関連することも予測された。酵母にCN-を加えると呼吸阻害されるが酸化されないため吸収バンドは残り観察できる

1850 Garreau, Lazare
1885 Ehlich: 水素活性化説 activated hydrogen theory
1903 Wieland: 理論上の酸化(実際の酸化では脱水素が多い)

-CH=O → -C(OH)=O
-CH=O → [H2O] → -CH(OH)2 → [O2] → -C(OH)=O + H2O2
酸化還元反応の様に酸素が入るのではなく水素のとれる酸化もある
AH2 + Pd → A + PdH2 (Pd = ブラックパラジウム, 触媒)
PdH2 + B → Pd + BH2

1908 Warburug, O.: ウニ未受精卵

Feを添加すると呼吸促進 → CN, COを入れると阻害
XFe + O2 → XFeO
XFeO2 + 2A → XFe + 2AO

A: 呼吸基質, Fe: atmungs ferment

respiration
*: カエルの筋肉をホモジェナイズしたもの
__(ただし熱処理すると反応みられない)

1912 Thunberg TL (1873-1952)

Mbは還元(脱水素)が無酸素ステージでも可能
→ dehydrogenation

    a             b    c        β     バンド
     |              |     |         |     
  605         560 550    520   吸収帯

1925 Keilin D (1887-1963)

生物をホモジェナイズすると酸化還元状態の違いで吸収帯に差出る → 還元状態(Ex. ラクトースを多量に加える)に放置すると吸収帯消失

呼吸鎖 (respiratory chain)


= 解糖系 + TCA回路 + 電子伝達系
= クレブス回路とそれに関与する代謝経路
呼吸は、解糖系を除くと、特にTCA回路はミトコンドリア中で多くの酵素が関与し行われる。生体酸化還元において電子伝達に関与する一連の酸化還元酵素系のことで、通常ミトコンドリア等の分子状酸素によるNADHおよびコハク酸などの酸化酵素系を指す

呼吸鎖の大きな流れは: 解糖系 → TCA回路 → 電子伝達系
_____________________↖__________________|
TCA回路 -マトリックスに存在 : 電子伝達系 -クリステに存在

1. 解糖系 (発酵・解糖): 無気呼吸。H授受

A → B
__↳ energy → ATP [ADP + Pi → ATP]
基質レベルのリン酸化反応

2. 酸化的リン酸化反応 (電子伝達系)

AH2 + 1/2O2 → A + H2O
AH2_↘↙___NAD+__↖↗ FpH2 ↘↙_Q__↖↗__________↘↙ 1/2O2
________________ ______ ______↑ cytochromes ↓
__ A ↙↘ NADH + H+↗↖_Fp__↙↘ QH2 ↗↖__________↙↘ H2O

3. 光リン酸化

発酵: 嫌気的生物
解糖・酸化的リン酸化: 好気的生物
光リン酸化: 光合成生物および一部の動物 ← 光合成

呼吸鎖研究
多くの経路がアンチマイシンA (antimycin A)、ロテノンrotenone、アミタールamytal、ピエリシジンpiericidin等の阻害剤を利用し確認された

解糖系 glycolysis (= EMP経路)

細胞質基質内で行われる、炭素化合物(糖質)からエネルギーを引出す形式 [開始] グルコースのリン酸化 → … →
[終了] ピルビン酸の乳酸への還元

外界と酸化還元当量のやりとりをしない嫌気的エネルギー獲得形式
1) 単純糖質の回収とグリセルアルデヒドリン酸の転化・始動・ATPの導出
2) グリセルアルデヒド-3リン酸の乳酸への転化

(1) Hexokinase (EC 2.7.1.1)

Glucose + ATP → Glucose 6-phosphate + ADP
_____________↑ ヘキソキナーゼ hexokinase
α-D-glucoseリン酸化 (ΔG0' = -4.0 kcal)
反応が平衡状態になるには→方向への反応が進む非可逆的反応となる
糖合成 (糖新生, gluconeogenesis)では大部分の反応が解糖系の逆反応を用いている。ただし、この反応過程では別酵素 (Glucose-6-phosphatase) が加水分解に使用される

(2) Glucose phosphate isomerase (EC 5.3.1.9)

G-6-P → Fructose-6-phosphate
反応は可逆反応で←方向へも反応(gluconeogenesisにも使用される)

(3) 6-phosphofluctokinase (EC 2.7.1.11)

F-6-P → Fructose 1,6-biphosphate (ΔG0' = -3.4 kcal)
非可逆的irreversible
逆反応は Fructose 1,6-biphosphataseによってF-1,6-P2 → F-6-P + Pi
この酵素は解糖系のRegulatory enzymeである
ATP, citrate → 阻害 (フィードバック)
ADP, AMP → 活性化

(4) Aldolase (EC 4.1.2.13)

F-1,6-P2 → Dihydroroxyacetone phosphate (DHAP)

+ Glyceroaldehyde 3-phosphate (Ga3-P) (ΔG0' = +5.73 kcal)

(5) Triosephosphate isomerase (EC 5.3.1.1)

DHAP → Ga3-P 可逆反応

(6) Glyceroaldehyde 3-phosphate dehydrogenase (EC 1.2.1.12)

RCHO + NAD+ + H2O → RCOOH + NADH + H+ (ΔG0' = -10.3 kcal)
RCOOH + H3PO → RCOOP + H2O__________ G0' = +11.8 kcal)

[10.3 - 11.8 = -1.5 kcal]

1,3-diphosphoglycerate - H3AsO4 (解糖の脱共役剤 uncoupler)
glycolysis

(7) Phosphoglycerate kinase (EC 2.7.2.3)

1,3-DGP + ADP ⇔ 3-P-G + ATP

(8) Phosphoglycerate mutase (EC 5.4.2.1)

3-P-G ⇔ 2-P-G

(9) Enolase (EC 4.2.1.11)

2-P-G ⇔ Phosphoenol pyruvate (PEP) + H2O, PEP: 高エネルギーリン酸化合物
この過程はfluoride(フッ素化合物)によって強力に阻害される

(10) Pyruvate kinase (EC 2.7.1.40)

PEP + ADP → Pyruvate + ATP____ΔG0' = -7.5 kcal
この過程は可逆的反応
① Pyruvate carboxylase:

Pry + CO2 +ATP + H2O → Oxaloacetate + ADP + Pi

② Malate dehydrogenase:

OAA + NADH + H+ → Malate + NAD+

反応ミトコンドリア内で起り、オキザロ酢酸は膜を通れないがリンゴ酸は運搬体の働きで膜を通過しサイトプラズムに出られる

③ Malate DH (cytplasm):

Malate + NAD+ → OAA + NADH + H+

④ Phosphoenolpyruvate carboxykinase:

有機酸(OAA, Malate, etc.)と糖合成反応の接点となる酵素
OAA + GTP → PEP + GDP + CO2
補酵素としてはGTPを使うものが非常に多い。酵母などではATPを使うものもある

(11) Pyruvate decarboxylase (EC 4.1.1.1)

Pyr → Acetoaldehyde + CO2
反応は基本的に逆反応はない → アルコールから糖を合成するのは困難

(11') Lactate dehydrogenase (EC 1.1.1.27)

Pyr + NADH + H+ &hAarr; Lactate + NAD+
脱炭酸反応をしないところが(11)と異なる

(12) Alcohol dehydrogenase (EC 1.1.1.1)

Acetoaldehyde + NADH + H+ ⇔ Ethanol + NAD+

解糖系酵素の特徴
EC              酵素数
1 Oxidoreductases  2  ┌加水分解酵素・合成酵素がない
2 Transferases     4  │加水分解酵素無 → エネルギーロス少
3 Hydrolases       0  ┤酸化還元酵素はATP合成でしか使わない
4 Lyases         2or3 │→ TCA回路と異なる点
5 Isomearses       3  │分子変形が多い
6 Ligases          0  ┘
glycolysis
図. 解糖系 glycolysis (EMP経路)

ホスホグルコン酸回路 (phosphogluconate pathway)

別名 Pentose phosphate pathway
1958 Wakil

malnyl-CoAが脂肪酸合成の本体でacetyl-CoAはその阻害剤であることを実験的に証明

1960 Mosbach
1961 Bentley: malonyl-CoA → orsellinate → penicillate
1961 Lyneu
1961 Bu'Loch: -OOC-C*H2-COO-
⇒ 1978までに脂肪酸合成経路は解明される

代謝経路の酵素はサイトプラズム(ミトコンドリア細胞質の溶性部分)にある。脂肪酸合成が盛んなところ(肝臓・乳腺等)ではNADPが必要なのでこの経路の代謝が盛んに起こる

機能
  • NADPHの供給(エネルギー獲得ではなく合成反応のためのNADPH)
  • 核酸合成用のペントース(pentose)の供給 → D-リボース5リン酸に転化
  • 植物ではさらに光合成において暗反応の際にCO2固定のために利用される経路
(1) Glucose-6-phosphate dehydrogenase___EC 1.1.1.49

G6P (アルデヒド) + NADP → NADPH + 6-P-gluconate (カルボン酸)

(2) 6-P-gluconate dehydrogenase_________EC 1.1.1.43
(3) Ribose-5-phosphate isomerase________EC 5.3.1.6
(4) Ribulose-5-phosphate 3 epimerase_____EC 5.1.3.1 - 異性体作る
(5) Transketolase______________________EC 2.2.1.1

Pentose + Pentose → Hepsose + Triose

(6) Transldolase_______________________EC 2.2.1.2

Heptose (3/7) + Triose → Hexose + Keto-

(7) Heptose (4/7) + Pentose (2/5) → Hexose
結果としてNADPの供給が行われる
    EC      1  2  3  4  5  6
    酵素数  2  2  0  0  2  0
Acetyl-CoA + CO2 + ATP → Malonyl-CoA + ADP + Pi
7malonyl-CoA + Acetyl-CoA + 14NADPH + 14H+

Palumitate + 7CO2 + 14NADP+ + 8CoA-SH + 6H2O

解糖の逆反応による糖合成
光合成を行わない生物の糖合成glyconeogenesisは3つを除き解糖の逆反応
Glycogen (α-1,4-glucoside linkage)

glycogen
____↓ phosphorylase (EC 2.4.1.1)
____↓ - 1位の炭素にphosphateをつけ加水分解
Glucose-1-phosphate
____↓ phosphoglucomutase (EC 2.7.6.1)
Glucose-6-phosphate
以降はグルコース解糖反応と同じ。ただしグルコースではhexokinaseによる反応でATPを1分子消費したが、ここではATP消費がないので解糖系で合成されるATPは差引き3分子になる
嫌気的状態 Glucose →→→ Pyruvate → Lactose, Ethanol
________________________ NAD+ ↗↘ NADH (完全)発酵

代謝産物(lactose, ethanolなど)が還元されNADHが酸化されNAD+へ入る

好気的状態 Glucose →→→ Pyruvate → C2O, H2O__呼吸

酸素を還元して NADH → NAD+: TCA回路
aerobic respiration
_____NDA+________________________NADH2+

TCA回路

= トリカルボンサン回路・クエン酸回路・クレブス回路, tri-carboxyl cycle
1937 Krebs HA: TCA回路決定
解糖及びその他異化作用により生じたAcetyl-CoAを完全に水とCO2に分解する好気的過程 → 呼吸鎖
解糖系導入物質がglucoseであればこの回路は3回転しglucose 1分子が完全酸化される
この時の水素はNAD+等へ回されNADHの酸化還元電位差によって生じる酸化的リン酸化に使用される
糖・アミノ酸・脂肪酸完全分解と最大エネルギー引出しが可能。呼吸鎖と共役しAcetyl-CoAがこの回路で完全酸化を受ける(ΔG0' = -272 kcal)と12分子ATPが生じる(ΔG0' = +110 kcal) → エネルギー回収率 ≈ 40%
⇒ ① NADHの供給、② アミノ酸合成の中間体の供給といった両面的性質amphibolic natureがある

TCA回路の他の生理的役割は生体構成脂質合成への原料供給。TCA回路回転の強さはその含まれる物質量に依存するので合成諸回路へ物質引上げを補給する必要があり、ピルビン酸カルボキシラーゼあるいはグリオキシル酸回路等が関与している。クエン酸回路はミトコンドリア内溶性部分(マトリックス)に局在する

補充反応 anaplerotic reaction
TCA回路の中間体欠乏を補充する反応

Ex. アミノ酸からアミノ酸を作る反応を言う。※すべてCO2固定反応

(1) Pyruvate carboxylase (ピルビン酸カルボキシラーゼ)

Pyruvate + CO2 + ATP → OAA(リンゴ酸) + ADP + Pi(ATP消費)
ATPを消費しているがTCA回路をスムーズに回転し効率のよいエネルギー変換を行うための反応

(2) Malic enzyme (リンゴ酸酵素)

Pyruvate + NADPH + H+ → OAA + NADP+

(3) Phosphoenol pyruvate carboxykinase (PEP)

PEP + CO2 + GDP → OAA + GTP

酵素系
1. Pyruvate dehydrogenase EC 1.2.4.1

Pyruvate + Co-A-SH + NAD+ → Acetyl-CoA + NADH + H+ +CO2
Enzymes____________________ Coenzymes
E1: Phr-dehydrogenase_________1. Co A-SH
E2: Dihydrolipoyl transacetylase__ 2. TPP(Thiamine pyrophosphate)
E3: Dihydrolipoyl dehydrogenase_ 3. Lipoic acid
____________________________4. FAD
____________________________5. NAD+
α-ketoacid dehydrogenases (α-ketoglutarate)

a) E1-TPP + CH-CO-COOH → E1-TPP-CHOH-CH3 + CO2 (放出)
b) E1-TPP-CHOH-CH3 + E2enzyme → E1-TPP + E2enzyme
________________________ S___S_________CH3-SO___ SH
c) E2enzyme + CoA → E2enzyme + CH3Co-S-CoA (Acetyl CoA)
______S___ SH__________ S___ SH
______ |
___ O=C-CH3
d) E2enzyme + E3-FAD → E2enzyme + E3-FADH2
______S___ SH_____________S───S__Lipoamide dehydrogenase
e) E3-FADH + NAD+ → E3-FAD + NADH + H+
2. Citrate synthase EC 4.1.3.7

Acetyl CoA + DAA → Citrate + CoA-SH: ATP, NADHで阻害

3. Aconitae EC 4.2.1.3

Citrate(91%) ⇔ cis-Aconitate (3%) ⇔ iso Citrate (6%) ← 平衡状態

enzyme 4. Isocitrate dehydrogenase:
NAD要求性 EC1.1.1.41
NADP要求性 EC1.1.1.42

iso Citrate + NAD+ (or NADP+) → α-ketoglutarate + CO2
高等植物ではNADの方が普通
NADP+要求性はバクテリアに多い
アロステリック酵素であり、ATP, NADH等により敏感にフィードバックする

5. α-ketoglutarate dehydrogenase EC 1.2.4.2

α-ketoglutarate + CoA-SH + NAD+

Succinyl-CoA + NADH + H+ + CO2

Succinyl-CoA(1 mol) + GDP → Succinate + GTP
↓ GTP + ADP → GDP + ATP
substrate level phosphorylationの1つでuncouplerの影響を受けない

6. Succinate dehydrogenase EC 1.3.99.1

ミトコンドリア膜に硬く結合した酵素複合体。補酵素はFAD
Succinate + FAD → Fumarate + FADH2: マロネートに阻害される

7. Fumarase

Fumarate → Malate

8. Marate dehydrogenase EC 1.1.1.37

Malate + NAD → OAA + NADH + H+

酵素命名規約に基づいて整理: EC/酵素数 = 1/5* 2/0 3/0 4/2 5/0 6/0

⇒ TCA回路は酸化還元酵素が反応の主役
*: pyruvate dehydrogenaseは厳密にはTCA回路に入っていないのでEC1は4 + 1

α-ketoglutarate (α-KG)

COOH-CO-CH2-CH2-COOH (OAA) + NH3+ + NADH + H+

__→ COOH-CHNH2-CH2-CH2-COOH (Glutamate)

OAA_____ → glutamate
_________ → aspartate
Pyruvate__ → alanine

アミノ酸中間体intermediatesになっている

ミトコンドリア中に貯まったOAA(オキザロ酢酸)は

OAA + glucose → [transaminase] → aspatrate + α-KG
aspatrateの形で再び回路の最初に戻りH+とNADHの受容体となる

Glycolysis: Glucose + 2ADP + 2Pi + 2NAD+

→ 2Pyr + 2ATP + 2NADH + 2H+ + 2H2O: 可溶部分での反応

TCA cycle: 2NADH + 2H+ + O2 + 6Pi + 6ADP

6ATP + 2NAD+ + 8H2O: ミトコンドリア内の反応

↓ Total 8ATP: 解糖でできたNADHを酸化
4Piの場合 - shuttle mechanism


                            ATP products

  1. PyrDH     -NADH + H+   3
  2. I,C,DH    –NADH        3
  3. α-KGDH   –NADH        3 + 1(+1は基質レベル)
  4. Succ-DH   –FADH2       2
  5. MDH       –NADH        3

  Total                 15ATP × 2 → 8ATP + 15ATP × 2 = 38ATP

基質がグリコーゲンだと39ATPになる

エネルギー効率 (7.3 × 38)/685 (kcal) × 100 = 41.5%

Krebs

グリオキシル酸回路とβ酸化glyoxylate cycle and β-oxidation

β酸化 (β-oxidation)
(CH2)nCH2·CH2·COOH
________________
(CH2)nCO-SCoA___CHCO-SCoA
(Acyl-CoA)________(Acetyl CoA)

動物ではミトコンドリア、植物ではグリオキシゾームで主に進行する反応でFpH2, NADH2が生産される
ミトコンドリアではETSに入りATP合成に役立つが植物では異なる

⇒ グリオキシゾームglyoxysome中で×ETS, ×ATP合成 → エネルギー生産(ATP合成)にあまり関与しない

FMNH2 + O2 → FMN + H2O2
NADH+ + ↘
NAD+___↙ Shuttle mechanismの存在

グリオキシル酸回路 glyoxylate cycle
植物と一部の微生物が持つ(動物にはない)
TCA回路変形 → TCA回路はミトコンドリア中で、グリオキシル酸回路はグリオキシゾーム中で行われる
脂肪酸を炭素源としアセチルCoAの形で利用する回路。種子発芽では、光合成により糖を獲得できるまで種子中貯蔵脂肪を利用し成長するため盛んに使われる回路

_________ Acetyl-CoA
Sugar ←← OAA (オキザロ酢酸) →→→→→→Citrate
_____________________________________
___________Malate____________________ Isocitrate
Malate synthease ↑ ↖←←←CHO-COOH______↓ Isocitrate lyase
____Acetyl-CoA (C2)→↗___(Clyoxylate)_↖←Succinate (C4)
2Acetyl-CoA (C2) + NAD+ + H2O

→ Succuiante (C4) + NADH + H+ + 2CoA-SH

Malate synthase, Isocitrate lyase: CH3COOHで誘導される

植物微小器官microorganismsには局在するが動物には殆どない酵素
Fat → Fatty acids_______β_______α
________β-oxidation (R-CH2-CH2-COOH)
_____ Acetyl-CoA

リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル malate-aspartate shuttle

ミトコンドリア外NADH2+のエネルギーを、ミトコンドリア内膜を経て、ミトコンドリア内(マトリックス)へ転送する仕組み
哺乳類で発達

NADH + H+ + OAA → NAD+ + malate
Malate + NAD+ → OAA + NADH + H+
_______________________
_______________________呼吸鎖 → O2
_______________________↓↓↓
_______________________3ATP

電子伝達系

呼吸系と光合成系での電子伝達系の相違
呼吸: エネルギー順位が高次から低次へ移動し、その放出エネルギー利用
光合成: 光エネルギーで一端高次エネルギー体作り低次に移る際にATP生成
酸化的リン酸化 oxidative phosphorylation
主にミトコンドリア内で行う反応系(ミトコンドリア単離成功後研究盛ん)
呼吸鎖におけるエネルギー共役過程。この共役によりO2の電子輸送から得られるエネルギーを用いADPとリン酸からATPを生成する過程。即ち、酸化反応とATP合成の共役的な反応
機能
1. 酸化的リン酸化により自由エネルギーはATPに貯蔵 = 酸化的リン酸化最終産物はATP

ΔG0' = -nF × ΔE0'
酸化(呼吸)とリン酸化は共役couplingする → 脱共役uncoupling可能。この場合は酸化のみ起こる

2. ミトコンドリア構造の維持

インタクトで自然なミトコンドリアの隔離を行う。Fluoride(enolase 解糖系酵素)を阻害
Pi + ADP → ATP: 解糖系と別な経路がある(ATPの合成可能なことから示唆された)

電子伝達系の解析
電子伝達系解析にNADHを基質としてミトコンドリア内部に与えたいが、一般にミトコンドリアの膜に対しNADHは不透過

水処理をしたミトコンドリアを用いるとNADHは基質としての能力を持つようになる。NADPのP/O比は2-3
transport

図. 電子伝達系 (♦: 阻害部位)
FPn(1-5): フラボプロテェイン。Cyt x(a-c): チトクローム。CoQ: コエンザイムQ

transport
図. NADH, コハク酸, FADH2からO2への電子伝達
Ex. アスコルビン酸ascorbic acidを基質とすると生成される ATPは1である

NADH + H+ → cyt b → cyt c → cyt aa3 → O2
________Ascorbate↗
そこで、各ATP生成部位に番号をつけた。基質が入るサイトによって最終ATP生成数が異なる。NADHから酸素への電子輸送はこれと共役したADPリン酸化のための直接エネルギー源である。

ミトコンドリア(主としてチトクローム cytochromes)と酵素
Electron transfer unit particle (ETUP): 亜粒子を再構成する、つまり機能回復させることで酵素構造と機能の関連を調べる方法。電子受容体(electron acceptor, EA)を用い、これらのサブユニット中の酵素が調べられる

EA: Mbに対して、phenazine methosulfate(PMS), 2-6-dichlorophenol indophenol(2,6-DCIP)など
ミトコンドリアを処理し分画すると機能的に異なる亜粒子(complex I-IV)に分けられる
transport

1. NAD link dehydrogenase

AH2 + NAD+ → A + NADH + H+
i) ピリジン系、ii)フラビン系

2. Flavin link dehydrogenases

FMN or FAD (補欠分子族として働く)
FMN含みNADHからe-を次に位置する電子伝達系鎖構成員に転移する
Ex. NADH dehydrogenase: FMNを含む。ミトコンドリア枠に結合しFe, Sを含み(non-heme ion, acid labile sulfer)、これが重要な役割を果たすことまでが明らかになっている。MW 380,000の複合体く
Succinate dehydrogenase: FAD, Fe, Sを含む。MW 70,000, 30,000のサブユニットからなりミトコンドリアの膜と結合している。Malateがこの酵素の特異的阻害剤

3. Coenzyme Q (CoQ, ubiquinone): 可逆的に還元ざれるキノン

脂溶性: ミトコンドリア膜に溶け込む
transport
イソプレノイド側鎖(isoprenoide side chain, Co Qn): n = 10のもの多。植物ではn = 9のものも知られる。バクテリアではn = 6のものが発見された

4. Cytochromes: 好気的細胞のみに存在。鉄・ポリフィリン分子族を持つ。ミトコンドリア内膜・小胞体に存在

Hemeを持つ__Cytochromes
____________Peroxidase: AH2 + H2O2 → A + 2H2O
____________Catalase: H2O2 + H2O2 → O2 + 2H2O
Fe2+ ⇔ Fe3+ + e- (酸化)

Fe2+: protoporphrin complex (Heme), Fe3+: protoporphrin (Hemin)
参考: キレート化合物 X-Fe-Y: O2がXYにつくことができるligard carrier。Fe++の荷電力は変らない
⇒ Cyt. election carrier: O, CO, CNなどの阻害

Table. Cytochromeの種類(高等動物ミトコンドリアの場合)
  Cyto-   還元状態で示す吸収帯          酸化還元電位 分子量
  chrome  Heme          α    β   γ   E0'(V)
     b    protoheme IV  563   532  429  +0.03         30000
     c1   heme C        554   524  418  +0.0225      370000
     c    heme C        550   521  415  +0.215        13000
     a    heme A        598        439  +0.19 ↑
     a3   heme A        603.5      443  +0.385↓     240000
Heme type (Heme group)

Heme A, Heme B: 非共有結合 ⇒ 酸性アセトン・酸性メチルコチルケトン
Heme C: 共有結合

Cytochrome c: ミトコンドリア中の緩い結合。水溶性

植物(wheat germ)のCyt. cのアミノ酸数は112個。動物は大抵104個で植物Cyt. cのN端から8個のアミノ酸がとれたもの。ほかの植物では111個であり、これはC端からアミノ酸がwheat germからとれたもの

Cytochrome b: ミトコンドリアと硬く結合

分光光度計で液体窒素(liquid N2)をかけた77゚K吸光は室温と比べて短波長側によりピークが複数になる

_____________b-556___b-560___b-565
酸化還元電位___+75_____+42_____-77 (mV)

サトイモ科 Cyt b7, b-557: autooxidation(酸素接触で酸化される)。シアンに呼吸阻害されない(CN--insensitive respiration)。Cyt b7に積極的な機能に関する知見ないが、器官が分解しなかったときに働く(仮説)

Cytochrome a, a3

Cytochrome oxidaseとして機能。a, a3は結合した1つのオリゴマータンパク質
酸化還元電位はa3 = +380 mV, a = +190 mVである
シアン阻害受ける ← 光回復: 光を当てるとa3のCN複合体が分離し回復。要因としてFe, Cuが揚げられる

(a + a3)CN complex
a → [e-] → a3 → [e-] → O2
__↑阻害部位

M.W. = 240,000: 7サブユニットからなる [ミトコンドリアDNA由来サブユニット + 核DNA由来サブユニット]

Pigment 450 (P-450): COと結合すると450 nmに特異的ピークバンド表れる

動物肝細胞マイクロゾームで最初発見され解毒作用detoxificationに関与
NADPH, O2が存在。P-450はheme structure (Omura & Sato 1964)
Hydroxylation(水酸化反応) NADPH P-450 reductase: 小胞体はCyt P-450 or Cyt b5を含む特殊化した電子伝達系をもつジベレリン生合成段階における水酸化反応でもP-450が関与。また呼吸系と無関係なインドールアルカロイド合成段階にも関与

ミトコンドリアとATPアーゼ(ATPase)
1977 Racker E: ATPアーゼ(ATPase)のF1 (coupling factor 1)は、バクテリアのような酸化的リン酸化を行わない生物にもある。全体の分子量・サブユニット(5-6個)の分子量も高等生物とそれほど違わない

ATPaseを精製するとオリゴマイシン感受性 oligomycin sensitibityが消失する。ところがOSCP(オリゴマイシン感受性付与因子, oligomycin sensitibity conferring proein)を入れると、再びオリゴマイシン感受性が出る
F1のサブユニット構成 = α3β3γδε, or α2β2γ2δ2ε2 (推定)

βサブユニット__→ 触媒反応をつかさどるサブユニット
α___________ → 基質と結合したサブユニット
δ, ε_________ → 膜結合サブユニット

精製したF1は低温にするとサブユニットが分離し失活する(cold lability)

ATPアーゼ (ATPase)のF0
膜共有部分で疎水性が強く精製の難しいタンパク質
N,N'-dicyclohexylcarbodimide (DCCD, binding protein) → クロロフォルム・メタノールで抽出
ATPase

↑ リポソームは非透過性であるがF0を組み込むと透過性になる

FFリポソームにおける人工的ΔμH+付与によるATP合成

ATPase
酸化的リン酸化機構 mechanisms of oxidative phosphorylation
電子輸送の酸化還元エネルギーに必要なATPのリン酸化結合エネルギーへの変換過程、即ち酸化還元エネルギーからリン酸結合エネルギーへの転換機構には不明の点が多い。以下の3つの仮説(エネルギー中間体説・化学浸透圧説・膜構造変化説)は互いに排他的なものではない
1. 化学共役仮説(化学説) chemical hypothesis (Slayter提唱)

Glycolysis … 可溶性solubleの部分で行われる
Glyceraldehyde dehydrogenaseと共役的に行われる
R-COH + E-SH + NAD+ → E-S~CO-R + NADH + H+
E-S~CO-R + HP3O4 ⇔ R-CO~PO3H2 + E-SH
R-CO~POH + ADP ⇔ R-COOH + ATP

↓ A~X__AH2 + X + B ⇔ A~X + BH2__(| 2,4-DNP)
↓ X~Y__A~X + Y ⇔ XY + A
↓ X~P__X~Y + Pi ⇔ X~P + Y______(| oliogomycin)
↓ ATP__X~P + ADP ⇔ ATP + X

A: 電子運搬体electron carrier含む, X~Y: 電子運搬体を含まない高エネルギー中間体
この仮説は、エネルギーを生産する電子輸送反応と、ADPとリン酸からATPを生成するエネルギー要求反応を共役させて成立させようとするものである。この2過程に、電子輸送によって生じるだろうと予測される高エネルギー化合物である共通の化学的中間体high energy intermediateの存在を仮定する。したがって、この仮説の矛盾点は、完全に閉じた小胞体を必要とせず細胞構造を必要性とせず、現在A物質は発見されていないことにある

2. 化学浸透圧説 chemiosmotic hypothesis (Mitchell PD 1961)

ミトコンドリア膜 → H+ 不透過性 ⇒ 膜内外でプロトン濃度勾配(H+ gradient)生じる
ΔH+, ΔpH: 酸化還元反応のエネルギーとなる
高エネルギー状態high energy state発生 (高エネルギー中間体不在でもよい)
→ 勾配がどのようにできるのかを証明することが仮説を支持するために必要
chemiosmotic
_____F0: proton channel, F1: gateが存在する(α·β·γ)
F0・F1におけるH+の動きに共役したATP合成 (Mitchell仮説)
chemiosmotic
ミトコンドリアのH+の電気化学ポテンシャル差形成。電子伝達系とオリゴマイシン感受性ATPaseの異方性とイオン、除共役剤の動き。ミトコンドリア内部構造 (Kagawa 1974)
2つの反応は化合物ではなく、ミトコンドリア内膜を隔てるプロトンイオンの電気的勾配による高エネルギー中間状態によって共役する。呼吸鎖の電子担体は内膜を横切りミトコンドリアマトリクズからプロトンイオンを輸送するためのポンプ(プロトンポンプ)として働く

3. コンフォメーション共役仮説 conformational hypothesis (1965 Boyer提唱)

酸化還元反応のエネルギーがタンパク質の高次構造に、即ち、電子担体あるいは共役因子分子のコンフォメーション変化という形でエネルギーが保存される
AH2 + B ⇔ A* + BH2
A* + X ⇔ A + X* (*: 電子担体)
X* + ADP + Pi ⇔ X + ATP + H2O
電子運搬タンパク質
conformation
ヌクレオチドとPiの結合力変化にエネルギーがいるというBoyerらのaltenating site説。T: 親和性の高い結合部位、反応を触媒できる、L: 親和性の低い結合部位、O: ほとんど結合力なし。全過程の1/3を示す
過去には論争もあったが、2のプロトンポンプによる電子輸送の証拠も揃いコンセンサスを得ている。実際にプロトンポンプを動かす、即ちATP合成の7.3 kcal/molのエネルギーを与えるにはプロトンの勾配がどの位必要なのか → 3000:1(ΔpH = 3.5位になる時の比)。実際にはそのような大きな勾配はない
→ 電位差 150mV, ΔpH ≈ 1 - この組み合わせで説明できる

NADP調達
1. 解糖系glycolysisから: 解糖系の場合glycogenが基質

carbohydrate →→→→ NADH

1'. 無機呼吸: O2を使わず呼吸物質を分解しNADP調達

基質: glucose, mannnose, amino acids, etc.
反応: サイトプラズムで行われ、ミトコンドリアのような構造は必要としない
進化的にはかなり発生初期のものでも行われている調達形式である

アルコール発酵: 1940 Embden et al. アルコール発酵EMP回路
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2___________ΔG0' = -54 kcal

C6H12O6 →→ 2C3H4O3 + 2CO2
________↓↘______↳ 2CH4O (アセトアルデヒド) → 2C2H5OH
______2ATP (4H) ─────────────────────↗
コウボ菌。植物細胞が無酸素状態のときに一時的に行なう(= 解糖作用)

乳酸発酵 homolactric fermentation:
glucose (C6H12O6) → 2C3H6O3__________ΔG0' = -47 kcal

C6H12O6 → → 2C3H4O3 → 2C3H6O3 (乳酸)
________↳ 2ATP (4H) ─────↗
乳酸菌。動物細胞が一時的に無機状態になった時に行なう(= 解糖作用)

ラク酸発酵:
C6H12O6n-C3H7COOH + 2CO2 + 2H2___ΔG0' = -15 kcal

ラク酸菌

2ATP ΔG0' = 14.3 kcal

∴ 14.3/47 × 100 = 31%, 14.3/54 × 100 = 27%
⇒ TCA回路に比し相当低効率

発酵と腐敗: 微生物の行なう異化作用という意味では共通

発酵 fermentation: 呼吸の生成物が人間の生活に有用な場合
腐敗: 呼吸の生成物が人間の生活に有害、悪臭などを出すものである場合 Ex. 腐敗菌

呼吸調節

反応速度調節: C6/C1 ratio - グルコース端をラベルし調べた
Pentosephosphate pathway_CO2__glc.C-1___グルコースのC-1の炭素が脱炭酸
Glycolysis_______________CO2__3,4-C(pyt)_3と4位置の炭素が脱炭酸
TCA ①_________________ CO2__2,5-C(ac)_ 2と5の位置の炭素が脱炭酸
_____________________ CO2__1,6-C(ac)_ 1と6の位置の炭素が脱炭酸
_____________________initial CO2
C6/C1 ratio_低い → carbohydrate代謝はpentose phosphate pathwayが働いている
__________高い →________________glycolysis~TCA cycleが働いている
これはInitial CO2でなければこの値に信頼性なく、一つの目安にすぎない

細胞に必要な生合成物質、エネルギーが代謝の連続性metabolic sequenceを決定する。また、反応速度はATP, ADP, AMP, NAD+, NADHを介して調節される
⇒ エネルギー荷energy charge - ATP, ADP, AMP, NAD+, NADHの量によって決まる
これら5つの量から細胞内のエネルギー状態を示せる

⇒ Atkinson: エネルギーチャージenergy chargeの概念を導く

細胞内のADPがすべてATPとして存在する - チャージ完全
細胞内のADPがすべてAMPとして存在する - チャージ 0
{[ATP] + 1/2[ADP]}/{[ATP] + [ADP] + [AMP]} × 100 = Energy charge
Adenuylate kinase(Myokinase): ATP + AMP ⇔ 2ADPの平衡に関与
energy
リン酸化ポテンシャル ↓
energy

エネルギーチャージによってアデノシンリン酸合成の方向がわかる

呼吸のStates 3, 4における ATP, ADPとvelocityの関係は裏づけの一つである。

Pentose phosphate pathway(PPP)の調節

G-6-P dehydrogenase(NADP+によって活性化、NADPHによって阻害される)の段階
NADPH/NADP+ > 9の時はG-6-P DHが阻害された様に見える。しかし、この比が100位の時でもPPPが働いていなければ説明できない時がある。一般に細胞内ではNADP > NADP+ → 常時細胞内では阻害された状態になる。グルタチオンglutathioneが阻害除去か、打消す効果があるという説が提唱される。グルタチオンの他に未同定不安定物質unidentified unstable substancesがあるともいわれる

呼吸制御比
NADH + H+ + 3ADP + 3Pi + 1/2O2 → NAD+ + 3ATP + 4H2O
受容体 acceptor ⇒ acceptor control
酸化反応速度がリン酸化反応の受容体(COの場合ADP)量により調節 → ADPが酸化反応全体の律速段階

control
______Oxygen electrode(酸素電極)による測定

1952 Chance B

呼吸状態(state): 1, 2, 3, 4, 5
2はATP不足のために段階となっている
3はADPがATPのなり呼吸活動が起こる
4はADP欠乏、リン酸化は起こらず呼吸は停止状態
(State 3)/(State 4) = 呼吸御比率(RCR, respiratory control ratio, Acceptor control ratio)
RCRの値が大きいほど受容体制御acceptor controlがうまく行われているミトコンドリアと考えられる。RCRが10以上だとインタクトなミトコンドリアと見做せる。損傷したり、生きの悪いミトコンドリアのRCRは低くなる
control




ΔADP/ΔO2 = P/O ratio
呼吸制御 - ADPの濃度によって制御される
NADH→[FeSFMNFeS]→Q→[bcc1]→[aa3O3]
________________↗↘ATP_________↗↘ATP_____ ↗↘ATP

脱共役剤uncouplarによる呼吸調節

uncouplar
2, 4-DNP
酸化反応は進行

脱共役剤uncouplar Ex. 2,4-dinitrophenol (2, 4-DNP)
P/O ratio: 酸化的リン酸化により得たATP合成のmol数とO2の消費されたグラム原子数の比

= 消費される酸素1原子につきADPのリン酸化に使われる無機リン酸の分子数
2H+ → 1/2O2: この過程でどれだけのATPが作られたか

トリカルボン酸回路の酸化段階におけるP/O比
Pyruvate (ピルビン酸) → Acetyl CoA (アセチルCoA)____________P/O=3

Pyruvate + NAD+ + CoA-SH → Acetyl CoA + CO2 + NADH + H+

Isocitrate (イソクエン酸) → α-ketoglutal acid (α-ケトグルタール酸)__P/O=3

Isocitrate + NAD+α-KG + CO2 + NADH + H+

Succinate (コハク酸) → Fumarate (フマール酸)________________P/O=2

Succinate + Fp → Fumarate + FpH2

α-KG → Succinate______________________________________P/O=4

α-KG + NAD+ + CoA-SH → Succinyl CoA + NADPH + H+ + CO2
Succinyl CoA → Succinate + CoA-SH
________________基準順位リン酸化反応

Malate(リンゴ酸) → OAA(オキザロ酢酸)______________________P/O=3

Malate + NAD+ → OAA + NADH + H+____________________
___________________________________________ 5段階平均 = 3
一般にNADHができる時にP/O ratio = 3。フラビンができる時は2。[α-ケトグルタール酸 → コハク酸]の時にはサクシニルCoAが高エネルギー化合物であるためATPが1つ多くできる。この反応は基質順位リン酸化反応substrate level phosphorylationと呼ばれ脱共役剤に阻害されない
補酵素がNAD ⇒ P/O = 3, Fp ⇒ P/O = 2, Succinyl CoA ⇒ P/O = 4

脱共役によってADP → ATPのリン酸化を妨げるが、電子輸送を行い酸化反応はすすむ

2,4-DNP, CCP: 脂溶性。分子内に2重結合を有する弱酸(酸性基を持つ)
解離型U-、塩をUHで表す

Oligomycin A
CCP(カルボニシルアニドフェニルヒドラジン)

CCP CCP

a)______________________b)
P/O ratio P/O ratio
a) 脱共役剤をいれると高エネルギー状態high energy stateがなくなる → ADP欠乏時には酸素吸収速度が増大
b) Ol: oligomycin

high energy stateは見られるが: ADP →×→ ATP この共役を阻害
電子輸送によって生成された高エネルギー
中間体を使って ATP生成酵素を阻害している

イオン透過性物質 ionophore

バリノマイシンvalinomycin、ナイジェリシンnigericinは、本来不透過なイオンを膜に対して透過可能にする物質。ある種の一価陽イオンがある時のみ高エネルギー中間体を破壊して透過できるようにする。したがって、普通ミトコンドリア膜に不透過である例えばプロトンイオンなどの膜透過を可能にする
Valinomycin: 環状ペプチド。K+と包接化合物。脂溶性
Nigericin: 負の電荷の環状ペプチド。脂溶性 - N-K+(塩)、N-H+(弱酸)
ionophore

部分反応 (partial reaction)

1. ATPase

ATP + H2O → ADP + Pi
本来はミトコンドリア内ではあまり活性のないATPaseが活性化する
除共役剤によって活性化(オリゴマイシンで阻害)。この逆反応もオリゴマイシンで阻害される

2. ATP~Pi exchange (リン酸-ATP交換反応)

AMP~P~☆P + Pi → AMP~P~☆P + Pi__阻害剤 2,4-DNP, oligomycin

3. Pi~H2O exchage (リン酸-水交換反応)

HPO4 + H2☆O → HP☆O4 + H2O___________ 2,4-DNP, oligomycin

4. ADP~ATP exchange (ADP-ATP交換反応)

AMP~☆P + AMP~P~P

→ AMP~P + AMP~P~☆P______________ 2,4-DNP, oligomycin

酸化的リン酸化反応は可逆的である
→ 電子伝達系の可逆反応 reversibility of phosphorylation electron transport

動物と植物の代謝の違い

貯蔵物質・二次代謝産物等に植物特有のもの多い
  1. external NADH oxidation: ミトコンドリア外部のNADHを酸化できる
    i) 外膜のNADH = dehydrogenase
    ii) 内膜(外側に突き出している)に結合したNADH dehydrogenase
    脂肪酸酸化機能は植物ミトコンドリアにはなく、グリオキシゾームで行っている
  2. CN非感受性呼吸 CN--insensitive respiration (熱呼吸 thermogenic respiration)

熱呼吸

1778 Lamark: サトイモ科植物は開花時に熱上昇(呼吸盛ん) = 熱呼吸

この呼吸はCN耐性で、アンチマイシンantimycin耐性も示す
⇒ 呼吸鎖と別にO2に電子を渡す経路存在を推定 alternate (pathway) respiration
SHAM (substituted hydroxamic acid)はこの経路の強力な阻害剤
Fe-S: S-poor → CN-sentsitive
_____S-rich → CN-resistant

機能(説)
1) 揮発性物質蒸発 → 昆虫誘引 pollination

Araceae (e.g., Arum italicum) 火焔苞 = 花序成熟時25°C温度上昇: 臭分散 + 訪花性昆虫活動活発化

2) 開花時寒冷対策

春植物 snow plant, Ex. Soldanella alpine L.
Potato: tuber = CN-sensitive, slice = CN-insensitive
→ スライスする結果細胞膜等の膜組織が破壊され脂肪酸等が膜から遊離し呼吸鎖が停止し、CNの影響を受けなくなると思われる。エチレン処理をスライス以前に施すと速やかにCN-insensitive respirationが始まる

3) 種子発芽促進 promotion of seed gemination: 体(種子)内温度を上げ発芽促進 – 土壌中でよく見られる

レタス: CN促進
Soy bean: 発芽後数時間 = CN-insensitive → 成長 = CN-sensitive ⇐ SHAMが発芽を強く抑制

加齢 aging

Ex. Strawberry leaf - 赤外ガス分析器によって同じ葉の成長を追跡

aging

*: オルガネラ破壊により秩序だったエネルギー生産がずれ一次的に呼吸量上がる → climactericな呼吸

Fraxinus niger枝における呼吸の強さ

Tissue________Phloem__Cambium__Sapweed(白種)
O2 μl/g fr wt・/h___167______220________78
O2 μl/mg N/h____ 112______120_______130

窒素単位では動物と大きな差はない。窒素(タンパク質)単位と生重単位ではこれだけの値の違いがある

環境 environment

1. 温度temperature

Q10 = [rate at (t + 10)]/[rate at t] ≈ (一般に) 2

温度10°C上昇 ⇒ 呼吸速度約2倍(0-20°Cの間の時)
20°Cを越えるとQ10は酸素の水中への可溶性が低くなるため < 2となることが多い

温度 (°C)____________________0_____10____20____30
酸素への水可溶性 (/g water)__0.0491_0.0311_0.0261_0.0231

エンドウマメPisum sativum実生25°Cで成長

温度変化と呼吸速度の関係
a) 高温では酵素系の失活がみられる
temperature
b) ゆっくり上げると細胞破壊による酵素系破壊が早い → 温度の上げ方により呼吸量違う
temperature
温度急激上昇では酵素失活以前に酵素反応が最良状態に達するため、緩慢な温度上昇時より高い呼吸反応が得られる。即ち、ゆっくり温度上昇させた時の反応結果がより正確な酵素系の呼吸速度を表す

呼吸の季節変動

葉: 開葉直後最大 → 減少 → 夏季安定 → 温度低下に伴い減少(Q10 + 葉齢)
材(幹・枝): 気温変化に対応(Q10) = 夏季にピーク
単木: 落葉樹 = 夏最大, 針葉樹 = 開葉時最大

熱帯性植物tropical plants

多くは気温10°C以下で低温感受性chilling sensitivity傷害応答起こる。酵素はそれほど失活していず、膜系が寒冷に弱く傷害が起こると考えられている

Nitroxide compounds

Ex. 16-nitroxide methylstearate: CH3-CH2-C-(CH2)14-COOCH3
________________________________nitroxide
膜に存在するステアリン酸をNitroxide compoundsにし、不対電子のスピンをESR (electron spin resonance)にかけ測定 → 膜の状態を調べている
Mung bean mitochondria
nitroxide
屈折変化部に大きな反応系の変化が起こっているものと考えられる(酵素系のみの影響ならば直線関係が得られる) → 膜についている酵素は膜の状態の影響を受けている

2. 二酸化炭素濃度 CO2 concentration

高濃度CO2は顕著な呼吸阻害 → 標準大気組成(0.03%)を大きく越える時にのみ阻害
酸素濃度が標準状態(20%)であったとしても呼吸障害を起こす → succinate oxidaseに阻害
50%CO2(50% fermentation)によってPea seedsは休眠状態となる → 穀物保存に利用
CO2濃度は気孔開閉に影響し、イネでは0.01%になると気孔は閉じたままとなり、大気中濃度よりも高くなると開放したままになる。CO2濃度は細胞レベルではなく個体レベルでより影響しているといえる

3. 酸素濃度 O2 concentration

大気中: 約21%の酸素 ⇒ 一般に、酸素に対する親和性affinityは高く微量酸素で飽和され、5-10%の酸素濃度があれば呼吸低下はない

チトクロームオキシダーゼ cytochrome oxidase, thermal oxidase
Hemeを持つ(Fe, Cu)。COおよび光の影響を受ける

        Sugar  Skunk                  Potato  Rice         Lemon
        cone    cabbage's spike               seedling   fruit     
V1/2    4%        4                         0.5       2.7            7      

V1/2: 50%阻害時のO2濃度

Apple seedling:

oxidase

発酵解消点 (EP, extinction point) → パスツール効果

パスツール効果 Pasteul effect: グルコースに対する酵母の成長重量はO2が存在すると増加する。その結果、発酵は抑制されCO2放出がなくなり解糖作用のみが起こり、一定量のCO2放出が観察される

傷害応答 wounding response
植物器官に切断等の傷害発生時の呼吸増大
1) Phenol oxidase: 傷つけると基質のphenolとphenol oxidaseが作用しキノン生成。その時にO2吸収起こり呼吸量増大。キノンは重合し切断面を覆っていく作用があり、さらに殺菌作用を持つことが多く傷害回復に有用。キノンのコーティング作用の例としてリンゴの傷ついたところが茶褐色に見えるものがそれである
1) phenol oxidase

phenol
______(phenol)__________(hydro quinone)________(quinone)

2) 細胞構造破壊: 呼吸のフィードバックができなくなるために呼吸が増大する
3) 脱分化(カルス化): 活発な細胞分裂が起こるため呼吸が増加する

一般に、傷害に伴う呼吸増大反応はシアン(CN-)に非感受性である
サツマイモ sweet potato スライス
callus 暗呼吸(-CN sensitive)の分だけ呼吸速度が落ちる



Terminal oxidase

1) Cytochorme oxidase
2) Phenol oxidase: 植物の老衰期によく起こる

AH2↘↙Quinone↖↗H2O
__H↙↘ Phenol ↗↖1/2O2
_____________ Phenol oxidase
AH2↘↙ NADP ↖↗___Phenol____ ↘↙1/2O2
__A↙↘NADPH↗↖__Quinone____↙↘_H2O

3) Ascorbic acid oxidase

ascorbic acid + dehydro-ascorbic acid

ascorbic acid oxidase

AH2↘↙ NADP ↖↗_GSH ↘↙DHA↖↗H2O
__H↙↘NADPH↗↖GSSG↙↘ Asc ↗↖1/2O2
_____________┇SH 酸化に-SH-SH-が関与
____glutathion (GSSG, glutamyl cysteinyl glycine)

4) Catalase, Peroxidase

H2O2 + H2O2 → 2H2O + O2
H2A + H2O2 → 2H2O + A

5) Glycolate oxidase

Ex._______________________ascorbic acid oxidase┇
____________________EtOH↘↙_NAD↖↗ Glycolate ↘↙O2
___CH3CHO (アセトアルデヒド)↙↘NADH↗↖Glyoxylate↙↘H2O2


                          O2        ATP  Active  Sensitivity  Light
                          affinity  合成 center  ---------   reverse
                                    共役           CN   SO

    Phenol oxidase        1.3×10-5   -  Cu2+        +    +     -
    Ascorbic acid oxidase 1.5×10-4   -  Cu2+        +    -
    Glycolic oxidase      ca 10-4     -  FMN         -    -
    Cytochrome oxidase    4.5×10-6  ++  Fe2+, Cu2+  +    +     +
    Cytochrome by-pass       high     +  Fe2+        -    -
    oxydase

光呼吸 (photorespiration)


植物: 光照射 - 通常呼吸(酸化的リン酸化)と異なる方法でO2消費しCO2生成
低CO2濃度、高温等の条件下 - 光呼吸速度が光合成速度を上回る場合

= 光呼吸によるCO2放出量が光合成のCO2固定量を上回る

6CO2 + 6H2O ⇔ C6H12O6 + O2

呼吸と光合成という逆反応が常に行われ光がある時に呼吸量測定困難
光合成測定 →
みかけの光合成: pothosynthesis (P) - respiration (R)
真の光合成, Pt = (PR) + Rd

Rd = 暗呼吸 → 式が成立すれば光呼吸存在しない

1952-54 Brwon: Chlorella pyrenoidasa photorespiration

気相 18O, 16O(質量34)でラベル

→ 光合成に利用されない(呼吸のみ利用)

CO2, H2O: ラベルされていない
タバコ・緑藻で同一: 呼吸は光に関係なく進行 (一部の植物で光の影響が観察されたがBrownは軽視)

1955 Decker JP: 12CO2, 14CO2(label)用いタバコ葉内の代謝産物をラベル

⇒ CO2放出速度が光照射停止直後著しく高く、暗中で急減。数分後に暗中の呼吸速度(呼吸量)と等しくなる
photorespiration
_______________照射停止
_______________↑ ピーク程度の反応系の存在を示唆(= 光呼吸)
⇓ 考察
photorespiration
光呼吸は直接O2を使い酸化を行う点で暗呼吸と異なる: FpH2 + O2 → Fp + H2O2 このような反応が行われる
暗所では電子受容体とし働きエネルギー生み出すが、光呼吸は非生産的であり機能的には暗呼吸と別経路

1962 Moss: 植物CO2補償点測定

photorespiration
最大光合成量の低い植物群は補償点高__光呼吸 [O2]100%まで増加

C4植物は補償点高______________ 暗呼吸 [O2] 20%で飽和

最大光合成高

C3植物は補償点低

RuBP carboxylase, glycolate oxydaseはcytochromeに比べO2との親和力が小さく飽和しにくい(後明らかに)

1966 Forester: 光呼吸(photorespiration)提唱
1966 Zelitch: glycollateは代謝促進/光呼吸促進 = 条件同じ

→ 光呼吸基質はglycollateと推定
COOH-CH2OH → COOH-CHO → CO2 + HCOOH (蟻酸)

1962 Rabson: 14CO2で固定産物追跡 → 既知の他にグリオキシル酸等得た

⇒ グリコール酸経路glycolic acid pathway発見 = 光呼吸
2 × glycolate → 2 × glyoxylate → 2 × glinine = four C ⇒ C4 plant ______________________________C(-COOH)H2NH2

リブロースビスリン酸 ribulose bisphosphate carboxylase
= カルボシキジスムターゼ (RuBP carboxylase/oxydase, rubisco)
リブロース-1.5リン酸とCO2から2分子のグリセリン酸-3-リン酸を生成する反応を触媒する酵素
Mgイオンで活性化される。植物中に多量に存在し緑葉総タンパク質の約1/2を占める。フラクションIのタンパク質は大部分がリブロース2リン酸カルボキシラーゼからなり、タンパク的には同じと考えてよい。MW = 300,000, 17S。特にC4植物では維管束細胞中の葉緑体に局在する
1971 Bowes et al.

グリコール酸がRuBPの酸化反応によりホスホグリコール酸を経て生じることを証明

2反応系がある
1) CHOP-CO-(HCOH)2-CH2OP + CO2 → COOH-CHOH-CH2OP × 2分子
____(main)_____________(RuBP)_____________________(PGA)
2) CHOP-CO-(HCOH)2-CHOP + O2
_____(sub)

COOH-COOH-CH2OP + COOH-CH2OP
_______________Phosphoglycolate (光呼吸基質)
phosphoglycolate
↓↘Pi
glycolate (COOH-CH2OH)
↓↙ O2 ⇐ O2 uptake
↓← glycolate oxidase
↓↘ H2O
glyoxylate (COOH-CHO)

glicine (cf. glicine × 2 → serine + CO2)
↓↘ CO2 + NH3 ⇒ CO2 release
serine

暗呼吸: エネルギー合成に関係
光呼吸: 電子伝達系と無関係。直接O2取込む = エネルギー・還元力共になし

光阻害・光傷害防御(決定的生理作用不明)
CO2固定 1/3、平均1/4-1/5が光呼吸 CO2

二次代謝 (secondary metabolism)


= 生命維持に直接関わるといい難い(と初期には思われていた)が間接的に寄与する代謝の総称
= 個々の植物らしさを表す代謝

⇔ 一次代謝 = 生命活動維持に直接必要(呼吸・アミノ酸・脂質代謝等)

ゴムノキはゴムを、タバコはニコチンを作らなくても生存でき、これらの物質は個体生存には生理的に直接必要ではないが生産している。タバコ(ナス属)はニコチンを根で生産し導管を通じ地上部に転流する。ニコチンの葉中蓄積量は乾物重の数%にも達する。しかし、ナスの基部にタバコを接木するとニコチンを殆ど生産しないがタバコの成長に殆ど支障なく、ニコチンは隔離された環境では生命活動に直接は寄与しない。しかし、発芽60日目のタバコは1日約35 mMの炭素を同化したうち10数%をニコチン生産に回す
二次代謝系の産物や中間体は化学構造が複雑で多岐にわたるが、生化学的手段(放射性同位元素を用いたトレーサー実験・酵素化学的実験)により合成経路の全貌はほぼ明らかとなった

二次代謝産物 secondary metabolite

二次代謝によって得られた生体物質
1. 生合成経路に基づく

= イソプレノイド、ポリケチド等

2. 構造的に雑多でも共通特性を有する

= サポニン、タンニン、アルカロイド等 - 慣用名多

  炭水化物 ←─ [光合成]
    ├────┐
    ↓        │
  [解糖系]  [ペントースリン酸回路]──┐
    ├────┘      エリトロース- ←┘
    ↓            ┌─4-リン酸
  ホスホエノール─┴(シキミ酸経路)─→芳香族──┬→[フェニル
  ピルビン酸                          アミノ酸  │   プロパノイド]
    │                                          └→[リグニン]
    │[クエン酸回路]→脂肪族──→(アミノ酸回路)─→[アルカロイド]
    │   │           アミノ酸  ↑
    ↓   │                     └───────┬→[フラボノイド]
  アセチルCoA ┬→マロニルCoA →(ポリケチド回路)┴→[芳香族ポリケチド]
              └→メパロン酸─→(メパロン回路)──→[イソプレノイド]
一次代謝と二次代謝の関係

PP
phenylpropane系

シキミ酸経路 (shikimic acid pathway, SA)

1885 Eykman: 発見
1937 Fischer HOL: 構造決定
1950's 立体構造決定
de novoに可能
  1. 相補性テスト: 株に機能を失った部分 → 混ぜて培養し生育可能 → 欠損株の欠損部位推定可能
  2. 最終生産物から、逆に生合成を辿り(合成物が既知か推定合成可能が必要条件)精度を増す
  3. 欠如した物質を別なもので置き換えてみる
  4. 生合成で欠如した過程の前の部分で合成物質が蓄積する前提で、その物質を抽出分析(蓄積物がそのままの形で存在するとは限らず問題は多)
炭素の由来
14C-Glc → SA: SAに14Cは入る - SAのどの部位にどの経路から入るか
1954 Sprinson & Davis: E. coli 83-24 - 取込実験で直前前駆体収率調べる

D-glu-6-P, D-Frc-1, 6-P2, D-rib-5-P    5%
D-sedoheptulose-7-P                         7%
D-sedoheptulose-1, 7-P2                 70%
D-sedoheptal-1, 7-P2                       80% - 80%がSAに移る

シキミ酸生成
(1) SA + SA ⇒ H2O↘↗PO43- ⇒ (2) SA

(1) ホスホエノールピルビン酸 + エリトロース 4-リン酸 →

(7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸アルドラーゼ)

→ 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸 + リン酸

⇒ NAD+↘↗NADH ⇒ (3) SA ⇒ ↗H2O ⇒ (4) SA

(2) 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸 + NADH

3-デヒドロキナ酸シンターゼ (EC 4.2.3.4)

→ 3-デヒドロキナ酸 + リン酸 + NAD+

(3) 3-デヒドロキナ酸 → 3-デヒドロシキミ酸 + H2O

3-デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.10)

(4) 3-デヒドロシキミ酸 + NADPH → シキミ酸 + NADP+

シキミ酸デヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.25)

NADP↘↗NADP+ ⇒ (5) SA ⇒ ↗H2O⇒ (6) SA

(5) シキミ酸 + ATP → 3-ホスホシキミ酸 + ADP

シキミ酸キナーゼ (EC 2.7.1.71)

(6) 3-ホスホシキミ酸 + ホスホエノールピルビン酸

3-ホスホシキミ酸1-カルボキシビニルトランスフェラーゼ(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ) (EC 2.5.1.19)

→ 3-ホスホ-5-エノイルピルビルシキミ酸 + リン酸

SA↘ ⇒ (7) SA ⇒ ↗PO43-

(7) 3-ホスホ-5-エノイルピルビルシキミ酸 → コリスミ酸 + リン酸

コリスミ酸シンターゼ (EC 4.2.3.5)

⇒ (8) SA SA SA

(8) コリスミ酸 → プレフェン酸

コリスミ酸ムターゼ(EC 5.4.99.5)

生合成

フェニルプロパノイド合成
フェニルプロパノイド: ベンゼン環に炭素3個の側鎖をつけたC6-C3化合物
植物で、ヒドロキシ桂皮酸やそのエステルとして広く分布。クマリンに変換したりフラボノイドやリグニンの構成成分としても組み込まれる
合成経路: シキミ酸経路を経て生成するフェニルアラニンが出発点
フェニルアラニン → [脱アミノ基と水酸化] → 4-クマル酸(4-ヒドロキシ酸) = フェニルプロパノイド基本化合物
phenylalaninフェニルアラニン
___↓ フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)
cinnamic acidトランス-桂皮酸
___↓ 桂皮酸-4-ヒドロキシラーゼ
coumaric_acidcaffeic_acid ______(↗ クマリン酸)
_______4-クマル酸____________カフェー酸_________(1)
______________________↓ ヒドロキシ桂皮酸O-メチル
_______________________ トランスフェラーゼ
hydroxyferulic acid__ferulic acid
_____5-ヒドロキシフェルラ酸________フェルラ酸
___↓ ヒドロキシ桂皮酸O-メチルトランスフェラーゼ
sinapic_acidシナピン酸
_________________(1) ⇒ transphenylacrylic acid トランス-桂皮酸
ヒドロキシ桂皮酸: CoAリガーゼ(CL) ↓__ヒドロキシシンナモイルCoA
_______ ┌───────────────┼──────┐ R1, R2: -H, -OH or -OCH3
____フェノール酸/エステル類___フラボノイド___リグニン

フェニルプロパノイドの代謝

ヒドロキシ桂皮酸類 hydroxycinnamic acid group: フェニルアラニンを脱アミノ化し桂皮酸を生成する。フェニルアラニンモリアーゼ(PAL)は、芳香族二次代謝に導入する最初の酵素であり、二次代謝産物の多くの合成量と高い相関を持ちながら活性レベルを変動させており二次代謝の流れを左右する律速酵素と考えられる。合成されたヒドロキシ桂皮酸類がリグニン・フラボノイドなどに導入されるためには、CoAエステルとして活性化されねばならない
クロロゲン酸 chlorogenic acid: 桂皮酸類がグルコース・キナ酸・シキミ酸等の水酸基を持つ化合物とのエステルとして存在するもの。ヒドロキシシンナモイルCoA等
クマリン coumalin or coumarin: セリ科・ミカン科に広く分布する植物香料の一種。一般に細胞伸長・種子発芽阻害する生理活性ある

生葉: クマリン酸(o-クマル酸)配糖体とし液胞内 - 無臭
死葉: 液胞が壊れ液胞外酵素によりクマリン生成 - 芳香

ニコチン nicotine: 無色揮発性油状液体(アルカロイドの1種)
リグニン lignin
ゴム: ポリテルペンとしてアセチル CoAから作られる

天然ゴムnatural rubber: 熱帯ゴムノキ樹液が原料 → アレルギー(アナフィラキシーショック)
ラテックスlatex: ゴムノキ樹液の直径0.5-5.0 μm粒子懸濁液

アルカロイド alkaloid: 植物体中に見いだされる塩基性窒素を含む有機化合物の一群

特色: 植物体内での含量変化が著しい → 植物の成育に関係
窒素を含む天然有機塩基類(s.s.) → 現在曖昧 = ニコチン・コルヒチン・タンニン等を含める(s.l.)

人体致死量: モルフィンで2mg/kg、苦味を有する劇毒のストリキニンで0.75mg/kg

植物アルカロイドは数種のアミノ酸を前駆体として生合成される
植物成分アルカロイドは3000種以上知られ、構造多種多様

窒素を含む複素環を持ち有機酸と結合し存在するが、ほとんどは構造複雑で光学活性なため構造
決定困難。植物体中での役割は種々推定されるが未詳

双子葉植物に含む種多く、1個体に多種類のアルカロイドが共存する
アルカロイド植物: アルカロイド含量の多い植物

真性アルカロイド: アミノ酸の脱炭酸によりアミンが作られ、窒素を含む異項環を持つ化合物
プロトアルカロイド: 異項環を含まないもの
プシュウドアルカロイド: 含窒素塩基だが炭素骨格がイソプレノイドやポロケチド類に由来
  1. フェニルアラニン(チロシン)を前駆体とするアルカロイド
    フェニルチアミン(中間体) alkaloid → エフェドリン(マオウ)・メスカリン(サボテン)・モルフィン
  2. トリプトファンを前駆体とするアルカロイド: トリブタミン・キニーネ・リゼルグ酸等
  3. オルニチンを前駆体とするアルカロイド: プトレッシン・ニコチン・コカイン等
  4. リジンを前駆体とするアルカロイド: カダベリン・ルビニン・アナバシン等
  5. ヒスチジンを前駆体とするアルカロイド: ピロカルピン等

二次代謝産物の機能

生存競争
植物・微生物で数多く発見(動物稀) → 二次代謝産物の多くが他生物に対し何らかの生理的作用

動物捕食回避による生体防御物質 Ex. ゴム・精油・アルカロイド・アントシアン・タンニン → 動物との共進化

1976 Seigler & Price: 二次代謝産物は静的な代謝最終産物ではなく動的平衡状態で植物体内に存在する

⇒ 代謝産物の転換時間短く、他の重要代謝過程の中間産物でもある

動物: 自然淘汰に大きく関与するのは運動性
植物: 非運動性の植物が生物間相互作用を通じ生き延びるには運動性に代わる手段を用いなくてはならない

共進化coevolution・相互作用interaction進化 → 二次代謝発達

アレロパシー (他感作用, allelopathy)
Def. 植物が化学物質を放出し、他植物成育に影響 ☛ 生物学的侵入
= エチレン・テルペン類等揮発性物質。帰化植物が良く生産

(-) 連作障害一因 vs (+) 生物農薬(雑草防除)

1936 Molisch (1922-1925 東北帝国大学主任教授)

リンゴをガラス鐘で覆いトマト鉢入れるとトマト葉縮れる ☛ エチレン

アレロケミクス allerochemics: 異種生物に作用するアレロパシー物質の総称

物質機能: 誘因、摂食刺激、産卵刺激、忌避、攻撃・防御(有毒)

1. 植物 ⇔ 大型哺乳動物 草食動物への防御作用 → アルカロイド・タンニン
1975 Hovin & Merten: Phalaris arundinacea

グラミン gramine, トリプタミン tryptamineの2種類のアルカロイド生産
トリプタミンは羊に有害 = 下痢

1976 Levin: 北米野生植物の300科、7500種以上にアルカロイド見出される
  1. アルカロイド含量は草本木本の差はないが、植物寿命とは関係があり短年性のものほど多く含む
  2. アルカロイドを含む割合は低緯度地方に多い。ただし離島ではアルカロイド種少ない
  3. 種子にアルカロイドを持つ植物は熱帯に多い

⇒ 病害虫の発生しやすいところにアルカロイド植物多

1976 Futuyma: キノン、サポニン、アルカロイド、シアン配糖体

樹木より草本の方に多く発達

2. 植物 ⇔ 昆虫
昆虫忌避作用 → テルペン vs. 昆虫誘因作用 → フラボノイド・精油
マツ科植物と昆虫ホルモン
エクジソン (ecdysone、脱皮ホルモン/前胸腺ホルモン)
1965: 化学構造決定: 2.5 mg/(500 kgカイコ蛹)抽出
1966: Taxus baccataから抽出

→ 25 mg/25 g (葉/根)という高含有率で抽出可能となる

シダの1種の根茎2.5 mgから25 μg抽出 → 食害防御物質 → 様々な植物から発見 = phyto-ecdysoneと命名

裸子植物やシダに多 - 共進化の典型的な一証拠

偽幼若ホルモン: ホシカメムシ飼育中、南米から合州国へ運ぶと5令幼虫で成長停止となる異常発生

使用台紙: 南米 = ワットマン濾紙 ↔ 合州国 = スコットペーパータオル
台紙成分測定: 合州国ではAbies balsamae → モミ中成分によりカメムシ成長が抑制された

SA
Juglone

3. 植物 ⇔ 植物 アレロパシー(他感作用) allelopathy → フェニルプロパノイド
アレロパシー: 他生物の成長を抑制阻止する物質を出すこと
クルミ walnut: 葉でjugloneを生産 → 雨露で地上に落ちると多くの周辺植物の成長阻害

ケンタッキーブルーグラス: 阻害を受けない

カシoak: Salicylic acid生産
Salvia levcophylla: 数種ガス状物質(campher etc.)生産
Solidago gigantea: cis-dehydromatricaria ester (DME)生産

SA
Salicylic acid

ブタクサ等の他種成長を抑制
雑草に多く、他にヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、オオアレチノギク等でも知られる

4. 植物 ⇔ 微生物 (主に菌・キノコ)
病原体への抵抗作用 → リグニン・タンニン・フィトアレキシン
preinfectional compounds: キノン類・タンニン → Juglone
postinfectional compounds:

DME
DME

1) 結合型: 感染後freeとなる: cyanogen glycosides 2) 合成型: pisatin

生体防御 biological defense, biophylaxis
耐性 tolerance: 食害を受けても高い再生力がある
抗生物質作用 antibiosis + 忌避物質 non-preference: 二次代謝産物
構造的防御 structural protection: サボテンの刺、ヒイラギの葉縁の突起など

☛ 森林浴

フィトンチッド phytoncide

Exp. 植物(ニンニク等)を傷つける + 周囲に微生物懸濁液1摘

→ 微生物は死滅-麻痺
(仮説) フィトンチッド分泌

Exp. ユーカリ葉に微生物懸濁液1摘 → 数時間で微生物は委縮-死滅

(仮説) 植物は傷つかなくてもフィトンチッド分泌

Exp. 葉に傷 → 負の走化性 (仮説) フィトンチッドは生体防御物質
森林浴 forest bathing

植物色素 (plant pigment)


色素(顔料) pigment: 分子内に長波長光吸収する発色団 → 色呈する物質群

植物色素研究初期 = 染料色素分析 = 水溶性で安定なフラボン、フラボノール類が研究対象

1900年代: 生理学的に注目 Ex. クロロフィル、カロチノイド等の構造解明
便宜的分類: フラボノイド系、キサントン系、キノン系、カロチノイド系、クロロフィル系、フィコビリン系、メラニン系等
  • フラボノイド
    フラボン、フラボノール (クリーム、黄): 白色花、イチョウ
    アントシアン (赤、青、紫): 花弁、ハツカ大根、シソ、キャベツ
  • クロロフィル
    クロロフィルa (緑): 高等植物、藻類
    クロロフィルb (緑): 高等植物、藻類
    クロロフィルc (緑): 褐藻、珪藻等
    クロロフィルd (緑): 紅藻
    バクテリオクロロフィル (緑): 紅色イオウ細菌等
  • カロチノイド
    β-カロチン (橙)、α-カロチン (橙)、γ-カロチン (橙): ニンジン、トウガラシ、トマト、ホウズキ
    ルテイン (黄), ビオラキサンチン (黄), ネオキサンチン (黄): 緑葉等
    フコキサンチン (黄): 褐藻

(安田 1977)

四大色素 four major pigments
0. 白: 白い色素は自然界に存在しない → 白花: 気泡が主な原因 = 光工学で意味する白色は自然界にない
1. カロチン: 赤、オレンジ、黄色 花弁を始め植物の殆どの部分に分布(動物にもある) Ex. ニンジン、トマト,カボチャ、カキ

β-カロチン carotene: 最も多い
carotene
α-カロチン, γ-カロチン, リコピン: 種類の違いは2重結合位置、6角状リングの形状等による
キサントフィル: *位置に水酸基のついたカロチン群
水、アルコールに難溶 → 液胞には存在しない
油脂、ベンジン、エーテルに可溶
→ 細胞中ではプラスチド中に結晶か沈殿状に分布。またはリポイドという油脂に溶け含まれる

2. フラボノイド flavonoid: 2フェニル基が3炭素鎖を介しγ-ピロン環(+類似構造)を作り結合したC6-C3-C6型化合物

フラボン + アントシアン
多くは植物色素成分(植物性多価フェノール群): 単体は難水溶 → 糖と結合すると可溶
Ex. フラボン flavone、フラボノール flavonol、フラバノール flavanol、アントシアニジン・カテキン等

a. フラボン(類) flavone, C15H10O2: 薄黄色-濃黄色

flavonoid基本骨格
flavonoid
ルテオリン__________ナリンゲニン_________ダイゼイン

b. アントシアン(アントシアニン anthocyanin, 花青素)類: 橙,桃,赤、紫、青

フラボン類        薄くなる    黄            濃くなる
アントシアン類  赤            紫            青
                        酸性 ←    中性    → アルカリ性
図. アルカロイドのpHによる色の変化
紫色の葉: 多量のアントシアン → 緑色隠れる Ex. ムラサキイネ、カンナ

3. ベタシアニン類(古くは含窒素アントシアンと呼ぶ)、ベタキサンチン類
中心子目(科: アカザ、ヒユ、オシロイバナ、ヤマゴボウ、ツルナ、スベリヒユ、ツルムササキ、ナデシコ、サボテン)が特異的に含む → 系統解析に応用
分布
組織レベル: 花弁表皮部分集中。表皮近く柵状組織にも分布することがある
細胞レベル: プラスチド: カロチン – 水に溶けにくいため

液胞: カロチン以外の色素

花色: pH説 (Willstatter): 花色はpHで変化

コピグメント(助色素)copigment説 (Robinson)
錯体complex説 (柴田)

花色素 flower pigment

花色を決める色素 - [起源] 花を作らないシダにある?
フッター