(2020年5月14日更新) [ 日本語 | English ]
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[植物: 外部形態 morphology| 内部形態 anatomy|発生 development]
シュート (苗条, 芽条) shoot茎とその回りに規則的に配列する葉(複数)のセット - 枝も1 shoot= 子葉より上部(将来茎) = 枝 + 側芽(腋芽)等 ⇔ 根 (s.s.) 1つの茎頂分裂組織に由来する茎と葉全体 茎頂(シュート頂) shoot apex= 茎の成長点生殖期シュート頂 reproductive shoot apex: 花や花序を作るシュート頂 ⇔ 栄養期シュート頂 vegetative shoot apex |
図. シュート器官 1: 頂芽, 2: 節, 3: 葉, 4: 節間, 5: 腋芽, 6; 茎 |
[ 発生 ]
胚 embryo: 種子の中で将来植物体になる部分 = 胚軸 + 子葉 + 幼芽 + 幼根 前胚 proembryo: 最も初期発達段階にある胚で、器官分化が始まる前のもの 胚乳 albumen: 種子中発芽に使う養分貯蔵(デンプン、タンパク質、脂肪等)
有胚乳種子(有胚種子) albuminous seed
Ex. カキの種(典型的) ↑↓ 境 = 子葉 下胚軸 (使われない用語。英語に至っては不明 - hypocotyl使用散見) 中胚軸: 幼葉鞘下部と胚軸とが合着した部分 子葉 cotyledon発芽後の最初の節における葉的器官(熊沢 1976)
地下子葉: 発芽後最後まで種皮内に留まる子葉(大体の単子葉植物)
accumbent cotyledons: 子葉が内側同士以外で合わさる Ex. ウシノシタ Streptocarpus wendlandiiは同形同大2子葉を地上に出すが一方は早晩枯死し他方の子葉が伸長し太くなり葉身部拡大し長さ90 cmに達っし生涯唯一の緑葉となる |
1枚 = 単子葉植物 単子葉・2子葉・多子葉(2-10数個) = 裸子植物 → 異数子葉: 子葉数が通則から逸脱したもの Ex. セツブンソウ、ニリンソウ、ムシトリスミレ、コマクサ、ヤブレグサ等は双子葉であるが1子葉発芽。トベラ科(New Zealand産)は3-5(多)が5種知られている 双子葉植物から単子葉植物への発達(子葉から見た)
双子葉であるが1子葉のもの = ウマノアシガタ科、セリ科、メギ科は1型 - 外見的に単子葉でも双子葉植物 双子葉であるが発生上明らかな単子葉 = Ficaria ranunuloides (Ranunculus ficaria) - 2型という見解もある 単子葉植物の子葉
ニラ (Allium tuberosum) 胚盤 scutellum, I-IV: 第1-4次仮想軸 |
= 通道組織 = 節 node (葉が着く個所) + 節間 internode (節と節の間) 草本茎 = 肥大成長しない(地下茎になるものある) ⇔ 木本茎 = 肥大成長 茎形態 (stem morphology)1. 中空・中実2. 茎断面形: 稜 = 茎、果実、種子等の稜線
稜形gonal 地上茎 aerial stem地上にある茎直立茎 erect stem: 普通にいう茎。地表に対しほぼ垂直に伸びる
半直立(やや直立) semi-erect
Ex. ユキノシタ、オリヅルラン、Fragaria iinumae 巻付茎(回旋茎・攀縁茎) twining stem: ツルlianaとなり支柱に巻きつき伸びる よじ登り茎(攀縁茎・登攀茎) climing stem: 巻髭・付着根出しツルが伸びる 茎巻きひげ(stem) tendril (右巻き: 支柱を真上から見て、茎先端が時計回りに巻いている場合 ↔ 左巻き) Ex. ブドウ (Vitis coignetiae) 葉巻きひげ leaf tendril: 葉が巻きひげとなったもの(茎ではない) 茎針: 腋茎にできる針 Ex. ゴケ扁茎 cladodium or platycladium: 扁平 (葉状茎: 葉様の扁茎) 多肉茎 succulent stem: 肥厚し貯水組織発達 Ex. サボテン |
肉芽 s.l. (珠芽 propagule, むかご, s.s) brood, aerial tuber, bulbil: 腋芽に養分を貯え肥大したswollen芽 Ex. オニユリ
珠芽(小球根) bulblet (adj. bulbous球根状の) 地下茎 (subtarranean stem)地下にある(特殊形した)茎。形態上は退化した鱗片存在で根と区別根茎 rhizome, rootstock: 地中で根様だが地上茎同様節でき葉痕跡作る Ex. タケ、ハス、アマドコロ 塊茎 tuber: 地下茎先端に養分を蓄え塊状に肥大した茎。多くの芽持つEx. ジャガイモ、Helianthus tuberosus (塊茎がある adj. tuberous) 球茎 corm: 養分貯え球形に肥大し頂部に1-数個芽を持つEx. サトイモ、シクラメン、グラジオラス 鱗茎 bulb (俗, 球根): 短縮茎周囲に養分蓄え多肉となった葉が密生Ex. ユリ、Allium 偽鱗茎(偽球茎, 偽球) pseudobulb, pseudocorm: ラン科茎基部の肥大部分→ 鱗茎葉 bulb leaf 成長頂端細胞 apical cell 分裂で伸長し、それに応じ新葉を頂端に向かう(= 求頂的 acropetal, adv. acropetally)順序で側生
内部構造に本質的背腹構造はない つる植物 (climbing plant)複数の戦略をとる種もある纒繞植物 (巻付植物) twiner: 茎自身が巻きつく Ex. Pueraria lobata, Akebia trifoliata, Celastrus orbiculatus 攀縁植物 (巻髭植物) climber
巻髭 tendril climber: 巻髭 tendrilか刺 hook Ex. Galium spurium 用語: creeper (n) = つる植物/匍匐植物, trailing = (地面を)這っている, scandent = 他力でよじ登る(乗っかったり), scrambling = よじ登る |
枝 (branch) |
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木本の主茎から分かれた茎大枝 limb当年枝 current(-year) shoot (蘚苔類では本(当)年枝 hornotinous branch): その年に生産した枝 (≈ 末端枝 branchlet: 最先端の枝) 一年生枝 annual shoot: 1-数年生枝にみられる形質
冬芽 winter bud: 夏芽に対して呼ぶ 春植物 spring ephemeral: 休眠芽 = 冬芽かつ夏芽 葉痕(葉印): 落葉後、枝に残った葉の痕托葉痕: 落葉後、枝に残った托葉の痕 維管束痕 皮目 lenticel 刺、毛、芽鱗痕、墨柄(花柄)ないし果軸(花軸)痕、髄 その他 (adj. 枝の多いramose ↔ unbranched分枝してない) 分枝 branching茎 → 枝 / 根 → 側根a. 二叉分枝 dichotomous branching頂端分裂組織 apical meristem が同時に2分され個々が同時伸長 →i) 同等ニ又分枝 isotomous dichotomy: 本来主軸・側軸区別ない = 2つの軸がほぼ等しい
Latania (ヤシ科), Yucca, Pandanas (タコノキ科)等(Greguss 1961, 1964, 1968) iii) 平面二又分枝 flabellate dichotomy: 二又分枝が平面上で起こる iv) 十字状二又分枝 cruciate dichotomy: 前の分枝に対し直角に分枝 b. 側方分枝 lateral branching or 単軸分枝 monopodial branching
仮軸: 主軸先端成長が止まり、側枝が発達し主軸に変わり、主軸が枝のように見えるもの 仮軸分枝(分岐) sympodial branching: これを繰り返し成長すると、側枝の連続したものが主軸のように見える 単子葉植物: Hyphaene (Africaに生える大木) (Schout 1929)
Nypa (Tomlinson 1971), Losp (Fisher 1970, 76), Flagellania sp. (Tomlinson & Poluszny 1977) - PM growing point observation 側方分枝における諸問題単軸状多軸分枝 Ex. Fatsia japonica
ミズキ科 Ex. Cornus florida
鱗片(2対, 固い) 先発枝 proleptic branch: 主軸と同時にではなく休眠を経て伸びる → 前年にできた芽がその年の主軸が伸びると共に側軸と共に伸びる。北海道の落葉樹はこの型
側軸 - 同時枝 |
直立枝と斜行枝 arthotropic and plagiotropic branches十字対生だが葉が平面になるように曲がる成長点 growth point
Chamaecyparis obtusa = 1個体に多数 直枝と短枝 long and spur shoots or branches
短枝 = 短枝化した小枝 (intercalary adj. (組織が)節間成長する Bot. 閏の)
ヤチダモ、トチノキ、 コシアブラなどはよく短枝を作る
針は腋芽からできた葉の変形である
二枚の葉を作ったら短枝茎頂は枯れる (無茎acaulescent) 茎型 types of stems and shoots鱗茎ただし大部分が葉 花茎 flowering stem: 葉を着けず花だけ着く茎 Ex. Allium, Taraxacum
↔ 無花茎 nonflowering stem Ex. サボテン 先が落ちて個体を作る 葉状枝(葉状茎): 枝緑色扁平で、見かけ上葉的(機能も葉に似る)Ex. ナギイカダ、アスパラガス |
発育すると茎、葉、花等になる、その未発育状態のこと 頂芽 terminal bud, apical bud: 着いているstemの続き(→ 新 shoot ではない)。普通側芽より大 → 樹木発育不良判断目安 側芽(腋芽) lateral bud (axillary bud) = shoot: 種子植物は葉腋(葉茎付根)に作る(=腋芽)。羊歯植物は腋芽の形とらない
通常1個
主芽 main bud: 最も大きなもの 蓋葉 subtending leaf: 腋芽抱く葉 頂生側芽 terminally lateral bud: 側芽が頂芽の周囲に輪生状に集まったもの。Ex. ミズナラ、トドマツ仮頂芽 pseudo-terminal bud: 伸長した枝先が枯死し枝痕 twig-scar が残り、最上位側芽が頂芽のようにみえる Ex. カキ、クワ、シナノキ: 秋に枝先が枯れ落ち頂芽がなく、先端の芽も腋芽である 休眠芽 dormant or resting bud: 成長をしない腋芽でactive budに対する語潜伏芽 latent bud: 特に葉形成層活動のため植物体内に隠れた芽 – 伐倒や茎を折られた時等に活動開始 定芽 definite bud: 一定位置に表れる芽不定芽 adventitious bud: 頂芽 terminal bud、側芽 lateral bud以外の茎の部分に出る芽及び葉、根、胚軸に着く芽
茎上不定芽 cauline bud: 羊歯で普通、種子植物で稀 |
(齊藤 2009) 芽の形態1. 柄: 無柄芽 Ex. ハンノキ___有柄芽 Ex. サワグルミ2. 芽鱗(鱗) bud scale (scale): 芽基部にある変形した葉で葉(胞子)原基包む
鱗芽(有鱗芽) scaled bud: 鱗持つ芽 ⇔ 芽中姿勢 ptyxis, -es
扁平状 plane: 折畳まれず多少湾曲 Ex. イタドリ、ギシギシ 芽中包覆 aestivation, s.s.: 芽内での葉の相互位置関係
覆瓦状 imbricate, imbricative: 順に重なり瓦葺き状 - 内外の葉が明瞭 Ex. タケ、ササ 芽から将来形成される器官葉芽 foliar bud = 葉(+ 茎)を形成花芽 floral bud = 花を形成
1花形成 = flower bud Ex. ウメ (単花の uniflorous) |
休眠芽の一種 = 越冬芽: 多年生植物(樹木・多年草)に生じ、休眠越冬する芽 (熱帯では? ≈ 休眠芽) ⇒ 冬芽 ⊂ 休眠芽
茎頂・葉腋に形成 冬芽による樹木分類 application to tree taxonomy分類基準: 生植器官(= 花) → 限られた開花期間落葉性木本植物: 環境の一番厳しい時期に休眠芽(越冬芽)発達 → 冬芽と一年生枝の形態から同定可能 (a) 冬芽のつき方, (b) 冬芽形態, (c) 葉痕(leaf scar)形態 (a) 冬芽のつき方伏状 (オオバヤナギ)__斜上 (サワシバ)______直立 隠芽 concealed bud: 当年枝組織中に隠れた芽 Ex. コクワ 半隠芽 semiconcealed bud: 不完全に隠れる Ex. マタタビ (b) 冬芽形態 (morphology of winter buds)頂芽卵型_______球型___円錐型__紡錘型__半球型 |
(c) 葉痕形態 (morphology of leaf scar)wb: 冬芽, st: 托葉痕, vbt: 維管束痕, lt: 葉痕. 1: 円形, 2: 心形, 3: 腎形, 4: 平円形, 5: 半円形, 6: 線形, 7: 三日月形, 8: V字形, 9: U字形, 10: Y字形, 11: 楕円形, 12: 五角形, 13: 三角形, 14: 倒松形, 15: T字型, 16: O字形 (馬蹄形), 17: 繭形⇒ 主な樹種の葉痕 (morphology of leaf scars on common tree species) (斎藤 2009) |
対生の distichous (adv): 1) 輪生葉序 verticil1つの節に2枚以上葉がつく Ex. スギナ、トクサ対生葉序 opposite (decussate or superposed) phyllotaxis - 輪生の一種(s.l.)
十字対生 decussate: 対生する1対の葉と次節の葉が直角に交差 Ex. Labiatae, Aceraceae, Caryophyllaceae, Rubiaceaee
3輪生 ternate: Trillium, キョウチクトウ、ミセバヤ (adv. ternately: 3つで成った) 2) 互生葉序 alternate phyllotaxis二列互生葉序: 最も単純。単子葉類に多 (biseriate 二列に配置された)偽輪生 false verticillate: 本来互生だが、節間短縮により見かけ上輪生に見える Ex. クロユリ 輪生状: 真の輪生ではなく見かけ上、輪生様になっている 螺旋生 spiral: 各節につく葉(芽)は、上(下)へ枝の長軸に平行線を引くと、数個ずつ離れた葉(冬芽)に出会う |
放射状に重なる葉同志をそれぞれ「直列」という。同心円を書き葉の角度を正確にとり並べる 一般式 1/n, 1/(n + 1), 2/(2n + 1), 3/(3n + 2), 5/(5n + 3), 8/(8n + 5) … [n = 2, (3, 5)] → Schmiper-Brawn's law = Fibonacci級数 an = an-1 + an-2 葉序と葉原基(頂芽)の大きさの関係
3) 特殊型
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群葉 foliage1個体あるいは1シュートにおける全ての葉(とその配置) |