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(2012年6月23日更新) [ 日本語 | English ]

未整理メモ






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

第6回全国自然保護協会報告書(1976, pp. 29-33)
第2分科会「観光開発と自然保護」

観光開発と自然保護


報告及び質疑

報告1 大山環状有料道路(鳥取県営)の閉鎖を要求する運動について
(大山の自然を守る会): この大山環状有料道路は昭和40年に既に完成しています。この道路が完成した時は、まだ大山の自然を守る会は設立されていませんでした。それで10年たってこれを閉鎖する運動をしようとしています。(地図を示しながら)昔から農業のための道は育った訳で、海抜700~800mの所を通過する片側1車線5m巾の道路です。この道路が出来たことによって帰化植物が増えつつあります。ブナ帯は海抜300~1300m 位ですが、その中央である1000m位の所をトンネルがつき抜けており、次第に植生が破壊されています。地質的に含水堆積物という形で表現してあり、表面から次から次へと崩れて、永久に安定しないところです。又、途中に4本の沢があり、大水によって土砂を道路へ流すので、通行止が度々あります。この道路は4月1日-11月末迄しか有料道路として開通していません。又、全くの観光道路なのですが、閉鎖も度々あるので利用価値が低く、赤字の連続で、現在累積赤字が6000万円となっています。49. 50年の利用台数は20万台で、現在1台当り普通車で200円なので4000万円にしかならず、人件費・維持費を考えると、県費の無駄使いではないかと思います。先ほど述べたように土砂の崩壊を防ぐために堰堤が50基有り、昭和60年迄にさらに42基作る計画があります。これも道路があるから必要なのです。このようなことから、この道路を廃止して、自然を復元させた方が長いと考えます。
一つ提言したいことは、日本のような狭い国では、国立公園内には施設を作らなくても良いのではないかと思います。施設の有る所では、かえってゴミが出て来ます。現在の施設を再点検して、ふさわしくないものは廃止するという運動をしたいと思います。 午来(青い海と緑を守る斜里町民の会): 国立公園をかかえている県がなぜこういうことをやらなけれぱならなかったのですか。大山付近の町村において自分の力で公園を守るという努力の報告がなされていないのですか。
---: 大山の自然を守る会が結成される以前に道路は完成していました。又、地元では我が県は日本一の貧乏県だという考えもあったりして何らかの期待を持つものもあり、なすがままになってしまいました。自然保護対策としては現在海抜600~700m位の下限にある公園地域を300m位まで広げるのが適当だと思います。
渡辺(十勝自然保護協会): 廃道にするよう県の万に申し出ましたか。
---: 充分な資料を持ってからすべきだと思っているのでまだ直接には申し入れていません。
報告2 日光バイパスについて
久保田(日光の自然を守る会): 埼玉県の岩槻から福島県の白石まで東北自動車道が開通し、宇都宮I.Cから日光迄24.8Kmを日光バイパスで結ぼうとしています。この秋11月に開通予定となっています。さらに日光I.Cから吉河アルミ(清滝)までの間が5.9Km有り、この間が日光バイパスの問題となっている所です。どうして問題になるかと言うと、この5.9Kmのうち2Kmが国立公園の特別地域を通るためです。道路公団としては、5.9Kmの許可申請を環境庁に提出しています。環境庁としては審議会にかければ、許可申請が通るものも通らないのでかけずに、道路の管轄は建設省なので建設省と協議して決めるとはっきり言っています。ただ、問題があるので環境庁として許可したいが、直ちに許可できない状況があります。その理由はバイパスが出来ればイロハ坂が混雑し、そうすれば奥日光の交通体系を考え直さなけれぱならなくなるということだそうです。私達も日光バイパスが出来ればイロハ坂、奥日光の混雑、排気ガス、ゴミなどの観光公害によって生態系が大きく破壊されることになると思うし、日帰りの観光客の増加によって、市民に決してうるおいをもたらすものとは思えません。
---: 社寺周辺の自然は特別地域として第何種になっているのですか。
久保田: 第3種ですが実際はそれ以上だと思います。
及川(川西町の自然を守る会): 地元の考え方はどうなっているのですか。
久保田: 日光市は議会で建設賛成を決議しています。県や関係官庁は「太郎杉」が助かった代替であると言っています。市民は消極的な支援はしてくれるが市民運動としての盛り上りに欠ける面があります。

[スキー場景観, スキー場関連法規, 西武関連スキー場一覧]

報告3 手稲山スキー場反対運動について
斉藤(手稲山の緑を守る市民会議): 手稲山は札幌周辺では最も高い山で、市周辺の山がほとんど国公有林であるのに対し、手稲山のみ全山私有林となっています。昨年、3年前に指定されたぱかりの手稲山の自然景観保護地区がスキー場造成のために自然環境保全審議会で現地調査をすることもなく解除の答申がされました。私達は労組を中心として市民会議と言う組織を作り、北海道と札幌市に指定解除を取り消せと申し入れ、又、王子緑化KKにはスキー場計画をやめるよう申し入れましたが、業者は断ってきました。その後運動を続け、坐り込みも辞さないと言う態度に、道と市も非公式に業者と市民会議とに話し合いが付かなければスキー場計画を許可しないと言う風に変ってきました。何回かの業者、関係官庁との話し合いを続ける中で、スキー場廃止から縮小へと当初の目的を変え、むしろ緑化の約束や今後の開発の歯止めをかける約東を取り交わす方向で運動を続けています。さらに道や市に対しても緑化協定への参加、手稲山全体の緑の保護計画の立案、札幌オリンピックの施設で当初撤去を約東していた施設でまだ約束を守っていない施設についての早急な撤去を要求しています。
滝口(大雪の自然を守る会・札幌): この問題のおきた原因として企業がスキー場計画をたてたことにあります。しかし観光企業の側から計画を進めてくるのは当然のことだと思いますし、この行為を認めたものは何だったかということが問題です。自然保護審議会が現地調査を一回もやらず、企業の計画書も見ないで審議会を通したと言うことに問題があります。
報告4 瘤山ゴルフ場問題
高橋(川西町自然を守る会): 米沢市が中核25万都市の指定をうけたあおりで、地価の安いこの川西町に49年迄にゴルフ場が3箇所出来ました。49年に瘤山のゴルフ場計画が表面化し、これまでの3ゴルフ場を併せた程の大きさ(200ha)の計画です。ゴルフ場の建設によって山林が伐採され、山肌が剥がれれば、少しの雨でも鉄砲水や土石流の被害が出ます。瘤山のゴルフ場が出来ることによって被害を受ける住民は、反対期成同盟を結成し、自然を守る会と共同で運動を進め、反対署名、知事への陳情等を行なってきました。ゴルフ場会社永伸開発会社は反対期成同盟の指導者に対して損害賠償の訴えを起してきており、裁判が現在なされています。
渡辺: 4つのゴルフ場の距離はどの位ですか。
高橋: 2つは隣り合せで、瘤山ともう1つは少し離れています。小さな町にゴルフ場を4つも作ると言うことが理解出来ないし、地元でゴルフをする人は非常に少ないと考えています。
報告5 都市化した部分を山に戻すために
伊東(立山連峰の自然を守る会): これまで取り組んで来たことは、これ以上亜高山帯に宿泊施設を作らせない、雷鳥保護のためのスキー規制、ムササビを狩猟鳥獣から外す、国立公園の見直しへの意見提出、施設計画等の事前協議の確立等です。しかし根本問題を解決しないと二次破壊を解決することは出来ません。それで今年から春山除雪の中止、マイカーを山に上げることを前提とした駐車場の撤去、道路等を作ることによって出来た裸地は、もともと立山にある植物での緑化などを要求しています。又、自然公園法では厳密なマイカー規制は出来ず、駐車場等の制約からのみでしか規制出来ません。それで、一自然保護のためにマイカーの規制をするようにしたいと思います。
---: スキーヤーの規制期間は、いつからいつまでですか。
伊東: 5月20日~7月31日で克この頃が雷鳥の繁殖期であり、スキーヤーと雷鳥が接触する時期でもありました。雷鳥が嫌うのは、スキーのエッジングの音で、この音がイヌワシの羽音に似ているからだと思います。
午来: 駐車場の整備はどう言う状態なのですか。
伊東: 立山ルートの工事をした時に出た大量の土砂を見た目に悪いと言うことで、それを持って来て作ったようです。
八木(尾瀬の自然を守る会): スキー規制をする以前と以後では繁殖した個体数の変化はどうなっているのですか。
伊東: データー取りまとめ段階ですが、見た目には繁殖の失敗は少ない。
篠田: 都市化部分を緑化して行くことで、長期的プランを持っているのですか。
伊集: 当面、駐車場を緑化復元しようと考えています。輸送手段として何が良いか検討していませんが、最終的に道路をなくすることになると思っています。
札木(釧路自然保護協会): 自然公園法の中に、利用人員の規制、マイカーの規制を盛り込むようにしたら長いと思います。これについての討論をあとでお願いします。
報告6 相模湾の臨海観光施設の巨大化と問題点
篠田(逗子・考える市民の会): ○○マリーナと言うものは相模湾沿岸に集中しており、人口5.6万人である逗子においても、T社が海岸を埋立て逗子マリーナを作っています。これの問題点を幾つかあげて行くと、1つに国民にとっての自然環境と地元民の生活権の保護があります。本来的には両者は相反するものではありませんが、金銭的利害イコール自分達の生活権と言う考えが出て来ると両者は真向うからぷつかることになります。行政上の問題として、当初会社が出して来た提案(住民にとってもある程度の夢のあるもの)を、許可が出ると翌年、住民の同意なしに大マンション建設計画に変更し、さらにマンション建設の住民の同意を必要ないように事前に市の規則を変え、さらにこれ以上建設しても浄化槽の能力を超えてしまうのに、県では1戸当り人数を減らして辻棲を合せています。相模湾の汚染は大部分が生活排水によるものです。これは処理場で処理しても窒素、リン酸等は中々処理出来ません。洗剤はイセエビ・アワビに直接影響して幼生を駄目にしています。生活排水の外に海岸のコンクリート化、モーターボートの害も大きなものがあります。最後に、巨大な観光地の出現によマて、片隅に追われた地元民のみじめさ、被害は、あたかも植民地における植民者と土民の関係であることを忘れてはならないと思います。

討論

司会: これまで各地域の運動を進められた方の経験なり教訓を話していただいた訳ですけれども、ここでは4つの問題に絞って進めて行きたいと思います。1つは、我々は国民的な立場で観光をどう考えるか。2つ目は、観光通路の自然破壊をどう考えるか。3つ目は、自然環境保全に関連した法体系の充実をどうすべきか。4つ目は運動をどう進めるべきかです。どうでしょうか。
(全員異議なし)
司会: それでは1番目の問題についてどうでしょうか。
篠田: 基本的な問題なので全員、順番に発言したらどうでしようか。
伊東: 立山の場合は49年から県がナチュラリスト制度と言うものを作り、立山に入って来る客に本当に自然にふれあう中で自然保護の必要性を訴えて行こうとしています。私達も夏の間、交替で年4.5日入っています。色々の人と話し合ってみて、乗り物で単に通過するのではなく、自分の足で自分の目で確めるのが本当ではないかと考えています。
司会: ナチュラリスト制度とはどう言うことですか。
伊東: 県が一般から公募します日今、富山県で157名です。
---(立山連蟻の自然を守る会): 都会の感覚で自然の申に入ってこられるのは素晴らしいし、又あらゆる層の人が来ることが出来ると言うのも、二次的公害もありますが、良いことだと思いますが。
黒田(信州大学自然保護研究会): 自分の足で歩いて人それぞれ感じると言うのが大切なことだと思います。
宗像(南北海道自然保護協会): 現在の観光は自主的なものではなくて、自然も商品化した観光です。私達自身の自然に対する考え方を幼少の時からきたえて行かなければならないのではないでしようか。
長屋(帯広自然倶竈研究会): なぜ遠くへ行かなけれぱならなくなったか。身近な自然の回復を考えて行くことが必要と思います。
札木(釧路目黙保留協会): 観光は各人誰もが自分のとれる立場や、又、程度に応じて行なわれるべきもので、それ以上の行動を起しても結局何も得られないのではないかと思います。
---(清生を守る会): 観光客と言うより、本来、自然を最も守らなければならない登山者自体が.自ら山を汚していたりします。
---(蒲生を守る会): 誰れでもが行ける観光と自分の足で行かねばならない観光と二つの面を同時に満すような方向が望ましいと思います。
蒔田(連峰スカイライン反対連合): 守るべき自然と利用すべき自然と言う考え方は現状では仕方がありません。連峰スカイラインの反対運動を通じて、年寄りも子供も行けるのが地元の願いだと言うことを良く聞きます。でも、それは連峰スカイラインの計画がなければ、そのようなことは言っていなかった訳です。
坂本(高知県公害追放自然倶言:連絡菌竈会): 現在の観光はゆがめられ、画一化されています。
大浦(旭川・大雪の自然を守る会): 都市に緑を回復すると言うことが観光地の混雑を緩和する条件だと思います。誰もが行けるから道路やロープウエーを作ると言うのはおかしいことです。国民一人一人の自然に対する考え方を啓蒙して行く必要がこれからの自然保護運動の課題になって行くと思います。 石川(北海道自然保記協会): 自然をもとにした観光はその`もとを守らなければ発展はないと思います。今、問題なのは地方自治体が非常にしっかりしていなけれぱ、歯止めのないものとなってつぷれてしまうとも考えられることです。少しでも自然を歩いて自分の足で歩くところに楽しさもあり、見る景観の価値もあります。ところが今は小さい時から車で降りて直ぐに見なければと言う風になっています。
高橋: 県の役人がある時、山形県は自然が保護されてます。これからも守りましょう。と言ったから、私は言ったのですが、山形県の自然が残ったのは何もしなかったから残ったので、何かしたら残ったのではないのだから、これからも黙っていなさい。そうすれば人の真似の出来ない自然が出来て来ますよ、と申し上げたことがあります。子孫に自然を残すことを最優先して考えてほしいものです。
午来: 国民の観光に対する意識や、条例、法の矛盾を解決しないかぎり現在の観光の有り方を正しくして行く方法はないと考えます。
久保田: 自然は全ての人に平等にあるべきだと環境庁等も考えていると思いますが、それが道路を作ると言うような発想につながるのは問題です。又、観光開発を掲げるのは基本的には反対ですが、例えば、本州から北海道に来る観光客が楽しめる最低限度の設備は必要と思います。観光地の管理体制をしっかりすればうまく行くのではないでしようか。 司会: 私なりにこれまでの話をまとめてみますと、一つは、自然は商品化されているのではないでしようか。それに乗せられて画一化されているのが現在の観光ではないだろうか。二つ目は、一人一人の自然に対する認識を色々な方法で啓蒙して行くことが必要ではないでしょうか。三つ目は、自然保護運動も手弁当だけでは既に限界に来ているので法的規制を勝ち取って行く方向が必要ではないでしょうか。四つ目は、当面の運動の一つとして身近な都市周辺の.自然の回復を行って行くことも必要なのではないでしようか。五つ目は、それではどう言う運動をしたら良いかと言うことですが、充分討論できませんでしたが、地元住民と共通点で一体となって自然保護運動を進めて行くのが重要だと思われます。以上です。そのほか何か。
---: 私有財産をある程度規制出来るような強い「自然保護法」と言うようなものが出来れば、法の整備も解決できるのではないでしようか。
札木: 国立公園を始め、各種の自然公園は地元の地方財政に大くの部分がまかされていると言う実情を自然保護局長に訴えてはどうかと思いますが。
午来: 国立公園地域の買い上げ制度があっても地方自治体や国が買い上げてくれないなら自分達、自然保護を訴える者が自らの力で自然を守るんだと言う気運にもって行きたいし、このような運動も国の姿勢を変えると言う意味でも必要ではないかと思います。
司会: これで終りにします。

一般研究報告8

環境を保全できる社会


北海道自然保護協会 紺谷友昭
  1. 地球の生命と環境(Umwelt)
    地球の誕生・約45億年前、終わり約45億年後(太陽中の水素のヘリウム転換)。太陽と地球の条件がゆるすかぎり人類が生存すること、個人がそのために寄与すること。
    この生存期間を人類が急速に縮めている。
    例・オゾン層の破壊、CO2の増大。 現在の生活 → 生産の方法を変えることしか解決はない。
  2. 生産の無政府性による囲境破簑
    奴隷労働の虎止 → 人間以外の動力の使用 → 生産力の拡大 → 資本制生産様式(資本家の生産手段所有による剰余価値の生産)。競争。商品種類、数の増大。商品1個当り利潤の増大。無用物、使用期間の短縮。のみならず直接的な人命殺傷。例・日本の水俣湾、炭坑災害等。
  3. 土地の私有による環境破壊
    例・手稲山スキー場、1907年から私有。知床半島岩尾別、1914年から私有。都市内においても私有緑地の減少。例・仙台、宇都宮、前橋、水戸の樹林面積率は1970年代 2.70% → 1980年代2.36%。庭所有者の70%は次世代に庭は喪失すると回答。公有地所有者(例・林野庁)も同じことを行う。
    生産の無政府性と土地私有が結合しての環境破壊も数多い。例・札幌市内の採石場(1985年) 19か所、岩石採取量247万 m3、硬石山の埋蔵量3億5000万 m3、硬石山に集約すると127年間採取可能。
    土地私有を付随物とし生産の無政府性をその本質としている資本制生産様式は環境の保全に適合していない。環境破壊はこのことを地球規模で証明している。
  1. 環境を保全できる社会
    1. 消費は生産の唯一の目的であり、生産者は消費者の利益になるものだけを生産すべきである(アダム・スミス)。 → 生産のための消費.
    2. アセスメント(環境影響評価)の現状。工事に着手するための免罪符。このアセスメントを質的に変化拡大して生産物に適用し、その生産物が国民の福祉(環境保全ももちろんふくむ)に真に有益か無益かの基準を作って判断し、有害無益なものは生産を行わないこと。消費者のための生産。現在の生産様式下では不可能か非常に制限あるもの。 しかし変化の可能性もこの生産様式に内在している → 基礎的生産物についてのカルテル、トラスト → 国家独占資本主義 → ここから社会主義生産様式までに中間はない。
      現在の社会主義諸国で環境破壊がある理由 → 資本制生産様式の中で生まれた生産技術使用と生活様式採用。しかし主要な生産手段と土地の公有は環境対策の基本的条件。 独裁の問題。民主主義の発達。
    3. 土地利用の計画化。無用物の生産停止と耐用年数の増大 → 自由時間の増大 → 労働能力の向上 → さらに労働時間の短縮 → 国民の質的向上 → 自己統治。社会の運命と自己の運命を一体化した集団と個人にしてはじめて環境を完全に保全できる。
    4. 現在当面する社会問題の解決が環境の保全につながっている。例・産業別組合による労働条件の均一化 → 自由時間の増大 → 国民の質的向上 → 社会の質的変化。

紺谷友昭 (当協会理事・札概市在住)

都市環境の保全と手稲山


札幌の市街地にとりかこまれている手稲山(1,023 m)は、火山がふき出した溶岩によって作られ、その後数万年にわたって森林が形成されたところである。その雄大な姿は数多くの校歌にうたわれ、札幌市は山の大半を風致地区に指定して保存する計画を立てている。
ところがこの山の東斜面にスキー場を建設する計画が4月16日付け北海道新聞で報じられた。このスキー場は長さ3000 m広さ74 ha、その中にリフト5本、ゴンドラ1本、駐車場2ヶ所3250台分、レストハウス三棟という札幌市内で最大のものである。この計画に対し早くも四月二十五日に札幌、旭川の有志が「手稲山の自然を守る会」を結成したことは環境破壊に対する市民の危機意識が次第に高くなってきたことを示す。
予稲山の北斜面にはすでにスキー場2ヵ所とゴルフ場1ヵ所が建設されており、東斜面のスキー場計画が実現すれば市街地に面した緩斜面のほとんどが森林から草地になることになる。森林が草地になると山らしい景観が失なわれるばかりではない。森林だけがもつ空気浄化、貯水、水浄化、動植物保護、土砂流洲防止など環境を保全する作用が極端に低下する。平地の森林のほとんどが失なわれた現在、都市近郊の山林に手をつけるべきではない。
手稲山の自然のもつ価値は早くから人人の気づくところであり1934年には旧手稲町の住民がそこを道立公園にする運動を起している。そして1974年には道庁が手稲山、余市岳、天狗岳、烏帽子岳、春香山をふくむ山岳一帯を道立自然公園に指定する計画を立てていた。公園化が実現しなかった理由はただ一つ、手稲山が私有地であり、所有者が同意しなかったからであった。
手稲山はいつから私有物になったのだろうか。土地台帳と手稲町史によって調べると、北斜面山麓部分は1911年、侯爵前田利為が北海道国有未開地処分法(1897年制定)により無償で交付されたものである。他の部分は1907年、北海道造林会社が同じ法によって無償人手した。しかし樹木を伐採したあとは用途もなく1933年ごろは375,000円で売りに出されていた。
こののち金を採掘するため三菱金属鉱業会社が前田侯爵から1937年に北斜面を購入、他の部分は王子道林会社(のちの王子緑化)が同年、北海道造林から購入した。金山は1950年に閉山となり三菱金属鉱業は別会社を作って1965年から北斜面中腹でスキー場とゴルフ場を経営し、王子緑化も1977年から北斜面頂上付近でスキー場を始めた。東斜面にスキー場を作ることはその時から計画されていた。
このように手稲山は、他の私有山林と同様、私有財産不可侵性の理論的根拠である自己労働の産物という性格は非常に薄い。憲法第29条は財産権を保証しているものの、その内容は「公共の福祉に適合するように法律で定める」とし「正当な補償の下に公共のために用いることができる」としている。環境保全のために私有山林に公的制限を加えることは現行法においても問題がない。
スキー人口が増えているからスキー場が必要だ-という話は企業の論理にとらわれた人のものである。冬季四ヶ月間のスキー人口の利益と、環境を永久に保全する利益とを同一平面で論ずることはできない。しかも増えているというスキー人口の大部分は航空会社、旅行会社、スキー場が一体となって企画しているパックツアーによるものである。市民の冬季間のスポーツ確保ということを考えるならば歩くスキーや山スキー、屋内体育館でのスポーツ、廃熱利用の温水プールでの水泳など環境と資源を浪費しないスポーツを振興すべきなのである。

平成22年10月29日 財団法人 日本自然保護協会

「銭函風力開発建設事業」に対する意見


銭函風力開発株式会社 殿
「銭函風力開発建設事業」に対する意見
石狩砂丘に位置する銭函風力開発建設事業実施区域(小樽市銭函 4・5丁目)一帯は、「すぐれた自然地域:石狩海岸」として「北海道自然環境保全指針(平成元年)」で「保全を図るべき自然地域」に指定されています。これは、自然は一度破壊されると復元されることが大変難しいため、計画的に自然環境の保全を進めることを目的に、北海道自然環境保全審議会が自然環境の科学的データに基づき検討を重ね重要な自然地域を指定したものです。
特に、石狩川河口から銭函にかけての砂丘・砂浜とそこに生育する海浜草本群落やカシワ林からなる海岸植生は特筆に値する貴重な自然環境であり、そこにはエゾアカヤマアリ等の昆虫類や、オジロワシ、ショウドウツバメ等の鳥類にとっても重要な生息地となっています。
このような保全上重要な自然環境は、現在ある自然をそのまま保全することが最優先さ れるべきです。「北海道自然環境保全指針」においても開発事業を実施する際には、構想の段階から自然環境への配慮をすることが明記されています。
日本自然保護協会(以下、当協会)が実施した全国の海岸植物群落調査(2008)[1]では、近年の開発により砂浜や砂丘が全国各地で激減し、そこを生育地とする海岸植物群落が危機に直面していることが明らかになりました。したがって、現存する自然の砂浜・砂丘とその生物多様性の積極的な保全は急務となっています。
このような状況を踏まえ、本事業及び環境影響評価書案(以下、評価書案)に対し、事業計画地の自然環境保全が徹底されるよう、以下に意見を申し述べます。
1. 本地域の海岸植生の重要性~最も保護の必要性が高い植物群落
本事業計画地は、我が国の保護上重要な植物群落をリストアップした「植物群落レッドデータ・ブック」[2]に、「石狩海岸の砂丘植生」として記載されており、砂丘林のカシワ・ミズナラ林とハマニンニク、ハマナス等の群落のほか北限のシバが含まれている。札幌という大都市に近い砂丘植生として最も大規模であり、これらをセットで保護すべきとし、緊急に保護対策が必要な植物群落として、最も保護の必要性が高いランク4と評価されている。
さらに、「植物群落レッドデータ・ブック」の解析結果から、全国的に海浜草本群落、塩性湿地群落、海岸低木林といった海岸植物群落の多くが危機に瀕していることが明らかとなっている。中でも特にその保全が急がれる砂浜の植物群落について全国調査を実施した結果[1]、全国 1308の調査海岸のうち6種以上の砂浜植物が生育する自然の砂浜はわずか7%にすぎなかった。このことは日本の砂浜のほとんどに人工物が建設されていることを示している。したがって、現存する砂浜で海-汀線-砂浜-砂丘-後背地と連続した自然の砂浜は極めて貴重でそこに成立する海岸植生ごと保全することが求められる。
本地域は、これまで堅牢な人工物が建設されておらず、海浜草本群落が生育する砂浜砂丘-後背のカシワ林と良好な状態で自然が維持されてきた場所である。当協会の海岸植物群落調査でもウンランやハマエンドウ、ハマナスなど 10種以上の砂浜植物が確認されている。当協会の海岸植物群落調査で10種以上の砂浜植物の生育が確認された砂浜はわずか 10%だった。このようなことからも本地域は、全国的にみて海岸植生の豊かな貴重な自然の砂浜であり、保全の緊急性必要性が極めて高い。
2. 本地域の砂浜・砂丘の重要性~全国的に激減する地形環境
当協会の海岸植物群落調査で、砂浜の奥行きの変遷を調べたところ、約 40年間で砂浜の奥行きが平均 302 mから 83 mと4分の1に大きく減少していることが分かった。海からの侵食により狭まることももちろん見られたが、この 40年間の変化は、松林の植栽や道路建設など陸側からの開発によるものが、侵食とは比較にならないほど大規模に砂浜・砂丘を狭めていたことが明らかとなった。
本事業計画地域は、「日本の地形レッドデータブック第1集」(1994)[3]に掲載され、日本の地形を代表する典型的かつ希少、貴重な地形に準じ、地形学の教育・研究上重要とされ、今後保全を怠り破壊が継続されれば消滅が危惧されるとされている。このレッドデータブックにあげられた地形は、日本の自然特性を代表し、保存することが望ましく、該当する地形を所管する地方公共団体や開発事業者は、そのことを考慮すべきとしている。そして、特に砂浜海岸と砂丘は破壊の恐れが強まっていると警告している。以上のように全国的にみて貴重な本地域の砂丘は改変することなく保全する必要がある。また地形の重要性に加え、4で述べるショウドウツバメの集団繁殖地等野生生物保護の観点からも砂丘の保全が求められる。
3. 風力発電施設が海岸植生に与える影響
海岸の植物群落は、潮風に含まれる塩分の影響や、風での砂の移動による埋もれや砂の吹きつけ、強い日差しや高温にさらされるなど、海岸の変化の激しい、厳しい環境に適応して生育している。言い換えれば、長い歴史の中で、海岸の厳しい環境に適応する能力を身につけ、海岸にだけその生育立地を確保したのである。しかし、本事業の大規模な風力発電施設が建設されると、これら海岸独自の環境が変化し、特に施設(付帯施設を含む)の周辺では内陸のような穏やかな環境となることが予測される。そうすると、本来なら海岸には生育できない植物や外来植物が入りこんできて、海岸の植物は競争に負けてその生育地が狭められ減少してしまう。
評価書案では、「工事に伴って直接的に約 8.7 haの植物群落が消失するが、植生回復を行うことから海浜植生への影響は最小限に留められると考えられる」とあるが、直接的な消失だけでなく、施設の存在により、継続的に周辺の海岸特有の環境に変化をもたらし、海岸植物群落への影響を及ぼすことが予測される。
また、海岸植生は海から内陸にかけての海岸環境傾度によって、海岸線と並行に帯状に分布している。本事業では、砂丘地帯に 15基の風力発電機が 3 kmに渡って建設され、砂丘の植物群落の生育帯を潰すことになる。海岸植生という生態系にとって、限られた生育ゾーンを失うことは影響は甚大である。
本地域の重要な海岸植生を保全するためには、砂浜と砂丘への施設建設は回避されなければならない。
4. 野生動物への影響 (鳥類哺乳類昆虫類)
砂浜・砂丘の海岸植物群落には、そこを生息の場として利用する生物種があり、希少種となるものが含まれ、生物多様性上も重要である。それらの生物にとって、人工構築物=風力発電施設の建設によって、生息環境の消失といった直接的な影響だけではなく、生息空間の分断・遮断や行動の阻害など間接的な影響も考慮しなければならない。
特に、当地でも確認されているオジロワシ(種の保存法国内希少種指定、絶滅危惧IB類)は北海道の風力発電施設での衝突死がすでに多くあり、個体数の限られた局所集団へのインパクトは軽視すべきではない。衝突死がおきてから保全策を講じるのでは遅く、予防原則に基づき回避策を検討すべきである。
砂浜と砂丘列で形成される地形環境を繁殖地として利用するショウドウツバメは、当地の生態系を評価するうえ欠かせないにもかかわらず、調査結果では確認個体数と営巣数のみが報告され、生態系注目種「典型性」として評価がされていない。春季と夏季で巣穴の確認地域が異なるという記載にとどまらず、営巣地としての砂丘環境の利用条件などできるだけ明らかにすべきである。巨大コロニーを形成しているエゾアカヤマアリは、調査結果から海浜植生部が主な生息環境であることを記載しており、このような本来の生息環境の保全を積極的に行わなければならない。にもかかわらず、道路の舗装境界など人為的な環境で多くの巣が確認されたことをもって、影響は少ないとしている。砂浜・砂丘環境を利用する生物に対して、工事の際の振動や土壌改良(閉め固め)、運用時の風車の振動などの影響予測も十分に行われていない。
本事業は当初の配置計画では20基としていたが、現地調査結果により「貴重な動植物等の生息・生息確認位置及び猛禽類の飛翔頻度が高い場所への影響等を鑑み、影響の少ない設置計画(二次案)に変更した」としている。評価書案にある貴重種の分布図、猛禽類の飛翔図などをみる限り、この配置計画を縮小した場所に海岸侵食が進むということ以外に動植物の分布や猛禽類の行動に特異性があるように考えられず、その影響を考慮したのであれば、その解析と根拠を科学的に示すべきである。
5. 景観への影響
海岸線など見通しのよい場所に立地する風力発電施設は、自然景観を一変させる。見通しのきく海岸は景観上特に配慮を求められる地域であり、そこへの大規模な構造物の設置は回避すべきである。
評価書案では、自然景観を見通せる予測地点として大浜海岸と石狩浜の各1地点、1方向からのフォトモンタージュのみで予測しており、最も影響が懸念される事業計画地近隣の浜では実施していない。しかも大浜海岸では 20基の風車のうち建設をとりやめた 5基の側からの写真のみで検討しており、肝心な 15基の風車設置予定箇所がほとんど視界に入らない角度で撮った写真のみで予測しているのは問題である。
NEDO環境影響評価マニュアル[4]では、景観への環境影響について、設置基数が少なく、単機の出力規模が小さいほど景観上のインパクトは小さくなる、 1-2基の小事業規模ほど影響は小さいとしている。本事業の 2000 kw、15基の大規模事業では影響は甚大と予測され、影響の回避を検討すべきである。
また、景観は、人々の受け止め方が重要であり、その把握のしかたも視覚だけではなく、聴覚等五感を通してとらえるものである。フォトモンタージュだけで予測するのでなく、近隣の住民や事業所の人たち、海岸を訪れ利用する人たちからの聞きとり調査に基づく影響予測を行い、合意形成を図ることが不可欠である。
6. 人と自然とのふれあい活動の場への影響
評価書案では、人と自然とのふれあい活動の場への影響予測について、事業計画地に隣接する海岸 2箇所と周辺の公園 6箇所で実施しているが、人々のふれあい活動の場が事業計画地と重なる石狩海岸でのふれあい活動への影響について、特に重点をおいて詳細な調査に基づく影響予測と評価を行なうべきである。
環境影響評価における「人と自然とのふれあい」項目は、単にその場所へのアクセスやふれあい施設の利用者数の変化を予測するものではなく、その場所の自然に対する地域の人たちの思いや、ふれあい活動とその場所の自然環境保全との関係を把握し、それへの影響を予測する必要がある。
評価書案では、石狩海岸には自然観察や釣り、海水浴、石狩浜海浜植物保護センターの利用等さまざまな不特定多数の利用があり、影響予測については、事業を実施しても浜への出入りができるので影響はないとしている。
しかし、これらふれあい活動の内容をみると、そこに生息・生育する生き物や自然を直接対象とした五感を使った深いふれあい活動であり、音・振動等の物理環境や地形、動植物の生息・生育、景観等すべての自然環境構成要素と密接に関係して成り立っている。
また、自然観察や石狩浜海浜植物保護センターの活動を行なっている市民は、この地域の自然に愛着を持ち、日頃から本地域の保全活動に関心をもち、実践している。このような人たちからの聞きとり調査は不可欠であり、その本地域における自然とのふれあいに対する思いを尊重し、事業計画に反映する必要がある。
7. 騒音・低周波音による影響
環境省による既存の風力発電所の実態調査結果[5]によると、風力発電所の近隣で地域住民が騒音・低周波音の苦情を訴える問題が生じ、それが調査数の 16%を占めており、環境影響評価のおける予測結果よりも、建設後の実際の騒音レベルの方が大きい事例が見られた。評価書案では、騒音、低周波音の調査日は年間を通して平均的な1日として、騒音は3, 6, 11月の1日、低周波音は6月の1日に調査を行なっているが、風向や風速の違いによってその予測値は大きく異なるものであるから、年間で騒音、低周波音が最大値となる風況、時期を設定して調査を行ない予測すべきである。
8. 振動が地表及び地中の生物に与える影響
評価書案では、振動についての項目が調査されていないが、工事中及び供用による振動が地表及び地中に生息する動物への影響が懸念される。特に、砂丘に営巣しているショウドウツバメの繁殖への影響について調査・予測・評価をすべきである。
9. 市民参加による合意形成の場の設置の必要性
本事業計画地は、これまで述べてきたようにわが国において極めて重要な自然地域であることが、事業の構想、計画段階から明らかであり、早い段階から事業計画についての情報を公開し、住民・専門家・地元自治体、自然保護団体等で情報を共有し、丁寧な合意形成プロセスを踏むことが必要不可欠であった。しかし、現時点では本事業計画地の自然環境と事業の必要性について、地元住民をはじめ関係者でその情報が共有されておらず、必要な合意形成の場が設けられていない状況である。にもかかわらず、事業計画が策定され、環境影響評価書案が作成される段階にまで来てしまっている。今から、早急に情報共有と合意形成の場を設け、合意形成を図る必要がある。このような合意形成プロセスを踏むことなく、事業者による環境影響評価手続きだけで事業を一方的に進めるべきではない。
10. 事業の必要性と複数案による立地選定についての説明責任を果たすこと
現時点において、なぜ自然環境の重要性が極めて高いこの石狩海岸に、出力 2000 kw級の風力発電機を 15基を建設しなければならないか、事業の必要性について全く説明されていない。評価書案には事業の目的として「(前略)環境負荷の少ない風力発電所の設置を推進し、得られたクリーンエネルギーを売電することを目的とする」とあるだけである。これでは、事業者が利益を得るために重要な自然を破壊して発電施設を作ることにしかならない。地域の人にとって、この風力発電施設建設は重要な自然に影響を与えることと引き換えてでも必要とする意義は何なのかを説明する必要がある。
風力発電施設の立地選定にあたっては、風況等発電に必要な環境条件のほか、保護上重要な自然環境、生物多様性、住民の意見、環境影響等さまざまな要因を重ね合わせて、複数の候補地を挙げ、科学的、合理的に検討し、合意形成プロセスを踏んで選定されなければならない。
しかし、現時点ではこのようなプロセスを踏むことなく、事業者が独自に立地を定めている。早急に事業の必要性と立地選定について説明責任を果たすべきである。
【まとめ1】影響の回避を徹底すること
環境影響評価書案の「環境の保全のための措置」では保全は図れない
これまで述べてきたように、本事業計画地は全国レベルで、また北海道でも保護すべき重要な自然地域である。本地域での風力開発建設事業実施にあたっては、環境への影響が予測される場合は、回避することが優先的になされなければならない。
しかし、評価書案では、土地の掘削や改変、構造物の存在と供用により、動植物の生息・生育地の減少や生息環境の悪化を招くなどその影響があるとしながらも、「重要な動植物は必要に応じて移植等を行なう」「掘削範囲を最小限にとどめる」「植生回復を行なう」「鳥類のモニタリングを行なう」ので「影響は最小限に留められるものと考えられる」としている。モニタリング調査については適宜実施するとして具体的には記載されていない。影響の最小化、低減を検討する前段階での回避策が全く検討されていないのは問題である。早急に影響の回避を徹底的に検討し、事業計画を修正する必要がある。
また、移植や植生回復を環境保全措置としているが、海岸の植物は海岸特有の環境条件下でなければ生育できない。しかし、本事業では生育環境の悪化を招くとしており、移植や種苗の植え付けでは失われる海岸植生とその生態系を保全することはできない。植生回復には地域性の高い種苗を用いるとしているが、種苗の入手方法によっては現在の海岸植生に悪影響を与える可能性もある。種苗の入手方法も含め、実効性が明らかな具体的な復元手法を明記すべきである。
さらに「ススキ群落については、かつて見られたハマナス等の優占する群落への移行を誘導できるようススキの刈り取り等の対策を検討する」とあるが、ススキは内陸植物であり、ハマナス群落にするには現在の内陸的な環境から海岸特有の環境を取り戻さないと誘導はできない。検討するだけでは保全は図れないことに加え、ススキの刈り取りによるハマナス群落の復元の実証例を示す必要がある。
【まとめ2】温暖化対策を免罪符にして、企業の利益のため
石狩海岸の自然と生物多様性を破壊することは、あってはならない
風力開発建設事業においては、温暖化対策の大義名分のもと事業推進を主張する場面がしばしば見られる。しかし、もともと温暖化対策と生物多様性保全は密接な関係にあり、地球環境保全のためにも両者は両立されなければならない。
風力発電事業によって、事業地の自然環境と生物多様性に悪影響が出れば、それは温暖化対策にも逆行するものである。
引用文献
  1. 日本自然保護協会,植物群落から見た海岸白書,2008
  2. 日本自然保護協会・WWFジャパン,植物群落レッドデータ・ブック,1996
  3. 小泉武栄・青木賢人編,日本の地形レッドデータブック第1集,日本の地形レッドデータブック作成委員会,1994
  4. 新エネルギー・産業技術総合開発機構,風力発電のための環境影響評価マニュアル(第2版),2006
  5. 環境省総合環境政策局環境影響評価課,風力発電所に係る主な環境影響の概要,2010
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