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(2022年12月26日更新) [ 日本語 | English ]

自然科学概論 (Introduction to natural sciences)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

科学 science

自然科学 natural science: 自然現象natural phenomenaを扱う

scientia (L.) = 知識 → 整理体系化された知識
| 純粋科学pure science (≈ 理論科学theoretical science)
| 応用科学 applied science

科学概論 philosophy of science, or grammar of science
≈ 自然科学概論
philosophia (G.) = philos 友愛 + phia 智: 当時は学問全体 (現在 哲学)
→ 自然科学体系化。目的・研究法明確化。知識・法則の成立範囲の特定等
→ 人生観・価値観までを含めた哲学的思考の根拠
科学の発展形態(Chamberlin 1965)
  1. 支配的理論 ruling theory
  2. 単一作業仮説 working hypothesis Ex. 帰無モデル分析 null model analysis
  3. 多次元作業仮説 multiple working hypothesis

市民科学 citizen science

  • 一般人が科学的プロトコルに則ったデータ収集・利用・解析過程に参加
  • 科学技術要素を含む政策問題に関し一般人が実際の政策決定に参与
  • 科学研究者が民主的な政策過程に参与

[ 論理学 | 倫理学 ]

索引
一般人の科学理解
(情報)欠如モデル (information) deficit model

一般人(非専門家) = 情報と科学的知識の受け手 ⇒
一般人の科学技術不信 = 情報欠如/無理解
→ 専門家と大衆に分断

低情報合理性モデル low-information rationality model

自然科学史 (History of natural sciences)


太古(原始社会) primitive society

科学 = 生きるための野外生物学
生物は生活する環境に適応した形や働きをもつ ↔ 生物は良く似た別の生物を持ち連絡する

黒曜石(十勝石)、原宿(群馬県)、白滝(北海道): 原石山(岩体として産出) → 矢尻等利用

黒曜石鉱床の品質と埋蔵量について必要な知識持つ [世界中 Ex. 欧州 - フリント]

化石: 貝・デスモスチルス - 装飾品、海棲: 海 → 陸化、火山 → マグマ

BC 6000
メソポタミア(バビロニア)
エジプト egypt
天文学: ナイル川氾濫予測(暦必要) → 1年 = 365.25日
幾何学: ピラミッド建設・ナイル川流域測量

Ames (≈ BC2000), エジプト: アーメスのパピルス(= リンド・パピルスRhind papyrus)

単位分数: 分子が1の分数 → 2/5 = 1/3 + 1/15, …, 2/101 = 1/101 + 1/202 + 1/303 + 1/606

円面積, S = (d - 1/9)²

古代 (remote ages, BC7c - AD4-5c)


≈ ギリシア哲学

ギリシア自然科学 (= 古代オリエント科学)

ギリシア時代 Ancient Greek era: 哲学的科学観 - 素朴な形での進化
演繹的公理 Ex. 大地不動で宇宙の中心
Xenophanes, Xanthus, Herodotus

陸上での貝の化石 → 昔は、その地が海であったと判断

a) イオニア(ミレトス)学派 Ionian School
ミレトスに起るギリシア哲学初期の重要学派 = 唯物論的思想
哲学者であると同時に商人や技術者であること多
三大問題
  • 円の正方形化: 円と等しい面積を持つ正方形を作図する
  • 角の三等分
  • 立方体の倍積: 与えられた立方体の一辺から2倍の体積を持つ立方体の一辺を作図する
黄金分割 (the golden section), φ = AB:AC = AC:CB

|A                                                 |C                              |B

AB = 1, AC = xCB = 1 - x
φ = 1/x = x/(1 - x) → x2 + x - 1 = 0 →

x = (-1 + √5)/2 ≈ 0.61803, φ = 1/x = (1 + √5)/2

≈ 1.61803 [無理数]

[長さ:幅 = φ]は最も心地よい釣り合いを持つ(経験則)

黄金長方形: 1/φ = φ - 1

section

□ABCD, AB = AD = 1, AE = EB, EC = EF → AF:AD = φ = (1 + √5)/2
→ オウムガイの殻など自然界に多
b) アテナイ
431BC-404BC: ペロポネソス戦争 (the Peloponnesian war) → 政治力失う
Eudoxos (BC409-355): 比例。区分求積法
同心天球説: 惑星運行の数学的説明。太陽、月、5惑星の個々に恒星用の天球内を回転する別の天球を用意し、惑星が黄道上を動きつつ「8の字型(= ヒッポペテ曲線)」運動をさせる、完全モデルを目指す
Menaichmos (BC350?-): 円錐曲線
Aristoteles (Aristotle, Aristote, アリストテレス) BC384-322
哲学: 論理学を大系づける「形而上学」  生物学の開祖
プラトンのイデア = 個物に内在する本質 → 本質はそれらが表す対象の外側に存在しない
個物 = 形相(限定するもの) + 質料(限定されるもの)
プラトン・アリストテレス著作 → ギリシア哲学支配した観念論と唯物論は最高潮 → 後の哲学に影響
人心不安定さ反映し、ギリシア哲学は世界の本性より個々人問題へ関心移す
広領域の知識・経験体系化(自然学・天文学・物理学・動物学等) – それまでの科学からの進展
学問分類: 自然学(理論的) = 第一哲学, 数学, 自然学 + 実践的 + 制作的

第一哲学: 神-不変不動の純粋形相

目的論的: 事物にとっての善(遺伝子レベルでの個体)
経験・物質: 重い物質は軽い物質より速く落下する(Galilei否定)。物体は力を加えると速度を生じる
宇宙モデル: 神聖な球。地球はそれを取り囲む全世界に比べて遥かに小さい
c) アレクサンドリア期
マケドニア: アレキサンダー大王(王子時代にアリストテレスに教受)建設都市
c1) 前期
Aristarchos (BC 310?-230?)
Euclid, or Eukleides (BC300-?)
プトレマイオス王招聘でアレキサンドリアへ来た学者? 「幾何学に王道なし」
Gr.; mathematics = Euclid幾何学 Euclid geometry (幾何学読本) → ユークリッド幾何学体系化
「エレメンツelements」全13巻 → 既存の数学に対し深い再反省 → 1理論体系とし再組織(5つの公理)
Archimedes (BC287-212): アルキメデスの原理(浮力の原理)
天文学・数学・物理学(力学の開祖) Ex. 円周率。アルキメデスの螺旋
「円を踏むな」 → 兵士に槍で刺された
Apollonios Pergaeus (BC260-200?): 「円錐曲線論」全8巻
Aristarchos (BC280?)
皆既蝕間に地球が月に落とす影を観測 → 地球と月の間の距離が地球の直径の約40倍と測定
恒星の観察できる視差の欠如 → 宇宙は無限 → 当時の人には受け入れられない概念
Eratosteres (BC275-194, BC237-197 or 236-194)
地球の円周距離算出 – 定量的学術
BC240?: 夏至正午の太陽高度 → 地球の大きさ推定(24900 miles) → 世界地図作成?

当時の常識より遥かに大きな値 – 一般には認められなかった

C2) 後期
BC146: ローマがギリシアを支配
Hipparchos BC150?: 三角法(測量) → 三角関数。立体射影。球面天文学
Heron BC100?: 機械学、測量学 → ヘロンの公式
Menelaus BC100?: 「球面学」3巻。球面天文学の基礎を作る
2c頃 アレキサンドリア

卑金属 → 貴金属 → 錬金術 alchemy – 化学・医学と結びつく
alchemyの語源はchemistryと同じ (al-: アラビア語接頭辞 Ex. alchohol, algebra)

Galenos 129-199, or 131-201: 医学
Lucretius Carus, Titus (ローマ) BC94-AD55?
Ptolemaios Claudios, or Ptolemy 85-165: アレクサンドリアで活躍
天文学・占星術・地理学・光学
「アルマゲスト」(原題「数学的集成」) 13巻: バビロニア、エジプト、ギリシャ天文学集大成
「地理学入門」1巻
「プラニスファイリウム」 立体投影法 – 円錐図法
球面幾何学、太陽・月・惑星の運動理論

BC8 c月食記録等(観測記録資料価値大)

天動説 Ptolemaic theory = 天体観測

↔ 地球中心説 geocentricism = 地球球体(大地不動で宇宙の中心)

Diophantos 300?: 整数論 Arithmetica
= 近世整数論の基礎 → 負数はまだない

インド数学

アラビアを経てヨーロッパへ = ヨーロッパ中世数学形成に影響
0(ゼロ)の発見 → 10進法

Q. 10進法では3桁の数は100x + 10y + zの形に書ける。x + y + zが3で割り切れれば、この数を3で割り切れることを示せ

2次方程式 → 負数概念必要(インド)
Aryabhata 476-?: 現在の2次方程式と同じ解法で解く
「アールヤバティーヤ」 数学教科書
Brahmaagupta 598-?
「ブラーフマスプタ・シッダーンタ」 数学教科書 (Aryabhata批判)
ブラマグプタの定理: 円に内接する四角形ABCDの対角線ACとBCが点Pで直行すれば、PからABへ下ろした垂線PHを逆に延長したものは、辺CDの中点Mを通る
6-7 c: インド記数法体系 = 10進法完成
Bhaskara 1114-?: 2次方程式には2つの解があることを示す
「リーラーバティ」「ビージャガニタ」 - 数学書
「シッダーンタシロマーニ」 - 天文学書
Bibhutibhusan Datta 1888-: 「インド数学史」

中世 (middle ages, 4-5th c -13-15th c)


アラビア科学(イスラム圏科学)

古代オリエント科学から発展
7c中(ウマイア王朝)-8c中(アッバス王朝): 発展始まる

アリストテレスのギリシア語諸著作をアラビア語へ翻訳し注釈行う

8-9c: アラビア・ルネサンス
9c: 天文学: ダマスカス、バグダッドに天体観測所

プトレマイオス、ガレノス、エウクレイデスらを含むギリシア語著作をアラビア語に翻訳
錬金術: 不老不死薬開発が目的に加わる → 元素観念(不変物質)と関連

Al-Khowarizmi 825?

ヨーロッパ

暗黒時代 the Dark Ages
西欧 < 10c終: キリスト教神学とその支柱である哲学が影響
1085 キリスト教徒トレド奪回

→ アラビア語翻訳ギリシア哲学がキリスト教圏に入る
→ 西欧ギリシア哲学
中世後期西欧技術 = アラビア科学、中国科学の流入
錬金術 → 魔術

フィボナッチ (通称), Leonardo da Pisa 1170-1250

"Liber Abaci 算盤の書": インド・アラビア数学・記数法・計算法紹介

Bacon, Roger 1214-1294: 実験科学 – 近代科学の萌芽

「自然認識にはまず数学と経験を主とすべき」 → 教会拒否し異端者扱い

数学発展 (数学史 mathematics)
Abel Niels Henrik 1802-1829

発散級数は和を持たない
5次以上方程式は4次以下方程式で示されるような根の公式存在しない

Euler Leonhard 1707-1783

1736: 1/12 + 1/22 + 1/32 + … = 6/π
1748: 「無限解析学入門」
1757: プラトンの立体: 任意の多面体

Def F: 面数, E: 稜本数, V: 頂点数 → Formula: V – E + F = 2

表. ヨーロッパ中世後期の諸技術を中国と対照 → 宗教観の差. * 751: サマルカンド、793: バグダッド、900: エジプト、1100: モロッコ、1150頃: スペイン、1189までに: フランス
          羅針盤          黒色火薬  火砲                          鋳鉄    紙*
          compass                                                                            
中国  11c-12c初期  9c前期     竹筒ロケット 古くから  BC4   1c末
欧州  12c後期         13c          13c末(1325に記録)    13c    12c   
          印刷術                                                             機械時計
          版木 土製活字 木製活字 金属活字                                                
中国   6c     1045頃   1314頃    1392(朝鮮)               11c 水時計
欧州  1289      →            →       1450 Gutenbrerg J  1450 脱進器
                                                  (1400-1466?)          15c末 ゼンマイ時計

[ 地球誕生仮説 ]

近代 (Modern age)


産業革命 industrial revolution哲学革命

近代科学成立期

= 科学革命「天体の幾何学から天体の力学へ(天文学)」
Regiomontanus 1436-1476, 独, 天文学 + 三角法
当時の惑星表(航海に必要)の誤り指摘 – 地動説の伏線
Vinci (da), Leonard 1452-1519, 伊
多分野(美術・建築・技術科学)で活躍 「人体解剖図」
Copernicus, Nicolaus 1473-1543, Poland
≈ 1500 Aristarchusの地動説知る → 太陽中心説より天体運動説明容易

太陽中心、地球と共に数個の惑星。地球・月は自転(地動説) → ケプラー
反対論を警戒し、仮説として出版「天球の回転について」(1543, 死後) → 宗教家・天文学者批判で禁書

Porta, G della 1543-1615, 伊
1606 容器に水蒸気詰め、冷やし凝集させ真空 vacuum を作る装置
Digges, Thomas 1546-1595, 英: 天文学
コペルニクス体系を取り入れ無限の宇宙を擁護
Stevin, Simon 1548-1620, 蘭: 数学・土木技師
小数発見。風力帆走2本マスト自動車Simon of Bruges発明
Kepler 1571-1630, 独: ケプラーの法則

Tycho Brahe 1546-1601, デ: ケプラーの師。膨大な天文観測データ

Galileo Galiei 1564-1642, Galilei姓 (名 当時伊習慣, 数・天文・物理・哲学)
近代物理学開幕 = 観察による科学研究法の基盤

振子振動観察(逸話): 周期一定 = 振子法則 → 振子時計設計(不完全)
1604 落下の法則(落体の法則) s = 1/2·gt2
真空ポンプ研究

Guericke, Otto von 1602-1686, 独: 真空ポンプ発明
Torricelli E 1608-1647 伊, Galileiの弟子

水銀を詰めたガラス管を倒立 → 真空の存在(☛ 原子論)

van Helmont, Jan Baptista 1577-1644, ベルギー: 実験科学(錬金術)
→ 物質 = 質料 + 精気 → 精気単離試みる → 空気とガスを区別

医科学思想発展のきっかけ – 実験的研究

Newton, Isaak, Sir 1643-1727, 英
リンカーン州ウールスソープ生まれ。ケンブリッジ大学卒業の後に教授
万有引力の法則 → 機械論的・力学的(物理的)
1687 「自然哲学の数学的原理」(略, プリンキピア)

自然哲学 natural philosophy = 物理学: 力学的自然観
a) 実験と帰納 + 演繹
b) 公理・原理
c) 基本概念 = 時間・空間・質量 → 操作(的)概念
+ 世界の最初の起動者として神の存在を認めた

Laplace PS 1749-1827, 仏: 星雲説改めて提唱(カント-ラプラスの星雲説)

ラプラスの魔 「ある超能力者が特定の瞬間におけるあらゆる状態(全粒子の速度と位置)を知れば、そのものは将来のあらゆる出来事を予見できる」 → 瞬間の状態は時間の関数で表現できる

自然史的地球観誕生

984 Erik the Red (赤毛のエリック)グリーンランド発見
1492-1498 Columbus,Christopher (1451-1506)
アメリカ大陸(西インド諸島)発見
Agricola G 1490-1555, 独: 鉱物学の先駆的研究
Leonardo da Vinch: 「地質と化石」1504-05
化石とは地層の中に存在(古)生物遺骸 → 流水による侵食と堆積
Steno 1638-87: 地層学(層位学、層序学)
累重の法則(1669): 地層 – 水平, 空間 – 時間
地球生成説: 水が全ての元 – 水成論

堆積岩生成では正しいが、多事例で間違い (Ex. 花崗岩・変成岩が海中でできるとした過ち)

de Buffon, GL Leclere 1707-1788
地球は最初は溶融状態で現在の温度になるまで7万8400年かかった(1749)

根拠: 鉄冷却必要時間を鉄体積を変え計る ↔ 聖書: 天地創造後6000年

数回大洪水(1749) → ソルボンヌ大呼出: 聖書 ノアの洪水は1回 → 説変える
Kant I: 天界の一般自然史および理論(1755)

地球誕生 → 発展 → 現在 → 消滅

Hutton J 1726-1797, 英: 「地球の理論」(1795)
現在の地表の諸現象を調べれば過去の変化が推定できる
Werner A 1749-1817, 独: 岩石成因 – 水成論 → 火山作用は二次的なもの
Humboldt Av 1769-1859, 独: 火成論
Herschel FW 1738-1822, 独(活動は英): 反射望遠鏡製作 → 天王星発見
Smith, William W 1765-1839, 測量技師
運河掘削・石英採掘 → 化石による地層同定(対比) (1916-19)

標準化石の方法 Ex. 白亜・ジュラ紀 – アンモナイト
地球時代区分: 化石 → 累重 → 地層
堆積岩: 水の働きにより形成 → 不整合: 地層累重の法則に合わない地層の並び方

周期表 (周期律表, periodic table)

元素 element: 同数の陽子を持つ原子のグループ
. 長周期型元素周期表
table

国立天文台(編). 2010. 理科年表 2010版

周期律: 元素の原子が規則性ある構造持つ → 元素は構造要素に分割可能

人工元素 synthetic elements: 原子番号93-109のもの ↔ 天然元素

同素体 allotrope: 同元素だが互いに性質・構造異なる単体

同素体を持つ元素: S, C, O, P (scop)
Ex. O2 vs O3, ダイヤモンド vs グラファイト vs フラーレン

[19番まで] H He Li リーBe B C N O F Ne Na そーMg Al 曲ぐあるSi P S シップスCl Ar Kクラーク
炎色反応 flame reaction: 金属定性検出

白金線につけバーナーの無色炎で強熱 → 各金属特有の色
Sr するLi  りとCa  かるくNa なわBa ばりCu     ほどK
   赤   橙   黄  緑  青 藍 紫 (スペクトル順)

両性金属 amphoteric metal: 酸・塩基ともに反応
Ex. Al:    2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2

2Al + 2NaOH → 2NaAlO2 + 3H2
4Al + 3O2 → 2Al2O3

[ E ≡ energy ]

原子 (atom)


電子の発見 discovery of electron

1838 Faraday: 放電現象観察
1855 Geißler: 水銀空気ポンプ - 高度の真空 - 放電現象実験進展
1858 Plücker, Julius (1801-1868): 稀薄気体放電研究

放電 - 陽極側ガラスに蛍光 → 陰極側から何かが飛出しガラスに当たる

何かは磁場により曲る

1869 Hittorf, Plückerの弟子

陰極から出る何かは直進 - 障害物を置くと陽極側に影

1876 Goldstein, Eugen (1850-1930), 独

陰極線 cathode ray ≡ 陰極から出る放射線

Varley & Crookes

仮説: 陰極線 = 負の電気を帯びた粒子が陰極から放出 - イオンが有力

矛盾: イオンは金属膜透過不可。ガス種類に関わらず磁場影響一定

Varley, Cromwell Fleetwood (1828-1883, 英): 心霊研究 → 電気通信

1894 von Lenard, Philipp Eduard Anton (1862-1947):

陰極線は気体中で普通の分子や分子より数千倍遠くまで進める

1886 Goldstein: カナル線発見 → (後の)陽極線 anode ray
Zeeman, Pieter (1865-1943, 蘭)
1896 ゼーマン効果 Zeeman effect ← NaのD線が磁場中で多重線に分裂
Lorentz, Hendrik Antoon (1853-1928, 蘭): ゼーマン効果理論的説明
1896/1897 理論的にm/e決定 (m: 荷電粒子質量. e: 電荷)
Thomson, Sir Joseph John (1856-1940) (1897 安定同位体発見)
1897 実験的にm/e決定

陰極線: 負電荷持ち原子分子より極めて軽い粒子存在 - 高速な流れ

予測: 電子存在 - 矛盾解決

電流に運ばれる電荷総量, Q = Ne (N: 荷電粒子数)
発生熱量, W = 1/2·Nmv2
磁場が陰極線を曲げる箇所 → (mv)/e = (H: 磁場. ρ: 曲率半径)
m/e = (QH2ρ2)/(2W)

実験: 空気、水素、二酸化炭素で測定 - m/eは平均で0.49 × 10-11 kg/C

現在では0.5687 × 10-11 kg/C

陰極線は電場でも曲げられる → 移動速度 = 15000 km/s
質量: 水素原子の1/2000

Lenard (1894)を説明可能

陰極線荷電 = 6·10-10静電単位 ≡ (後の)電子 ⇒ 原子は更に小さい構造持つ

原子モデル atomic model

1) トムソンモデル (1903): 原子中に電気性物質散在(一様分布)

= ブドウパンモデル: 正電荷のゼリー中に電子が散らばる
⇒ 原子に帯電なく反撥性小 - 長岡モデルで否定

2) 長岡モデル (1903, 長岡半太郎 1865-1950)

= 土星型原子模型: 原子の中心に+電気集まり、周りを-電気が軌道運動
Becquerel AH, Frederic Joliot-Curie 1900-1958, 1903 長岡半太郎

1910 Rutherford, Ernest 1871-1937, 英/Bohr NHD 1885-1962, デンマーク

実験で長岡モデル支持
正電荷であるα粒子を原子(石墨)に照射時の反撥大

α粒子: その質量の1/7000負電荷(= 電子)に衝突しても反撥しない
→ 正電荷が一様分布ならば反撥は大きくはない
⇒ 石墨中の正電荷(= 原子)は一様分布ではない[原子の核存在] = 電子の分布も一様ではない

ラザフォードの原子模型 Rutherford atom model

原子核大きさ ≈ 10–15 m
電子軌道 electron orbid ≈ 10–10 m

α粒子の最初の運動Eから大きさを計算した

原子の発見 discovery of atom

1919 Rutherford: N原子核にα粒子衝突実験 714N + 24He → 11H + 817O

= 原子核は人工的変換可能証明

Def. 11H = 陽子 proton ⇒ 衝突実験から11H得られ最も軽い原子核と推定

Def. 質量数: 原子核質量を水素原子核(11H)の整数倍で表す Ex. H = 1

1932 Chadwick (英): 49Beにα粒子衝突実験 24He + 49Be → 01n + 612C

原子構造の解明が次の課題

Def. 01n = 中性子 neutron ⇒ 01n: 陽子とほぼ同じ質量をもつ中性の粒子
Def. 核力(核結合力) nuclear (binding) force:

核構成する陽子や中性子の結合力 (電気力ではない)

Def. 原子核 (atomic) nucleus(+e) [= 核子 nucleon]

= 陽子(+e) [1.6726·10-27 kg] + 中性子(0) [1.6749·10-27 kg]
Def. 原子番号 atomic number, Z: 原子核の陽子数
Def. (原子)質量数 (atomic) mass number = 陽子数 + 中性子数

Def. ZAX ⇔ 原子番号Zの元素Xの質量数A
Def. 電子 electron (–e): 陽子・中性子の質量の約1/1800 [9.109·10-31 kg]

電子雲: 電子の確率分布 → 直径0.5-2Å = 原子の大きさ
⇒ 電子雲モデル electron cloud model

同位体 (同位元素, isotope): 陽子数同じで中性子数異なる原子群
Ex. 天然水素同位体

1H. 2H = D (重水素 deuterium). 3H = T (3重水素 tritium)
重陽子 deuteron, D: 2Hの原子核 = 陽子と中性子の2個の核子で構成

放射性同位体 (radioisotope): 放射能持つ Ex. 14C

= 放射性同位核、放射性同位元素

安定同位体 (stable isotope): 放射能持たない Ex. 12C, 13C (応用)

原子論 atomism vs ニュートン力学/熱現象

粒子運動
= 質点運動の法則: 粒子の従う運動法則 (ニュートン力学の範囲)
= ニュートンの三大法則
1st law. 慣性の法則
2nd law. ニュートン方程式
Ex. ≈ 光速 → mは変化し運動量は時間的に変化

p = mv ⇒ 特定座標系(Ex. 慣性系)でのみ成立 →
2nd law成立条件: 全慣性系で時間の進み方同じ(1st lawのみなら不要)
時間の進み方は、物体の進み方と速度の関係の認識から生まれる

Ex. 軸毎に時間の進み方異なり、時間と共に質量変化

地球に固定した座標系と火星に固定した座標系では軸が異なり、両方を包括するためには座標系を太 陽に固定、更には銀河へと行く → 固定した座標系はあるのか

3rd law. どの座標系で加速度を計るか

α = m·d2x/dt2 = fxm·dv/dt = f (dt: 定時間の存在)

if 第3法則が成立しないと2物の力の差は異なり物体は常に加速度を有する

⇒ 第1法則も否定 ← 矛盾(背理法により第3法則成立証明)
1, 2, 3の法則は、独立かつ密接な関係 Ex. 1決まらなければ2決まらない
「時間」とは… ありふれた問題に対し考察せぬは論理性の放棄である!
時間計測法: 計量器 → 規則正しい運動体の存在が前提

→ その運動体が規則正しいというのはどのようにして知る事が出来るのか。という、堂々巡りが始まる

ある時計の振動と天体の運動(地球の公転の時間を基準に時間は決められた)とは、法則的に一致

→ この段階での"時間"とは絶対時間認識の元で形成 ⇒ 時間とは、物体運動の認識として表わされる
→ 相対性理論上は時間の存在が研究対象

運動方程式の帰結
1. 初期条件 (f: 位置座標、ベクトル): dP/dt = f, m·dv/dt = f, f = fx + fy + fz

運動法則 ⇒ 運動量変化(加速度)の仕方を決める ⇒ 初期形態が運動法則を決定しうる物ではない
運動量の時間的変化は説明可能だが、一番最初の点体の働くきっかけはニュートン力学で説明出来ない
→ Newton「神の一撃」とし説明(神の存在) ⇐ 力学的自然観(決定論的)

2. 逆行運動可能 atom

時間反転 (t → -t) 運動方程式普遍
ニュートン力学の運動系
t, -tの量運動は逆運動(時間を逆行)でも成立
tで2回微分するので-tでも運動は不変
⇒ "運動方程式に合致" ≡ 時間に関し、運動法則は可逆
現実には、可逆性の見られない運動多 Ex. 熱力学諸現象は不可逆 → 原子論の第二関門
(結論: 総ての現象は原子論で扱える)

3. 正準共役力学変数

md2x/dt2 = f … (1) → dm/dt·(dx/dt) = f
dpx/dt = fx, px = mvx … (2)
質点毎に異なる
(1)(2)は、等しい式だが意味合い異なり、位置と運動量が物体質量によらない不変的形として(2)の方が良い
x, p 座標と運動量。不変な(一般的な)運動法則形式
物体の属性(質量)に左右されない形 = 法則
位置と時間は異なる
時間は半無限 [現在 → 未来) ⇔ 位置は無限 (- 無限 → + 無限)
(整数 = ある数より小さな有理数の集合)

(Boltzmann, Ludwig 1844-1906 自殺)

H-定理
熱力学第2法則を運動力学から説明
n(r, v, t), H(t) = dvdrnlogn, dH/dt < 0, S = -rH

⇒ 力学現象の可逆性と熱現象の不可逆性を示す

熱力学の原子論的基礎

縦↑↓, 横↔との分子の割合: 垂直か水平に運動 –
空間に固定されていると仮定(質量大)
atom
nA (G分子)
n____n____(nn←) (B分子)
(Udn→+Udn←) × nAV - このためにはB分子が等分布する必要

= UdA(n→ + n←)VnA____(n→ + n←) = N ⇔ トータル
= UdnANVnAΔ = p

atom

atom
(Udn + Udn)/nAV = Ud(n + n)VnA = UdnAN = pN

n + n = N
↔ – ↕ = pN, ↕ – ↔ = pN

縦横分子数の時間的変化

縦方向分子数の時間的変化 dN/dt

Increase = pN, Decrease = pNp(N – N)

横方向分子数の時間的変化 dN↔/dt ⇒

Increase = pN, Decrease = pNp(N – N)

↓ 分子の分布状態が等しいものと仮定 → 衝突
縦横分子指数の時間的変化
d(N – N)/dt = p(N – N) – p(N – N) = –2p(N – N)
N – N = Cept

atom 過去から現在を見る: 縦方向の増加は横方向から来た分と縦方向から消えた分の差

pNpN = p(N – N): 衝突 → 分子は等しく分布
dN/dt = p(N – N)
dN/dt = p(N – N)
d/dt(N – N) = 2p(N – N) = Ce2pt

dN/dt, dN/dt, Ce2pt → 変化量

古典論の限界

天体: 星は見えないはず
水素原子 hydrogen atomの安定性 → 不確定性原理 (運動状態の捉え方が違う)
夜空の星: 総ての星 → 質量の4乗に比例するE(= 太陽Eと仮定)
Ex. 乙女座南方の恒星 αケンタウルス(αK): 太陽に最も近く距離4.3光年 → 太陽とおよそ同じ発光量の0等星

同星から2 × 10-8 (W/m2)のEが地球に届く

実際: 地球公転軌道を用い三角測量で星への距離求め、星から届く光量から星発光量が分かる

atom
視神経細胞分子断面積 ≈ 10-10 (m2) → 分子1個は平均で同星より2 × 10-18 (J/s)光E受容
同細胞分子1個は約1 eV = 1.6 × 10-19 (J)の光Eが届くと反応
Eが波として空間に一様に分布し届けば1.6 × 10-19 (J)/2 × 10-18 (J/s) ≈ 1/10[s]でαKが見える

Ex. 6等星は0等星より約300倍暗い

→ 等星を見るには1/10 × 300 = 30 (s)間見つめないと見えない
脳は目が送った画像を3/100 (s)毎に更新する必要(写真でいえば目は3/100秒より遅いシャッター切れない) → 光Eが波伝播すると6等星は絶対に見えない
⇒ 光の波動説では、すぐに星は見えないはず

実際に星が見える条件: どれかのレチナール分子に光が当たれば良い
1個の持つ光粒子Eはレチナール分子の状態を変える程の大きさを有している
光が物質と作用し、そのEが物質に吸収される時は、光Eは波ではなく光子という粒子として吸収される(田中 1973)
可視光の光子E:

hv(yellow) = 3 × 10-19 J, hv(violet) = 5.2 × 10-19 J等

≫ 1 eV = 1.6 × 10-19 J

----------------------------------🔵
                          ●●  🔵
  ●●              ●●           🔵
                  ●●    🔵
----------------------------------🔵
      ⇑ 網膜中の光の流れ

100個ほどの光子が届けば視神経細胞分子は光感知 = 星はすぐ見える
⇒ 光の粒子説は暗い星もすぐに見えることを説明できる

光の波動説・粒子説の比較
光が波の時の条件: 全部のレチナール分子の状態が変わる
光が粒子の時の条件: 30個のレチナール分子の状態変化すればよい

(3 × 1010)/d2 (cal/cm2·min) × 1/4 × 1/60 × 1/30 × 6 × 10-20 (cal)
150 > d ⇒ 150M2 > d ⇒ 1000光年先まで見える

ボーア原子模型 Bohr atom model

Bohr Niels HD 1855-1962, デンマーク: H等、簡単な原子で成立
対応原理 coresspondence principle: 古典力学-量子物理学間法則統一を模索 → 量子模型 quantum model
1) 電子 = 核との間のクーロン力の作用で核の周りを等速円運動する

ボーアの量子条件: 2π(mva) = nh

n = 1, 2, 3, …: 量子数
m: 電子質量
a: 軌道半径
v: 電子円運動速さ

2) 電子 = 定常状態 stationary stateから他定常状態に遷移 transitionする時だけ光の吸収か放出を行う

ボーアの振動条件: v = (EmEn)/h

Em: 遷移前のE
En: 遷移後のE

Def. 基底状態 boundary state: Eの一番低い状態 [安定] → それ以外は励起状態

E状態(E準位energy level) = 基底状態と同じ角運動量を持つ
atom
質量____________↔ 運動量_____________⇒ 両者に密接な関係
動く範囲は広い______狭い (限られている)
動く範囲は狭い______広い
ドナー donor: 電子を提供する不純物原子

等価原理 equivalent principle (principle of equivalence): 対をなす2つの状態は同時に確定できない

確率的に決定 ⇒ 不確定性原理 uncertainty principle (Heisenberg uncertainty principle)

Ex. オーロラ aurora

電子がE受け取る → 原子核から遠い軌道を回転 → 励起状態 [不安定] → 元の軌道に戻る = E放出 ⇒ Eが光として放出される → オーロラ
Ex. E = 宇宙空間から来るプラズマが電子に衝突
プラズマplasma: 原子の原子核と電子が分かれて激しく動き回っている、一種のガス状態
atom
オーロラ色: 元素の発光輝線で決まる
0__-------------------
:______:
E5_-------------------
E4_-------------------
atom
図. 原子のエネルギー準位energy levelと光の放射・吸収

Ex. O = 557.7 nm + 630.0 nm

応用: 流星: 発光色により成分推定


原子物理学概論試験
exam 1. 2種類の分子(A, a)から成る分子系が相互作用をしている。Aは密度ρAで分布し境界面は水平方向に45°であり質量は大きく固定した位置にある。回転もない。aは密度ρaで分布しており水平方向と垂直方向にのみ運動している。時刻tにおける垂直方向の分子の総数をN1(t)、水平方向の総数をN-(t)、この差をD(t) = N1(t) – N - (t)とする。次の2つの考え方にもとづきD(t)を求めよ。分子aの速さをv、分子Aの垂直断面の対角線の長さを2dとする

i) 垂直、水平方向の分子のうち4dvρaが1個の分子Aにより単位時間に水平垂直方向に運動方向を変える
ii) 垂直、水平方向のうち4dvρa個は単位時間に垂直、水平方向に運動が変わったものである
iii) 上記2つの結果が異なるとすればその異なる理由を述べよ

2. 量子力学的法則と古典力学的法則の共通する点と異なる点を列記せよ

量子力学 (quantum mechanics)


⇒ 微視的世界の法則: 量子説(論) quantum theory (Planck 1900)
Def. 量子 quantum: 物理量が分割されない最小単位から成り立つもの
熱放射 heat radiation (熱輻射 thermal radiation): 金属等を熱すると暗赤色・橙黄・白の光を放射

熱放射は可視光線visible lightを含む幅広い波長分布を持った電磁波

Def. (完全)黒体 black body: 外部から入射した熱放射を全て吸収(理想的)

黒体放射(黒体輻射) black body radiation (空洞放射cavity radiation) → 物体種類・表面状態に関係ない

量子力学的状態では ⇒ ΔxΔph/2(調和脈動子 = 成立)

仮定: 振動数fの光の持つEの大きさはhfの整数倍に限られる ⇒ 量子論の始まり ∵ 整数倍となる = 光は計数可能 ⇒

Def. 光子 photon: 光の計数単位
Law. プランクの放射法則 Planck's law of radiation (Planck 1900)

振動数 v (波長 λ), 絶対温度 T
⇒ 黒体放射スペクトル, P(x) = x3/(ex – 1), x = hv/kT

Law. プランクの(黒体放射)法則: 物体表面から放射されるE量に関する法則
黒体放射は温度のみの関数で表せる = 黒体放射の具体的記述

c = 真空中の光速(≈ 3.00 × 108 m/s)

振動数 v, v + Δv, [v, v + Δv]間にあるE UvΔv (/cm3)

Uv = (8π(kT)3/h2c3P(x), x = hv/kT
UvΔv = 2kT·(x/(ex – 1))·1/8·4π(2v/c)2·Δ(2v/c)
λ = c/v, [λ, λ + Dλ]間のE UλΔλ

Uλ = D·(1/(e(hc/kTλ) – 1))·(1/λ5), D = 8πhc (constant)

黒体放射ETのみで決まる波長λp(T)で極大値を持つ

Law. (rewrite). プランクの法則
I(λ, Tλ = (2πhc2/λ5)·(1/ehc/lkBT – 1)·Δλ (J/s·m2)
Def. ボルツマン定数 Boltzmann constant, kB (or k)

= 1.38064852 × 10−23 J·K−1

Def. プランク定数 Planck constant, h = 6.62607 × 10-34 J·s

= 6.6262 × 1027 erg·s = 1.58 × 10-34 cal·s

Def. ディラック定数 Dirac constant

≡ 換算プランク定数 reduced Planck constant,
= 1.0545887 × 10-34 (J·s) = 1.0545887 × 10-27 (erg·s)

プランクの法則より導かれる2つの法則
Law 1. ウィーン(の変位)則 Wien's (displacement) law (Wien Whilhelm 1864-1928): 波長当りの光量子量(E量)が最大となる波長, λmax
λmax ∝ 1/T (高温物体ほど短波長の電磁波放出)

黒体放射 ⇒ λT = constant (2897), λ: 波長(μm), T: 温度
λλ + δλE密度, ρλ = (c1/λ5)e-c2/lt (c1, c2: constant)

⇒ 短波長で実測と一致

ρλ = (2πckBT)/λ4 (c: 光速, kB: ボルツマン定数)

⇒ 長波長で実測と一致 (Rayleigh, Jeans)

Law 2. シュテファンの法則 Stephan's law

W = 5.67 × 10-8T4 (W)
絶対温度Tの物体の表面面積1 m2から1秒間に放射される全E量はTの4乗に比例

Law. ステファン・ボルツマンの法則: I* = σT4

I*, 単位面積から単位時間に放射される全E
Def. ステファン・ボルツマン定数, σ = 5.67 × 10-8 [Wm-2K-4]
Max(*) → 温度低くなるのに対し大きくなる

⇒ ステファン・ボルツマンの法則 + ウィーンの変位則 → 観測結果から太陽表面温度推定可

Law. キルヒホッフの法則: 放射率 = 吸収率

⇒ 放射をよく吸収する物体はよく電磁波を放射

quantum ⇓ 両式矛盾解決 (Planck)

量子説

重ねあわせ可能: ψ1(x) + ψ2(x)

Δx: 位置の幅
Δp: 運動量 (cf. ばねの力の大小)
水素原子の安定性

ΔxΔpx ≥ h/2: かなり大なら古典力学に一致 … (1)

x軸方向の運動量の幅: Δpx = Δ(pxpxavg)2 → (Δpx)2 = (pxpxavg)2
pxavg = 0, Δpx2 = pxavg2 [水素は静止している]
→ (1)が等しいなら(大抵は成立): pxavg2 = (h/2Δx)2 = (h/2r)2
両辺をΔxで割り2乗
quantum
(1/2m)(px2 + py2 + pz2) = (3/2m)(h/2r)2 = (3/8m)(h2/r2)
px2 + py2 + pz2: moment energy ⇒ ∴ E = 3/8m·h2/r2e2/r
2E/2r = 0 (Min(E) → radius)
-3/4m·h2/r2 + e2/r2 = 0
r = (3/4)·(h/e2m)

中性子 (neutron)

中性子束(中性子束密度) neutron flux: 中性子挙動が集団としてもつ効果を記述するため導入された量
中性子流密度ベクトル(中性子流) neutron current density vector: 中性子の流れ

定量的に表現する場合は、流れの方向に垂直な単位面積を通り単位時間に流れる正味の中性子数

熱中性子thermal neutron: 原子核の熱運動のEと同程度のEをもつ中性子

20°Cの媒質中では熱中性子のEは約0.025 eV。2200m/sの付近にマックスウェル分布

高速中性子 fast neutron: 一般にEが0.1 MeV 以上の中性子

cf. 冷中性子(冷たい中性子) cold neutron

中性子寿命 neutron life time: 中性子は吸収・漏洩等で体系中に存在しなくなる。このとき中性子の平均的寿命
1900 Planck Max EL 1858-1947, 独

プランク量子仮説 = Eはある単位量の整数倍で表現可能
E量子(それまでEは連続量として扱われた)
1調和振動子の得るE値は不連続 = 振動数vの振動子はhvで与えられるEの整数倍値
E授受はhvを単位に行われる ≡ 量子条件 quantum condition

量子化 quantization: hvより小さい振動子を与えても振動子は励起されない

Def. 作用量子action quantum ≡ hv
熱放射に関する式 ρλ = (8πhc/λ5)/(1/ehc/hTλ–1) → 実測値とよく一致

1905 Einstein 光量子仮説 light quantum hypothesis: E粒子存在 ⇒

光電効果説明 + 低温下での固体比熱説明

1887 Hallwachs, Wilhelm 1859-1922, 独

ハルワックス効果(光電効果 photoelectric effect)
光電子放出 photoemission, photoelectron emission) = 光電効果

↔ 逆光電子放出 inverse photoemission = 逆光電効果 inverse photoelectric effect

UV照射で真空中に負帯電した物体(金属)が電荷を失う現象 → 電子放出による

Def. 光電子 photoelectrons: 飛び出てくる電子

光起電力効果 photovoltaic effect: 物質に光を照射することで起電力が発生する現象。光電効果の一種

→ 光起電力 photovoltaics → 光起電力変換 photo voltaic conversion
光電増倍管 photomuitiplier, PMT: 高感度光検出器

光電管(光電効果利用し光Eを電気Eに変換) + 電流増幅(= 電子増倍)機能

光電子放出の第1法則 first law of photoelectric emission
光電子放出の第2法則 second law of photoelectric emmision
光電子放出の第3法則 third law of photoelectric emmission
熱電子放出 thermoelectronic emission (therminic emission): 熱により電子を放出し電荷を失う

熱電子 thermal electron (thermoelectron): 金属等の表面を加熱 → 表面から熱励起され飛び出す電子

von Lenard: 放電効果特性 (古典力学で説明不可)
  1. 金属への照射光の振動が金属種で決まる一定値より小 → 光を強くしても電子飛び出さない
  2. 飛び出した電子の持つ運動E最大値は照射光強度に関係なく振動数のみで決まる
  3. (金属から飛び出す電子数/時間) ∝ 照射光の強 (古典力学で説明可能)
  4. 照射光が弱くても、光を照射すると殆ど同時に電子が飛び出す

⇒ 量子説採用: 光は光量子(光子) photon E塊からなる (cf. 音子 phonon)
⇒ 振動数vの光量子1個のE, E = hv
仕事関数 working function, W: 金属表面1個の電子が表面から出るのに必要なE

電子が飛び出す条件: hv > W
飛び出した電子の持つ運動E最大値: 1/2·mvmax2

= hvW

量子的状態と物理量
コンプトン効果 Compton effect (Compton Arthur H 1892-1962): トムソン散乱の他に、入射X線より波長の長いX線が散乱される

トムソン散乱 Thomson scattering: X線が物質に入射 → 入射X線と等しい波長のX線が散乱
コンプトン散乱 Compton scattering: X線E ≥ 10万電子ボルト(eV)

1914 ラウエLaue (1879-1960)の斑点Laue spot

X線を原子結晶に照射 → 回折X線が干渉縞生じる
→ X線は波長の短い電磁波であることが示される

1923 Compton: X線 = 光量子 → 物質原子内の電子と衝突

入射X線: Eの1部を電子に与え、より小さいEのX線となり散乱する
⇒ 電磁波: 波動性と粒子性から説明 [矛盾存在]

物質波 matter wave
= ド・ブロイ(の物質)波 de Broglie matter wave
de Broglie Louis V 1892-, 仏
1923 物質波概念 → 電子も波動とみなせる/粒子とも見なせる ⇒ 二面性

1927 実験的に証明される ⇒ 電子波 electron wave

1924 ド・ブロイ波長 de Broglie wave length, λ: 光 = 光量子 → 物質波存在

λ = h/p = h/mv (m: 質量, v: 速度) Def. 運動量, p = mv
運動Eが 1/2·mv2 = p2/2m = h2/(22) = eVとなる電磁波ドブロイ波長

λ = h/√(2meV) = √(105.4/V) × 10-10 (meter)

2πa = (n = 1, 2, …), a: ボーア半径, λ: 電子波波長(ドブロイ波長)
∴ 2πmva = nh ⇒ ボーアの量子条件

⇒ 力学的な波 mechanical wave: 媒質が必要な波 Ex.

↔ 力学的でない波 Ex. 電磁波

波動力学 wave mechanics

1925 Heisenberg 1901-1976, 独: マトリックス力学
1926 Schrödinger Erwin 1887-1961, オーストリア: 波動力学

対応原理 → マトリックス力学 = 波動力学 → 「量子力学」に統一

Def. 物質波に関わる科学: 観測可能な量と概念のみから構成(実証主義的)

1. 不確定性原理
2. 相補性原理 complementarity's principle

水素: ニュートン運動方程式

quantum
電子はやや内側を回
る螺旋軌道をとる

E = -e2/(2r) [ポテンシャルエネルギーの半分]
d/dt(–e2/2r) = –(2e2/3c3)α2 … (1)

毎秒電磁波を放出(減少)

m(-v2/r) = -e2/r2α = v2/r = e2/mr2

rに関する微分方程式

dE/dt = d/dt(-e2/2r) = (e/2r2dr/dt … (2)
(2) – (1) ⇒ (e2/2r2dr/dt = (-2e2/3c3)(e2/mr2)2
dr/dt = -(2e2/3c3)·(e4/m2r4) (2r2/e2) = -4/3·(e4/m2c3)·(1/r2)
ここでr = αt, t = (α/c)τ, αe = ħ/(e2m), 1/(αe2) = e4/ħ4
dr/dt = -4/3·e4/m2c3·1/{c2(r/ae)2} = -4/3·e2/m2c3·1/ξ2
ħ/me2·/dt = -4/3·e6/4·1/ξ2
/dt = -4/3·e8m/c3ħ6·1/ξ2 = -4/3·(e2/ħc)4·mc/ħ·1/ξ2

Case. 水素 → 上記微分方程式でd/dt(-e2/2r) = -2/3(e2/mr2)2

e2dr/(2r2)dt = (2e6)/(3c3m2r4) … (1)
r := αx, t := (α/c)τ ∴ {α/(α/c)}·(dx/) = –4/3·(e4/c3m2α2x2)
dx/ = –4/3·(e4/c4m2)·(e4m2/h4)·(1/x2)
α = ħ2/(e2m) = -4/3·(e2/hc)4·1/x2 (e2/ħc = α)
1/α2 = e4m2/ħ4
3x2dx = –4α4
x3x03 = –4α4dΔτ
Δτ = x03x3 = 7/(32α4)
A. Δt = (7/32α4a/c

量子力学の構成

quantum 量子力学的状態: ψ(r) ⇒ 位置座標の関数
重ね合わせ可能: ψ(r) = ψ1(r) + ψ2(r) ⇒ 加えたもの

→ やはり量子力学的状態を(波動の様に)示す
AB共に開けた写真 = ψ(r) (Aのみ開け撮った写真) + ψ(r) (Bのみ開け撮った写真) [重ね合せ]

物理量___作用素
__R_____r
__P_____∀ (i: 虚数)

物理量の値: ∧cr: 座標と運動量の関数 ↔ –∀(φ(r)) = λφ(r): 固有値

状態の時間変化: iħ∂ψ(r, t)/ψdt = H(r, –∨)ψ(r, t)

⇒ 座標と運動量(Schrödinger方程式)

物理量の期待値: ∧exp = ψ*(r, t)∧(r, -∨)ψ(r, t)dr

量子力学の作用素: 古典 → 量子

x, y, xx, y, z
px → -iħ∂/∂x, py → -∂/∂y, pz → -∂/∂z
p → -
∧(r, p) → ∧(r, –ħ∨), ∨ = /∂x, /∂y, /∂z

位置 = 位置座標(古典、量子)

運動量 = 1つの実数(古典) / 1つ1つの作用素(量子)

エネルギーの作用素

古典__________________量子
px2________________ → (-ħ∂/∂x)2(-iħ∂/∂x) = -ħ22/∂x2
(1/2m)(px2 + py2 + pz2) → -ħ2/2m(2/∂x2 + 2/∂y2 + 2/∂z2)
運動E:
mv2/2 = (m/2)(vx2 + vy2 + vz2) = (1/2m){(mvx)2 + (mvy)2 + (mvz)2}
mvx = px, mvy = py, mvz = pz
(1/2m)P = (–ħ2/2m2 = (–ħ2/2m)∀2
Δ = 2/∂x2 + 2/∂y2 + 2/∂z2 = ∀
2 = (/∂x, /∂y, /∂z)
_____ポテンシャルE

固有値と固有状態

運動量のx成分
(∂φ(x)/∂x) = px'φ(x)
∂φ(x)/∂x = ipx'/ħφ(x)
φ(x) = ceipx'(x/ħ) = cei2π(x/λ) = cosx + isinx
ex = Σn=0(xn/n!), eix = Σn=0((ix)n/n!) 波長λの同調周期
px'/ħ = 2π/λ
λ = 2πħ/px'

⇒ 運動量pの粒子にはλ = 2πħ/px'の波動が伴う
Ex. 60 kgの人が10 m/sで走る:

p = 60 kg/10 m/sec = 6 × 104 × 103 cm·g/sec = 6 × 107 cm·g/sec
λ = 2πħ/px' = 2πħ/(6·107) = (6·10-27)/(6·107) = 10-34
→ 観測出来ない
水素原子 p = 0.9 × 10-27 g × 108
λ = (6 × 10-27)/(0.9 × 10-27 × 108)
→ 質量が小さいほど波動は顕著

角運動量(成分と運動量): 極座標P(r, φ, θ)

z成分: xpyypz > –(x∂/∂yy∂/∂x)
x = rsinθcos, y = rsinθcosφ, z = rcosθ, r = √(x2 + y2 + z2)
r2sinθ = x2 + y2
tanθ = {√(x2 + y2)}/z
tanφ = y/x
x∂/∂yy∂/∂x = /∂φ[∂/∂x = ∂r/∂x·∂/∂r + ∂θ/∂x·/∂θ + ∂φ//∂φ]
(∂Φ/∂φ) =
Φ = ceimφeimφ/ħ = eim(φ+2π)/ħ = eimφ/ħ·eim2π/ħeim2π/ħ = 1
m/ħ = mm = mħ (m = integer × ħ)
φを2πに変えても値は同じだと仮定する (2πの不定性)

角運動量の値: 大きさ, z成分

角運動量の2成分を同時に確定することはできない → 大きさと1成分が同時に確定した値を持つ

動径方向の運動, l =       0            1              2                  3
回転運動の大きさ       s状態      p状態       d状態           f状態
                                 (sharp)  (principle)  (diffuse)  (fundamental)

ナトリウムスペクトルの特徴から名付けられる
3D (大文字) = 全体, 2s (小文字) = この粒子の運動状態を表わす

水素原子のE: Schrödinger wave equation
エネルギー作用素

H = (r/2m)p2e2/r → (-h2/2mv2e2/r

運動EとポテンシャルE

[(h2/2m)(2/∂x2 + 2/∂y2 + 2/∂z2) – e2/r]Ø(r) = (r) 固有方程式

(E: 水素原子のE)

E = -(e2/2a)(1/n2) = -(2m/2h2)(1/n2)

a: ボーア半径 Bohr radius
n: +の整数
n = 1: Eが1番深い(低い) E → 大 … E
n = 2: (n = 1)の1/4倍↑

電子の質量: 換算質量 μ = mM/(m + M) ⇒ m/(1 + m/M) ≈ m

電子・原子の構造 structure of electron and atom


Def. 電子殻 electron shell: ボーア原子模型で原子核取巻く電子軌道の集合

原子に束縛された電子の状態を理解する上で重要 - 電子配置
[核は中心、殻は外側]

Def. 価電子(原子価電子) valence electron ≡ 最外殻電子

(イオン化や化学結合を決める)

Def. 内殻電子 core electron: 価電子軌道より内側にあるもの

原子間化学結合や、物性に影響しない ↔
比較的浅い軌道の内殻電子, e.g., Ga 3d電子, や、内殻励起の様な現象では内殻電子関与

Def. 電子配置 electron configulation or arrangement: 原子を構成する電子の軌道上の配置

原子構成電子の振舞 → 原子核による静電ポテンシャル中の3次元シュレーディンガー方程式を解き得る

電子雲 electorn cloud: 分子やイオン形成時に重要

電子軌道: 主量子数n、方位量子数l、磁気量子数mの3つで指定

n: 軌道の大きさとEを決定 (n = 1, 2, 3 …, i, …, n: integer)

= 電子殻K殻、L殻、M殻 … に対応: K殻にある電子E最小
⇒ 各電子殻に入りうる電子数, N = 2n2

l: 軌道の形を決定(l = 0, 1, 2, …, n – 1)

= s軌道, p軌道, d軌道, f軌道 … に対応

      :                    n         1    2          3                  4
N (N殻 N-shell)  01234  ♠♠ ♠♠♠♠♠♠ ♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠ ♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠ … 32
M (M殻 M-shell) 0123    ♠♠ ♠♠♠♠♠♠ ♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠                            … 18
L (L殻 L-shell)    012      ♠♠ ♠♠♠♠♠♠                                                …   8
K (K殻 K-shell)   01        ♠♠                                                            …   2
原子殻               方位(l)  s_ p_____ d_________ f____________

図. 電子配置

m: 各軌道を決定(-l, -l + 1, …, 0, …, l - 1, l, m: integer)

Ex. n = 2, l = 1を総称し2p軌道 → 3種類のm = (-1, 0, 1)

→ 2px, 2py, 2pzの配位をもつ3軌道存在

電子 ≡ フェルミ粒子
Ax. パウリの排他原理: 1軌道には互いに逆向スピン持つ2電子しか入れない
Def. 電子対 electron pair: 軌道を2つの電子が占有した状態 ⇒ 電子対生成

Ex. 2p軌道 = 最大6電子収容_Ex. 3d, 4d等のd軌道 = 10個
Ex. 4f等のf軌道 = 14個
殻スペクトル波長: 1/λ = v/c = R·(1/n12 – 1/n22)

R: リュードベリ定数 Rydberg constant (≈ 109700 cm-1)

電子捕獲 electron capture Ex. K捕獲 K-capture
電子スピン共鳴 electron spin resonance (ESR)

Ex. 1電子原子: 水素、ヘリウムイオン、Li
原子中の電子のE状態

水素原子のE
Em = e2/(2an2), a: ボーア半径(電子の換算質量を用いた)
l = n – 1, n – 2, …, 1, 0__(n = 1, l = 0), (n = 2, l = 0.1)
E = – (Z2e2)/(2an2)
角運動量 √{l(l + 1)}·h: l = 0, 1, 2, … (-lml)

orbital

水素原子
原子の中のE状態
Ex. 水素原子のE

1s (l = 0の時) → n = 1__
2s_________n = 2__ ○ 外側の方に存在する確率大
3s_________n = 3__
orbital

orbital 角運動量の固有状態(l = x, M = y)
水素原子のE準位

電子がどのようなEを受け取るか
Eは同じだが状態量が違う
電子の運動状態により変化
陽子の回り: r(l): 回転運動, (n): 動径方向運動

電子のE補正
1. 相対論的補正

ΔE = (Z2d2/4n2){3 – 4n/(l + 1/2)}|En|
H = (m2c4 + c2p2)1/2 + V = mc2 + p2/(2m) – p4/(8m3c2) + V

2. 原子核からの磁気E

電子の磁気能率: μ, 原子核による磁場: H, E: W
W = -μH
If 電子は静止 → 回りを原子核が回る。電子の回りに電気が流れ磁場できる。電子は磁気能率持つはず
磁気能率 ⇔ 磁場
逆向きの方がE

多原子系と原子価: μ, H, Wの表式
[μ] 荷電, q ⇒ 一周時間, T = 2πr/v 半径: rs: 面積 速さ: vc: 光の速さ

iT = q ⇒ 電流 i = q/T = qv/2πr
磁気能率 i·s = (qv/2πr)·(πr2/c) = qrv/2c = qrmv/2mc = q(L)/2mc

角運動量: σ

orbital

μの向き↑, δの向き↓
電子= –(e/mc)(h*/2δ)
m = (eL)/(2mc)
角速度 = v/r
h/2 = 3/5·mr2θ = (3/5)mrv
r = 5h/6mv ≈ 3 × 10-11 cm
→ 有り得ない。よって、h/2という角運動量は電子が自転するためのものではない

[H] = 1/c(i/r3)[dS × rZee] = Zev/cr orbital

H = ZeLe/mcr3, cr: 単位ベクトル


[W] = -μH = –{(–e/mc)·(h/2)·σ}·(Ze/mc)(Le/r3) = Ze2/(mc)2·1/r2·(h/2)·σLe orbital

相対論的補正
時間の違い: W × 1/2
回転運動と電子自身の角運動量の求め方は2通り

↑↑ΔE = (Z2α2/4n2)·4n/{(2l + 1)(l + 1)}|En|
↓↓ΔE = (Z2α2/4n2)·[-4n/{(2l + 1)·l}]|En|

1. 全補正
2. 相対論的補正 + 磁場

↑↑(z2α2/4n2)·|En|·[3 – 4n/(l + 1/2) + 4n/{(2l + 1)(l + 1)}]

= z2α2/4n2·|En|·{3 – 4n/(l + 1)}
j = l + 1/2↑

↓↓(z2α2/4n2)·|En|·[3 – 4n/(l + 1/2) – 4n/{(2l + 1)l}]

= z2α2/4n2·|En|·(3 – 4n/l) = z2α2/4n2·|En|·{3 – 4n/(j + 1/2)}
j = l + 1/2↓

真空で電磁場ができたり消えたりしている

固体のEバンド(バンド)
Ex. 水素ガスを圧縮し固体にする → 原子間距離↓ → 原子間相互作用↑

orbital
個々の原子から形成される
E準位が原子間相互作用でズレ、レベルに幅が出る ⇒ バンド形成

価電子帯(充満帯): 価電子入るバンド → 伝導帯 conduction band
⇔ ギャップ gap: 電子がとることのできないEの範囲

Def. 電気回極能率: 価電分布を示し球形からの歪みを示す率

原子核E

+-

ZAXの質量m(ZAX)は質量数Aほぼ比例 ≠ 精密測定では異
原子核結合E binding energy of nucleus (1核子の結合E binding energy of nuclear particle)
質量 12C: Mass = 12 (原子質量単位atomic mass unit, a.m.u., AMU)

原子 = 12 AMU (1 AMU = 1.6605655 × 10-24 g)
E = mc2より

E: mp = 陽子の質量, mn = 中性子の質量

mp = 1.6726485(86) × 10-24 g
mn = 1.6749543(86) × 10-24 g
md = 3.3436376 × 10-24 g
mp + mnmd = 0.0039652 × 10-24 g
ΔE = Δmc2 = 3.563744 × 10-6 erg

原子核E

E = [M(ZN) - ZmH - Nmn]c2 = -B
orbital mn = 1.6749543 AMU
mH = 1.0078248 AMU [1 AMU → 931.5016 MeV]

一核子: E/A = -8 MeV = 原子核のE/核子

(核)質量欠損 (nuclear) mass defect: 原子核を作っている核子の質量の和からその原子核の質量を引いた値

核磁気共鳴(磁気共鳴) nuclear magnetic resonance, NMR
原子番号と質量数が共に偶数ではない原子核 → 0でない核スピン量子数Iと磁気双極子モーメントを持つ

⇒ 原子 ≈ 小磁石 → 磁場をかけると磁石(原子核)は磁場ベクトルの周りを一定周波数で歳差運動

Def. ラーモア周波数 Larmor frequency: 原子核の磁気双極子モーメントの歳差運動の周波数
Def. 核磁気共鳴: 原子核に対しラーモア周波数と同周波数の回転磁場をかける → 磁場-原子核間に共鳴発生

磁場中の原子核はゼーマン効果で磁場強度に比例した一定E差持つ2I + 1個のE状態
E差は周波数がラーモア周波数の光子の持つEと一致
→ 共鳴時に電磁波の吸収あるいは放出発生 → 共鳴現象検知できる [応用] 原子核内部構造研究

化学シフト: 原子核ラーモア周波数が原子の化学結合状態等で僅かに変化 [応用] 物質分析・同定

核磁気共鳴分光法 nuclear magnetic resonance spectroscopy, NMR: 核磁気共鳴でスペクトルを得る分光法

素粒子論 (素粒子物理学, theory of elementary particles)


中性子 → 電子electron + ニュートリノ(中性微子) neutrino + 陽子
陽子 → 陽電子(ポジトロン) positron + ニュートリノ + 中性子
1934 湯川秀樹(1907-1981): 中間子理論(中間子論 1935)

→ 核力の原因は中間子存在し、それが核子間でやりとりされる
= 中間子(メソン) meson存在予言
核力の到達距離, d = h/2πmπc (mπ, パイ中間子の質量)

d ≈ 2·10-15 m → パイ中間子質量は電子の質量の200倍と予測

1947: パイ中間子が発見実証される

Def. 素粒子 elementary particle: 物質を構成する最小単位 = それより小さな存在がない(他分野に影響)

= 内部構造持たない = 空間的な大きさを持たない
→ 超弦理論: Def. 素粒子: 有限な大きさを持つ紐の振動状態
素粒子(現在の): クォーク quark・レプトン lepton ⇒ 内部構造存在発見 → 内部構造構成 = (新)素粒子

Law. パリティの法則(パリティ則) law of parity, parity law

⇒ 素粒子の空間的対称性 = 全原子は左右対称

1956: 李政道・揚振寧 (中国, ノーベル賞): パリティーの法則否定
クォーク: 6種類 = アップ + ダウン + ストレンジ + チャーム + トップ + ボトム ハドロン: クォークから構成される粒子

中間子: クォーク-反クォーク対で構成(偶数個フェルミ粒子 → 中間子自体はボース粒子) + パイ中間子
バリオン: クォーク3つで構成 + 陽子(原子核を構成する, uud) + 中性子(原子核を構成, udd)
エキゾチックバリオン: 3より多くのクォークから構成される系 + ペンタクォーク(計5つのクォークと反クォーク)
Def. ストレンジネス = 反ストレンジクォークの数 - ストレンジクォークの数
Def. チャーム = チャームクォークの数 - 反チャームクォークの数
Def. バリオン数: バリオン = 1, 中間子 = 0で定義される数

バリオン数の保存則 law of conservation of baryons
レプトン数の保存則 law of conseveration of leptons
ハイパーチャージ(超電荷)保存則 law of conseveration of hypercharge

Def. ハイパーチャージ = ストレンジネス + バリオン数
ファインマン図(ファインマンダイアグラム) Feynman diagram: 素粒子の振る舞いを記述する方法

素粒子を見る
加速器 accelerator: 多くの粒子 - 自然界に殆ど存在せず加速器で発見研究

コックロフト・ウォルトン装置 Cockroft-Walton's apparatus: 高電圧人工加速装置(1932完成)
粒子加速器 particle accelerator
ファンデグラフ加速器 Van de Graff accelerator
衝突型加速器 colliding-beam accelerator
超衝突型加速器 supercollider
サイクロトロン cyclotron
シンクロトロン synchrotron: 円形に並べた多数の電磁石の磁極間にリング状真空箱を挟んだ装置

リングの数箇所に粒子加速管挿入。電子陽子はリング中回転し、加速管を10万回/sec以上通過し、その度にE増大。電磁石の作る磁場強度は、粒子E増大に同期し増大され、粒子はそのEに関係なく常にリング内で同軌道描き加速され、電子陽子は光速位まで加速される

シンクロトン放射(放射光) synchrotron radiation: 加速器(蓄積リング)から得られる電磁波

カミオカンデ KamiokaNDE, Kamioka Nucleon Decay Experiment (小柴昌俊, 2002ノーベル章)

1987: 超新星爆発からのニュートリノ捕える

4つの量子数 quantum number
  1. 主量子数 principal quantum number, n: 核からの距離に関連
  2. 核運動量量子数, l: 電子の確率分布の形に関連
  3. 磁気量子数, m: 電子の確率分布の方向に関連
  4. スピンspin量子数, s: 電子の自転の方向に関連
Law. パウリの排他原理 exclusion principle of Pauli (Pauli's principle, Pauli's exclusion principle)

1原子中で2電子が4量子量全てに渡って同値はとれない

H. エルゴード仮説 時間的平均(仕事) ≡ 空間平均(経路)
バークホッフ Birkhoff: 位相空間 = 粒子の自由度の数だけ座標軸がある

N2 → 6N次元 = 3N(運動量) · 3N(座標) [ミクロ的]
Gτ = 1/τ·t0t0+τG(P)dt
G⟨ = G(P)dr/∫dr

P: 位相空間内の1点
G(P): 物理量(Pの関数)     G(Pt): ある時刻における物理量
dr: 6N次元の体積

Th.G = ⟩G⟨
______τを無限にすると

仮定: 位相空間が2つの不変部分に分解出来ない
不変部分: 任意の軌跡が自然運動の間、内部に留まる


閑話休題: ウィルソンの霧箱 Wilson cloud chamber: 粒子飛跡検出する基礎的装置

chamber
原理: A: ガラス, R: ゴム・パッキング,
P: ピストン, B: 黒ビロード, ★: 光源

[容器] 上部・側部: ガラス窓のある数cm φ, 下部に可動ピストン
容器中に水蒸気を飽和させた清浄空気入れる → ピストン素早く引く → 容器体積膨張 → 温度↓ → 水蒸気過飽和状態 → 中に荷電粒子飛び込みイオン形成 → イオンに沿い水滴凝結し飛跡可視 (撮影可 - 飛跡見えるよう側面から光当てたりする)
霧箱を磁場中に置く → 荷電粒子軌道曲がる → 曲率curvature半径等測定し粒子に関する情報得る
現在は泡箱・放電箱主流 - 教育目的以外稀(歴史的重要性)

放電箱 spark chamber
泡箱 buble chamber: 液体を過熱状態にし荷電粒子通過により小泡を作り素粒子・放射線飛跡観察に使う

電子ビーム(電子線) electron beam
電子銃electron gun, e-gun: 固体中の電子を熱や高電界により空間に放出させ、これを電界で加速すると共に電子レンズによりビーム状に収束させ照射する装置 Ex. 高分解能電子顕微鏡

原子核の構造

核子数
  23592U143
 陽子数 中性子数

原子の形 = 原子核表示
n, p, t3H, [τ, h] → 3He, α4He, d2H
Λ, Σ: バリオン(重粒子 現在不使用) baryon (barys = Gr 重い)
電子散乱
電子が原子・原子核・素粒子等の影響で運動のエネルギー・方向が変化 electron

原子 ~10-8Å, 原子核 ~10-13 - 10-12 fm (fm = 10-13 cm)

電子が原子核の中を通る時

原子核の中心付近: 受けるクローン力弱
↔ 原子核の外の方: 受けるクローン力強

153MeV電子の197Auによる散乱: 微分断面積 (A)(B)は右分布に相当

electron

水素原子内電子の状態数

表わす記号:   n = 軌道運動   En = E   l = 回転運動 → τ = 角運動量
                      m = 質量   ↑↓: スピン角運動量の状態のとり方
n = n0 + l + 1 (n0 = 0 - ∞)
l = 0, 1, … n-1
-l, l + 1, … l - 1, l
⇒ 2n + 1
↑↓: 2
Σl=0n–1(2l + 1)·d = 2n2 ⇒ 周期率表を決める

He原子
電子が受ける作用 → He原子の基底状態で1つの電子の感じるポテンシャル
第1イオン化ポテンシャル -25 eV (cf. H: -13.59 eV ほぼ2倍)

場所によりチャージ変化のあるポテンシャルと考えられる
electron

electron

Pauliの原理: 1状態には1個しか電子は存在し得ない

Li原子の第一イオンポテンシャル = -5 eV ← 水素よりやや低くなってしかるべき

Na原子
l = 0, 1, 2, 3に対するNa原子のE準位

electron
ポテンシャル potential
z(r)という関数: rが小さいほど大きくなる → Eは低くなる
electron
Li原子: 電子軌道の存在確率

原子スペクトル

全原子の[水素原子を基準とした]E状態
原子から電子を1個取り出すE → 0Eより低い所にあるか
Def. 第1イオン化E, E1: 1番高状態にある1電子を取り出すE
Def.nイオン化E, En:それまでに(n - 1)個の電子がとり出されており、n番目に電子を1つ取り出すE

同じ原子であればnが大きいほど高いE (Na+はできてもNa2+はなかなかできない)

_________元素の第一イオン化ポテンシャル (y = ΔE1/eV)
electron
実際と食い違う = He: 2個のチャージ(単位チャージの2倍) → 低すぎる
Heが1個の電子の感じるポテンシャルが「場所によりチャージが変化する様なポテンシャル」のように考えられる原因 = 極めて遠くではHのクーロンポテンシャルと同じ。極めて近くではHeのクーロンポテンシャルと同じ ⇒ 全体としてその中間的値に確率分布
→ -e2/r·f(r)

i) r » a: f(r) = 1
ii) r « a: f(r) = z
z → 大 ⇒ 電子の存在確率が外の方に向かう ⇒ 内側のクーロンE(波動関数)↑

electron
水素原子の3s, 3p, 3dの波動関数

矛盾が出たらやり直す → SCM (self consistent method)

Na原子のE準位

R = 1.0~1.2 × A1/3 fm (1.1 × A1/3 fm)
密度: 2.72 × 1014 g/cm3

rp = 0.085 ± 0.11 fm ⇒ 正分布
rm = 0.36 ± 0.11 fm ⇒ 負分布
(rp)c2 + 2 = 0.8052
(rp)c22 = -(0.36)2
核子自身の芯半径 = 0.51 φm, πの半径

= 0.62 φm (隣の核子までの距離 = 1.85 φm)

分子moleculeと原子核(核) nucleus (pl. nuclei)

electron
分子: ぎっしりつまってる
中間質量の変化とα粒子の結合(OPEG)
electron

水素のスペクトル線グループ(他にもある)

バルマー系列 Balmer series
ライマン系列
パッシェン系列
ブラケット系列

Ritz Walter (スイス 物理学者, 1878-1909)

リッツ結合則 Ritz combination principle考案
原子スペクトル va, vbで発光する原子 → vc = va + vbでも発光

空間の回転とスピノール
スピンの自由度 degree of freedom on spin
異常ゼーマン効果: 電場をかける → 原子スペクトルが偶数本に分岐

→ 電子はスピン1/2の粒子 → 2つのスピン成分(sz = ± 1/2)を持つ
電子の波動性 wave nature of electron
⇒ 電子の波動関数 ψ(x, t) = ψ1+1/2 + ψ;2u-1/2

[2成分複素ベクトル ≡ スピノール]

反陽子の科学
⇒ 共存不可能 = 直ちに消滅
粒子 particle vs 反粒子 antiparticle

陽子 vs 反陽子anti-proton
電子 vs 陽電子anti-electron
中性子 vs 反中性子antineutron
水素hydrogen vs 反水素anti-hydorgen (他原子にも存在)
ニュートリノneutrino (ν) vs 反ニュートリノantineutrino (ν-)

質量がゼロか電子の質量以下の中性粒子

物質 matter vs 反物質 anti-matter
宇宙 universe vs 反宇宙 anti-universe

対生成 pair creation: 高Eを持つ光子が衝突 → 粒子と反粒子が生成される

↔ 対消滅 pair annihilation: 粒子と反粒子が衝突しEないし他粒子に変換される現象

相対性理論 theory of relativity


慣性(座標)系:
O-XYZ :=> 静止系
O'-X'Y'Z' := 運動系(各座標軸が静止系に常に平行に運動する座標)

relativity P(x, y, z) 静止系からの座標
P(x', y', z') 運動系からの座標
x = x0 + x', y = y0 + y', z = z0 + z'

[ガリレイ変換 Galilei transformation] →

dx/dt = dx0/dt + dx'/dt
dy/dt = dy0/dt + dy'/dt
dz/dt = dz0/dt + dz'/dt →→→
d2x/dt2 = d2x0/dt2 + d2x'/dt2
d2y/dt2 = d2y0/dt2 + d2y'/dt2
d2z/dt2 = d2z0/dt2 + d2z'/dt2

⇒ (dx/dt, dy/dt, dz/dt) ≡ 絶対速度 absolute velocity

静止系に対するP点の速度

⇒ (dx'/dt, dy'/dt, dz'/dt) ≡ 相対速度 relative velocity

運動系に対するP点の速度

⇒ (dx0/dt, dy0/dt, dz0/dt) ≡ 変換速度transformed velocity

運動系の静止系に対する速度

絶対加速度 absolute acceleration (d2x/dt2, d2y/dt2, d2z/dt2)
相対加速度 reltaive acceleration (d2x'/dt2, d2y'/dt2, d2z'/dt2)
変換加速度 transformed acceleration (d2x0/dt2, d2y0/dt2, d2z0/dt2)
Galilei-Newton の相対性原理 (不変性 form invariance)
F(X, Y, Z): 質量mの質点に働く力(静止系)

m·d2x/dt2 = X, m·d2y/dt2 = Y, m·d2z/dt2 = Z

m·d2x'/dt2 = Xm·d2x0/dt2
__m·d2y'/dt2 = Ym·d2y0/dt2
__m·d2z'/dt2 = Zm·d2z0/dt2
運動系が静止系に対して運動しているために

m·d2x0/dt2, –m·d2y0/dt2, –m·d2z0/dt2は現れる

→ 力ではない
d2x0/dt2 = d2y0/dt2 = d2z0/dt2 = 0以外で運動法則成り立たない

⇒ 慣性系に対し等速度で進む(加速度持たない)座標系 = 慣性系

⇒ 互いに一様な速度で移動する全ての系
⇒ 物理学の基本法則は同じ(ガリレイ)
問題: 絶対静止した空間に固定した座標系は定められるか

エーテル ether

Principle: ホイヘンスの原理 Huygens' principle
= 波動説 wave theory: 光波動基本原理
⇔ 粒子説 (Newton): 光は微小粒子 → 光反射説明可能、屈折説明不可能

(Huygens, Christian 1629-1695, 蘭: 数学・天文・物理。ホイヘンス接眼鏡は彼の名)
光: 音波が空気中振動で伝播するよう、媒質中の振動として伝播
→ 媒質 = エーテル(発見できず仮想的に作業物質 working substance (material)として設ける)

1801 Young, Thomas 1773-1829: 光の干渉interference現象発見

波動説支持(ホイヘンス説復活)

ヤングの干渉実験 Young's experiment for interference

スリットslit用いた光の干渉性を示す実験
(初期に縦波) 自説訂正し横波とする → エーテルは横波を伝播する物質でないとならない

1808 Malus, Etienne L. (1775-1812)

偏光 polarization (polarized light)発見
Brewster, David 1781-1868: Brewster's lawブルースターの法則

偏光角(ブルースター角) polarization angle (polarizing angle, angle of polarization, or Brewster angle)

1822 Fresnel, Augustin Jean 1788-1827, 仏

周波数・振動数単位フレネルは彼の名
光の干渉装置作成 → 偏光研究から光が横波と推定
Arago, Dominique Francois Jean 1786-1853, 仏

天文・物理・政治家(パリ理工科学校教授、パリ天文台長)
偏光、電流-磁気相互作用研究。和政支持者で7月革命機に政界入り(1830)、植民地奴隷制廃止に貢献。2月革命後臨時政府で陸・海軍大臣(1848)。Louis Napoleon(3世)クーデターにより失脚(1851)

Foucault, Jean B.L. 1819-1868: 光が波動であることを実験で示す

⇒ 横波: 弾性体中で発生 ⇒ エーテルは弾性体である必要
1873 Maxwell, James Clerk 1831-1879, スコットランド

数学的に電磁気現象が波動を生じることを示す → 電磁気現象はエーテル中の電場磁場振動(電磁波)
波動の進む速さの計算値が光の速さの測定値と一致 → 光は電磁波の一種と考える
1878: "光がエーテル中をあらゆる方向に同一の速さで進むなら、エーテル中を運動している地球上の我々に対し、方向によって光の速さが異なって見える"

1887 Michelson-Morleyの実験

Michelson, Albert A. 1852-1931: 1881 光干渉を用い、エーテルに対する地球の速さを求める(失敗)
Morley, Edward W. 1838-1923: Michelsonと共同研究 → 装置精度を上げる(1887)
relativity

GM1 = GM2 = l
G: 半透鏡. S, 光源. T: 望遠鏡. M1, M2: 反射鏡

GM1: 地球の運動方向
t1, t2: 光がGM1, GM2を往復する時間
v: 速さ
c: 光の速さ (c » v)
t1 = l/(cv) + l/(c + v) = 2lc/(c2v2)
t2 = l/√(c2v2) + l/√(c2v2)
t1t2 = 2l/√(cv)·(1/√(c2v2) – 1)

= 2l/c·(1/√(1 – v2/c2) – 1)
= 2l/c{(1 + 1/2·v2/c2 + …) - 1} ≈ v2l/c3

始めGM1を地球の運動方向に一致させる → 直角に回転させGM2を地球の運動方向に一致させる
→ 光がGM1, GM2を往復するに要する時間は2 × v2l/c3変化
理論値: 転中の望遠鏡視野の干渉縞: (2vl/c3)/(l/c) = 2λv2/c2λ = 0.37

→ 縞は波長の1/3ずれる
仮定: λ, 光波長 = 5.89 × 10-5 cm。l = 11 m

エーテルに対する速さ = 恒星に対する速さ(30 km/sedc)

実験値: < 0.02 ⇒ 地球がエーテルに対し運動している証拠なし

1888 Hertz, Heinrich Rudolph 1857-1894, 独

光波 = 電磁波 → エーテルは弾性体と考える必要ない

1893 ローレンツ・フィッツジェラルドの短縮(収縮)

= Lorentz-Fitz Gerald contraction (両名が独立に発見)

Fitz Gerald, George F 1851-1901
Lorentz, Hendrik Antoon (1853-1928), 蘭(ノーベル物理学賞)

v: 速度, c: 光速度 ⇒ エーテルに対しvで動く物体は、その方向に(1 - v2/c2)1/2の割合で短くなる
⇒ 実験的証拠は得られない ↔ Michelson-Morleyの実験結果は、短縮により説明できる
⇒ [局所時local time仮定] 光は、あらゆる方向に同一の速さで進む

ローレンツ変換Lorentz transformation
relativity

静止系(OXYZ, t)
運動系(O'–X'Y'Z', t'), (O'Y' // OY, O'Z' // OZ, O'X = OX)
→ 2系の座標変換式: x' = (xvt)/√(1 – v2/c2)   y' = y   z' = z

t' = 1/√(1 – v2/c2)·(tv/c2·x)

特殊相対性理論 theory of special relativity

= 特殊相対性原理 principle of special relativity
1905 Einstein A 1879-1955, 独: 特殊相対性理論

= エーテル存在否定 → 空間自体に光を伝える性質存在
特殊相対性原理の2仮定 postulates of the special theory of relativity

1) 等速直線運動をする系では、全ての物理法則が同じ形で成立 ↔ 非相対論 non-relativistc theory
2) 光源運動の如何に拘わらず、光(の)速度speed of lightは一定 Ex. 2重星(連星) binary starの観測

⇒ 光速(度)不変の原理 principle of constancy of light velocity

互いに等速直線運動をする観測者に対し、光はあらゆる方向に同一の速さで伝わる
→ Lorenz短縮を相対性原理から証明

空間と時間 (現代原子論 modern atomism)

同時性
Ex. 静止系上の2点P1(x1, y1, z1), P2(x2, y2, z2)

             ━━━━> v
            ●━━━━━━━━━━
            O'                     X'
●━━━━━━●━━━●━━━
O        P1        P2          X

同時刻tに起こった2現象を、静止系に対し速度vで運動する運動系から観測
→ 運動系で観測した2現象の時刻をt1', t2'とする

t1' = 1/√(1 – v2/c2)·(tv/c2·x1)
t2' = 1/√(1 – v2/c2)·(tv/c2·x2)
t1' – t2' = 1/√(1 – v2/c2v/c2(x2x1)
x2 = x1のとき以外は成立しない [x1 < x2ならt1' > t2' → P2で起こった現象を先に観測する]

⇒ 運動系では2つのことが同時に起こったことにならない

≡ [絶対時間は存在しない]

時間の遅れ time-lag (time dilation)
Ex. 静止系に対し速度vで運動する座標系上の点P(x')で起こる現象の経過時間を測定
t = 1/√(1 – v2/c2)·(t' + v/c2·x')
t1: 運動系から観測, t2: 静止系から観測
t1 = 1/√(1 – v2/c2)·(t'1 + v/c2·x'), t2 = 1/√(1 – v2/c2)·(t'2 + v/c2·x')
静止系で測られる現象の時間の長さ, T = t2t1 = 1/√(1 – v2/c2)·(t2' – t1')

t2t1 > t'2t'1

長さの短縮(収縮) length contraction
長さlの物体が速度vで運動
長さ: 両端が同時に占める位置の間の距離

→ 長さは物体の運動速度によって異なる測定がされる

物質と共に運動している座標系からみて時刻t'に物質の両端が占める座標

x'1, x'2l' = x'2x'1

t'に対応する静止形の時刻tにおける物質の両端の座標 → l = x2x1
[Lorentz変換] x1' = 1/√(1 – v2/c2) × (x1vt), x2' = 1/√(1 – v2/c2) × (x2vt)

x2' – x1' = 1/√(1 – v2/c2) × (x2x1) ∴ l' = 1/√(1 – v2/c2) × ll' > l

速度変換 conversion
静止系と運動系から観測した速度の間の関係

[Lorentz変換]
dx'/dt' = (dx/dtv)/{1 – v/c2·dx/dt}
dy'/dt' = {dy/dt·√(1 – v2/c2)}/(1 – v/c2·dx/dt)
dz'/dt' = {dz/dt·√(1 – v2/c2)}/(1 – v/c2·dx/dt)
[逆変換] v = –v
dx/dt = (dx'/dt' + v)/(1 + v/c2·dx'dt')
dy/dt = {dy'/dt'·√(1 – v2/c2)}/(1 + v/c2·dx'/dt')
dz/dt = {dz'/dt'·√(1 – v2/c2)}/(1 + v/c2·dx'/dt')

質点Pが運動系に対しX'軸の正方向に早さuで運動

dx'/dt' = u, dy'/dt' = 0, dz'/dt' = 0

これを静止系から見る → dx/dt = (u + v)/(1 + v/c2·u), dy/dt = 0, dz/dt = 0

Case. u = cdx/dt = (c + v)/(1 + v/c) = c
Case. u = c, v = cdx/dt = (c + c)/(1 + c2/c2) = c

⇒ 光速に光速が加わっても光速

相対論的質量 relative mass
→ 質量変化
静止質量 rest mass, m0: 観測者に対し静止しているときの物体の質量
物体が観測者に対し速度vで運動したときの質量, mv

mv = m0/√(1 – v2/c2)

エネルギー・質量保存則 law of conservation of energy and mass
= 質量・エネルギー保存則 law of conservation of mass and energy
⇒ 質量・エネルギー変換 mass-energy conversion

質量・エネルギー方程式 mass-energy equivalence

Def. T: 運動している物体の運動E

= 静止状態から運動状態になる際になされた仕事

T = mvc2m0c2, or E (全E) = mvc2 = T + m0c2

⇒ 運動している物体のEが運動による質量増加に光速の2倍をかけたものに等しい
⇒ 静止E, E0m0c2: 物体が質量を持てばEを持つ(逆も真)

E = E0 + T → Δm = ΔE/c2: EがΔE変化すれば質量もΔm変化する
Def. 結合E binding eneryg

= 質量欠損 mass defect: 陽子-中性子結合後に減少した質量

⇒ 運動量, p = m0v√(1 – v2/c2)

m0: 静止質量 → 速度の1乗に比例しない

relativity 1908 Minkkowski Hermann (1864-1909)

相対性理論を空間と時間の4次元の幾何学として展開(4次元の世界)
t = 0 (原点) → 質点P(0, 0)

直線上をvで運動
OP2 = x12 + t12

光速 c: OP2 = x12c2t2
⇒ [3次元に拡張] OP2 = x2 + y2 + z2c2t2

Def. OP間の4次元間隔(時間空間) ≡ OP2

⇒ 時間と空間は別々に存在するのではない = 4次元の時空世界

一般相対性理論 theory of general relativity

= 一般相対性原理 principle of general relativity (Einstein 1916)
特殊相対性理論: 等速度系 → 一般相対性理論: 加速度系[拡張] → 重力場があれば空間は曲がる = Riemann幾何学を応用
測地線 geodesic line: Riemann幾何学における2点間の最短距離 – Euclid幾何学の直線と同等

力の作用を受けない質点の軌道は測地線になる
重力場では空間は曲がった曲線となり、光は測地線に沿って進む

重力の強さによって空間の曲がり方は異なる
Ex. 1. 近日点 pelihelionの移動 ↔ 遠日点 aphelion
Ex. 2. 赤方偏移red shift ↔

ブルーシフト(青方偏位) blue shift: 近づく光源からの光が短波長側へずれること

光 light (光線 ray)
古典力学で波動性と粒子性は両立しない

波動 = 媒質中で伝わる振動 ⇔ 粒子 = 決まった質量を持つ物体

1) 光の光線モデル ray model of light = E粒子束(量子力学)

回折・干渉・偏光をうまく説明
c =     (c: 真空中の光速度    v: 1秒間の振動数    λ cm)
nm = c/cm    (nm: 媒質mの屈折率    cm: 媒質m中の光速度)

c > cmnm > 1 → スネルの法則

Ex. ray = 555 nm, ダイアモンド, nm = 2.42 → 2.42 = (30 × 1010)/cm

cm = 1.22 × 1010 cm/sec

2) 電磁場の変化: 波動 → 電磁波としての扱い ⇒ 光 = 電磁波
⇒ 光の二重性: 排他的なものではなく共存可能

光は空間を波として伝わり、物質によって放出吸収される時は粒子として振舞う

Def. 干渉 interference: 光(電磁波)ぶつかる

→ 力増constructive減destructiveさせる現象

(可)干渉性 coherence
干渉縞 interference fringes 

チェレンコフ放射 Cherenkov radiation
屈折率nの媒質中: 光速 = c/n (c, 真空中光速)

relativity
高速荷電粒子がこれより速く媒質中を進む → 荷電粒子周囲の電磁場が後に「置いてきぼり」

→ 波面重なり衝撃波発生 ⇒
Def. 衝撃波 shock wave (sonic boom) = チェレンコフ放射(-光)

放出角度は衝撃波の波面が荷電粒子の進行方向となす角を θ
⇒ cosθ = c/n

Case 大気: n ≈ 1.0003 → θ ≈ 1度 ⇒ 殆ど粒子と同じ方向に放出される

γ線等が大気中で起こすシャワー中の粒子も殆ど元の粒子の方向に走る
⇒ チェレンコフ光観測からもとの粒子の方向を知ることができる

反跳核 recoil neucleus: 中性子-原子核衝突時に相手原子核軽いと衝突された原子核は飛ばされ周りの物質を強く電離させた核

↔ 相手が重いと相手に余りE与えず自分が飛ばされ方向を変えるだけ

時間とは何か(相対性理論より)
時空 spacetimeと物質 matterの運動

時間: 外から与えられたものではなく研究対象 = 時間の進み方は運動状態により決まる → 時間は変化
質量を持ったものとその質量に力学的Eを持つ
F = (mc2)2 + cp2, c: 光の速さ

重力波 gravitational wave (重力波 gvavity - = 流体力学): 時空曲率の時間変動が波動とし光速で伝播する現象

統一場理論 unified filed theory


= 統一理論 unified force theory: 統一の力(4つの力) universal force
= 万物の理論 → [候補] 超弦理論(超紐理論)
Newton: 天体の力と地上の力を万有引力として統一 = 重力場
Maxwell: 電気力と磁気力を電磁気力として統一 = 電磁場
Einstein: 重力場と電磁場は同じ空間の性質として統一 = 統一場

_______ 力の種類__力の伝達粒子__力の大きさ(目安)
_______ 強い力____グルオンgluon_____1
電弱力__電磁気力__光子____________10-2
__|_____弱い力____W, Zボソン_______10-5
__|_____重力_____ 重力子__________10-40

  • 電磁気力: 分子, 原子/エレクトロニクス/放射光/オーロラ
  • 弱い力: 中性子崩壊/原子核崩壊/ニュートリノ/地熱
  • 重力: 万有引力/銀河系/ブラックホール/渦巻星雲
1. 重力 gravity
全素粒子に引力(万有引力)として働く = マクロ世界支配
重力子(グラビトン) graviton: 質量なし → 重力子の交換で伝播 (重力 = 重力子の交換) → 無限遠に届く
E = mc2 (重力 ∝ 質量, 質量 = エネルギー) → 重力は全粒子に働く

素粒子質量は非常に小さく、加速器で到達できるエネルギーでは素粒子間重力は無視できる
ビッグバンによる宇宙創成直後のような超々高エネルギーでは重要

2. 電磁力(電磁気力) electromagnetic force
日常経験する重力以外の全ての力は電磁気力

Ex. 電子と原子核を結びつけ原子を作る力、原子同士を結びつけ分子を作る力

光子 photon: 質量なし → (電磁気力 = 光子の交換) → 無限遠に届く
電磁気力 ∝ 電荷

電荷を持った粒子: 光子(仮想光子)をお手玉しながら走る = 電荷粒子は光子の衣をまとう
電子が電磁石等で急に向きを変えられると、光子の衣が引きちぎられ飛び出す = 放射光

3. 弱い力 weak force
短距離間でのみ働く。通常、電磁気力より遥かに弱 → 全クォーク・レプトンに働く
原子核β崩壊、中性子、π中間子等の粒子崩壊の力 = ミクロの世界で重要
弱い力を媒介する力の粒子: W, Z粒子 = 大きな質量

→ 弱い力 = W, Z粒子の交換

結合定数は電磁気力と同程度/力が届く距離非常に短い = 力の見かけの強さ弱い → 日常感じない

(核に働く)弱い相互作用 weak (nuclear) interaction

2 + 3 = 電弱力 ⇒ 電弱理論 electroweak theory

ボース粒子(ボソン)Bose particle, or boson: ボース統計に従う粒子
W, Z粒子: 質量を持たないゲージ粒子 gauge particle → 真空中のヒッグス場との相互作用により質量を持つ

ヒッグス場との相互作用なければ、これらの力の粒子の運ぶ力は元々は同じ

⇒ 光子の伝える電磁気力と、WやZが伝える弱い力は電弱力として統一
W粒子(Wボソン) W± particle, W-particle (W-boson): ウイークボソンweak boson

4. 強い力 strong force
電磁気力の100倍程の大きさを持つ最も強い力
強い相互作用 strong interaction (核に働く強い相互作用 strong nuclear interaction)
強い力: 全カラー荷を持つ素粒子に働く = グルオンの交換

クォークを結びつけ、陽子(p)や中性子(n)を作り、また陽子同士の間に働く電気的な斥力に打ち勝ち、中性子と共に原子核を作る

強い力 ∝ カラー荷: クォークのカラー荷 = 赤青緑3原色(仮想)

強い力を媒介する力の粒子グルオンは白を除く色の組合せ: 3 (赤・青・緑) × 3 (反赤・反青・反緑) - 1(白) = 8 → 8種類: いずれも質量持たない
グルオン自体がカラーを持ちグルオンをお手玉するので、力は距離が離れるほど強くなり、核子(陽子・中性子)の大きさ程度以上の距離になると全体として白色状態でしか安定存在できない(カラーの閉じこめ)

⇒ 到達距離は、グルオンが質量持たないにも関わらず短く日常感じない

[ 論理学 ]

科学方法論 (Scientific method)


方法 method

主題 → 方法 (方法が先行することはない: データ氾濫、理論は貧困)
事実判断 → 因果関係 → 価値判断 (哲学)
斉一性 uniformity (Mill 「論理学体系」) =

自然は同じ事情(基礎条件postulate)のもとでは同じ現象を起こす
帰納法による法則(因果関係)成立の前提

科学的説明
Braithwaite 1953
証明 demonstration, 演示 illustration, demonstration → 認識論 epistemology
第1段階: 経験的事実fを証明する

gであるからという説明 → 因果的説明
gのために、という説明 → 目的論的説明(機能的説明)

第2段階: 法則lの成り立つ理由を説明する

法則L1, L2など(より一般的な法則の場合が多い)で説明する

科学的方法 (scientific method)

1. 事実

→ データ収集
A. 観察 observation
現象 phenomena を感覚器官により正確に経験する
B. 実験 experiment
制御実験 controlled experiment: 現象が複雑な因子・条件下で起こる → 因子を単純化(か除去)

操作変数(操作可能変数) manipulated variable Ex. 温度一定下で光条件を変え植物成長測定
自然には起きない現象、或は容易に観察できない現象を、任意な処・時で起こす Ex. Mendelの実験
観察に不便な現象を見やすくし実験 Ex. 精密測定機器による微量分析

思考実験 thought experiment Ex. コンピュータ

2. 概括(一般化) generalization

→ 帰納法: 検証 verification に耐えうるものでなければならない
a) (科学的)法則 scientific law (natural law)
個別法則 < 一般法則
法則 → 因果性(因果律 law of causality)

実験的に得た法則 → 定式化 Ex. 質量作用の法則基礎, Hessの法則
相加法 additive method: E = Ea + Eb + …
相乗法 multiplier method: E = Ea × Eb × …

b) 共通事項表記(科学的表記) scientific notation

3. 予測(予知) prediction

普遍的 universal, 必然的 necessary
導出量(推定量) derived quantity: 結論を論理的に導き出した量
Ex. ハレー彗星(Halley Edmund 1656-1742): 1531, 1607, 1682年出現彗星同一 → 1758年回帰と予測

探索的研究 exploratory research

明確に定義されない問題を調査する研究 (≠ 検証的研究)

探索的データ解析

仮説 (hypothesis)


作業仮説 working hypothesis: 因果関係について立てられる仮定
→ 推論に基づく → 観察(結果)と解釈、推論と仮説は区別される
説 theory: 仮説に基づく学説 → 検証可能性がある
法則 law (理論 theory): 検証に耐えたもの(Popper 1965)
直感 intuition (≈ ひらめき): 仮説・理論誕生に重要な要因であるが、思考としての直感過程は不明の点多
概念モデル mental model: 対象を直接知れないとき、間接的方法で情報を集め、解釈し組み立てられたモデル

形式モデル: 概念モデルの中で図式化、数式化されたもの Ex. 原子模型


研究対象 ___ モデル
基本的性質A, B, C… = 対応する性質A', B', C'…を持つものをモデルに選ぶ
If a', b', c'の性質がある := 仮説 → a, b, c…の性質が知られている


AとBの関係に対応する関係が = A'とB'の間に成り立つ
a'とb'の間に成り立つと考える → aとbの間の関係


図. モデルによる類推(類比, アナロジー): 上下両様の表し方がある

仮説検証

  1. 演繹された結論が実現されない → その仮説は正しくないか、少なくともそのままでは正しくない
  2. 演繹された結論が実現された → その仮説は正しいものでありうる
  3. ある仮説が正しいなら、それから演繹された結論は全て実現されなければならない。しかし仮説が正しくないとしても、その仮説から演繹された結論のどれかが正しいことはありうる

(八杉 1979)

[ 哲学者 ]

哲学 (philosophy)


1. 宇宙や人生の根本問題を理性的思弁で突き止める学問 Ex. スコラ哲学

哲理 philosophical principles: 哲学上の学理 (s.s. 特に人生・世界の本質を見通す道理)

2. 自分自身の経験から築き上げた人生観(世界観) Ex. 人生哲学

人間は常に行為する Ex. 寝ている → 行為 ☛ Sartre
行為選択基準 = 人生観・世界観 ⇒ 全てのヒトが哲学を持つ

Ex. 「基本的人権 fundamental human rights」とは何か

☛ 幸福論

イデオロギー(思想形態・観念形態・意識体系) ideology

定義・概念は変遷
  • 政治に関する思想・信条。政治理念の拠り所となる立場や考え方
  • 特定方面に偏向した(歪曲を含んだ)思想

Ex. イデオロギー闘争: 社会階級間イデオロギー相違に基づく闘争(マルクス・レーニン主義)
Ex. リベラリズム、保守主義、社会主義、共産主義、民族主義、宗教主義


[自然科学史(古代)]

ギリシア哲学

唯物的で個人主義的な3(4)学派誕生
1) キュニコス学派 (→ ストア派に発展)

善 ≠ 外的 → 善 = 魂の内部に存在 → ストア学派倫理学の原理

2) ストア学派 Stoicism: ヘレニズム時代創設の古代ギリシア哲学学派

起源: ソクラテス弟子アンティステネス創設のキュニコス学派

第1期(BC300-BC200): BC300年頃キプロスのゼノンによりアテネで創設
キュニコス学派のソクラテスに学ぶゼノンが彩色柱廊で知られたストア(柱廊)に学校開設したのが始まり (学派名称も同由来)
第2代学頭クレアンテス著「ゼウス賛歌」断片現存: 最高神は全能唯一神にして道徳的統治者と記述
クレアンテス後継者はクリュシッポスで、これら3人が代表者
第2期(BC200-BC50): ストア学派哲学普及し、ローマにも知られる
パナイティオス: ストア学派を本格的にローマに伝えた
ポセイドニオス: パナイティオスの弟子。ローマの有名な演説家キケロの教師
第3期(ローマ時代)
キリスト教がローマ帝国国教になった後も勢力を持ち続け影響はルネサンス期(Renaissance)まで及ぶ

共和制末期: 小カトーは優れたストア哲学者
帝政期: ローマの3大ストア哲学者 = セネカ、エピクテトス、皇帝マルクス・アウレリウス

思想
ヘレニズム期他学派同様、倫理学に関心 → 幸福が人々の最大関心事
特徴: 倫理学を固めるため、論理学・自然学の理論開拓 → 概念・判断・推論の理論としての論理学はストア学派が骨格形成 Ex. 仮言三段論法発見
自然学
世界は物質からなるが、物質そのものは受動的 → 別に世界を動かし世界に秩序を与える能動的原理(ロゴス)存在 = 神の理性であると共に、ある種の微細な物質とも考えられ、「息」「火」とも呼び、ヘラクレイトスは宇宙の根源とした
魂 = ロゴスの現れ
ロゴスに従い生きる = 神が定めた世界(自然)秩序に従う(人間の務め)
「自然に従い生きる」は、自然法思想展開で決定的 → ローマ法に甚大な影響
魂の内的状態 = 思慮(自制心)
日常生活で心をかき乱すものは情念や欲求であって、こうしたものから解放され不動心(アパテイア)を得るために必要なものが思慮や自制心
コスモポリタニズム
ストア学派1特徴: どの人間も唯一の普遍的な神の現れ → 人間同士の付合い → 社会的地位、貧富、民族の違い等外的なものは全く意味なく、万人は等しくコスモス(世界)市民である
キリスト教誕生前 = 全人類は生まれつき平等 ⇒ 兄弟の様に愛しあう必然性

ギリシア哲学(中近世)

形而上学 metaphysics: 現象を先見的原理で説明し実在realityの真相得る
3) エピクロス学派(Epikouros): 快楽主義

↔ 自制重んじるストア学派と対立(stoic = 「禁欲的」の意味加わる)

4) 懐疑主義 skepticism: 物事の存在・価値等を否定

ヒトが普遍的真理を捉えることは不可能

スコラ哲学 (Scholasticism)


キリスト教に従うギリシア哲学 – 数学・経験重視しない
トマス・アクィナス神学: キリスト教啓示の超自然的内容を自然的人間理性(アリストテレス哲学と科学)から理解しようとした哲学的・神学的運動
→ スコラ学: 「神は唯一全能創造主」、「魂不滅」という信念
スコラ学という用語

1) この時代の思想に特有な学習への精神や方法だとか、他の時代の同じような精神や態度

2) スコラ学者 = 修道院・大聖堂付属学院長(初期) → 学院が大学化し学院・大学で哲学・神学を教える人(後)

欧州キリスト教修道院付属学院・大学で11c紀半-15c紀半まで支配的
最終的理想 = ギリシア・ローマ自然的知識とキリスト教宗教的知恵を、秩序だてた体系に統合

目的: 哲学・神学で様々な教義広く展開 → 運動全体を統一要因 = 共通目的・態度・方法
× 新事実発見 → ギリシア的理性とキリスト教の啓示により既に別々に獲得された知識を統合
→ 統合意識: ルネサンス以降の近代思想からスコラ学を区別する特徴

神学・哲学者: スコラ学者の確信: 理性-啓示間に根本的調和が存在
理性と啓示は神を知の源 → 真理 = 神の主要属性 → 理性-啓示間で神が自己矛盾しえない
啓示-理性間に対立 → 理性を誤用か、啓示という語を不正確に解釈した
スコラ学者達: 啓示は神の直接の教えとし、自然的理性より程度の高い真理と確実性を啓示に認める

→ 宗教的信仰-哲学的理性間のみかけ上の争い → 信仰が優勢な審判者 = 神学者の判定は哲学者の判定をしりぞけた
13世紀初頭: 哲学領域内では哲学は神学から独立と強調 → 哲学は神学者達が啓示を理解し説明する道具とされ、スコラ学の時代を通じ哲学は「神学の婢」と呼ばれた

イブン・ルシュド(アラビア哲学者): 二重真理説(イスラム教) ↔ スコラ学の態度

哲学もイスラム神学も真理に近づける ↔ 真理到達は哲学のみ
→ 神学真理 = 大衆のため → 哲学のみが達しうる本物の真理の不完全な像的表現
哲学的真理は、言葉上はイスラム神学の教えと矛盾さえある

信仰と理性の調和: 信仰・理性・能力の明確な適用範囲と権能の規定試みた
初期 Ex. 聖職者アンセルムス(伊): 2能力を明確に区別しない

理性が啓示を証明できると自惚れてもいない

最盛期 Ex. 神学者トマス・アクィナス(伊): 理性と啓示の均衡を完成
トマス以降 Ex. 神学者ドゥンス・スコトゥス(スコットランド, 先駆): 理性により証明可能な真理領域を制限

哲学で証明された教義は、信仰に基づいてのみ受け入れた
理由: 「Organon」で要求した科学的証明を、以前より厳密に用いた
科学的証明要求は厳格(Ex. アリストテレス = 数学分野以外では殆どこの要求を満たさない) →
初期ルネサンスや、ルター等の宗教改革者に見られる人間の自然的理性と哲学への自信喪失招く

古典重視: 哲学・神学で所謂大家を重んじた点もスコラ学者共通の態度
大家 = ギリシア、ローマの偉大な哲学者 + 初期の教父
アリストテレス = 哲学第一人者 → 「哲学者」 = アリストテレス
初期キリスト教聖職者(神学者)アウグスティヌスが、聖書と教会の公会議を除けば神学第1権威
大抵のスコラ学者は、アリストテレス経験科学見解を無批判に受け入れ、その権威に執着 → スコラ学の弱点 → ルネサンス期以後の科学者達がスコラ学を軽蔑拒絶する要因
中世スコラ学: 古代著者の研究のみを通じ考え著述するよう教育される(古代文化思想は中世より豊か)
[批判] 思想成熟し独創的哲学的著作も生まれ独自に思想形成されても、見解に威信を与えるため古典引用止めず、古典を編集反復しただけ(トマスやスコトゥス等も古代テキストに従順依存的)
時に古代教科書と自分の立場を調和試み → 古代思想家達の意図にそぐわぬ解釈
→ 注釈者本人の意見表明前後に、単なる文体上の装飾とし古典を出したり、引用で注釈者見解は過去からのもので新奇でないと思わせる効果 → スコラ学者は慎重で、思想の独創性を求めない 方法・注釈:
1) アリストテレスの論理学と哲学用語を用い教育、論証、議論
2) 古典を教えるに当って承認された権威者による注釈を用いる

哲学: 古典は大抵アリストテレス / 神学: 主テキスト = 聖書 + 「命題論集」

命題論集: 12世紀、神学者ペトロス・ロンバルドゥス(伊)がまとめた、初期教父達の神学問題意見集

初期スコラ学者は、注釈テキストに従う
→ 批判的読解により思考高まるにつれ、テキストで十分解明されない論点に対し補足的注釈を提出
13c初: 教授者自身の個人的思想を入れた補足的注釈が、注釈全体の最大かつ最重要な部分となる → テキストの逐語的説明は、それぞれの注釈中の単なる断片と化する

公開討論: 論争問題の注釈と、公開討論による論争技術は深い結びつき

中世大学教授: 教授団と学生の前で挑戦者全員の攻撃から自分の教えを弁護 – 1年に数回課した
→ アリストテレス論理学形式: 攻撃・防御両方で用いる
13 c: 哲学・神学の進歩促進、検証、伝達に適した教育手段となる
> 14 c半: 活力衰え硬直した形式主義 → 思想の実質的内容論ぜず。論理的細別等些細な点に関心
討論形式堕落 → ルネサンス期以後悪評 → 近代多思想家の判断: 衒学的論理的形式主義

11-12 c: 代表的スコラ学者 (representatives)
13 c (スコラ学全盛期)

ドミニコ会: トマス・アクィナス
ドイツの哲学者: アルベルトゥス・マグヌス
Becon, Roger (1214-1294), 英。哲学・神学(フランシスコ会修道士)

実験的方法重視 → 経験科学 scientia experimentalis

イタリアの神学者: ナベントゥラ、ドゥンス・スコトゥス
アウグスティヌス主義: ガンのヘンリクス

14 c(スコラ学衰退開始): 唯名論が哲学の有力な学派となる
Occam ,1285(6)-1347(9) 英, スコラ学者(唯名論・哲学・論理学)

スコラ学哲学体系を全面的に攻撃: 自然的理性と哲学の領域はスコラ学者が考えるより制限される
論理的に、信念は哲学や論理で証明できない、と結論 – 異端扱い

オッカムの剃刀 (Occam's razor)
= 「けちの原理」単純さの原理) ⇒ モデル選択
「むやみに実体の数を増やすな」「2つの理論がある時は、真偽を明らかにできる証拠が新たに挙がるまで一番単純な理論用いよ」 → 思考節約原理

Ex. 「石を投げたら地面に落ちる」 → 「地面に落ちるか、上に落ちたり、左に行く」と複雑理論も立つ:
鋭いカミソリで、上や左に行く証拠見つかるまで複雑な理論を削ぎ落とす
オカルト・擬似(トンデモ)科学: このカミソリ使用せず無数の理論共存

16 c スペイン ドミニコ(ビトリア)・イエズス会士(スアレス)により短期間復活
1879 教皇レオ13世: 大規模にスコラ学再興試みる – 13世紀スコラ学(トマス)体系を時代に即し再考

スコラ体系改革に近代思想の真の功績を結びつけるため
→ 新スコラ学: 現代思想の1潮流。フランス(外交官)のマリタン、フランス哲学史家のジルソン

近代・現代哲学 (modern philosophy)


Spinoza, Benedictus (Baruch) De (スピノザ, 蘭) 1632-1677
合理主義: 基本は形而上学的
Leibniz, Gottfried Wilhelm (ライプニッツ, 独) 1646-1716
哲学・数学、国政・外交等実務でも活躍
モナド論(形而上学説): モナド(単子) = 万物構成する不可分不滅の実体
モナド間相互作用なし - 神(最高モナド)に立てられた予定調和を表現

イギリス経験主義哲学 (イギリス経験論 British empiricism)

全ての知識は経験に由来する
Bacon, Francis (ベーコン, 英) 1561-1626 (Roger Baconとは系譜関係なし)
近代哲学誕生 = 帰納・演繹 ⇒ 自然法則を知る手法 = 帰納法 + 実験
実験は確実な経験に到達させる – 魔術から科学へ
「大いなる再興」(6部作予定だが未完)
2部「新機関Novum Organum」(1620) – Organonに対抗 – 帰納法の表れ
科学 = 史学 + 詩学 + 理学

人間幸福を進める(神に背くものではなく神を敬う道) → 産業の新発展期の考え方代表

技術: 隣人への愛を実現する手段であり神意にかなうもの
人間: 自然を支配し、同胞の幸福のために努力する反面、自然に従う
知識 力であり信頼を置く
Locke, John (ロック, 英),1632-1704
経験主義(懐疑主義) = 近代哲学認識論確立
経験主義: 因果律 law of causality → 生得的観念存在しない – デカルトの主張否定

心: 理性・知識・観念全て感覚に基づく経験により獲得 → 因果関係

懐疑主義: 懐疑から出発し認識の本性を分析
Hume, David (ヒューム, 英) 1711-1776: 経験主義 + 懐疑主義
因果性 = 習慣による期待 Ex. Aが起ると(いつも起こる)Bが起ること期待

↔ idealism

フランス唯物論哲学 (French materialism)

Bruno, Giordano (ブルーノ, 伊) 1548-1600: コペルニクス地動説支持(火刑)
Descartes (デカルト, 仏) 1596-1650: 思考の合理性
真実(= 一般原理): 全てを疑い、その後に残る明晰(≠ 曖昧)で(紛糾していない)判明なもの
我思う、故に我あり → 懐疑主義の表れ
「方法序説」(1637), 生命機械論(機械論・機械原因論)
波動説: 力学的宇宙系(渦動論)提案 → Newtonにより否定

ドイツ観念論哲学(カント哲学) (idealism)

Kant 1724-1804 → 新カント哲学(西南ドイツ学派、マールブルク学派)
Windelband W. 1848-1915, 独 / Rickert H. 1863-1936, 独
自然現象 = 再現可能性(反復可能性) → 法則定立学
社会現象 = 一回性(反復不可能性) → 個性記述学(文化科学)
Hegel Georg Wilhelm Friedrich (ヘーゲル, 独) 1770-1831
弁証法 観念論(唯心論)→ 唯物論 Marx – Engels

米国実用主義哲学(プラグマティズム)

米国が欧州と区別される独自思想、文化を持ちたい願望の表現 + ダーウィン進化論
概念や法則の実用性 = 方法の基準
Dewey John (デューイ, 米) 1859-1952
プラグマティズム → 概念道具説: 概念も環境への適応活動の道具
. 20世紀以降の哲学の動向
__1960年代まで____________現代
[マルクス主義 (独)] ⇒ フランクフルト学派_ 解釈学
[ 実存主義 (仏)]___⇒ 現象学__________構造主義 ⇒ ポスト構造主義
[ 分析哲学 (米・英)] ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒

分析哲学: 記号論理、概念分析、数学・自然科学の哲学を扱う(英語圏主流哲学スタイル
フランクフルト学派: マルクス主義 + ヘーゲル弁証法 + フロイト精神分析理論 ⇒ 融合
解釈学: テキスト解釈の方法と理論を扱う (ハンス・ゲオルク・ガダマー Hans-Georg Gadamer, 1900-2002)

マルクス主義 (Marxism)

政治経済思想 = 科学的社会主義
Marx K (マルクス) 1818-1883, 独: 弁証法的唯物論
Engels F (エンゲルス) 1820-1895, 独: 弁証法的唯物論
自然科学世界は弁証法的発展を示す
西洋社会を階級闘争の観点からとらえ、資本主義によるブルジョアの搾取から社会主義体制を経て共産主義に移行することが不可避であるとするもの
上部構造: 物質的・経済的構造に支えられた観念やイデオロギー
1883 Engels 「空想から科学へ」

社会主義思想
弁証法的唯物論
資本主義分析

Lenin, VI (レーニン, 露) 1870-1924
1909 「唯物論と経済批判」 - マッハ、アベナリウスの思想を批判

構造主義 (structuralism)


1)言語の恣意性と差異化

言語学 linguistics = 音韻論 (音組織) + 統語論 (≈ 文法) + 意味論
ソシュール Ferdinand de Saussure (1857-1913): 言語学

1916 一般言語学講義

言語 = 時代で変化 ↔ 言語が言語である限り不変で共通した構造存在

→ それまでの言語学は言語の歴史的変化(通時態)のみ考えた
歴史性考慮せず言語一般に共通する構造(共時態)を取り出そうとする

言語: 客観的に実在するもの存在 ≠ 名称目録観: それに名前を付けるだけ

Ex. 英語: 年上・年下区別なく"brother"と表現 → 日本語: 年功序列思想浸透し「兄」と「弟」区別
Ex. 日本語: 「氷」 ↔ エスキモー: 氷は日常生活で重要 → 状態により様々な名前を与え区別

→ 名前を付け世界からそのものを「区別(差異化)」 ≠ 対象物に名前を与える
= 言語の恣意性: 区別の仕方は言語体系により様々であり絶対的決まりなし
言語発音も「区別」だけ存在 – 「区別」もその言語体系により変化 = 「恣意的」

Ex. 日本語: r, l発音区別なし ↔ 英語: 区別必要 Ex. rice vs lice

言語(記号、シーニュ): 結びついて言語は言語とし機能 = やはり「恣意的」

= 「シニフィエ (signifie 意味内容、所記)」: それが指す意味内容
+ 「シニフィアン (signifiant 記号表現、能記)」: その発音

「リンゴ」というシニフィアンがあの果物を示すのは偶然(Ex. 英語なら"apple")。同じ言葉が時代と共に異なる概念を示す → 言語とその対象の結びつきは恣意的で、言語の指示対象(と発音自体も)は「これでなく、あれでもない」の様な「差異」でしか表現できない

2)音韻論

言語成立する「音」法則 – ソシュールの言語「差異化」(と恣意性)から発達
音素: 単語発声時にその単語が成立する最小単位の音 = 音韻論の重要鍵

Ex. 日本語: 「リンゴ」 → 音素「リ」「ン」「ゴ」

発音者により音の周波数と長さ違う → 音素は物理学的に定義できなかった。ここでソシュール思想活かされる ⇒ 音素も「差異化」でしか認識できない。この音素は個々の言語体系により「恣意的」
音素研究 (Jacobson): 音素 = 個々の言語体系により異 → 個々の音素を差異化する「対立軸」は共通

Ex. pとbの違い: 「無声音」「有声音」 → 全音素差異化は「2項対立」

音素差異化する際の弁別特性を12対発見(「母音・非母音」「鼻音・非鼻音」等)
重要な対立項や、人が初めに話せる音を考え、彼は「母音の三角形」と「子音の三角形」見出した

triangle
図. 子音の三角形

Jakobson, Roman Osipovich (1896-1982)
人が初めに話せる音 = 母音a, i, u、子音p, t, k → 音素区別する2項対立は,「密」と「疎」,「鋭」と「鈍」の2組

Ex. "p/t"は「鈍/鋭」で区別され、この中間に"k"は位置する。更に、p(or t)/kの区別は「疎/密」でなされ、pとtは同程度に「疎」である。「母音の三角形」も同様

3) 構造主義の発展

a) 機能主義人類学
歴史主義 (伝播主義) (ソシュール登場までの言語学): 言語がその歴史における変化等を研究する歴史主義

進化論の影響: 言語学や人類学に見られ、同一のある習慣とか文化が複数の場所で見つかると、伝播経路や、原住民社会と西欧近代社会の比較が行われた。Ex. フレイザー『金枝篇』

機能主義人類学: 習慣なり何なりの、その社会における機能(有用性)を重視
現地調査(field work)重視 - ソシュール: 歴史主義捨て言語の「共時態」重視

問題: 多くの社会に「インセスト・タブー」(近親相姦禁忌)存在 → 遺伝的劣化避けるため「インセスト・タブー」集団残る = 適者生存で説明
↔ 父方従兄弟禁止で母方従兄弟禁止しない習慣 - 複雑な婚姻規則社会説明できない

b) 構造主義 structuralism
Levi-Strauss, Claude (1955): 機能主義だけでは全てを説明できない
モース M, 仏, 人類学: ニューギニア島付近の風習「クラ交換」に興味

ある部族がその部族の「宝物」を別部族に贈る → 贈られた部族はまた別部族に贈物
その贈り物が「価値ある」宝物だからか。「価値」はどのように決まるか
「価値」 ≠ そのもの ⇒ 「交換される」ことで生み出される

Ex. 「近代」社会貨幣: 貨幣そのもの ≠ 価値 ⇒ 物と交換可 = 価値

社会を「交換のシステム」という観点で見直す = このシステムを「全体的社会的給付」という

Levi-Strauss: モース「贈与論」観点から「未開」社会における婚姻見直す

同親族内結婚 = 他グループに女性を贈与できず交換物価値がなくなる → インセスト・タブー発生

Ex. 女性を「贈物」と捉えると、婚姻は女性の「交換」に対応

親族問題: ヤコブソンの「二項対立」原理を用いる

Ex. 女性を男性が接近することが出来る他の婚姻グループの女性(妻Wife 略語W)と男性が接近できない同一婚姻グループである女性(姉妹: 略語は息子Son と区別するためZ)に差異化

「妻」、「姉妹」の範囲は社会で異なり「恣意的」 ⇔ 「W/Z」対立は普遍的
⇒ その社会の人々が意識的でも自然法則的でもなく「無意識に」差異化

c) 神話学
Levi-Strauss: 人間精神の隠れた「構造」を知るため親族研究から人間精神産物の「神話」に興味移す
注目したのは神話の「筋」ではなく、その神話を構成する「要素」

一見荒唐無稽な神話、他部族間で類似した筋、結末逆転する神話も、表層にとらわれず「構造」を見る
→ 共通部分存在
「テキスト」の意味合: テキストとは何か言いたいこと、「筋」があってそれを読み取るのが読者の役割

→ 構造主義ではテキストを「分解、解体」し、その底に流れる無意識の「構造」を読み取ろうとする

構造抽出法に数学利用(神話を「要素」に分解するアイデアはヤコブソンの音韻論からだが、その要素が「変換群」によって置換されて様々なバリアントが出来上がると考えた)
→ 西洋人が「未開」とした社会の人々が既に(無意識でも)西洋現代数学を「知っていた」

→ 数学・自然科学等「客観的真実」発見手段とされた学問も「制度」であることが構造主義から指摘された

Ex. 非ユークリッド幾何学: 「ユークリッド幾何学」で「自明」な「公理」を別公理で置き換えても矛盾しない
「公理」は客観的真実ではなく「決めた」約束事なのである

d) 近代的世界観崩壊
Levi-Straussの親族研究や神話学(ミトロジーク)は「理性重視」、「歴史進歩主義」的思想に衝撃与えた

ヘーゲル・マルクス: 人間の理性は歴史が進むにつれ「進化」
↔ 近代西洋社会と彼らが「未開」と信じた社会との間に共通・普遍「構造」
→ 時代通じ「不変」かつ人間の集合的「無意識」(≠ 主体的)による産物

Sartre-Levi-Strauss論争: 平行線 - 物別れ – 西洋近代的世界観崩壊?
. 「言語論的」転回とは
17世紀 ⇒⇒⇒⇒⇒ 20世紀 ⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒ 21世紀
認識論的転回_____言語論的転回_________________?
(意識を分析)______(言語を分析)
___________________分析哲学
___________________構造主義・ポスト構造主義
___________________解釈学・コミュニケーション理論

言語論的転回 = 言語構築主義: 言語により世界は構築 - テクストの外には何もない(デリダ)

ポストモダン

言語構築主義
相対主義
⇒ ポストモダン以後
自然主義的転回 (ジョン・サール)

「言語」の哲学から「心」の哲学への転換 - 認知科学、情報科学、脳科学、生命科学と関連

メディア・技術論的転回 (ダニエル・ブニュー)

言語論的転回 → 語用論的転回 → メディオロジー的転回
メディアこそが権力を持つ (ドブレ)

実在論的転回(思弁的実在論、新実在論)

思考から独立した存在を考える Ex. 人間消滅後の世界をどう理解するか
道徳とは

科学哲学 (philosophy of science, s.l.)


1. 科学の哲学 philosophy of science (= s.l.): 科学の本質への哲学的考察
1662 英国王立学会(Royal Society)設立 → 会員は外国人含む。会誌発行
1666 フランス科学アカデミー
1700 ベルリン科学アカデミー
1724 ロシア科学アカデミー
1928 エルンスト・マッハ協会(初代会長Schlick M. 1882-1936, 独)

ウィーン学団が作った団体
1929 「科学的世界把握」 協会趣意書

協会員の多くがナチスのユダヤ迫害逃れ、米国等国外逃亡

Neurath O. 1882-1945, オーストリア

統一科学提唱 – 全科学は統一言語(物理)で記述できる

2. 科学的哲学 scientific philosophy (s.s.)
科学の立場で基礎づけられた形而上学ではない哲学
= ウィーン学団Vienna Circle: 論理分析や言語分析を用いた科学哲学
Feyerabend, Paul Karl (1924.1.13-1994.2.11, オーストリア生)

通約不可能性(共役不可能性) incommensurability: 異なる理論体系(パラダイム)間に共通の理論的基盤がない時に、理論体系同士の比較を行うことが出来ないという状況のこと
「タブーに挑戦しあらゆる仮説に触れてみよ」

現代経験主義2つのドグマ two dogmas of empiricism
1950 クワイン「経験主義の2つのドグマ」
  1. 事実と独立な分析真理と事実に基づく総合真理の基本的分裂の確信
  2. 有意味な言明は直接経験に言及する項の論理的構成に等価であるという還元主義の確信
→ 真理は言語と事実の両方に依存: 言明はその意味の言語全体への依存性から単独での検証不可能
→ 知識・信念: 周辺が経験と接する全体連続的系をなす概念枠組。系を乱さない性向に従いつつ、経験に照らし未来予測する道具として、より感覚的刺激に適合するよう修正する実用主義こそ支持される
意味公準 meaning postulate
「意味公準」: そこに含まれる言葉の意味を決める命題 (カルナップ)

経験主義の2つのドグマ = 分析命題と綜合命題の区別不可能 → 反論
Ex. 命題「全ての烏は黒い」 → 綜合的・分析的には、黒くないものをも烏と呼ぶか、「全ての烏は黒い」という命題を偽とするか、による
真 ⇒ 命題「全ての烏は黒い」は「烏」という言葉の意味決定 = 分析命題

分析と綜合は、意味公準から論理的に導かれるか否かで明確に区別される
サピア-ウォーフ仮説 Sapir-Whorf hypotheses
ウォーフ「言語、思想、現実性」1956
人間に「現実世界」は、集団言語習慣上に無意識構築 = 言語相対主義仮説
→ 異言語は、異世界観を強制(単に、語彙だけではなく、文法構造も強く影響)
Ex. フォピ・インディアン: 言語に時制を欠く → 時間観念がない

↔ 言語と観念の関係は相互的で動的であり、完全な決定関係ではない

観察なしでの知識 knowledge without observation
アンスコーム「インテンション」1957.8.28
それを告げ知らせるものがなく、何の観察もなしだが、語りえ、それを知っている種類の知識
Ex. 自分の手足の位置は、感じずとも分かる。身体運動のみならず、心的原因mental causeも含まれる
行為から生じるものは観察からの知識 ⇔ 自分の行為は観察なしの知識
→ 「○○しよう」とする: 行為と生じるものは区別されない

静的観想的知識: 事実先行し言葉がそれに一致するよう限定
動的実践的知識: 言葉先行し事実がそれに一致するよう限定
→ 両者の対象の事実は同じもので構わない

矛盾は、観察なしの実践的知識に対し、観想的に言葉に先行し限定する事実を求めた間違いから生じる
理論負荷性 thepry-ladeness: ハンソン「発見のパターン」1958
感覚と解釈は切り離せず、事実認識は理論の投影があって成立
「見える」と「として見る」の区別、感覚し、解釈する、という二重認識説退ける
xの観察は、xについて予め持つ知識に形成され、xという対象が見えることは、対象が我々の知るxと同じくふるまうだろうことを見ること。事実も、観察だけで得るのではなく、理論負荷的であり負荷的理論ともなる
無所有理論 no-ownership theory: ストローソン(『個体』1959.3)
問題 1) なぜ意識状況が身体の帰属する主体に帰属され、2) なぜ何かの主体に帰属されねばならないか
デカルト派: 1)を、その主体は異なるタイプの実体とし解決 → 後者の問いを逃れえない
ビトゲンシュタインら: 「無所有理論」 → 2)も解決 = 所有権が論理的に移譲可能なものだけが所有しうる

諸体験はある特定身体の状態に因果的に依存するという意味でない限り、何ものにも所有されない
→ 移譲不可能な故に、ある同定された主体に所有されるものとしてしか同定しえないという不整合

M述語/P述語 (M-/P- predicate): ストローソン(『個体』)
M述語: 物体にも適用されうるもの Ex. 「60 kgの重さである」「客間である」
P述語: 人物にしか適用されえないもの Ex. 「痛たがる」「笑っている」

人物概念は、両種の述語が適用可能である実体のタイプとし理解される。P述語を帰するのは、他者の運動を行為とし意図により解釈すること、つまり、我々が観察で他者に帰属させるものを、観察なしで自分に帰属させる自己帰属者として他者を見ることによる。P述語が集団にも帰属されるように、個体概念は、P述語の帰属する身体に依存するのではなく、P述語を帰属させられることそのものによる

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