Top
ヘッダー

(2024年10月16日更新) [ 日本語 | English ]

植物解剖学 (plant anatomy)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

組織系 (tissue system)

_ system
system
組織系 = 表皮系 (epi)dermal system +
_______ 維管束系 vascular system +
_______ 基本組織系 fundamental system

下方組織発達により分裂組織は押上られ上昇: 先端は常に若い - 軸に沿って加齢aging勾配

[形態, シュート, 種子 | 発生 ]

索引
基本分裂組織 ground meristem: 原表皮、原形成層以外の1次分裂組織

分裂組織 meristem

分化する位置による分類
[頂端分裂組織 apical meristem]
茎頂分裂組織 shoot apical meristem

その上に生じる多くの葉原基により隠されていること多
栄養期 vegetative
生殖期 reproductive

根端分裂組織 root apical meristem
[側部分裂組織 lateral meristem]
維管束形成層 vascular cambium (= 形成層 cambium, s.s.)
コルク形成層 cork cambium
[介在分裂組織 intercalary meristem] Ex. 単子葉植物葉鞘の成長

維管束系 (vascular bundle system)


維管束 vascular bundle = 木部 xylem + 篩部 phloem

水や無機・有機養分の通道や、植物体の機械的支持に働く複合組織

維管束植物: 維管束を持つ植物 = シダ植物 + 種子植物

通導組織 (aerenchyma)

= 通気組織
[ 外側 ]
表皮: edpidermis: 植物一次組織のうち最外部にある細胞層 (≥ 1)

原表皮 dermatogen, protoderm: 表皮を作る分裂組織
下皮 hypodermis: 表皮すぐ下の1-数細胞層 → 非原表皮由来

皮層

厚角組織 collenchyma: 厚角細胞から構成される組織

厚角細胞: 細胞の角が特に厚い。サフラニンで染まらない。細胞はある程度成長可能で、生細胞が多

endodermis内皮

内皮 endodermis: 維管束周囲にある鞘や円筒を作る基本組織層

中心柱

師部: 木部に接する種が多い

厚膜組織 sclerenchyma: 厚壁細胞からなる組織

厚壁細胞: 細胞壁全体厚い。普通の細胞壁と違い、サフラニンに良く染まる(= リグニン)。堅い代わりに伸縮性なく死細胞多。形から細分類され、茎には縦に細長い繊維細胞 fiber cell (細胞壁厚く、全体が細長い形をした細胞)多い

師管(篩管): 篩細胞(管状構造をとる) (+ 伴細胞)

形成層

分裂組織

木部 xylem (water transport from roots): 形成層細胞膜壁にリグニン蓄積 → 硬化 → 木化

柔組織 parenchyma
導管: 多くの被子植物、一部のシダ植物と裸子植物が持つ
仮導管 tracheid: 殆どの維管束植物が持つ
木部繊維

木部柔組織
pith: 茎(幹)・根中央の基本組織で主に柔組織からなる (→ 放射髄 ray pith) = (樹木では)樹芯 → 心目: 髄を中心とした半径3 cm位の部分

[ 内側 ]
vessel
図32. 導管要素。A: Betula alba, B: Liriodendron, C: Lobelia cardinalis, D, G: Quercus alba, E: Malus, F: Acer negundo (Eames & MacDaniels 1947).靱革繊維: 茎皮部分にある丈夫な繊維。製紙、ロープ、織物等に利用 = アサ、コウゾ、Edgeworthia chrysantha

[ 木材 ( wood )]

形成層 (cambium)


Def. 茎・根で木部-師部間に存在し分裂活動行う輪状細胞列の層
= 維管束形成層: 木部・師部形成のため活発に分裂する細胞の層

(Cf. コルク形成層: コルク組織形成)
側方分裂組織 lateral meristem
双子葉植物、裸子植物(殆どの単子葉植物にはない)

シダ類: 現世種稀(化石種では形成層を有する巨木化したシダ)

オーキシンおよびサイトカイニン濃度大きく変化 → 組織培養
活動季節的 Ex. 樹木年輪

木部 (xylem)


= 道管 + 仮道管組織 + 木部繊維組織 + 木部柔組織

導管(道管) vessel

被子植物において木部の主要構成要素
水分通導作用を受け持つ管状細胞。穿孔した導管要素が結合したもの

xylem階段状scalariform xylem螺旋状spiral
大きさ・配列状態が種による特徴 → 種識別の手掛り

導管: 隣接細胞間で穿孔が貫通する ⇔ 仮導管: しない
一次木部: 頂端分裂組織由来 = 原生木部 + 後生木部
原生木部 protoxylem: 木部で最初に分化 - 茎葉根成長中に管状要素成熟

環状導管 ring vessel: 環状に肥厚した2次壁と肥厚しない1次壁繰返す
螺旋状導管 spiral vessel: 螺旋状に2次壁が肥厚

後生木部 metaxylem: 原生木部についで分化

階紋導管 scalariform vessel: 梯子状に2次壁による肥厚が起こる
網紋導管 reticulate vessel: 階紋肥厚に似るが、より不規則に肥厚

二次木部: 維管束形成層の活動で内側に作られた細胞から分化 = 樹木材
仮導管(仮道管) tracheid
殆どの維管束植物木部で観察される組織

シダ類・裸子植物の主要通道組織
センリョウ、ヤマグルマ: 導管欠き仮導管のみ

無孔通洞組織 = 水分・養分通路機能 + 植物体支持

壁孔 pit: 細胞壁にある小孔 - 隣接細胞間で液体交換

太さ0.005-0.060 mm、長さ1-6 mm

針葉樹: 体積の約90%以上占める
広葉樹: 水分養分通路となる道管と樹体を支える木繊維とが別々に機能 → 針葉樹より組織構造進化

繊維細胞 fibrous tissue
樹体指示作用を受け持つ縦軸方向に細長い両端尖る細胞(1-2 mm)

繊維: 水の流れには働かない → vessel発達した被子植物にみられる(仮導管の退化したもの)
木(部)繊維 xylem fiber: 仮導管に比べ短い (木本では広葉樹のみ)

木部柔組織 xylem parenchyma
木部唯一の生細胞 - 養分貯蔵

師部 (篩部, phloem)


光合成産物(炭水化物)を樹体の各部に輸送する組織(nutrient transport)
篩細胞 → 師管 sieve tube (→ 師板 sieve plate: 師管細胞壁が板状)
伴細胞 companion cell

被子植物師管に付着する柔細胞 - 師管原基細胞の縦裂で形成

師部繊維 phloem fiber

種子植物の幹茎の篩部外側にある繊維細胞。多くは紡錘形

師部柔組織 phloem parenchyma
繊維組織 fibrous tissue
樹脂道 resin canal: 樹脂細胞から分泌された樹脂満たす管状組織

壁孔(膜孔) pit

二次肥厚した細胞壁のうち薄い部分。中層と一次壁のみからなる (かつて植物学では細胞壁を細胞膜と言ったため古くは膜孔と呼ばれた)
互生壁孔 alternate pit
有縁壁孔 bordered pit: 二次壁が斜めに肥厚し二次壁の開孔部分の直径が一次壁だけの部分の直径より狭くなったもの
対生壁孔 half-bordered pit
単壁孔 simple pit: 枝状壁孔 ramiform pit
装飾壁孔 vestured pit

pit pit
壁孔(pit)を通り水が移動________繊維

中心柱 (stele)


Def. 維管束植物の茎や根の中心付近、維管束組織を含む領域
A. 原生中心柱 protostele
根・茎等の軸中心に木部位置し、その周囲に師部

A0: 包囲維管束 concentric vascular bundle, 化石種のみ
A1: 単一中心柱(単純原生中心柱、原始中心柱、単中心柱) haplostele

多少なりとも円形の横断切片木部を持つ
退行中心柱 hysterostele: 二次的単純化により単一中心柱となる

Ex. 水生被子植物: マツモ、スギナモ、フサモ

A'. 放射中心柱 actinostele = 放射維管束 radical vascular bundle

中央木部数ヶ所突出し星状 - 突出部間に師部
Ex. Psilotum (マツバラン)
Ex. 全維管束植物の根: サツマイモ = 根 ↔ ジャガイモ = 地下茎

A''. 背腹中心柱(板状中心柱) plectostele: 木部相互連結し縦面に配列

Ex. Lycopodium (ヒカゲノカズラ)

stele

e: 内皮 endodermis, p: 師部 phloem, x: 木部 xylem

B. 管状中心柱 solenostele (s.l.) or siphonostele
木部が管状になりその外面または内外両面に師部が位置する

髄 pith: 維管束環より内側の部分
B. 外部管状中心柱 ectophloic siphonostele
B'. 両師管状中心柱 amphipholic siphonostele or solenostele, s.s.
stele

C. 網状中心柱 dictyostele
B'が葉隙に分断され、師部と内皮で囲まれた木部が横断面で不連続に見える

多環中心柱 polycyclic stele: B/Cで木部師部からなる管を2-3重に配置

stele stele
D. 真正中心柱 eustele
= 並立維管束 collateral vascular bundle
維管束が等間隔で環状に並ぶ - 主に双子葉植物茎
多環中心柱 polycyclic stele
木部か篩部の一方が内外両側にあり他方を挟む = 2以上の同心円状の維管束組織を持つ中心柱

複並立維管束 bicollateral vascular bundle
stele

stele
E. 不整中心柱 atactostele
= 外原型 exarch: 外端部分が成熟し、次に内側が成熟
基本組織内にパターンのある分散をした維管束からなる

Ex. 多くの単子葉植物
真正中心柱の一種としてもよい

年輪解析

年輪 (year ring)

樹幹横断面に同心円状に現れる模様中、毎年1輪ずつ形成されるもの
成長輪 growth ring ≈ 年輪 (※ 年輪は1年における1増分より大きいことも) 観察法: 切片染色(xylem, phloem分染) - 切片重ね合せ立体構造再構成

シダではソーダで煮て柔らかくしたものを徐々に削って観察

中心柱説 stelar theory ☛ 進化
単一中心柱 Ex. Rhynia (化石種) - 原生中心柱が最も祖先的

→ 管状中心柱 = 原生中心柱の中心に髄形成
両篩管状中心柱 → 網状中心柱
多篩管状中心柱 → 真正中心柱

[ 葉外部形態 ]

(leaf)


表皮系: 表と裏の1層(植物体保護)

クチクラ cuticle: 臘や類似物質(クチン)主成分

水やガスを通しにくい構造。普通、表皮クチクラ層(外部クチクラ)の他に葉内部でも葉肉組織や空気に接する細胞壁表面に薄いクチクラ(内部クチクラ)がある

鐘乳体: 表皮細胞外膜の一部が細胞内に向かい棒状に突出したもの。表面は炭酸石灰結晶で覆われる。 Ex. Justicia procumbens, Ficus carica
気孔 stoma: 気体(CO2, O2, H2O)が主に出入りする部分。多くの葉 → 向軸(表)側表皮 < 背軸(裏)側表皮

Ex. ムラサキツユクサ

通導組織系(維管束系)

木部: = 導管(被子植物), = 仮導管(羊歯、裸子植物)
師部: = 師管

基本組織系

柵状組織 palisade mesophyll
海綿状組織: spongy mesophyll

葉の裏表
二面(背腹性)葉 bifacial (dorsiventral) leaf: 表面に柵状組織、裏面に海綿状組織を有する葉
両面葉 isobilateral (isolateral) leaf: 葉の両面に柵状組織を持つ葉

C4植物 (シコクビエ)
kranz
C3植物 (オオムギ)__________50 μm

クランツ型 kranz type
kranz (独) = 花冠、花環,リース → C4植物の葉身に特徴的
細胞内構造が発達した維管束鞘細胞が維管束系を取り囲み、その外側を1層の葉肉細胞が放射状に取り囲む
維管束鞘細胞: 葉緑体,ミトコンドリア、ペルオキシソーム多数存在

非クランツ型: 複数層の葉肉細胞が維管束鞘細胞取り囲み、維管束鞘細胞の細胞内構造は発達していない ≈ C3植物
進化: C3 → C4

気孔 stoma

葉の表皮にある開閉する小穴(開口部)

2つの孔辺細胞が唇型に向かい合った構造
苔類を除く全陸上植物の胞子体世代に存在

気孔の開閉

[ 根外部形態 | 発生 ]

(root)


発根 rooting (≈ 活着 rooting)

種子発芽時における根の発達

コムギ根: 発芽後40-50日で長さ1 mにまで成長 – 根先端分裂細胞

発達: 生態的(特にhabitat)影響が大 + 風で植物体揺れることも重要

幼根 radicle: 種子中にある胚の幼い根 seminal root

胚軸下端にあり成長し主根となる

双子葉・裸子植物: 主根から側根生じ更に側根出す

比較的乾燥、O2豊富

樹木等、地上部大きくなると側根も主根と区別がつかない位発達

単子葉植物: 主根・側根区別なし

= 髭根fibrous root (= 不定根 adventitious root)のみ。湿地・沼地

髭根: 幼根余り発達せず、主根は間もなく成長止まり、茎下部から多数根が出て細根rootlet束生し形成

主根なく、地上部大型化に適さない

構造: 水吸収に対し適応

導管 xylem (死細胞)
液胞膜 cytoplasm: 液胞 vacuole
カスパリー線 casparian strip: コルク化部分

root
図. 根 root
根端 root apex, root tip = 根先端と近傍を漠然と指す (s.l.)

= 頂端分裂組織 + 由来する一次組織 (s.s.)

根冠 root cap: 根端分裂組織保護
軸柱 columella: 根冠中央部分

根端組織分化過程: 前分裂組織 → 前形成層・基本分裂組織・前表皮等分化

中心柱(維管束と髄)・皮層・根冠分化

根端成長形態による分類が試みられた

根端分裂組織 root apical meristem
根冠で保護される → 根冠・根表皮・皮層・中心柱形成

中心柱 central cylinder: 維管束系, 皮層: 基本組織系, 表皮: 表皮系

貯蔵に使われる厚い層 Ex. サツマイモ

分裂域: 根端分裂組織がある = 細胞分裂盛ん = 細胞小さい
伸長域: 細胞伸長盛ん(大きくもなる) + 細胞壁発達 + 形成層形成

形成層細胞 - 細胞分裂 → 根肥大 → 周皮形成

成熟域: 細胞分裂・伸長終わり = クチクラ層厚い

root
根端分裂組織

原根冠 calyptrogen: 根頂端分裂組織において根冠を作る分裂組織細胞 → 頂端分裂組織を明瞭に異なる

[ 挿し穂 ]

発根促進剤 root stimulator
活力剤型

メネデール(二価鉄イオン)

ホルモン剤型: 活着改善(可食植物に非推奨多)

ルートン(ナフチルアセトアミド)
オキシベロン oxyberon (インドール酪酸, IBA) [ IAA ]

成分: 0.40% IBA (有効期限3年)
剤状: 粉剤・液剤

クロネクス clonex

使用法:
粉剤: 挿し穂の切口にまぶしつける
液剤: 処理濃度まで希釈し挿し穂の切り口を6-24時間浸漬
フッター