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(2019年3月1日更新) [ 日本語 | English ]

地形学・地生態学 (geomorphology · geoecology)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

地形学 geomorphology

地球表面上を構成する地形の成因・由来・歴史を研究 → フィールドワーク的手法を多くとる事に特徴

  1. 地質学的側面: 地形形成要因、土地の「癖」解明 = 第四紀地形変遷への関心不可欠 → 古地形復元
  2. 災害科学的側面: 地震・台風等災害対策 + 地形形成メカニズム解明

[細区分] = 気候地形学(気候変動と関係) + 生物地形学(生物の営力) + 水文地形学(地中水の働き)

地生態学 geoecology

カール・トロール(独): 地理学

景観生態学 (landscape ecology): 空中写真等を使い区分できる地表面被覆状態(植生分布パターン)成立を、環境要因(地質、地形、土壌、水文・気象など)で説明する学問領域 (生態学での景観生態学と違う)
→ 「景観」という言葉が曖昧で誤解を呼ぶ招く危険性 → 名称「景観生態学」を破棄し「地生態学」

[周氷河地形, 永久凍土, 氷河地形, 風穴, 微地形] [地理学, 生物地理学]

索引
ドイツ語圏: 景観生態学と地生態学はその後、別方向に発展

地生態学: 自然環境要因を扱うアプローチ
景観生態学: 人文社会環境要因を中心に扱うか、あるいは自然環境に加えて人文社会環境要因を扱う

北米: 地生態学は地理学の一分野としそのまま発展 → 自然と人文社会の両者を含めた幅広いものに変容

景観生態学: 地理学としてではなく、森林生態学や森林管理等の分野を中心に発展

地形(地勢) (topography)


Def. 地表の形状(s.s.) → 土地の様子(s.l.)
Def. 営力: 地形を作る力 = 地形形成の2営力
内因的営力(内作用, 内的営力)

= 地殻変動(隆起・沈降・断層・褶曲・曲動) + 火山活動

外因的営力(外作用, 外的営力)

風化 (= 物理的・化学的・生物的風化) + 侵食( = 削剥・運搬・堆積)

地形発達との大まかな対応
氷期: 最近–寒冷時代

     平野       段丘                丘陵         山地
年  1万        数10万-数万    数100万   数1000万
     沖積世   洪積世                                             
     第4紀                             第3紀

A) 大地形 major landform
大規模な地殻変動によりできた大規模な地形
1) 安定陸塊: 先カンブリア時代地殻変動後
緩やかに隆起・沈降・侵食により平坦化した安定な古代陸塊

地表侵食進行 → 一般に高度1000m以下 [鉄鉱石]
Ex. 陸 land → 大陸 continent = 大山脈 montain range (山塊 mountain massif) + 大平原

温帯 = 大農業地域    冷帯-寒帯 = 林産資源・鉱山資源開発

Ex. 海洋(いわゆる"海") sea → 大洋 ocean

侵食平野: 安定陸塊が侵食により平野化 = 準平原 + 構造平野

準平原: 侵食基準面(≈ 海面高)まで侵食された平原
構造平野: 地下地質構造が表面に表れるまで侵食された平原 Ex. ケスタ地形(= パリ盆地)

盾状地(楯状地): 侵食により地殻深部にあった先カンブリア代岩石露出した平原 = 世界の大平原の大部分

ローレンシア(カナダ盾状地, ハドソン湾中心地域)、バルト盾状地(フェノスカンジア)、ゴンドワナ大陸(アフリカ盾状地、アラビア盾状地、オーストラリア盾状地、南極大陸)、シナ地塊(アジア大陸東部)

卓状地: 先カンブリア代岩石が古生代以降の地層に覆われた後に侵食された台地状平原

高原 plateau: 海抜高度高い平原
シベリア高原(アンガラ大陸)、ゴンドワナ大陸(デカン高原)、ブラジル高原
land
■安定陸塊 新期造山帯 □古期造山帯 (南極大陸は全て安定陸塊)

2) 造山帯
a) 古期造山帯: 古生代中期-後期に成長終了 → その後の侵食で低くなだらかな山・丘連なる [石炭]

Ex. ウラル山脈・スカンジナビア山脈・アパラチア山脈・ペニン山脈・グレートデバイディング山脈

b) 新期造山帯: 中生代-新生代(険しい山脈) = 地震帯・火山帯(石油・銅)

= アルプス-ヒマラヤ造山帯 + 環太平洋造山帯: プレート収束型境界 →
褶曲山脈 (= 大山脈) + 断層地形

地累(山脈) Ex. 木曾山脈・アルタイ山脈
断層崖: 断層により生じた(急な)崖
断層山地: 山地の両側か片側が断層崖
地溝: 両側を断層崖で区切られ、相対的に沈降した低地

日本
秩父古生層: 厚20 km。優地向斜堆積物
本州・四国・九州 – 変成部分ある - 断続的だが本来は一連の単一岩帯

砂岩・頁岩・石灰岩・チャート・輝緑凝灰岩等 - 厚さ2万 m

→ 地向斜性の海底

1889 原田豊吉: 秩父古生層命名 = 石炭紀-二畳紀
1933 野田光雄: 北上山地からデボン紀地層発見
1937 小貫義男: 北上山地からシルル紀地層発見 - 当時日本最古
⇒ 日本古生層: 古生代中-末期(シルル紀-二畳紀末)

本州造山運動: 古生代末-中生代初め
日高造山運動: 中生代の地向斜 – アンモナイト産出。石炭

内帯 火山性     第4紀 新第3紀 古第3紀 白亜紀 ジュラ紀 三畳紀
                        火山   火山
外帯 非火山性                                        海域・海底
溶岩・集塊岩・凝灰岩                ------------------------------------------

B) 小地形 minor landform

風化作用 rock weatheringマスムーブメント mass movement
侵食崩壊 → 地表変動
侵食作用・堆積作用等 ≈ 流域 watershed (drainage basin)単位地形

→ 河川 rivers 作用 [日本特徴 = 河川急峻]

侵食 erosion: 岩石が営力(水食・風食・雨食・雪食等)で削られる作用

風食裸地: 高山稜線部-斜面が、風食で植被削り取られ裸地化した地形

[上流] 侵食作用 →→→ 運搬作用 →→→ 堆積作用 [下流]
_______________________[ 扇状地 ]______[ 三角州(デルタ) ]

右(左)岸: 河川で下流(流れる方向)に向く → 右(左)側 = 「右(左)岸」

土壌侵食 (soil erosion)
シート侵食 (面状侵食) sheet erosion
リル侵食 (雨溝侵食) rill erosion
ガリー侵食 (地隙侵食) gully erosion
: 地滑り、水路侵食等

構造地形 structural form

= 組織地形 structurally controlled landforms + 変動地形
Def. 組織地形: 岩石の性質や地質構造を反映した侵食地形

侵食作用 erosional process - external agency

Def. 変動地形: 地殻変動(地殻運動 crustal movement)に起因する地形

構造的作用 techtonic process - internal agency

高地 highland (山地 mountain country, mountainous region)
→ 傾斜-緩傾斜 (主に第3紀形成地形)
丘陵地(所謂 丘, hill > hillock): 標高 < 300 m 低山 → 山地: 丘陵地より高い
valley: 両側台地・山に挟まれ低く窪む細長い一続きの地形

侵食谷: 侵食で形成
V字谷(峡): 側刻 < 下刻 → 谷底狭い

ガリー (涸れ谷, gully): 降雨等で地表流水集まり細流侵食作用

→ 軟弱地表構成層中にできたV-U字型横断形小谷

台地 tableland, plataeu (段丘 terrace)
緩傾斜-平坦な平野 (洪積世形成 → 一般に沖積平野より高標高)

= 洪積台地 Ex. 武蔵野台地
段丘構成層(段丘堆積層): 段丘面を作っている地層

河岸段丘 (河成段丘, river terrace): 標高異なる(= 形成時代異)台地が階段状に存在 (低位段丘、高位段丘等と区別)

段丘面 = 平坦部分 ↔ 段丘崖 = 急崖部分
沖積世形成段丘も一部存在

→ 山地・平野の境: 扇状地 (alluvial) fan = 緩傾斜を呈した沖積地

崖錐: 崖 precipice や急斜面下に岩・石堆積した地形(通常傾斜 > 15°)

→ 平野 plains: 河川(穿入)蛇行 meandering

→ 自然堤防・後背湿地
堆積平野(沖積低地): 多くは河川流入土砂で形成

= 平野地盤は河川形成

河跡湖: 河川流路の一部が切り離され湖化 Ex. 三日月湖

海岸段丘 (海成段丘, coastal terrace): 海岸沿いの段丘

間氷期海水面上昇 = 海食崖(陸地侵食)
⇔ 海進停止 = 海底平坦化 + 浅海性堆積物 ⇔
氷期海水面降下 = 海底平坦 + 端末に崖(= 海底段丘)

海水面運動(海水準変動) eustatic movement or eustasy

地質時代を通し汎地球的規模で海水面が昇降する現象 Ex. 海岸段丘

湖岸段丘 (湖成段丘, lacustrine terrace): 湖周縁にある段状の平坦地形

湖面低下 → 湖底出現 Ex. 米国西部乾燥盆地、スカンジナビア半島

低地 lowland, low-lying area
河川流域の沖積地(湿地、干拓地含)上の低地
沖積層低地(US) bottomland: 氾濫土壌をしばしば含む河川に沿う低地部分
氾濫源 floodplain: 河川沿い平地で洪水時溢れた水が一時的滞留する範囲
自然堤防: 河原に植物生育 - 洪水時に植物間を流れる水流の勢い低下

→ 洪水の度に泥・砂堆積 → 自然に地盤高が高くなり堤防形成
lowland 後背湿地: 微細粒子(シルト)堆積物 → 北方: 泥炭発達

冠水域: 普段河川水に浸からないが洪水等で河川水に浸かる地域
高水敷: 小規模洪水では冠水しないが大規模洪水では浸かる河原
砂礫底: 河川・湖沼水底が砂と礫で構成された状態 → 流れがあるため細かい粒子堆積しない

→ 河口域: 河口付近 + 湾奥 + 干潟 + 干満影響する川最下流部 ≈ 淡水・海水双方の影響直接受ける

河口: 三角州 delta → 農耕発達 Ex. 石狩川
⊂ 汽水域: 適用範囲広く塩分濃度範囲が0.2-30‰。沿岸の池沼等、比較的安定した塩分濃度水域も含む
感潮域: 潮の干満の影響を受ける地域 → 感潮河川: 河川で、これにあたる部分

海水の直接の影響なくても、水位や流速の変化はかなり上流 headwater まで及ぶ

潮間帯: 干潟や磯で潮汐によって干上がったり水没する範囲
→ 干潟 tideland: 海岸で低潮時に砂質または泥質が露出している場所

海岸 seashore
海面変動 sea-level change, SLC

18000年前:_寒冷 = 現在より海水面140 m↓

→ 現在より河川侵食作用強

温暖 → 侵食作用弱まる

8000:_____海水面の高さは現在とほぼ同じとなる
6500-6000: 現在より温暖 → 縄文海進 → 軟弱地盤

海峡 straits (≈ 水道: 船の通り道としての海峡): 2つの陸地に挟まれた狭い海

谷 valley: 山や丘、尾根、山脈に挟まれ周囲より標高の低い箇所が細長く溝状に伸びた地形
渓谷(谷間) canyon: 山にはさまれた川のある所

island: 大陸面積より小さく、四方を海洋に囲まれた陸地

国連海洋法条約第121条:
1) 自然に形成された陸地、2) 水に囲まれる、3) 高潮時に水没しない
→ 3条件が満たされたものが島

諸島(列島, 群島): 複数の島がまとまって存在

島嶼: 大小さまざまな島がまとまって存在
灘 open sea: 陸から遠く波が荒い(航海に困難な)海
半島 peninsula: 海に向かい長く突出た陸地(雑に > 岬 cape > 崎 > 鼻)
湖 lake: 陸地の中で水をたたえた所 > 沼 bog, pond, 池 pond

内陸 interior: 陸地で海岸から奥まった地帯
Def. 海食(波蝕) coastal erosion, wave erosion: 海水による陸地侵食

海食崖: 主に波蝕作用で形成された崖(現在も波蝕受ける) → 旧海食崖: 内陸に取り残る過去の海食崖
波食台(海食台): 海食により形成された海面とほぼ同高度の平坦地形
海岸段丘: 隆起(や海水準変化)と海食の繰り返しでできた段丘

沈降隆起
湾 bay: 海が陸地に入りこんだ地形

内湾 basin, inland bay or inner bay: 幅に対して奥行の大きい湾

リアス式海岸 rias coastline (V字式リアス式海岸、沈降リアス式海岸): 地殻変動で陸地沈降 → 谷部分に海水流入 → 入り組む湾形成

Ex. 三陸海岸・リアスバハス海岸(スペイン)

海岸平野: 遠浅な海が隆起しでできた平野 Ex. 合州国東海岸

入江 (入海, 浦) cove: 海・湖が陸地に入り込んだ所

三角江 (エスチュアリー estuary): 平野河川河口が沈降しできた入江

→ 大都市発達 Ex. テムズ川

河川 river
上流・中流・下流 - 明確な定義なし
山地渓流 → 中間渓流 → 河流(平地流) → 河口

川原(河原) riverside, dry riverbed: 川の水のない石や砂の多い所

瀬 rapids: 水深浅く流れ急

早瀬: 流れ早く水面に白波立つ → 底質は概ね浮石(石2-3重に重なる)
平瀬: 早瀬よりやや流速遅く水面に皺の様な波立つ → 底質は沈み石(砂や砂礫で一部分が埋まる)

淵 deeps: 水深深く水面に波立たない → 底質概ね砂質

地形形成 land-forming process


調査法

露頭観察
Def. 露頭 outcrop: 岩石や鉱床が地表に現れた所

岩石露頭 rocky outcrop - 露出した岩体 rock outcrop

インパクトクレーター impact crater
天体(主に隕石・彗星・小惑星・微惑星)衝突等で作られた地形

典型的には、円形の盆地とそれを取り囲む円環状の山脈であるリムからなる → 様々な形態

ガラパゴス諸島

島 island

大陸島 continental island: 陸地沈降か海面上昇により大陸と切離された島

生物相 = 大陸と共通種(分類群)存在

海洋島 oceanic island

火山島 volcanic island: 海洋で火山噴火によりできた島
サンゴ島 coral island: サンゴ礁が陸化した島

珊瑚礁 coral reef 地形

生物(珊瑚虫 coral insect等)作用 → CaCO3 → 石灰岩 → 海水位変動重要

裾礁きょしょう fringing reef: 陸地(含, 島)の海岸に接して発達
堡礁 barrier reef: 陸地の沖合いを囲み発達
環礁 atoll (ring reef): 陸地本体は沈み珊瑚礁が環状に連なる
卓礁 table reef: 沈んだ陸地の上に珊瑚礁が発達し卓状となる

人工地形

天井川: 人工堤防 → 洪水 → 天井川
___________↑______/

周氷河地形 (periglacial landforms)


periglacial landforms
大規模多角形土
小規模多角形土と区別時呼称 (アイスウェッジポリゴン、ツンドラポリゴン等)
アイスウェッジ・ソイルウェッジ起源の熱的収縮割目平面形は大多角形網で1多角形平均サイズは15-40 m

ポリゴン polygon: 周辺に明白な溝・裂目有する永久凍土によるパターン状の土地。泥炭があると、中心から高く盛り上がるか、中心部は低く周辺の溝に沿い隆起部が尾根状になる
ポリゴン湿原(多角形湿原) polygon mire

  • 構造土 (patterned ground)
  • ピンゴ (pingo): 窪地に溜まった水が地表下で氷になり地上を押し上げた地形 = 鉱物質からなる高まり
    高さ70 m, 直径 ≤ 2 km → 外部形態からのパルサとの区別点 = サイズ
  • パルサ (palsa)
  • 氷楔 (ice wedge)
  • エドマ (yedoma)
  • バイジャラーヒ (baidzharakh)
  • アラス (alas): 地下氷が融けて沈んだ窪地
  • ソイルウェッジ soil wedge: 季節的凍土層(冬凍結)的収縮割目が形成され、割目両側に楔状構造発達(図8.2b)
    ≠ 化石アイスウェッジ。成因様々(未詳) Ex. 大雪山 = 永久凍土に形成
周氷河性波状地: 周氷河作用により面的削剥が行われた結果、起伏が低平化して波状を呈する地域
デレ(周氷河デレ, 周氷河皿状地): 穏やかな凹地の谷壁斜面と船底型の谷底を持つ、浅い谷もしくは椀状の凹地

周氷河地形として扱われるが、非対称谷同様、周氷河作用だけで生じたことを立証するのは困難

岩石氷河: 周氷河作用によるマスムーブメント(重力による物質移動)地形

内部に氷を持ち氷河の様な形態で緩慢に流動するロウブ(耳朶)状ないし舌状の岩塊流地形

クリオペディメント(寒冷ペディメント) cryopediment: 周氷河環境下で山麓部や谷筋の斜面下部に形成される緩い侵食面 (≠ 堆積性斜面)
ソリフラクション solifluction: 傾斜面で水分含む表層部が重力作用により滑りながら長期間を経て移動するマスムーブメントの一種 非対称谷: 日向-日陰谷壁(左右壁)傾斜が連続的に相当部分で明瞭な違い
= 寒冷気候等の影響により起こるソリフラクションの大小により生じる

周氷河性非対称谷: 非対称性原因が周氷河作用と強い関係 - 永久凍土環境下で形成

関東平野からも周氷河性の疑いがある非対称谷報告(未詳)

日本: 周氷河地形は他に皿状地や山麓緩斜面(寒冷ペディメント)・砂丘があるが凍結作用形成貢献度未詳

岩塊流(岩流): 岩塊斜面を含む(凍結破砕礫も含める, s.l.)
山地斜面や谷間、山麓を広い範囲で角張る巨礫(d > 30 cm)が、斜面最大傾斜方向か谷に沿い流下した状態で積重なり、ほぼ舌状の平面形を持つ地形
凍結風化作用により節理や層理面に沿い岩石分解し、礫となり堆積し斜面下方へ凍結と関係したマスムーブメントで移動し、後に細粒が流水により除去され生じた地形(未詳)

崩壊・土石流・氷河流動等の周氷河作用以外による場合と区別難しい

麓屑面 (麓屑斜面、コルビアル斜面、崩積地)
斜面下部か基部に位置し、角礫を含む不均一で淘汰の悪い物質からなる比較的緩傾斜の堆積斜面

周氷河地域ではソリフラクション(斜面表層部で起こる緩速度マスムーブメント)により風化生成された場所から運搬されてきたものからなる

凍結撹乱構造: 土壌・堆積物断面で認められる構造で、インボリューション(規則的形態)、クリオターベーション(不規則形態)、礫立ち上がり等を含む

成因未詳部分あるが、不等凍上や凍結時の土壌中の圧力変化が主原因。構造土やソリフラクション断面の場合もあり、アースハンモック埋没形、サーモカルスト(永久凍土融解による凹地形)断面、崩壊ピンゴ(永久凍土帯に形成されるドーム状丘)断面等もある。永久凍土地帯にも季節的凍土帯にも分布

ペイブメント pavement: 広く平坦な溶食形もつ石灰岩露頭 → 平坦性は最終氷期氷食作用による
非対称山稜: 山稜を境に、左右両側の斜面勾配が著しく異なるもの

大起伏山地山稜部分で、両側の斜面勾配が比較的広い範囲で非対称

Soil wedge
図b: 大雪山北海平ソイルウェッジ

化石周氷河現象

寒冷期に作られ現在まで再び形成されなかった周氷河現象
現気候条件下では生成停止 → 破壊傾向 (一般に大地形ではなく、微地形や露頭断面形態)
化石構造土: 寒冷気候時代に形成された構造土
化石アイスウェッジice wedge: アイスウェッジ融解で上から泥・砂が落込み形成(宗谷岬近く知来別段丘礫層中に見られる)

永久凍土に熱的収縮によりできた割目 → 夏に融水浸透し凍結し冬に収縮し拡大
長年繰り返されると、割目沿いに楔状氷脈形成 = アイスウェッジ
現在、アイスウェッジがよく形成されるのは連続的永久凍土帯内部の不良排水低地

測定技術


氷床・雪氷
雪氷コア掘削 ice coring, ice core drilling: 柱状コアサンプル採取用コア掘削
氷河・氷床コア掘削深度分類(目安):

深層 ≥ 1000 m、中層 300-1000 m、浅層 数十-300 m,表層 -数10 m

液封掘削: 深層コア掘削は、掘削孔収縮防止に氷と同密度の不凍液充たす
pH: 主な決定因子 - 各イオン溶存量で決まる

酸性化寄与物質 = 硫酸イオンや硝酸イオン
中和物質 = ダスト(ケイ酸塩粒子)からのカルシウムイオン

非海塩性硫酸イオン non-sea salt sulfate, nss SO42-: 硫酸イオンSO42-中、海塩起源硫酸イオン除いたもの
Def. [SO42-]nss = [SO42-]s - [SO42-/Na+]w × [Na+]s

[SO42-]s, [Na+]s: 試料の各イオン濃度([Na+]の代わりに[Cl-]使用可)
[SO42-/Na+]w: 海水各イオン濃度比(重量比 0.25,モル比 0.12)

s = sample, w = seawater

イオンの主な起源 = 硫化ジメチルdimethyl sulfide(海洋生物活動) + SO2(火山活動・化石燃料消費)

海洋生物活動は夏に活発化 → イオン濃度は夏期に高く冬期に低い季節周期を示すことがある

内部反射層 internal reflection layer
電波探査(アイスレーダ)、物理探査一方法の人工地震探査 → 氷床・氷河内部から信号が反射してくる層

Case. 電波探査: 火山起源酸性不純物、氷密度変化、結晶主軸方位分布不連続に伴う誘電率鉛直方向の不連続変化に伴う反射を観測

反射原因: 氷床の温度や動力学的状態の物理条件で異なる = 氷床の深度や地域により異なる
反射原因特定するために複数の周波数の電波探査を実施し判別

Case. 人工地震探査: 密度変化等に伴う伝搬速度の不連続変化に伴い反射が観測される。移動観測により観測される水平的に連続的な内部反射層は同一時に堆積した層と考えられるが、結晶主軸方位分布の不連続に起因する内部反射については、等年代層との一致・不一致がある

レイモンドバンプ Raymond bump: 氷帽頂上部直下基盤近くにアイスレーダー等で観測される尖形の内部層構造
→ 氷厚が比較的小さく積雪量が大きいときに現れる
氷歪み速度εは応力σのn乗(氷: n ≈ 3)に比例 → 歪み速度小さいドーム地形直下では、粘性係数が非常に大きい固塊が存在するような動き → 等年代層でもある内部層の構造が盛り上がるような形状を示す

Ex. 西南極氷床の氷流CとDに挟まれたサイプルドーム → 現象明瞭
1983: Raymond存在示唆 → この様なコブ状構造 = Raymond Bump

アイスレーダ ice radar: 氷河・氷床上で電波下向き発射(t0) → 岩盤から反射電波(t1) → 氷厚さ推定

応用: 氷床内部: 水平方向に広がる電波反射層 → 反射要因周波数依存性 → 氷床内部酸性度変化 → 結晶構造変化の立体的分布測定

固体電気伝導度測定 electrical conductivity measurement, ECM (1980初頭, Denmark氷床コア研究者考案)
氷床コア表面固体直流電気伝導度測定手法: 簡便な直流回路で測定可
→ 氷床コアが酸成分主体とする不純物含む → 直流電気伝導度上昇
計測: 一対の釘状金属電極で300-2500V直流電圧を印加 → 氷表面伝導電流を引っかくよう計測

→ 含有する酸濃度に対し電流応答 ([電流] ∝ [印加電圧]2)
電流と含有不純物の定量的関係は、測定者、測定システム、測定対象氷床コアにより異なる
→ 一貫した校正曲線なく、信号の定量的利用困難

[改良] AC-ECM: [原理] 酸成分主体不純物含む → 表面アドミッタンス↑

→ 表面アドミッタンス求める → 含有不純物濃度や気候イベント層を検出
[測定] 表面アドミッタンス, a + bi → 実数部 ≡ コンダクタンス + 虚数部成分 ≡ サセプタンス
精密LCRメータ: 一対の同軸電極用い、-20°C以下の温度にした氷表面の複素アドミッタンスを1 MHz周波数で掃引 → 含有する酸濃度に対し,コンダクタンスが直線的に応答

氷コアがアンモニウムや塩素を含む時にAC-ECM信号が応答するかは未詳
本計測法により得た周波数分散の情報は十分に活用されていない

AC-ECM同様目的をもつ手法: ECM法, DEP法(誘電プロファイル法)

自動気象観測装置(無人気象観測装置)automatic weather station, AWS
自動で気温、風向・風速、雪温、積雪深等の気象・雪氷観測要素計測し、記録かデータ送信する装置
南極では観測結果のメモリー記録型と衛星経由転送型が使われている
昭和基地-ドームふじ間にも設置 → 南極内陸部は-80°Cまでの低温耐性必要

電源: リチウム電池や鉛蓄電池とソーラーバッテリーの組み合わせ、風力発電を補助に利用するものもある

気象客観解析データの再解析データ
気象数値モデル + 観測データ → 現実の大気場をよく表すデータ作成進む
→ 数値予報モデルやデータ同化手法を同一にし過去数十年にわたるデータを作り直した

長期気候研究利用 Ex. 1957年から順次作成した南極関連データ公開


空気含有物 air inclusions


気泡やクラスレート・ハイドレート等、氷内部が含む含有空気起因物質の総称
気泡 air bubble
氷河や氷床に雪堆積 - 氷化(圧密氷化過程 + 再凍結過程)時に取込む空気

圧密氷化過程: 雪密度増加 → 網目状複雑形状から(単純)球形へ変化

= 気泡は過去の大気保存 → 成分分析から古気候・古環境復元

再凍結過程: 凍結速度等の変化により線状や網目状、球形となる

クローズオフ close off: 積雪中空気が雪の圧密と共に孤立化し気泡とし氷に取り込まれる現象

雪密度 ≈ 0.76-0.83g/cm³で発生 = 南極氷床沿岸 = 30-40 m深、中流域 = 60-80 m、内陸 = 90-110 m
極地の氷中の空気成分分析 → 過去の大気成分推定可 (※ 同一深度で大気年代は氷年代に比べ数10年から2000年程度新しくなる)

クラスレート・ハイドレート clathrate hydrate (造語, 構造名"クラスレート" + 物質名"ハイドレート")

気体-水(氷)共存状態 = ある圧力(解離圧)を超えると生成される水和物(ハイドレート)
水分子が作る籠型構造(クラスレート構造)中に気体分子(ゲスト分子)を取り込んだ独特な構造をもつ結晶

斜面下降風(カタバ風) katabatic wind: 斜面下る(冷たい)風 = 重力風、山風
典型的 → 極地氷床斜面 [+ 氷河風、雪渓風]
斜面上の接地大気冷却 → 同高度の自由大気より密度大 → 斜面傾斜方向に沿った下降運動発生
大規模斜面の下降風: 基本的に重力により斜面を下る成分と摩擦力が釣り合って流れる → 地球の自転によるコリオリ力働く

Ex. 南極氷床、グリーンランド: 継続時間長く安定 + コリオリ力で北半球では風の吹く向きは最大傾斜方向から右へ、南半球では左へずれる

小規模斜面の下降風

Ex. 氷河風、雪渓風: 風は間欠的に変動し斜面方向の変化も大きい

フィルン firn (語源「古い」old意味する古高ドイツ語)
(s.s.) 本来「夏に融けきらず、かつ氷化していない濡れ雪」(Paterson 1994)
(s.l.) 極地雪氷学「堆積から1年以上経過し、降雪時の形態的特徴失った氷化までの雪」

フィルン密度 = 25-0.83g/cm³

南極大陸・グリーンランド氷床内陸部 → 降雪ほぼ融解せず堆積 → 深度50-100 m程度で圧密により氷化
フィルンエアサンプリング firn air sampling
表面から氷化深度に至る通気性持つフィルン層内空気について主に微量気体成分濃度か安定同位体比の測定用試料採取 → 浅層コア掘削と同時に数m毎に行う
  1. 浅層掘削ドリルにより目的深度まで掘削後,ブラッダー(上下両端を密封した長さ約3mの天然ゴム製筒)を掘削孔底部まで挿入し,内部を空気で加圧しブラッダーを膨張させ掘削孔壁に密着させ、掘削孔底部を周辺空気と接しているブラッダーの上部空間から遮断
  2. ブラッダーを貫通するプラスチックチューブ通しフィルン空気をポンプ吸引
  3. 吸引開始直後はドリルやブラッダーと共に降下した地表近辺の空気混入し、これらの空気を十分排気後に試料空気採集
ファブリクス fabrics (ice fabrics, crystal orientation fabrics): 主に氷結晶主軸(C軸)の選択的方位分布構造の総称
通常の六方晶氷(氷Ih結晶)は、C軸とそれに直交する等価な2つのA軸を持つ

→ 結晶軸方位は、多結晶が種々の応力・歪み状態におかれたときや再結晶を発生する際に選択的に配向
⇔ 選択的配向調査し多結晶の経てきた歪み履歴や再結晶履歴を解明可

通常はC軸の方位分布を取り扱う → 計測器具はリグスビーステージ使用
再結晶や双晶が問題 ⇒ A軸の方位分布も併せ調査 → 結晶軸方位調査にX線回折使用
化学主成分 chemical component, or chemical constituent
雪氷試料 = 主にイオンクロマトグラフィ検出の海塩・人為・生物起源物質等のうち、比較的多量存在成分
濃度・組成比 → 過去の気候変動や大気環境変動を知る重要指標

主成分の内容は、雪氷試料が採取された地域と研究目的により異なる

クラウディバンド cloudy band: 氷床コアを目視で白濁して見える層位総称
白濁原因:
  1. 未同定光散乱体: グリーンランド氷床や南極氷床の掘削氷で多数観察
    氷期相当深度の氷で多数発見 → 間氷期相当深度の氷で殆ど見ない
    光散乱体素性は、関係する気候イベントと併せて研究途上
    白濁層は、氷が氷床内部にある時点では存在せず、氷床コアが掘削され出現する層位(説)
  2. 火山起源ダスト
  3. 微小含有気泡
ダスト dust, insoluble microparticle: 雪氷試料中の非水溶性微粒子
粘土鉱物(土壌等地殻起源, 主) + ケイ酸塩粒子(火山噴火) + 伴う有機化合物(森林火災・化石燃料消費)
発生源から大気循環により氷河や氷床へ輸送される

雪氷試料中ダストは過去の陸域環境や火山活動の復元に利用

DVI, Dust Veil Index: 1970年代 Lamb HH (英, 気候学)提唱
火山起源ケイ酸塩粒子や硫酸液滴(火山性エアロゾル)の気候へ影響力示す定量的尺度
火山性エアロゾルによる直達日射量減少率や気温低下量、地球被覆率等の関数

Ex. クラカタウ火山1883年噴火のDVI = 1000

メタンスルホン酸 methansulfonic acid, MSA: CH3SO3H.大気中で硫化ジメチル(DMS)がOHと反応し生成

雲粒や水溶液滴エアロゾル内でOHと反応するとSO42-にまで酸化
雪氷試料中にCH3SO3-の形で存在 - その濃度変化は生物活動指標

硫化ジメチル demethyl surfide, DMS: (CH3)2S = 最も基本的なアルキルスルファイド(揮発性硫黄化合物)

植物プランクトン生産 → 海洋中濃度は春に生物活動活発になると増大、不活発な秋-冬に減少
大気中でOHと反応するとメタンスルホン酸になり、最終的にはSO42-にまで酸化される
雪氷試料が含む非海塩性硫酸non sea salt SO42-のうち生物起源の大半はDMSから酸化生成されたもの

酸素(水素)同位体組成(同位体比) oxygen (hydrogen) isotopic ratio
極域雪氷: 安定同位体18O (D)と16O (H)の比がよく用いられる
一般的に地球表層の酸素(水素)同位体比は小 → 試料と標準海水の同位体の千分率偏差(‰)で表される

δ18O (‰) = {(H218O/H216O)試料/(H218O/H216O)標準海水 - 1} × 1000 (酸素同位対比の場合)

水の酸素(水素)同位体は相変化のときに分別 → 相変化指標

極域: 酸素(水素)同位体組成は気-固間分別係数が主に温度依存 → 雪氷構成水分子が昇華凝結時気温指標

トリチウム (3重水素, 3H, T) tritium: 質量数3
放射性水素同位体 → 半減期12.33年でβ線を放出し壊変し3He
天然(環境)中T濃度 = T/Hで表現(原子比) → 1トリチウム単位 (1 TU) = 10-18
宇宙線生成核種 → 天然にも極微量存在 Ex. 通常雨水中濃度 ≈ 0.1-10TU
1950-1973: 核実験 → 大気中大量放出 = 天然3H分布と循環に大きな影響

南北両極域の氷河・氷床上の堆積積雪層中 → 3H高濃度存在層 = 1950-1973年の積雪層
→ それ以降の平均表面質量収支推定の手がかり

質量収支 mass balance/mass budget
= 質量収入(涵養量 = 正) + 質量支出(消耗量 = 負)
単位: 1氷河(氷床)全体や氷床の1流域か氷河(氷床)上の1地点
Ex. 極地氷床

収入 = 表面質量収支(降雪や昇華による表面での涵養量)部分の積雪量
支出 = 昇華蒸発量 + 融解流出量 (氷床全体支出の多くは末端からの氷山流出等による氷流出)

表面質量収支 surface mass balance: 氷河や氷床の表面での質量収支

+ (収入 = 降雪量 + 昇華凝結量) – (支出 = 昇華蒸発量 + 融解量) (+ 地吹雪により雪が移動 = 積雪再配分量 → 収入にも支出にもなり得る)

平衡速度 balance velocity: 氷河・氷床が平衡速度保つ流動速度
氷河・氷床上のある地点の平衡速度 = その地点の氷厚及び地点から上流の分氷界までの表面質量収支分布、歪速度分布等から連続の条件を用い得る

実測速度分布と比較して氷床平衡性論じ、モデル数値実験に用いる

積雪ピット観測 snow pit work: 積雪に穴(ピット)を掘り鉛直方向断面を使い層構造観察や試料採取を行うこと

南極氷床表面では雪の堆積が一様とは限らず、積雪層の形成過程を詳細に知るには広がりをもった積雪断面を観察
→ 南極内陸調査で多地点観測 - 積雪構造の地域性等明らかとなる

雪上車 snow vehicle: 雪上走行使用自動車の総称 = クローラー(無限軌道)を装備した自動車
1956: 第一次日本南極観測隊でKC20型雪上車導入
1968-1969: 極点旅行(昭和基地-南極点)でKD60型大型雪上車導 = 成功
1977: 大型化、耐寒性を高めたSM50型雪上車導入 = 内陸調査旅行使用
+ 内陸調査地域は高緯度へ広がり、ドームふじでの深層掘削計画立案 → 新大型雪上車開発必要

SM100型大型雪上車: ドーム計画期間中に昭和基地からドームふじ観測拠点までの物資輸送に使用
= 耐寒性能-60°C、積載量2トンの木型橇7台牽引可能

周氷河環境


第四紀研究で無視できない (岩田 1987)
周氷河地域: 高緯度地方や高山地域の森林限界から雪線までの間の領域

疎植生大地凍結作用 → 独特現象(周氷河現象、s.s.表層物質に見られる現象)や地形(周氷河地形)形成
日本周氷河地域: 現在 = 高山に限られる。氷期 = 北日本の大部分

地中水分の凍結融解作用により形成される地形 → ツンドラ (tundra)
周氷河現象(周氷河地形)の種類: 地面凍結と直接関係した現象のみでなく、砂丘・河谷地形等も「周氷河」で、気候環境指標となるものもある(図8.1) → 永久凍土・凍結作用が重要
時代区分
周氷河現象・地形形成時代から2分
(a) 現世・完新世

現世(最近100年)-完新世区別せず →
高山構造土は形態的に新鮮。形成完成したもの多く年代未同定

(b) 最終氷期及びそれ以前

凍結撹乱構造年代: 火山灰層で示すこと多 → [注] 火山灰降下時期と撹乱時期が隔たる場合
最終氷期前半に撹乱受けたか後半に動いたかは、鍵テフラが多くても判定困難(Ex. 十勝平野)

永久凍土 (permafrost)


permafrost
Polygon

常に凍結した大地 → 数(2)年間以上にわたり0°C以下の温度を保つ土または岩石

  • 氷の存在に関係しないが、実際には氷は永久凍土の重要要素
  • 地中氷(凍土中に見られるほぼ透明な氷体)含める → 氷河基底も条件満たすが永久凍土に含めない
  • 半球規模分布 → 高緯度側 = 連続的永久凍土帯 ↔ 南側 = 不連続永久凍土帯
  • アラスカ・カナダ野外調査: 現在の連続的永久凍土帯南限は年平均気温-6から-8°C等温線に、不連続永久凍土南限は-1°C等温線に一致(氷期永久凍土分布との適合性は議論の余地)

→ 永久凍土帯にみられる特徴的地形

ポリゴン (polygon)


構造土(模様地面) patterned ground

凍結融解反復で形成される微地形の総称 → 周氷河地域凍土帯

構成物質: 礫質、土質

平面携帯: 多少とも幾何学的形をした微地形パターン → 個々の大きさは数m越えない

円形土 circle (網状土net)

アースハンモック(芝塚・凍結坊・十勝坊主) earth hummock: 円形土の1種。高さ30-70 cm、直径30 cm-1mのドーム状に盛り上がる。全体を草本や綾生低木と腐植層に覆われる

条線土 stripe
多角形土(環状砂礫)
ポリゴン(亀甲土polygon)
階状土 step
ブルテ bulte: ドーム状の盛り上がり
泥炭隆起peat mound: 泥炭の自然な盛り上がりで、ブルテより大きく、通常降水涵養性

ポリゴン(亀甲土) polygon

氷楔発達地形 Ex. エドマ yedoma
氷楔 ice wedge: 凍土の亀裂に染み込んだ水が楔状に凍ったもの

パルサ (palsa)


= 泥炭丘
湿地に形成され内部に氷(永久凍土)核を持つ泥炭マウンド(巨大ブルテ)

大きさ: 高さ1-7 m、直径数百mに達し形変化に富む
永久凍土に起因 → 不連続永久凍土分布地 = 北半球極地方

成長: 主に鉱物質土壌中の分離した氷形成による ↔ 連続凍土帯にもパルサはあるという考えもある

Ex. シベリアのツンドラ及び亜極地 = ブゴール bugor
Ex. アラスカ・カナダ

パルサ湿原 palsa bog (palsa mire): 強凍結作用でできたパルサが特徴となる泥炭地

パルサ泥炭地 palsa peatland: 不連続凍土帯泥炭地群。パルサ隆起と、その周囲の永久凍土のない泥炭地にcollapse scarやmoatがある。パルサは通常降水涵養性で、その周囲は鉱物質栄養性

崩壊痕 collapse scar: パルサ、泥炭台地、島状泥炭地の縁辺が落ち込んだ部分に隣接する凹地。通常、浸出があり凍土層なく、断面丸み帯び、樹木なく鉱物質涵養性。縁辺部が融解した凍土層による場合は、土手が急になり枯死しかけ傾いた樹木等がある

泥炭台地 peat plateau: パルサ同形態だが広面積(時に > 1 km²), 高さ < 1 m。周囲を凍結しない湛水状態泥炭地で囲まれる
連続凍土帯パルサ continuous-permafrost palsas (Washburn 1983): 通常高 > 2 mの円形マウンド → 北極海諸島に多

頂部: 乾燥しフクロウ等が止まり場として利用
形成過程未詳 → 微地形との対応不明瞭。アイスレンズあり

[流氷 (drift ice)]

エドマ (巨大氷楔, yedoma or edoma)


氷楔が何年もかけ成長 - 高含氷永久凍土
  • Sento B (仙頭ボブ). 1996. ちょっと、ほんまにそれやんの? 北海道大学大学院 地球環境研究科 地圏環境科学専攻 地球雪氷学講座 修士論文(裏版)

ピンゴ (pingo)


バイジャラーヒ (baidzharakh)


アラス (alas)


開けた皿状の窪地: 深さ1 m - 10m,直径数10 mから数 km
地下氷融解 → 沈降 → アラス(= 窪地) → 草地化や滞水することが多い
alas 1996年8月7日、サハ共和国、ヤクーツク近くのスパスカヤパジと呼ばれる地域で見られたアラス

日本の氷河・周氷河地形


分布の地域的特徴

現成・完新世 → 大部分が山地森林限界以上 → 最終氷期 + それ以前 → 北海道-東北地方平地
山地に欠ける理由
  1. 氷河・急傾斜で形成しない
  2. 後侵食で消失
  3. 森林被覆・露頭なく未発見
北海道
現成・完新世周氷河現象、永久凍土は大雪山に集中(アイスウェッジポリゴン除く) ↔ 大雪山以外からの構造土報告少
十勝平野・根釧原野の現成・完新世構造土 = 大部分アースハンモック、河川沿沖積地・低位段丘に分布(一部のみ表現)
十勝三股周辺・北見山地山中1000 m以下 = 地中氷(永久凍土の1種)
道東・道北 = 最終氷期とそれ以前の周氷河現象(大部分は凍結撹乱構造で、化石アイスウェッジは道東のみ, 宗谷岬以外はソイルウェッジ?)。ソイルウェッジは多所で発見。化石大規模多角形構造土?は十勝平野や根釧原野の空中写真判読で認められるが現地未確認
十勝平野: 大規模クリオターベーション ? ピンゴ化石(可能性)
道南: 凍結撹乱構造余り分布せず、羊蹄山周辺で多く発見
東北
現成・完新世、最終氷期、より以前の周氷河現象は北上山地周辺集中
人為的荒廃地に発生した条線土や、牧草地のアースハンモック
低地火山灰層中の凍結撹乱構造は報告少
奥羽山脈、月山、朝日・飯豊等の森林限界をぬく山頂部 → 現成・完新世構造土(断片的・小面積)
→ 新たな化石周氷河現象発見可能性高
関東・中部
中部山岳森林限界以上は現在も完全な周氷河地域で現成・完新世構造土が広分布
関東平野周辺山地から最終氷期形成?岩塊流発見 → 山地でさらに岩塊流発見可能性 → 全てが周氷河作用と関連かは疑問
近畿以西
現世・完新世構造土が紀伊山地から報告。大分県久住山・大船山に階状土とアースハンモックが化石
構造土(階状土と岩塊斜面)が中国山地山頂部から報告され、さらに発見される可能性高いが、斜面岩塊が周氷河起源かは検討必要。中国山地東部や九州の標高1000 m前後の場所から、礫オリエンテーションから周氷河性と判断される堆積物が報告されるが、周氷河作用強度未詳
圏谷 Kar (☛ 圏谷)
1905 山崎: 立山連峰雄山直下-西斜面2700 m (幅 400m, 長さ600 m)

圏谷下方でモレーン確認 - 命名山崎カール(1942 石井)
70以上の圏谷が知られる

更新世後期-完新世: 比較的小規模
2012 福井・飯田: 飛騨山脈, 立山・剱山 - 氷河現存

氷河地形 (glacial landforms)


氷河の侵食堆積作用により形成される地形
雪食凹地(雪窪): 雪の働きで進む侵食作用で形成される凹地

四季を通じ存在する残雪の下底や縁辺に卓越し形成

アバランチシュート (雪崩路): 頻発雪崩の通路は無雪期に擦りみがかれた岩肌を露出し樋状の凹地形を形成

雪崩は30-50°傾斜面によく発生 ≠ この様な斜面全てで雪崩発生

氷河 glacier

積雪 → 氷塊 → 自重で斜面に沿い緩やかに流れ出す [温度・太陽熱]
雪線より高い地域に相当量の降雪があると発達 - 雪線越えた所で融解消滅
万年雪 firn, neve: 雪が溶けきれず次の新雪を向かえ次々に堆積したもの
→ 自重で圧縮され、融解・再結晶繰り返し氷塊となる
万年雪状態の氷結晶 = 数mm → 再結晶 = 数cmから20-30 mm

表面: 氷塊もろく割れやすい
深部(> 10-20 m): 氷塊可塑的に変形しやすい → 流体的に流れる
移動速度: 季節・場所で異なる → 多くは数mm-2 m/日の範囲

雪田(雪渓) snowfield: 万年雪に覆われた場所
雪線 snowline: 万年雪の存在する下限
氷床 ice sheet (大陸氷河 continental glacier): 大面積を覆う氷河 Ex. 南極、グリーンランド(+ カナダ極地)

南極氷床 → 地球上存在氷体積の90%
s.l. 岩盤上氷床 + 海水に浮かぶ棚氷

氷冠: 広大な氷の蓄積層 (約5万km2以下の岩盤上にある氷床, s.s.)
氷帽 ice cap: 氷河が狭い範囲を占め孤立し中心から放射状に流れ出す

Ex. アイスランド、スピッツベルゲン

谷氷河 valley glacier: 氷河が深い谷を占め流れ下る

Ex. アルプス、ヒマラヤ

クレバス crevass(e): 氷河の表面と深部の流速差により生じた直角・平行・斜行した割目
クレビスcrevice: 小さな裂目 ≈ crack
ベルクシュルント Bergschrund: 谷氷河最上端部は急傾斜岩壁に接っし、その引っ張り力でできた隙間

氷河移動

クリープ creep: 一定応力あるいは一定荷重の下における塑性変形
転位クリープ: 変形メカニズムが転位の運動による場合
拡散クリープ: 原子・分子の拡散による場合
侵食と運搬
氷河は激しい削剥行う → 特有の地形形成
氷食岩壁: 氷食作用で形成された岩壁 → 壁に氷食擦痕を残すことがある

擦痕: 氷河に取り囲まれた岩石が河床を引っかきできた傷

底面すべり(氷河の)basal sliding (of glacier)
氷河や氷床が基盤の上を滑る現象
氷河底部の氷が圧力融解点に達している時に顕著 ↔ 氷が基盤に凍結している時は起こらない
機構
  1. 基盤の凹凸周辺の氷の局所的な塑性変形: 凹凸スケールがcmオーダーより大きい時に卓越
  2. 復氷: 凹凸スケールがcmオーダーより小さい時に卓越
氷河底面を簡単なモデルで近似 → 底面すべり速度は底面ずり応力の(n + 1)/2乗に比例(ただしn ≈ 3)
+ 底面に水膜が存在 → 底面すべり速度↑↑↑ (理論や観測で確認済)

氷河流動速度の日変化、季節変化、年変化、サージ等は、底面すべり速度の変化に起因 → 氷河底面の水膜の構造、厚さ、水圧等の状態が氷河動力学にとって非常に重要

流動則(氷の) flow low (of ice)
= 変形べき乗則
氷が塑性変形を起こしている時、氷に働く応力と歪み速度の関係
氷変形実験から流動則求める → 定常クリープ過程の歪み速度または最小歪速度を利用
氷河・氷床の流動解析 → (通常)一般化式利用 = 有効歪速度が有効ずり応力のn乗に比例

多結晶氷のnの値: 応力により1-5まで変化 → 平均的にはn ≈ 3とし扱う
+ べき乗則の係数は、温度・結晶主軸方位分布・結晶粒径・含有不純物量等で変化
+ 氷構造と変形機構の関係には未解明問題多

多結晶氷の変形のべき乗則は,Glen(1955)が初めて実験的に導いたのでグレンの法則と呼ばれることもある

日本

カール (圏谷) criques, Kar
谷氷河最上流部 → 半円形-半楕円形凹地(典型カールは肱掛椅子様形態)
圏谷壁 Karwand: 急傾斜の岸壁で、表面に凹凸や割目が多い
圏谷底 Karboden: 傾斜緩(時に凹地, 上流側へ逆傾斜したカール底)。岩盤表面磨かれ滑らか + 時に擦痕(条線glacial striae)

→ 山稜(谷と谷の間) = 鋭いナイフエッジ
針峰 aiguille・氷食尖峰(ホルン, 角峰) horn: (3-4方向からの)カール壁の切合いにより生じる鋭い山頂
アレート(鋸歯状山稜、櫛形山稜): 氷食作用による急峻な稜線

両側のカール後退による切合で生じ、鋸歯状縦断面

ティル till
氷河により運搬され堆積した乱雑な堆積物 (ダイアミクトン: 氷成か不明瞭)
氷河下ティル: 氷河底面に溜まる

ロジメントティル: 氷河底面と岩盤の間にあるため擦痕礫多く粘土に富む
メルトアウトティル: 氷河中に取囲まれた岩屑が氷河融解により堆積

氷河上ティル: 氷河融解により氷河表面に溜まる → 氷河が完全に融け去ると氷河下ティルの上に堆積

アブレーションティル: 主に周囲の岩壁から氷河上に落下した角ばる岩屑
→ フローティル: アブレーションティルが氷河表面で二次的に流氷の影響を受けたもの

モレーン(堆石、氷堆石) moraine
氷河に運搬され堆積した岩屑debrisやその集積・堆積
→ 特徴: 礫角張る + 擦痕を持つものがある (+ しばしば巨塊含む)
氷河漂積物 glacial drifts =漂礫土 boulder clay, till + 成層漂積物 stratified drifts

漂礫土: 氷河が末端や底面で融けた融氷水melt waterが去り開放されたモレーン
成層漂積物: 融氷水により二次的に運ばれたモレーン

堆石堤 moraine: 氷堆石により作られた地形。花弁型の凹凸示しつつ横に長く続く
  • 終堆石堤 terminal moraine: 氷河末端前面に形成される。谷氷河では下流に向かい張り出した弧形
  • 側堆石堤 lateral moraine: 谷氷河両端から上流へ堤防状に伸びる堆石堤
  • 後退堆石堤 recessional moraine: 氷河が一時的に後退した時期にできる堆石堤
  • 底堆石堤 ground moraine: 氷床末端で全体に後退し終堆石堤より内側地域に形成。不規則な薄堆石堤
ドラムリン drumlin: 過去氷床に覆われた地域

長楕円形低丘が長軸を平行に数10-100群をなす。丘は長さ1-2 km、幅0.3-0.5 km、高さ20-40 mが標準的。長軸方向が氷河の流れ方向を表す

氷食谷(氷河谷): 谷氷河や溢流氷河の侵食により生じた谷

Ex. U字谷: U字型横断面
フィヨルドfjord (fiord): 沈水した場合

羊背岩(羊群岩): 氷食作用で上流側に丸みある研磨面と、下流側に凹凸ある破断面を持つ基盤岩の突出

研磨面は緩やかに逆傾斜した上流側にだけ発達し、下流側は氷食作用によって急な破断面を示す

岩粉 rock flour: 細砂-シルト位の粒度の氷河による機械的粉砕受けた岩屑 – 氷河末端によく含まれ白濁

氷縞粘土 varved clay: 岩粉が氷河湖(氷河による堰止湖)等に沈殿し厚さ数mm-数cmの縞模様作る層

礫堤(エスカー) esker: かつて氷床に覆われていた長い丘。成層した砂礫からなる1種の成層漂積物

幅100 m前後、高さ30 m以下で急な側面を持ち、不規則にうねりながら数km以上続く
氷床停滞期に氷河の下底に融氷水の流れるトンネルが生じ、その中で堆積し、そのまま残されたもの

レス(黄土) loess: 岩粉が風に飛ばされ氷河周辺の陸上に堆積 – 石灰質に富む塊状堆積物

ステップ等の草原に堆積し、植物根痕示す細孔やカタツムリ化石含む
ローム loam: レスが風化し粘土状になったもの
レス坊主 loess-doll: レス堆積途中の休止面で生じる古土壌

風穴 (wind cave)


比較的新しい時代の火山岩(溶岩台地等)や石灰岩(カルスト地形等)が広がる地域や、海食崖が連なる海岸付近で特徴的に見られる
環境
冷風が吹き出す、異常低温地帯
夏 5-11月 冷風が吹きだす                   冬 12-2月 冷風が吸い込まれる
        (風速 = 30-50 cm/秒)                           (風速 = 70-120 cm/秒)
wind cave in summer wind cave in winter
隙間がポイント

Wind cave
2013年6月27日、実習にて

岩塊: 氷河期の凍結融解作用でできた熔結凝灰岩または流紋岩または安山岩(いずれも火山と関連した岩)

日高層の頁岩や砂岩では、岩が細々に割れてしまい岩塊にならない

. 東ヌプカウシ山の風穴植生の低温値(°C) (地下10 cm地温, 1993年測定)
ある岩礫地  気温 9月11日11-12(左). 9月28日12-14°C(右)

ハイマツ-コケモモ群落(ハイマツ疎生) 1.5-2.4 3.1-3.4
ハイマツ-コケモモ群落(ハイマツ密生) 4.2-6.3 4.5-4.7
アカエゾマツ-蘚類群落(典型的な林分) 8.5-9.3 5.3-5.8
アカエゾマツ-蘚類群落(林冠トドマツ, 林床クマイザサ混成林分) 9.7 8.2

別の岩礫地 気温 9月27日 9-10°C

ハイマツ-コケモモ群落 7.5-7.7
アカエゾマツ-蘚類群落(亜高木林分, 林床ハイマツ・地衣類伴う) 8.1-8.3
アカエゾマツ-蘚類群落(亜高木林分, 林床地衣類優勢) 8.8-9.4
アカエゾマツ-蘚類群落(高木林分, 林冠トドマツ, 林床クマイザサ伴う) 9.6

temp temp
(左) 十四の沢永久凍土地域における130 cm深度の土壌温度変化  (右) 十四の沢永久凍土地域における50 cm深度の土壌温度変化 (加藤ら 1992)

風穴植生

風穴の植物
白樺峠の植物・開花の季節変化(1年中花がある)
phenology
図. マルハナバチ媒花植物の開花曲線
phenology
図. 甲虫媒花植物の開花曲線
風穴の植生

風穴により、垂直分布 (vertical distribution)が逆転することがある
. 北海道の主な風穴植生(他にも大規模なものはあるが...)

  • 地域 (標高, m), WI: 植物群落名(群落以外の主な出現種) (文献)
  • 十勝三股 (830-840) 32: アカエゾマツ-トドマツ-イソツツジ-ホソバミツゴケ群落 (コケモモ, エゾムラサキツツジ, ハクサンシャクナゲ) (近藤ら 1978), 鈴木ら 1987)
  • 温根湯 (300-310) 45: エゾムラサキツツジ群落 (イソツツジ) (梅沢 1956, 志保井 1974)
  • 富良野 (325) 55: エゾマツ-トドマツ林/ドイツトウヒ人工林 (イソツツジ, コケモモ, エゾムラサキツツジ, オオタカネイバラ) (斎藤 1953)
  • 札内川七の沢 (710-720) 35: 高山性ヒース群落 (イソツツジ, ガンコウラン, エゾムラサキツツジ, エゾノマルバシモツケ) (北海道 1984)
  • 漁入ハイデ (720-740) 43: イソツツジ群落/アカエゾマツ群落 (ハイマツ, コケモモ, リンネソウ, ホソバミズゴケ, エゾクロウスゴ, オオバスノキ, ウスノキ, ハナヒリノキ) (佐藤ら 1993)
vegetation 図. 東ヌプカウシ山の風穴周辺におけえる群落交代(模式図)
①ハイマツ-コケモモ群落, ②アカエゾマツ-蘚類群落, ③トドマツ(ダケカンバ)-ゴゼンタチバナ群落, ④ダケカンバ-クマイザサ群落, ⑤トドマツ-クマイザサ群落/クマイザサ群落 (群落名は北海道報告書(1987-1988)による)

哺乳類 (ナキウサギ)
vegetation 図. 東ヌプカウシ山の亜高山帯における植生の地形分布(模式図)。①ハイマツ-コケモモ群落, ②アカエゾマツ-蘚類群落, ③トドマツ(ダケカンバ)-ゴゼンタチバナ群落, ④ダケカンバ-クマイザサ群落 (以上の群落名は、北海道調査報告書(1987-1988)による), ⑤ コマクサ群落 (伊藤・斉藤, 1974)。北西斜面では、風穴は①と②に明らか、③にも影響、①から③に向かって温度上昇。南西尾根では、⑤で土壌の凍結・融解が見られる。

1994年10月(何の?)自然観察会資料
士幌高原道路関連

  • 加藤誠・近堂祐弘・小崎隆. 1992. 東大雪山麓における点在的永久凍土の土壌温度測定. 上士幌町ひがし大雪博物館研究報告 14: 75-87

[標本整理 士幌小屋]

洞窟 (cave)


洞穴学 speleology: 洞窟・カルスト地形の成立、構造、物理的特性、歴史、生命形態、経時変化等を研究
洞窟cave (洞穴, 洞穴)
洞窟系 cave system: 複数洞窟が互いに関係を持つ洞窟の集まり Ex. 石灰洞では水系接続が多

ネットワーク洞(網状洞) network cave: 交差し数多くの直線的通路がある複雑な洞窟系の一般呼称
迷宮洞maze cave: 多数の通路が複雑に連結した迷路状洞窟系
グロット grotto (仏): 小規模洞窟。洞窟エリアを総称し○○グロットと呼ぶこともある

多層洞窟 multi-level cave: 幾つかの水準で上下に発達している洞窟
支洞 branch: 本洞(洞窟内の最も主だった通路)から分岐した枝道の洞窟
形態分類
海食洞 littoral cave, sea cave: 湖・海岸の崖下に生じた波侵食による洞窟

岩陰 rock shelter: 崖下天然小洞窟(窪み) → 稀に薄暗くなるほど奥行があり人が住める

砂岩洞 sandstone cave: 波風の侵食で岩石の崖にできた浅い洞窟や岩陰
地滑り洞 landslip cave: 山腹の地塊が地滑りを起こし生じた洞窟
自由水帯洞(循環水帯洞) vadose cave: 自由水面のある流れで侵食された生じた洞窟
ポノール ponor (= シンクホール sinkhole: 北米): 地表水が地下に吸込まれていく洞窟
セノーテ cenote: 洞底の一部が水中に没した竪穴 (ユカタン半島の言葉由来)
地下川洞 river passage, streamway: 地下水が川のように流れる洞窟
断層洞 fault cave: 断層に沿い発達した洞窟か、断層で出来た割目そのものが洞窟化
氷河洞 glacier cave: 氷河底を流れる融雪水でできた洞窟
氷穴 ice cave: 四季を通じ氷がある洞窟
飽和水帯洞 (フレアティック・ケイブ) phreatic cave: 完全に水没し、静水圧下の水流で形成された洞窟
リフト rift: 左右に壁かそそり立つ大小の裂目状の洞窟。普通断層や節理に沿い生じる
レス洞 loess cave: レスは軟らかく適度な強度もあるため掘られた人工洞窟。稀に地下水流出後に自然洞できる
鍵穴通路 keyhole passage: 飽和水帯型のチューブ状の洞窟の床に自由水帯型の溝(キャニオン)が生じたもの
キャニオン canyon passage: 地下を流れる水で下方へ侵食され生じた洞窟。一般に横幅に比べ天井の方が高い
洞窟内地形
クラック crack: 形状不規則で連続性乏しい割目。洞窟の通路はこれに沿い延びること多
クロールウェー crawlway: 腹這いで進まねばならない位天井低い所
スカラップ(カレントマーク) scallop: 洞壁や床、天井に侵食された浅い非対象のウロコ状(ホタテ貝状)の窪み。水流渦により穿たれる。過去における水流方向・流速推定できる
チムニー chimney: 殆ど垂直、幅狭く天井高い上向きの通路
チューブ tube passage (ボアbore passage): 飽和水帯の完全に水没した状態で形成された円筒型(管状)の洞窟
ノッチ notch: 洞壁に弓状に抉られた様々な大きさで、ほぼ水平に伸びた窪み。洞内地下水側方侵食により形成
フィッシャー(裂罅) fissure: 地層面や節理、断層に沿って生じた開いた割目
sump: 洞窟が完全に水没している所 ポットホール(甌穴) pot hole (≈ caving): 水流の侵食作用により床に穿られた窪み ポケット pocket: 溶食形態の一種で、天井や壁に認められる半球状の窪み

ベルホール bell hole: 天井に見られる半球状の窪み (≈ ポケット)

トレンチ trench: 細くて長い溝状の通路

メアンダートレンチ meander trench: 蛇行したトレンチ(トルコ、メンデレス川にちなむ)

洞窟生成物 speleothem
= スペレオゼム、ケイブフォーメーション、二次生成物、鍾乳石
フローストン(流石、石灰華) flowstone: 洞壁・洞床を薄く覆う地下水から沈積した生成物一般的呼称
カーテン curtain: カーテン状鍾乳石。石灰洞内の壁や天井から発達した、幕状生成物
ケイブコーラル cave coral: 洞内各所にできるサンゴ状の生成物
ケイブポップコーン cave popcorn: 普通丸小型で洞壁・岩肌に生じるポップコーン状生成物(元米国語)
リムストーン(畦石) rimstone: 水中沈積する方解石が畦状の壁に成長する生成物。水が溢れ出すにつれ方解石が上方へ沈積し畦が次第に大きくなる

→ ケイブダム cave dam: 人が入れる位まで発達したもの
リムストーンプール rimstone pool, gour: リムストーンの皿池様になった水だまり

犬牙状結晶 dogtooth crystals, spar: リムストーンプール等に見られる各種鉱物結晶生成物

点滴石(滴石, ドリップストーン) dripstone: 滴下水でできる洞窟生成物呼称。カヌライトを含む

石筍(スタラグマイト) stalagmite: 洞床から伸びる方解石の洞窟生成物。天井から落ちる地下水から沈積
石柱 column: 床から天井までつながる方解石の洞窟生成物。普通は鍾乳石と石筍がつながったもの
ケイブパール(洞窟真珠、豆石) cave pearl: 丸型方解石塊。天井から滴る水で絶えず動揺した浅水溜中にできる床とは分離したもの。核となる物質を中心に形成した球状洞窟生成物

ケイブボールcave ball: 大型のケイブパール

鍾乳石(氷柱石、スタラクタイト) stalactite: 洞窟天井から下がる方解石から成る洞窟生成物

(s.l.) 割目から滴となり落ちる地下水から沈積。洞窟生成物全体の呼称
ボックスワーク boxwork: 天井割目から浸み出した水により形成された格子状の鍾乳石

フィルムウォーター filmwater: 洞壁をゆっくり流れる薄膜の様になった水流。石灰岩溶食重要要素
ベーコン bacon: 光を通す薄いカーテン
ヘリクタイト(ヘリグマイト, 曲がり石): 重力と無関係に下方へ枝状に伸びたもの

カルスト地形 (karst landform)


語源, 露岩 = スロベニアのカルスト地方
カルスト karst: 主に溶食作用で地下排水系発達し地表水がない地形
溶解性岩石地帯に発達し、石灰岩 limestone 地域に多 (ジプサム地域もある程度発達)

浸透水 percolation water: (石灰)岩の割目を通りしみ込む地下水
機構: 侵食作用 + 溶食養殖(石灰岩が水に溶けること)

表面地形

カレン karren (ラピエ lapiaz)
石灰岩地帯溶食地形で、雨水に形成された石灰岩表面の溝や窪み

カレンフェルト karrenfeld: カレンが発達し溶け残された石灰岩が墓石状に林立した景観示す

凹型地形

ドリーネ doline: スロベニア語源: 石灰岩地帯に発達する石灰岩割目に沿い雨水が地下浸透する時に、周囲の石灰岩を溶かし形成された擂鉢型の窪地

ウバーレ uvala: 隣接したドリーネが、侵食進行により連結し生じた不規則な平面形を持つ大型窪地

ポリエ: 数10 kmに及ぶドリーネやウバーレが複合しできた溶食盆地
コクピット cockpit: 何千とあるジャマイカ地方名由来: 熱帯石灰岩地帯の複雑で大規模に発達した星形平面を形成する窪地(窪地底に洞窟続くこと多)

doline
2015年8月28日 中頓別鍾乳洞
自然ふれあい公園

地下地形

鍾乳洞 limestone cave
石灰岩地域地下に発達する洞窟 - 雨水・地下水により石灰岩が溶かされできた洞穴
スポンジワーク sponge-work
溶食形態一種。天井・壁に蜂巣状の入組む構造持つ円形溶食跡。地下水面下で石灰岩が差別溶食され生じる

ペンダント pendant: 天井から母岩である石灰岩が垂下した様な溶食形態

アナストモーシス anastomosis
= 網状溶食管, 溶食蛇行管 anastomosing channels (adj. anatomosing 合流・吻合している)
洞形成初期溶食形態 → 地下水面下で石灰岩中の節理・層理に沿う溶食で生じた天井・壁で複雑に入り組む溶食管

植生

水はすぐに地下に移動 - 排水良く乾燥 - 植生貧弱
カルシウムをより多く要求し特異な生態

[地形]

微地形 (microtopography)


Def. 地理: 肉眼では確認できるが地形図上では判別しにくい微小規模地形

Ex. 自然堤防 natural levee、構造土 polygonピンゴ pingo

Def. 生態: 生態研究上、ある地形がさらに細分すべき場合に、細分された個々の地形

Ex. テフラ堆積地 = (平坦部 + リル) × (軽石 + 火山灰)

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