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(2024年5月1日更新) [ 日本語 | English ]

植物相(フローラ, フロラ) flora (pl. floras or florae)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

植物相 (flora)

ある地域内に生息する全植物種組成 (どこぞの会社で出していたパソコンのことではない)
= 植物を同定し種名を記した種のリスト
動物相(ファウナ) fauna
地域の大きさは様々

日本の植物相 < 北海道の植物相 < 札幌の植物相 < 北海道大学キャンパス芝生上の植物相
Ex.: 有珠山 渡島駒ケ岳 士幌小屋チセフレップ (他) 北大キャンパス

生物相, バイオータ (biota)

生物相 biota = 植物相 + 動物相
一定の場所(同一環境あるいは地理的区域)に産する全種類。定性的概念で普通は動物相・植物相を合わせたもの。場合によっては微生物相を区別
種類相互の関係や環境の意味等は含まない概念用語

[ 生物地理学 | バイオータ | 駒ヶ岳フローラ ]

索引

研究事例: 渡島駒ケ岳における植物相の特徴

2000年調査から

75種の種子植物を確認 (駒ケ岳採取標本 Specimens collected from Mount Koma Koma)
山岳火山地帯に普通に見られる種 +
海浜植物 → オオウメガサソウChimaphila umbellata, マルバトウキLigusticum hultenii など
(亜)高山植物: イワギキョウCampanula lasiocarpa Cham., タルマエソウPenstemon frutescens など
食虫植物: モウセンゴケ Drosera rotundifolia
これらの特徴をまとめると以下のようになる

2001. 生物教材 36: 1-6

北海道渡島駒ケ岳における2000年種子植物リスト


露崎史朗1)・長谷昭2)・新沼寛子2)・花田安司2)

1) (北海道大学大学院地球環境科学研究科)
2) (北海道教育大学函館校生物学教室)

List for seed plants on Mount Koma, Hokkaido, in 2000

Shiro Tsuyuzaki1), Akira Hase2), Hiroko Niinuma2), and Yasuji Hanada2)

1) Graduate School of Environmental Earth Science, Hokkaido University, Sapporo 060-0810, Japan
2) Biological Laboratory, Hakodate College, Hokkaido University of Education, Hakodate 040-8567, Japan

はじめに
 北海道渡島駒ケ岳(標高1131 m)は、1929年の大噴火後、暫く穏便を保っていたが、1996年から2000年にかけて小規模ながら数度の噴火を繰り返している。火山噴火後における植物群集は、土壌移動等の撹乱が強い貧栄養土壌状態から始まる群集動態を明らかにするモデルケースとして貴重な調査対象となる。しかしながら、火山における噴火以前の植物群集構造は噴火後の植物群集動態に大きく関与するにも関わらず、調査事例が極めて少ないため噴火後の植物相等を考察するに不可欠な情報が欠落しがちである(Tsuyuzaki 1995)。米国セントヘレンズ山おいても、その必要性から今後の群集動態を知る基礎資料として噴火直後のフロラリストが作成された(Titus et al. 1998)。また、北海道教育大学函館校においては、1996年より野外実習において駒ケ岳南西斜面において植物群集動態調査に関する実習を行なっている(露崎・長谷2000)。これは、永久調査区と呼ぶ経年で同じ場所を調査し、群集構造の時間的変化を視覚的に理解することを主な目的として行なわれている。その際にも、フロラリストが存在することは、学生が自身で植物の同定を行なう上で大きな助けとなり、実習上の効果も期待できる。
 本調査は、1996年の駒ケ岳小噴火以降に始められたものであり、比較的短期の調査であり不十分な部分もあるが、今後いつ噴火するとも予断を許さない本火山におけるフロラリストは早急に作成報告する必要があると考える。
調査方法

  調査は主に2000年雪解け開葉後の6月初旬から降雪期直後の11月初旬まで約20日置きに山頂部南西斜面において観察された植物を記録した。ただし、9月初旬から下旬までは、山頂部で水蒸気爆発が発生したため、調査を行なっていない。また、フロラリストには、1996年年以降行なっている北海道教育大函館校野外実習(露崎・長谷 2000)において観察されたもの、および本調査以外の調査において観察されたもの(Kondo & Tsuyuzaki 1999)も含めた。ここでいう山頂部南西斜面とは、駒ケ岳6合目駐車場(標高 487 m)よりも高標高の部分を指す。2000年調査における初記録種については、数個体を採取し標本を作成した。標本の一部は北海道大学総合博物館に納めた。

結果と考察
 全体で計75種が確認された(表1)。有珠山火口原では、1983年から1994年にかけての調査でシダ植物を含めて163種が確認されているが(Tsuyuzaki 1995)、単年度で、これだけの種が確認されたということは、植物群集構造を把握するには十分な種数が記録できたといえよう。
 マルバトウキ、オオウメガサソウ(図1)は海岸植物であるが(大井 1983)、駒ケ岳のように海岸に隣接した火山であれば侵入定着が可能なようである。このことは、海風に乗って長距離種子散布が可能であること、火山景観が火山性砂漠と呼ばれるように貧栄養土壌であり、また土壌移動が発生しやすいという、多少なりとも海岸砂丘に似通った環境が提供されているため、これらの植物が成長可能な環境であるという点に起因しているように思える。
 ツツジ科の種やラン科の種が多数個体確認されたが、これらは、それぞれツツジ科菌根菌、ラン科菌根菌を有するため、高山等の撹乱の強い貧栄養土壌下においても定着可能な植物と考えられている(Allen 1991)。駒ケ岳においても、これらの植物種が多数確認されたことは、種子植物-菌根菌共生関係が、火山を始めとする撹乱強度の強い貧栄養環境において群集発達に重要な役割を果たしていることを示唆している。今後、広範に種子植物-菌根菌共生関係を調査する必要性がある。
 食虫植物であるモウセンゴケは、1965年の駒ケ岳植生調査において記録されている(舘脇ら 1966)。本調査によって、その定着は再確認されたことになる(図2)。食虫植物は、一般に貧栄養土壌下において土壌中からの獲得だけでは不足しがちな窒素を捕虫によって補うと考えられている(山川 1978)。駒ケ岳においては、1929年の噴火から既に70年を経過しているが、未だ土壌は未熟であることを示しているといえよう。
 イワギキョウ(図3)は高山礫地に生える植物、タルマエソウ(図4)は新生火山の砂礫地に生える植物として知られ(伊藤 1981)、また、この他にも本来は亜高山性の植物も数種見られる。これらの植物が、駒ケ岳山頂部周辺に定着していることも興味深い。
 以上のように、駒ケ岳は、1) 海岸近くにおいて、ある程度高標高まで発達した火山であり、2) 比較的大規模な噴火を繰り返した結果として軽石・火山灰を主体とする貧栄養土壌が、特色あるフロラを発達させているといえよう。
表1. 駒ケ岳山頂部種子植物出現リスト [2000年の結果に追加]。学名は主として大井(1983)を用いたが、種群によっては新しいものを採用した。和名は、最も普及していると思われるものを採用したが、2つある場合には併記した。

[古生物学, 化石, 島の生物地理学]

生物地理学 (biogeography)


生物地理区 (ecozone): 生物分布にみられる地域性とその要因 - スケール
分布域 range

連続分布と不連続分布 continuous and disjunctive distribution

飛地 disjunctive area

普通種と固有種 cosmopolites and endemics

半普通種 semi-cosmopolites
周北植物 circumboreal plants (広域分布)

⊃ 周極植物 circumpolar plants

汎熱帯植物 pantropic plants

1859 Gray A: 北米東岸と東亜温帯には共通種が多い
固有種
遺存固有種 relic endemics Ex. メタセコイア
新固有種 neo-endemics: 局所的に新しく分化 Ex. 島嶼固有種

代償種 vicarids, vicarious species: 共通祖先から分化した種群が異なる分布域

分布規定要因

現在
気温 Ex. 平均気温、温量指数T (°C): 年平均気温 + 乾湿度
降水量: 年降水量、夏期降水量等 → P (mm)
地形要因 orographic factors: 標高・傾斜・方位等

等値線 isopleth Ex. 等温量指数線

地史的要因
絶滅危険度の判定や種保全 → 地史的要因を十分考慮
地史的・進化的過程の地域的共通性による分布型が見られる

種以上の上級分類段階では地理的であるが、種内亜種分化では生態地理的分布型として表れる

島嶼: 固有の生物群に富むこと多 Ex. ハワイ

1. 種レベル

分布型 distribution pattern

連続分布 continuous distribution
不連続分布 disjunctive distribution

普通種 cosmopolitan
固有種 endemics → 地理的隔離 geograpical isolation (高等植物で両極地で数10種程度か)

遺存種 relic (endemics) / 新固有種 neo-endemics
高山・極地要素 arcto-alpine element: 全体の半分以下?
周極要素 circumpolar element: これに属する種多
温帯・亜寒帯要素 arctic frontier of temperate element: 種数多 - 量的に少
汎分布要素 cosmopolitic element: 種数少ない Ex. スズメノカタビラ
隔離分布要素 isolated element: 極めて特殊で高等植物で稀
両極分布要素 bipolar element: 南極圏・北極圏共通(中間に非分布)。同一種(または亜種、変種程度の差や近縁種)

2. 属科レベル

種の中心 species center: 遺伝的、形態的に見て最も基本的な種の分布域

3. 地域レベル

歴史的過程 → 分散あるいは分布域の歴史的変化
日本 (Japan)
1945 Good: 日本フロラ

北帯植物界

支那-日本区系域 Sina-Japanese region

北日本-南樺太区系区(南部除く北海道)
朝鮮-南日本区系区(北海道南部、本州、四国、九州)

旧熱帯植物界

東南アジア大陸区系域

台湾-琉球列島区系区(琉球列島-小笠原諸島)

植物種数に富み維管束植物約5000種(数字は怪しい)

46°Nの亜寒帯近く - 26°Nの琉球列島/小笠原列島に集中
固有(的)種多 Ex. Rhododendron, Primula, Hydrangea

[古赤道説] シルル紀-二畳紀 = 維管束植物出現後 - フローラ起源

1949 前川: 地史的条件考慮 = 古第三紀日本列島 →

沿海州から迫り出した半島(マキネシア)東縁を形成し、大陸と共通フロラを有したが、大陸から独立し現在のフロラを構成
1. 蝦夷・陸奥地域  2. 関東地域  3. フォッサマグナ地域 (重要)
4. 日本海地域  5. 襲速地域

1958-1959 原・金井: 気候・植生加味した区分(前川/原↓。固有種例)
  1. 蝦夷陸奥地域 Yezo-Mutsu region, Y: 北海道(除渡島半島)-北上高地。トドマツ、アカエゾマツ、ミヤマハンモドキ

    北海道区: 針広混交林

  2. 関東地域 Knanto region, K: 東北-関東地方太平洋側。シバヤナギ、アブラツツジ、ミミガタテンナンショウ

    関東区: 南部 = 常緑広葉樹林、平野地 = 落葉広葉樹林(コナラ、ケヤキ等)、山地 = 落葉広葉樹(ブナ、ミズナラ等)と針葉樹林

  3. 日本海地域 Japan Sea region, J: 日本海側多雪地 - トガクシショウマ、サンカヨウ、トキワイカリソウ、キャラボク、アクシバ

    北陸区: ブナ、ミズナラ、ヒノキアスナロ、キタゴヨウ広範に見られ、ヒメモチ、ユキツバキ、ハイイヌガヤ、チャボガヤ等が特徴

  4. フォッサマグナ地域 Fossa Magna region, F: 富士箱根伊豆-伊豆七島(富士火山帯) - ハコネコメツツジ、ハコネウツギ、オトメアオイ、カナウツギ

    中部山岳区: 落葉広葉樹林。針葉樹多く関東区と似るが、ヒノキ、サワラ多く、チョウセンゴヨウ、ヤエガワカンバ、ケショウヤナギ等アジア大陸要素隔離分布

  5. 美濃-三河地域 Mino-Mikawa region, M: 静岡県西部-愛知県・岐阜県東部 - ホソバシャクナゲ、ハナノキ、エンシュウハグマ、シデコブシ
  6. 襲速紀そはやき地域 Sohayaki region, S: 紀伊、四国、九州の太平洋側(固有種多) - キレンゲショウマ、バイカアマチャ、センダイソウ、トガサワラ
    中部支那との近縁種に富む
  7. 阿哲あてつ地域 Atetsu region, A: 岡山県西部-広島県東部(石灰岩地生植物多) - キビヒトリシズカ、アテツマンサク、ヤマトレンギョウ

    西日本区: 東海地方・近畿地方以西本州、四国、九州本島、種子島、屋久島 - 常緑広葉樹林

  8. 小笠原地域 Bonin region, B: ポリネシア区系北端。木本植物の67%固有種 - モチノキ属、トベラ属、シロテツ属、ワダンノキ、オガサワラツツジ

    小笠原区: タコノキ、オガサワラビロウ、ムニンヒメツバキ、アデク、テリハコブガシ、オガサワラグワなどインド-マレイ系熱帯性植物に富む。ミクロネシア系植物も存在

  9. 琉球地域, Ryukyu region, R: 奄美大島以南南西諸島 - リュウキュウマツ、オキナワウラジロガシ、ヘツカリンドウ、ソテツ、ヤエヤマスズコウジュ(種分化の中心)

    琉球区: アダン、ノヤシ、ヤエヤマノボタン、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシなどインド-マレイ系の亜熱帯・熱帯性植物に富む

生物相 (biota)
3区分 = 南西諸島 + 本州・四国・九州 + 北海道

北海道: シベリア‐サハリン系と中国東北部‐本州系の鳥獣の混在地帯

H. 八田線: 北海道 [宗谷海峡] 樺太 → 両生類・爬虫類

10000年よりも古い

northern Hokkaido
北海道植物区系小区分(伊藤 1987)

1. シュミット線(宮部-シュミット線) Schmidt's Line (宮部・館脇 1937):
1869-71 von Schmidt, Friedrich: 幌内川低地帯

植物相境界: 日本固有種北限

1927 工藤佑舜: 亜寒帯-温帯境界

北側: Larix cajanderi, Picea jezoensis
ササ (Sasa)北限
南側: P. jezoensisAbies sachalinensisを交えた森林

2. 宮部線 Miyabe's Line
1933 館脇: 亜寒帯-冷温帯境界 = エトロフ水道

カムチャッカ半島-千島列島中部ウルップ島: 固有種少/木本種少 vs
千島列島南-エトロフ島: 針葉樹林 + 落葉広葉樹

北限: トドマツ・エゾマツ・ミズナラ

3. 石狩低地帯 (河野線)
1947 館脇: 北部森林樹種分布 → 石狩低地帯で二分
4. 黒松内低地帯
1947 館脇: 長万部-黒松内-寿都 → ブナ北限(歌オにブナ原生林)

晩霜南限線 → 境界より南部は本州北部と共通種多

B. ブラキストン線 Blakiston line: 本州・四国・九州 /[津軽海峡]/ 北海道

→ 哺乳類: 約10000年前  ツキノワグマ / ヒグマ
× / ユキウサギ、シマリス、キタリス、クロテン、タイリクモモンガ
ニホンザル、ニホンカモシカ、ノウサギ、ヤマネ、ムササビ、ホンシュウモモンガ、ニホンリス / ×

A 南西小区: 渡島半島ほぼ全域 - 寒地北方系は山岳地帯を南下し、平地はブナ林植物群(本州系)北上
B.C 中央小区: 温帯植物が南西小区より北、東へ拡がる経路 (さらに石狩低地帯で二分の見解)
D 北東小区: 中央背稜山脈以東。平地にエゾマツ・トドマツ林発達。サハリン、千島北方系湿原植物に関連
E 利礼小区: 地質を含めサハリンと関連性強 + 固有種多(高山植物相)
三宅線 (三宅 1919): 九州 [大隅海峡] 屋久島・種子島

昆虫分布境界線

朝鮮海峡線 vs 対馬(海峡)線: 大陸系生物(動物)と日本固有種の分布境界

Ex. 本州側: アカネズミ、カヤネズミ

渡瀬わたせ: 屋久島 [トカラ海峡 = 悪石島-小宝島(トカラ列島)間] 石垣島・西表島

トカラ構造海峡 = 水深1000 m → 大分断され動物相乏しい
動物分布境界線 (渡瀬 1912) Ex. 西表島にモグラいない

蜂須賀線: 沖縄諸島[宮古島-ケラマ海裂-石垣島]八重山諸島

鳥類分布境界線として蜂須賀(1926)提唱 (↔ 渡瀬線)
境界南で貝類や淡水性甲殻類に台湾との共通種多
ヤエヤマサソリ、マダラサソリ北限

ハブ: 南西諸島で不連続分布

動物

A. 大陸分布型
a. 分布の大陸連鎖: 世界の動物分布からSclater-Wallace地理区分作成 1957 Darlington
分布関係 = a) 分布障害 + b) 気侯要囚 + (北極圏、南極圏)
  1. 気侯限界的 climatic limited continents
    a. 北極圏   b. 新北区   c. 旧北区
  2. 旧世界熱帯主部 main old world tropics
    a. エチオピア区   b. 東洋区
  3. 障害限界的島大陸 barrier limited continents
    a. オーストラリア区   b. 新熱帯区   c. 単極圏
生物地理学的連鎖の考え方を比較し模式的に表わす(Udvardy 1969) → 分類群により異なる
北半球では広く連なり、南半球では大陛的的生物相の分離を認め、植物等で南極を介した連絡を示唆
大陸における動物分布を決める主な要因
  1. 地史的気候的制約による分布の大陛限定性
  2. 大陸内障害(山脈、河、砂漠など)による限界
  3. 大陸内地形(大陸中央部と周辺部の地形の単一性複合性
  4. 生態環境(森林、草原等)による局限性
  5. 地史的、気候的変化による部分的絶滅や移動
b. 種以上の分布型 汎世界分布型 cosmopolitan type: 世界規模で広分布
要因 a) 気侯的・環境的・食物的適応幅広い

b) 移動性が自力または他力的、依存的に高い
c) 生活力(生理的抗菌性等)や繁殖力強い
d) 人間社会への依存(利用)寄生性

Ex. イエネズミ ≈ ドブネズミ + クマネズミ + ハツカネズミ

a-dを全て備え、船に潜み各地へ伝播

Ex. 鳥類1. ヨーロッパ原産Passer domesticusSturunus vulgaris

人為的に積極的に放され広まる

Ex. 鳥類2. 崖営巣カワラバト: 中近東、南ヨーロッパ原産

人家依存から半家禽のイエバト(ドバト)とし全世界に広がる

純自然分布汎世界分布は哺乳類では翼手目と齧歯目だけで科段階でもヒナコウモリVespertilionidaeとネズミMuridae(除ニュージランド)、属段階でヒナコウモリVespertilioだけだろう。鳥類では14目25科あり(スズメ目は5科 - 目の進化が新しいことを示す)、属段階で17(スズメ目はAnthusのみ)と多い
B. 地理分布 (geographical distribution)
ウォーレス(Wallace)のものがよく用いられる

体サイズ (body size)

1) ベルクマンの法則 (Bergmann's rule)

恒温動物 → 同種(近縁種)でも寒冷地域に生息するものほど体重大
→ 体温維持に関わって体重と体表面積の関係から生じる
Ex. アジア大陸のクマ

マレーグマ: 熱帯 = 体長140 cm
ツキノワグマ: 暖温帯(日本-アジア) = 130-200 cm
ヒグマ: 温帯-寒帯 = 150-300 cm

体内熱生産量 ∝ 体重(w)
放熱量 ∝ 体表面積(s)
体長 = ls = k1l2, w = k2l3 (k1, k2: 定数)

→ 体長大きくなるにつれ体重当たり体表面積小さくなる

温暖地域: 体温維持には放熱を十分に行う必要

→ 体重当たりの体表面積は大きい方がよい = 小型

寒冷地域: 放熱は簡単であり、体温維持にはそれを抑える必要 = 大型

1') 逆ベルクマンの法則 (成り立たないこと多)

変温動物: 体サイズ ∝ 成育期間 → 寒冷地に行くほど小型

2) アレンの法則 (Allen's rule)

恒温動物 → 同種(近縁種)では、寒冷地域に生息するものほど突出部 (Ex. 耳、吻、首、足、尾)が短くなる
体の突出部は、体表面積を大きくして、放熱量を増やす

温暖地域: 突出部拡大は放熱量を増やす
寒冷地域: 突出部から体温を奪われる + 凍傷

Ex. キツネ類

フェネック: アフリカ-中東砂漠地帯 → 非常に大きな耳
ホッキョクギツネ: 極地 → 耳が丸くて小さい

ハワイ (Hawaii)


1 生物相と固有率

a) 固有種
生物は隔離環境中独自進化 → 大陸にないユニークな種(固有種)多
固有率:

高等植物 = 89%
鳥類 = 90%(渡り鳥・広域分布を除くと78種 - 77種固有)
昆虫類 = 99%

b) 不調和: 特定動植物群(taxa)欠如
植物: 裸子植物(マツ科、ヒノキ科)やブナ科、マングローブ等欠如
陸鳥: 世界現生84科中、6科(カラル科、ヒタキ科、ミツスイ科、アトリ科、タカ科、フクロウ科)のみ定着

Ex. ハワイガラス: 森林に14羽が生存する絶滅危惧種
Ex. ネネ(ハワイガン)、ハワイモンクアザラシ等は野生化したペット等により絶滅危惧種

両生類・爬虫類: ウミガメのみ
哺乳類: 哺乳類相貧弱 (ハワイオオコウモリ1種Lasiurusのみ) - 他は移入
昆虫類: ハムシ類に固有種なし ↔ カミキリムシ類100種固有

羽退化した固有種多 Ex. 南極近くの島の昆虫種: 40%以上が飛べない

風圧仮説: 風圧が強い地域では飛翔は不利
気温仮説: 低気温(と低酸素)では飛翔不可

長距離移動
Ex. 生物: 台風回避行動、空中プランクトン
Ex. 植物: 水散布・風散布

2 植生

多様な地形・気候 → 植生も多様
海岸帯, 海抜0-300 m
直接に海の影響を受け塩分耐性を持つ種出現

波打際: グンバイヒルガオ、ハマゴウ、ネズミノオ → 海岸: モンパノキ、クサトベラ → 海岸林: ハスノハギリ

低地帯, s.l. 15-2000 m = 低地帯(s.s.) + 丘陵帯

低地帯: 特定種広く優占せず、サトウキビ畑、パイナップル畑、牧場、住宅地、ゴルフ場、リゾート地利用され在来植生は殆どない

丘陵帯: オヒア(Ohi'a lehua)やコア優占高木林成立 → 帰化植物多種生育
山地帯, 500-2700 m
a) 1200 m-2200 m, 年降水量 > 2500 mm: オヒア林-シダ・コケ等が樹幹着生
b) より湿性な山地帯で高層湿原となる
c) 少し乾燥した立地でコアの生育見られる
亜高山帯, 1700-3000 m
マウイ島ハレアカラ山とハワイ島マウナケア山、マウナロア山にのみ存在
乾燥気候 → イネ科草原広がる
高山帯, 3000 m-
環境過酷 → コケ類 + キク科固有種(銀剣草)

火山地形 volcanic geography

火山性泥流 volcanic mudflow
標高に関わらず見られる - 年代明瞭

1907, 1916, 1919, 1926, 1950 … → オヒア侵入

溶岩 lava
黒砂海岸: 溶岩起源の砂

3 近親交配防止機構

少数個体から出発する島個体群は近親交配による遺伝子的劣化にさらされる
→ 雌雄異株性進化 → 受粉に昆虫や風が必要 → 遺伝子交流機会増える

高等植物の27.5%が雌雄異株
両性花(雌雄同株)でも花粉散布と柱頭成熟時期を異にし自家受精回避
→ 計72.9%の種が近親交配避ける機構持つ

4 帰化生物と保全

産業
砂糖とパイナップル → 共に新興国参入にシェア奪われハワイ撤退開始
砂糖産業: 1802年始まり - 1850年代は主産業

砂糖栽培 = 大量の水 + 肥料 → 関連産業発達(プランテーション白人オーナー支配)
ビッグファイブという支配階級築き、ハワイ王朝倒し米国と合併

パイナップル: 1903年生産開始 - 1940年 世界生産の80%占める
帰化植物
Ex. アメリカネム (CM「この木なんの木」 > 直径40 m), ハイビスカス(1923 ハワイ州花指定), プルメリア、カエンボク、ゴールドツリー、バニヤンツリー

= 生物学的侵入種: 野性化し在来植生に大きな影響を与えることが問題

Ex. ミコニア: 個体で10万粒/yr種子生産
Ex. ファイアツリー: 共生菌を有し火山近くに進出
Ex. マリファナ: 長い間対外輸出1位農作物と言われた(裏世界, 駆除完了)

他にギンネム、キアベクリスマス・ベリー等

帰化動物
マングース: 雑食性 → サトウキビ畑ネズミ駆除に導入 → 現在は海鳥の最大脅威。ネネ(ハワイガン)も襲われる
ヤギ: 乾燥耐え食料確保に遊牧 → 糞で土壌富栄養化 - 帰化植物侵入促進
野ネコ: 諸島全体50万匹。多固有種の「恐れ知らず」な性質 → ハワイミツスイ、ハワイガラス、ネネ等の絶滅危惧種が現在も捕食される ペット検疫
ペット持ち込は120日間検疫所指定施設で隔離生活を送り、飼育費・検査料$700を支払う。新案では30日間の拘留期間にし予防注射やマイクロチップ皮膚内移植する等条件を満たせば良いが、満たさなければ120日間拘留。外来生物は生態系破壊の恐れがあり、違法生物飼育は厳罰対象

Ex. 1996年 ニシキヘビ飼育男性 → 懲役1年、罰金$25,000

自然保護施設
4国立公園、9国立野生生物保護区、18州立自然地域保護区、自然保護団体管理の10保護区
他に自然公園等様々な保護施設

いつの資料か不明

分布推定 (predicted distribution)


帰納的モデル (heuristic models)

BIOCLM
生物分布データから分布に適した気候条件幅を推定 → 在データ → 潜在的分布範囲推定には使えない (Nix 1986, Buby 1991)
DOMAIN
(Carpenter et al. 1993)
HABITAT

機械学習モデル (machine-learning models)

ニューラルネットワーク
遺伝的アルゴリズム
最大エントロピーモデル = Maximum Entropy Model (MaxEnt model)
対象地域全体で1つの確率分布を探す → 予測性高い

仮定: 探した確率分布のもとで環境条件の期待値と在データの環境条件の平均値が一致する
→ 仮定不成立なら過大予測となる

(Manly et al. 2002)

資源選択指数
生息場所の頻度分布や餌資源に対する選択性等の分析手法
利用可能環境割合に対し実際利用環境の比率 → その環境に対する選択性算出
Manly(α)の選択性指数, αi = (ri/ni)/Σi=1m(ri/ni), i = 1, …, m

ri: 環境iでの確認数の全確認数に占める割合
ni: 環境iが全環境に占める割合
m:確認された環境要因数
α(0, 1), α > 1/m → 選択性あり

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