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(2022年6月2更新) [ 日本語 | English ]

バイオーム (biome)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

Biomeは、そのまま「バイオーム」と発音して使用されるか、その意味から「生物群系」あるいは「植物群系」と訳し使用される言葉である。ただし、(植物)群系は、植物社会学分野では(plant) formationの訳である。
理想的には、最大(地球)規模での植物相・動物相・環境を同一と見なせる範囲に分布する生態系を指す。実際には、植物群集をもとに区分されることが多いことが、訳に表れている。地球規模なので、陸上では、環境としては気候が重要視される

[ バイオーム | バイオーム型 | ツンドラ | 草原 | 砂漠 ]

索引
→ 生物共同体の最大規模区分

主に気候条件から区分された生活帯life zone範囲内に属する生物群集

植物群系に対応する大きさの動物・植物からなる群集(生物群系biotic formation)に限定し用いること多い。一定相観を持つ植物群系とそれに特徴的な動物群により認識される生物共同体だが、その領域内の遷移途中相を含めたバイオーム域の意味にも用いられる。

バイオーム型 (biome type)


バイオームの上位区分 → 類型区分的に用いる (Allee et al. 1949)
表. 各バイオームの特性 (Mackenzie et al. 2001). 様々な分け方があるので、最もシンプルかつ講義で使っているものを記した

バイオーム        純一次生産力 バイオマス 温度      降水量
ツンドラ tundra  低                   低              低         低 (< 250 mm), 主に雪
砂漠 desert       降水量依存    低              変動大  極低(所謂, 乾燥地)
草原 grassland 高                   低                           砂漠-森林中間
森林 forest       高                   高              様々      高

マングローブ (好塩性)

その他の分け方の一例
1. ツンドラ tundra, 2. タイガ taiga, 4. 夏緑林 summer-green forest, 5. 草原 grassland, 砂漠 desert, 熱帯多雨林 tropical rain forest

 更に草原はステップ、プレーリー、サバンナ、カンポ、リャノ、パンパス等のバイオームを含み、大型草食動物により特徴づけられる。しかし動植物間関係は特に追求されず種類組成、生活型(生活型組成 fifeform spectrum、相観 physiognomy)等から論じられる傾向が強い。

世界の植生 world vegetation
世界の植生型(群系) (IUCN 1973): 全生物を考慮したシステム構造に基づく生態系分類は試みられていない
陸上生態系: 植物群落特性が生態系の性格規定 → 植物群落分類をそのまま生態系類別に利用

大陸ヨーロッパ系植物群落学では種類組成に基き群落を細類別するが、情報量の現状では群落型細別に対応させたシステムは難しい。陸上生態系比較に適当な植生単位は群系formationレベルだろう

特殊植生

気候よりも土壌に規定される植生
Ex. 海浜砂丘植生 (coastal sand dune)
Ex. 水中植生 (aquatic vegetation)
Ex. 湿地植生 wetland (s.l.)

寒地荒原と訳す人もいる [温暖化実験 (warming experiment)]

ツンドラ (tundra)


分布: 北極圏全陸地。シベリア・北アメリカ北部   ☛ ツンドラファイヤー
気候
最暖月平均気温 +10°C以下0°C以上。一部永久凍土層がみられる。
最暖月平均気温が10°Cの等温線 → 森林限界: 森林生息限界以北(北半球)。垂直分布にも用いる(s.l.)
南極圏陸地は最暖月平均気温0°C以下だがツンドラとすることもある
植生: 北半球ツンドラ植物群落 = ユーラシアツンドラ群落 + 北米ツンドラ群落

共通種 = イネ科、イグサ。コケ、地衣がよく発達

コケ植物地衣類・小低木主体の草原。永久凍土のため水はけが悪く、ミズゴケ・スゲ等の湿原を作りやすいが、比較的乾いた所にコケモモ・ガンコウラン・ハイマツ等の矮小化木本の混じるお花畑になる

[IGRFによるモデル磁場計算 (偏角計算)]

(松田・星合 1973)

極地 polar regions

低温・強風・乾燥・紫外線・極夜

南極大陸: 地衣類400種、蘚苔類150種、維管束植物2種

極圏 polar circle
66°33’以北および以南。Arctic ocean, Antarctic oceanとその周辺

熱入射角低いため温度低く、季節変動幅比較的小 = 生態系は単純で動態解析等に適

植物種数
南極圏 Antarctic Circle
高等植物: 南極大陸のみで2科2属3種、周縁の島々加えると30種以上

南極ブナNothofagus: 針葉樹的行動を示すブナ
Deschampsia antarcticaColobanthus quitensis ナンキョクミドリナデシコ(4-6種)
自生 = 上記2種 + Poa pratensisP. annua(搬入 - 開花)
ケルゲレン島(仏領): Pringlea antiscorbutica, Lyallia kerguelensis (固有種), Acaena adscendens, Azorella selago

蘚苔類: 蘚類80種 苔類10種 計90種。地衣類: 350種
菌類: 大陸のみでは高等菌5-8種、カビ類 ≈30、酵母菌 ≈ 20、計 ≈ 60
藻類 淡水藻 = 藍藻155種、緑藻142、接合藻(Desmids)44、珪藻304、計645
北極
羊歯植物以上で65科950種

アラスカ極地 57科/153属/466種
カナダ極地 38/115/340
グリーンランド 57科/496種
ソ連極地: 500-600種

カナダ極地: 大型藻類383種、海産プランクトン121種、淡水産珪藻192種、菌類79種、地衣類275種、蘚類304種、苔類78種を報告
+ 高山ツンドラ alpine tundra (☛ 高山帯)
森林限界以上の地域 (s.l.) =

ハイマツ低木林 + 矮性低木群落 + 風衝草原 + 高山荒原 + …

砂漠/沙漠 (desert)


荒原(砂漠) desert: 植物が成育できない立地 =

乾燥荒原 + 寒地荒原 + 海浜荒原 + 転移荒原 + 岩質荒原 + 流気荒原

UNESCOの区分

荒原                   極乾燥地   乾燥地   半乾燥地
降水量 (mm/yr)    0-100     100-300  300-600

砂漠・半砂漠 (desert, semi-desert)

大陸内部

砂漠(乾草原)

昔「沙漠」 = 水の少ない荒野
成因: 低降水量となる要因が重要
  1. 大気大循環上で下降流卓越地域 = 通年高気圧が支配 Ex. サハラ沙漠
  2. 大陸中央部の内陸性気候となる地域 Ex. ゴビ砂漠・タクラマカン沙漠
  3. 沿岸部を寒流が流れる地域? 大気乾燥? 乾燥した海風 Ex. アタカマ沙漠
  4. 内陸から乾燥した風が海岸に向かい吹き抜ける地域 Ex. パタゴニア
粒径区分
泥沙漠
砂沙漠(エルグ erg): 砂地・砂丘
礫沙漠(レグ reg): 礫質広がる乾燥地
岩石沙漠(ハマダ hamada/hammada): 基盤岩石露出した乾燥地 (奇岩多)
沙漠地形
オアシス oasis: 沙漠に点在する泉 → 集落発達することもある
ワジ(涸河) Wadi: 平時水流れず(枯れ川)、降雨時のみ流水ある川
外来河川: 水源沙漠の外にあり沙漠を貫流する Ex. ナイル川・黄河
内陸河川: 外海流出せず内陸部で消滅する Ex. シム・ダリア川 → アラル海

内陸湖: 内陸河川が流入する湖 → 水量減少 ≈ 蒸発 ⇒ 塩湖となる場合

降水微量 + 不安定 → 植物ごく疎らにしか生えない荒地(乾燥地)
乾生植物 xerophyte = 砂漠適応
  1. 逃乾植物: 乾燥を避ける
    a) 稀な降雨時だけ発芽・開花・結実 → 乾燥時は埋土種子

    Ex. 一年生植物 = クウェート砂漠65%の種

    b) 地中植物: 休眠芽発達 - 乾季やりすごす
  2. 抗乾植物: 乾燥に耐える
    a) 耐乾燥特殊形態(多肉・幹球形) Ex. サボテン

    葉(同化器官) = 低温・乾燥弱 ⇒ 広葉 → 針葉 / 常緑 → 落葉

    小葉・葉棘・革質・厚角皮(表皮壁)・有毛
    気孔特殊化: 孔辺細胞凹、副細胞乳状突起・異常肥厚

    (現気候 → 植生規定) + (同環境 ≠ 同植物) → 地史無視できない

    b) 直根・深根、細胞浸透圧上昇 → 土壌水吸収

砂漠化 desertification

砂漠化 = 砂漠化潜在性(土地固有) + 利用過剰(人間活動) + 旱魃・異常気象
当然、自然攪乱でも砂漠化は起こる Ex. 火山噴火

対策: 緑化

人為撹乱 human impact (砂漠化人為原因)
農業生態系の破壊
飢饉 famine → 旱魃 drought, 洪水 flood → 異常気象
● (家畜)過放牧

乾燥地主要家畜: ラクダ、ヒツジ、ウシ、ヤギ

ラクダ、ウシ: 草種一定
ヒツジ: 地上部採食
ヤギ: 地下部まで採食 - 裸地化

焼畑農業 slash-and-burn agriculture
伝統的な熱帯・温帯多雨地域の農業形態 (遷移を応用 - 持続的農業)

火入れ: pH上昇、P(有効態リン)・K増加

slash-and-burn
天然林と焼畑跡地でのフタバガキ科(Dipterocarpaceae)の比率
薪炭材採取

Ex. 難民キャンプ: 燃料として(自然保護区域であっても)周辺森林を利用

近代農業: 作物過剰栽培 + 水資源枯渇

乾燥地灌漑農業 - 蒸発大 - 塩分濃縮 - 不毛化
オアシス農業 - 地下水減少

土地利用変化 Ex. 耕地拡大・工業用地・観光開発 - 森林減少

熱帯多雨林耕地化 - 土壌(栄養分)流亡 - 草原(稀に二次林化)

鉱物資源開発 ☛ 石炭
● 公害 ☛ 酸性雨

草原/草地 (grassland)


Def. 草原 (s.s.) イネ科草本が優占する植生

Ex. 草本被度 > 50% → 世界: 大半はステップとサバンナ

Def. 草原 (s.l.) 草本が多い植生 Ex. 泥炭湿原・水草地含む

= 自然草原 + 半自然草原 + 人工草原

Def. 草地 meadow: 面積比較的小さい草本優占植生 Ex. 牧草地、採草地
自然草原
Ex. 高山ツンドラ alpine tundra (高山荒原 alpine meadow)

沿岸草原(沿岸草地), coastal meadows
乾燥草地 arid meadow
湿性草原 wet meadow
ステップ steppe

ステップ(荒草原) steppe

温帯内陸乾燥地帯に発達 (サハラ等熱帯・亜熱帯砂漠周辺部にも)
(s.s.) ソ連南部イネ科草原 (黒土帯)
(s.l.) s.s. + プレーリ・パンパス・南アフリカ草原・アルカリ地帯草原(パンパス)
夏季高温。冬季寒冷。雨量少
樹木生育せず、イネ科草本(ハネガヤ、コガネカモノハシ)にマメ科・キク科植物交えた草原

→ 高温だと、トゲの多いアカシアやミモザ等の低木やサボテン・リュウゼツラン等の多肉植物疎林になる

プレーリー prairie: 北米大草原地帯the Great Plainsの殆ど
イネ科植物主 (+ キク科・マメ科)
パンパス/パンパ pampas: アルゼンチン-ウルグアイ
= 木のない草原(ケチュア語)

サバンナ(熱帯草原) savanna

自然サバンナ → アフリカのスーダンやコンゴ等

年中高温。年降水量普通200-1000 mm

乾性イネ科草原: イネ科植物(ハリガネガヤ、シバムギ)主体の草原にアカシア等の落葉広葉樹散在
ステップより降水量多 - 森林発達には降雨不足し樹木点在し樹冠不連続

乾燥[強] 草原 - 低木サバンナ - 高木サバンナ - 乾生林 [弱]
_____________--- 野火に強い木本*定着 ---____*: アカシア、バオバブ

⇔ 人為サバンナ(二次的サバンナ): 野火、火入、農耕、放牧等で維持

東南アジア、太平洋諸島、アフリカ、南アメリカ等で見られる

セラード cerrado: ブラジル中央部のサバンナ気候地域の植生
イネ科植物を主とし低木をまじえる草原地域
ベルド veld: アフリカ南部 - イネ科優占(低木散生)

半自然草原 (semi-natural grassland)

≈ 半人工草原 (semi-artificial grassland)
撹乱により維持された草原 - 撹乱を止めれば別な植生に変化
野火・火入
木本植物の侵入を阻害 → 草原維持 (Ex. 焼畑)

自然火災では落雷が原因となることが多い (Ex. アラスカ)

放牧

[ 日本 ]

日本の草原

極相 - 多くは森林 → 草原の殆どは伐採・火入等で維持された半自然草原

Ex. ススキ草地 ×草刈・火入 → 数年で低木・アカマツ等侵入始まる

  1. 高山草原(お花畑) alpine meadow or grassland: 消雪と殆ど同時に開花 - その季節に花多い。地中植物、多年生長日植物、小型木本(ツツジ科)
  2. 草地生湿原 herbaceous wetland Ex. 高層湿原 bog (草原?)
  3. 人工草地: ススキ・シバ草原等
  4. 火山: 火山性荒原 - 火山灰土壌(黒ぼく)
北海道(渡島半島以北) - ススキ・シバ草原発達困難 → ササ草地
ススキ草原
放牧圧に弱い - 採草地に発達
シバ草原
放牧地に発達
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