(2013年4月27日更新) [ 日本語 | English ]
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群集(community)は環境勾配(environmental gradient)に沿い分布帯を作る。標高勾配に沿った分布帯の発達を垂直分布という。分布帯の成因は環境勾配のほかに上下の種間競争も関与する。途中相では温度反応による植生の分化が進まず分布帯の細分化はできないことが多い 垂直分布 = 緯度 + 標高 + 山体サイズ + 独立峰か否か + …
大雪山(北緯44°, 標高2290 m)は山体大きく高山帯は1600-1800 m以上 羊蹄山(北緯43°, 標高1850 m)は独立峰で垂直分布推移は急激で大雪山より南であるにもかかわらず森林限界は低い |
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高山帯 (alpine zone)
亜高山帯 (subalpine zone)
山地帯 (montane zone)
山麓帯 (lowland zone)
森林限界線より上の分布帯 15 ≥ 温良指数 (WI) (最低気温 -30°C) 年中降雪し万年雪も見られる 土壌未風化で基岩が露出し地下水乏しい 半年は雪に覆われ、夏期日照量が多い 森林限界線 timber line or forest line= 垂直分布における樹林帯の終わり → 一般に明瞭風衝変形樹: 限界付近の針葉高木は下部の枝が広がり幹はマスト状で芽が一方に偏した形となる 樹木限界 tree line= 木本植物の定着できる限界
地形・方位 → 風向風速、積雪量等に影響 ![]() ミヤマシオガマ・チョウノスケソウ・イワオウギ・オヤマノエンドウ・ミヤマダイコンソウ・ヒゲハリスゲ・ミヤマノガリヤス等
岩礫地: 種子植物殆どみられない 大雪高山植物群集: ヒース群系所生要素(マルバヤナギ・ミネズオウ・イワウメ・キバナシャクナゲ) + 岩礫地群系所生要素(チシマイワタデ・タルマイソウ・メアカンキンバイ) |
ハイマツ群落(低木林)背腹構造(山スケール) dorso-ventral structure: 本州 - 風上にハイマツ群落。風下にはハイマツ群落ない日射量十分な安定斜面。冬期適度な積雪に覆われ芽が保護される場所に発達 日本: 温度要因からは高山帯は全てハイマツ低木林 → 他要因により他群落形成 ハイマツは寒冷期先駆種として進出し、針葉樹林発達と共に後退し、環境要因が針葉樹林を阻止する高山帯での極相と考えられる ハイマツ群落は北方に行くとササ的性格、つまり他の針葉樹林か広葉樹林の樹幹下に存在する低木とり、ハイマツと他の植物(群)との混成群集となる日本: 高山環境(風、乾燥、雪等)で各群落が分離 + 形態適応 modification + 種内分化 morphosis 各群落分布は様々な要因の総合的結果として決定 Ex. 日本においてハイマツは一般に高所にあるが、これは低所における種間競争を避け、高所に環境適応し分布したとも考えられる。しかし、低所でも、日高蛇紋岩地帯等では高所強酸土壌地域での生存が困難であるため低所でもハイマツ群落が観察される 背腹構造要因: 雪圧差本州: 風下側 = 吹き溜まり形成 → 積雪深2-5 m。ベタ雪で重い → 風下側にハイマツ生育できない 北海道: 軽雪で3 m積もることは少ない → ハイマツ発達可能 = 北海道でハイマツ群落は背腹構造示さない 高山植物 alpine plant日本: 4回にわたる氷河期(100万年-1万年前) = 寒冷地植物南下 ⇒ 気候温暖 = 北上 + 一部の植物は北上せず高山に移動 ⇒ 現在の高山植物環境(激変) = 強風 + 低温 + 強光 (UV含) + 積雪 + 低水分 + 低養分 ⇒
環境適応 Ex. 小型化(花は相対的に大)、地下茎・根発達 = 栄養貯蔵 巨大植物 giant plants一般に高山では標高上昇につれ植物サイズ小型化 → 逆の振る舞いEx. Giant Senecio, Puya |
= 針葉樹林 Ex. シラビソ・コメツガ・トウヒ 最低気温-20°C。降霜期間8-10ヶ月。土壌風化不十分。風・霧強い。日射量少 先駆種pioneerにはカラマツ・ダケカンバ等があり二次遷移初期はダケカンバであることが多い。ダケカンバは亜高山帯先駆樹種として遷移初期に優占する他の侵入種よりも樹齢が長いことが多い 風衝斜面では、縞枯れ現象やそれに近い一斉枯死の現象が目立つが原因ははっきりしない 偽高山帯 pseudo-alpine zone背腹構造: 日本海側 ↔ 太平洋側水平分布・垂直分布 ![]() → 偽高山帯を発見命名 (四手井 1956) ニセコ・カリバ: ミヤマナラがある。北海道でも狩場山等ではブナの代りにダケカンバが生える 表。主な山岳における針葉樹林帯の有無。▲ 針葉樹林帯有、△ 無日本海側 太平洋側 △ 岩木山 1625 (m) ▲ 八甲田山 1590 ▲ 八幡平 1578 △ 鳥海山 2230 ▲ 栗駒山 1628 △ 月山 1979 △ 船形山 1500 △ 朝日山 1870 ▲ 蔵王 1841 △ 飯豊山 2105 ▲ 吾妻山 2024要因: 地史的差(梶 1982): 第4紀第4氷期終了後の気候と植生成立の関係 第4氷期以降の気候変遷: 尾瀬ヶ原における花粉分析と14Cによる年代測定から区分(下表) *: 野尻湖 ![]() |
氷期には現在より6-9°C温度低く、1000 m程度森林限界が現在より低かった ![]()
この空白を埋めるもの → 偽高山帯?
最終氷期針葉樹 = アカエゾマツ類、カラマツ類、チョウセンゴヨウ (鈴木・竹内1989) ![]() |
≈ 落葉広葉樹林(夏緑樹林) 最低気温 -10°C 降霜期間6ヶ月(上部): Fagus crenata・ミズナラ・シラカンバ 最低気温-5°C 降霜期間4ヶ月(下部): クリ・ケヤキ・クヌギ・コナラ 先駆的に林を作る → アカマツ・カラマツ・シラカンバ等 本州中部 ≈ 標高700-1700 m |
= 低地帯, 低山帯, 丘陵帯 ≈ 常緑広葉樹林(照葉樹林) 日本南部: シイ・タブノキ・カシ・クスノキ / ツバキ |
富士山 → 地史的には新山 樹木限界に匍匐カラマツ
ハイマツ: 一般に森林限界構成、新生土壌に侵入遅いYlarr; 匍匐型カラマツが森林限界構成(説) 垂直分布3776 m2400 m: 森林限界 _______↑ 亜高山帯 1600 m ↓ 山地帯 |
溶岩台地に植物が育ちはじめた痕跡生命力のない台地に、最初に宿る植物たち溶岩に覆われて間もなくは、土壌が形成されていないため、植物の姿を見ることができません。しかし、次第に地衣・コケ類が侵入して溶岩の表面を風化させます。さらに生きものの遺体が加わることにより、土壌が形成されていきます。 この場所の足もとでは、溶岩上に地衣類やコケに覆われ始めたころのようすを見ることができます。 写真: キゴケ / ハナゴケ / カリヤスモドキ, 花期は8-10月 溶岩流上に森が発達する過程での、このゾーンの段階:初期溶岩台地 → 地衣・蘚苔類の侵入 → 草本群落の発達 → 極相林 2018年12月9日 山梨県富士山科学研究所にて |
標高 (m) | 極相林 | 途中相林 | 草原 | 夏期平均気温 (°C) | |
4000 | -雪線- (気候的雪線) | 0.5 | |||
2500-3000 | ハイマツ | カラマツ | ウシノケグサ, コメススキ, イワノガリヤス, ナガハグサ, ササ |
構造土 高山草原・ハイマツ群集 |
+12 (年平均0) 氷河周辺気候 |
1500-2500 | シラビソ | ダケカンバ | -森林限界 (2500 m)- 針葉樹林 |
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1000-1500 | ブナ | シラカンバ | シバ, ススキ, トダシバ, ネズミノオ, アズマネザサ |
落葉広葉樹林 | 森林気候 |
500-1000 | カシ | アカマツ | 常緑広葉樹林 | ||
0-500 | シイ | コナラ |
図. 極相林・途中相及び草原の垂直分布帯(蘚苔類・地衣類帯を除く)
2290 m _____ ① コマクサ, ハイマツ 1500 m _____ ② ダケカンバ, エゾマツ, トドマツ, アカエゾマツ 800 m ______ ③ ミズナラ, ミズナラ-トドマツ
図. 北海道大雪山における一般的な植生の垂直分布(模式) |
![]() 図. キナバル山(北緯6°)森林垂直分布 |