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(2022年11月4日更新) [ 日本語 | English ]

個体群 (population)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

個体群 population, noun

古いメモで重要でもないがpopulationの訳が分野により異なることは注意
Populatio (L.) 語源 = people (Webster's 20th Century Dictionary)
  1. 人口 (社会学): 一定地域(Ex. 国や県等行政地域)内住民、又はその総数。Ex. 京都市人口、マルサス人ロ論
  2. 集団 (遺伝学)個体群 (生態学): ある地域内の同種個体集団all individuals of the same species in a given area
    → 空間的・時間的な個体のまとまり(部分的な個体の出入りあるが、多少とも独自性を持ち盛衰) (大竹1970)
  3. 母集団(統計学): 調査対象となる集合全体
同種個体群: (遺伝情報交換可な)特定空間占める同種集団(普通この意味)

統計学的関数で表現される特性 → 個体群特有のもので、その集合体内の個体がもつ特徴ではない
特性: 大きさ size、密度 density、分布 distribution、出生率 natality, birth rate、死亡率 mortality, death rate、齢分布 age distribution、生物繁殖能力 biotic potential、分散 dispersion、成長型 growth form、規格の変異、社会行動 social behavior (aggregation behavior, mating behavior)等

個体群: さらにその生態に直接関係する遺伝的特徴 population genetics

→ 適応性adaptation、(ダーウィン流)繁殖適応度reproductive fitness、種維持persistence (Odum 1971)

異種個体群: 2種以上の集まり Ex. タンポポ集団、モンシロチョウ個体群
. 時間・空間の対応による個体群規定
                                  時間  短 → 長
    生活史中のある令期    1生活環         数-数10世代       地史的年代
空  ある行動の遂行され |行動に規定さ|
間  る生息場所内区画   |れた個体群  |
                                   |生殖場所の個体群:   |
狭  生息場所                       |個体群生態学研究対象||となるディーム      |
広  多生息場所含む地理                               [地域個体群]
    的に区画された地域                               |          |
    -亜種分布区域                                         |亜種個体群|
    種分布区域                                                    |種個体群|

[ 分散・分布 ] [ 個体 | 群集 | 環境 | 生態系 ]

索引
種個体群 species population
亜種個体群 subspecies population: 同種だが環境条件等で変化した亜種群
地域個体群 local population
生息場所単位個体群 habital population: 種が存続していける最小の集まり
行動規定個体群 behavioral population
自然個体群 natural population
自然個体群認識の困難性 (⇔ 実験個体群)
Ex. 誘蛾灯に集まる蛾: (空間的)範囲不明瞭で複数個体群の可能性
Ex. 漁獲統計: 空間限定されない
Ex. キャベツ畑: モンシロチョウ個体群ではチョウが畑のどこにやってくるかは任意と考えられる
    □□□□□□
    □□□□□□
    □□□□□□
    □□□□□
この中にやってくるモンシロチョウと産み付けられる卵(標本調査)
┏━━━━━━━━━━━┓
________〇⇔〇
___〇⇔〇⇔〇__自然集団
┗━━━━━━━━━━━┛ 種
個体群は自然状態で連続して存在 ↔ 種の分布はまちまち
実験個体群 experimental population: 一定条件下で実験的に作った個体群

[生存可能最小個体群 (minimum viable population)]

個体群密度 (population density)


個体数 number of individuals: 密度測定・推定に必須となる変数

全数カウントは困難なこと多 - 様々な推定手法

Def. 個体密度 density, D = 個体数(N)/生活空間(S)

ある特定の時間や空間に存在する個体群の大きさ
通常単位: 地表生物 = 単位面積あたり(N/km2等)。水中・土中生物 = 単位体積あたり(N/cm³)
社会生物学的立場 vs 数量生態学的立場: 背景が異なる2つの流れ

餌当たり密度 intensity (動物特有)
バイオマス(生体重) - 現存量 standing crop

個体数測定法

直接法(全数調査): 区画法 quadrat method
直接計れる場合 → 一定面積区画作り、その中の個体数数える

植物、固着動物、土壌動物等、区画への出入りが殆どない集団のみ可能

円筒法 cylinder metho (枠からの逃げ出しを防ぐ)

間接法
捕獲法
機械的方法 Ex. 捕虫網(スイーピング sweeping)、吸虫機(suction catcher)、

ドレッジング、篩、乾式ロート法 Berlese funnel or Tullgren funnel

生物的方法 Ex. 誘蛾灯、餌罠、糞・足跡

個人差・罠種類差が捕獲効率に影響 - 違い埋める工夫必要
SPUE, sighting per unit effort: 狩猟の出猟(努力量)あたり目撃回数
CPUE, catch per unit effort: 罠猟の時間(努力量)あたり捕獲個体数

CPUE ≠ 捕獲効果(率) = 捕獲効率 × 面積当り捕獲努力量

+ マーキング法(標識法): 個体識別 - 全数推定等に必要
個体標識 individual marking: 各個体を識別する標識

↑↓ 一部個体標識など中間的な方法

グループ標識 group marking: 全てに同じ標識
前提(1) 標識個体は未標識個体と同じ行動をとる

(2) 標識脱落はない(または低脱落率か脱落率推定が可能)
(3) 標識により個体間社会関係に異常が生じない

標識方法
1. 塗料 (油性ペン、スプレー): ラッカー、プラカラー等がよい
2. 餌(ルビジウム標識)
3. 個体標識  a. 色 × 点  b. 穿孔・切除・焼却  c. 足輪・タグ

両生類・魚類: 指・尾・尾鰭の一部を切除(必要なら再生阻害剤塗布)
昆虫等: ペイント多

痕跡
大型動物(哺乳類): 足跡・糞は重要情報 - 消失速度分かれば個体数推定可
糞塊密度

dF/dt = A - bF (森下・村上 1970)

F: 糞塊数, A: (単位時間当たり)加入糞塊数, b: 瞬間消失率

F = A/b·(1 - e-bt)
野外糞塊数 = 一定 ⇒ dF/dt = 0

A = bF

H := 1個体排泄糞塊数, N := 個体数 ⇒

N = A/H = bF/H

補正: F' = 糞塊発見数 ⇒ α = 糞塊発見率 (≤ 1) ⇒ F = F'/α

足跡(痕跡)密度
捕獲法・痕跡利点: 比較的低コスト + 広域密度推定可

個体数推定

(標識)再捕獲法 capture-recapture method
1894 Petersen: 魚類. 1930 Lincoln: 鳥類
閉鎖個体群における標識個体を用いた動く動物個体群
Ex. 小さな沼でオタマジャクシ(幼生) 1000匹捕獲 - 尾一部切り沼に戻す

x: 沼内の幼生全個体数 → 1000/xの確率で尾を切られた標識個体
数日後、2000個体を再捕獲し8個体が標識個体
仮定: この間に死亡・移出入なく、幼生は自由に移動した

→ 1000/x = 8/2000 ∴ x = 250000 (匹)

⇒ 補正: 必要なこと多
1. 小標本(再捕獲標識個体少)
2. 消失・加入 - これらが起こらないことは極めて稀
3. 標識脱落
ジョリー・セーバー法 Jolly-Seber method
1965 Jolly. 1965 Seber: 独立に発表 (FORTRAN)
開放個体群に対応 - 再捕獲を反復することで精度を上げる

捕獲毎に異なる標識 - 同一個体に複数標識

ジャクソンの正法・負法 Jackson method
開放個体群に対して一度しか放飼や捕獲ができない - JS法不可
正法: 一度に多数の標識個体を放す (未標識個体生息数安定な場合)
負法: 数回に分け異なる標識を付けた個体を放し一斉捕獲

+ 修正ジャクソン法

REST
自動撮影カメラ活用 = 動物の放射赤外線検知し動作(≈ カメラの前通過)

カメラ性能・設置個所等が密度推定に影響 = 幾つかの仮定
カメラ撮影頻度 (relative abundance index, RAI)

= 100 × 独立撮影回数 / 努力量(= 有効動作期間)

密度推定式: 生息密度, d = E(YE(T)/sHa

E(Y):撮影範囲内侵入回数期待値
E(T):1回の侵入での滞在時間期待値
s:撮影範囲(正三角形)
H:調査期間
a:活動時間の割合

[地理情報システム (GIS)]

分散・分布 (dispersion)


分散構造 distributional pattern
群集内での各種の配置(散らばり方)

分布: 大地域 - 気候、土壌等 ⇔ 分散: 小地域 - 種内・種間競争等

dispersion
分布様式
規則分布 regular distribution: 個体同士が排他的repulsiveに分布
ランダム分布 random distribution: 各個体が全く独立して機会的に分布
集中分布 contagious distribution: 個体同士に引き合いattractive分布

個体群空間分布

全数調査 = 理想 ↔ 標本調査 = 現実
p(r) = NCrprqN - r

N: 総個体数
A: Nの生息場所の全面積
S: Aを等面積の小区画に区切った1区画
r: Sの中の個体数
p(r): S中にrだけの個体が見出される確率
p: 任意の1個体がS中に表れる確率
q = 1 - p

pが非常に小さくNが非常に大きいとき
p(r) = (e-mmr)/r!
pが非常に小さくNが非常に大きいとき

m: 小区画S中に見出される個体数の平均値
e: Poisson定数 (ナピエルの常数)
頻度分布の起こる要因
1. 環境異質性 heterogeneity
2. 生物自身が示す aggregation
3. 習性上の過程

distribution
ポアソン分布__________集中分布____________均等分布
Iδ指数 (Morisita's Iδ index), Iδ =
Case. 個体数: δ = Σi=1qni(n – 1)/{N(N – 1)}

q: 調査区(区画)数 number of stands
ni: 種iの個体数 number of individuals of species i
N: 総個体数 total number of individuals

F0 = {Iδ(N - 1) + q - N}/(q - 1) (F-test)

Case. 被度 Iδ(p) = qδ(p) = q·Σi=1qpi2/pavg2 (検定方法は知る限り存在せず)

(Lloyd 1967)

m*-m法(平均込み合い度) (mean crowding)
m* = Σi=1qni(ni – 1)/Σi=1qni = Σi=1qni2/Σi=1qni – 1 ⇒

m* = m + (σ2/m - 1)  ∴ m*/m = 1 + (σ2 - m)/m2

m* = α + βm  (m: 方形区あたり平均密度) (Iwao 1968)

α: m*軸における切片 &eqiuv; 基本集合度指数
β: 勾配 ≡ 密度-集合度係数

ランダム分布 random distribution
一定の平均値を持つ集団がランダム分布
Iδ一定の集中分布
一定の平均値を持つ集団が集中分布
完全一様分布
完全一様分布
方形区収容力が限られる場合でランダム分布

α = 0, β = 1
α > 0, β = 1
α = 0, β > 1
α > 0, β > 1
m ≤ 1, α = 0, β = 0
m ≥ 1, α = -1, β ≈ 1
α = 0, β < 1

個体群動態 (population dynamics)


個体数の安定性stability: 種により変動主要因異なる

Ex. 無脊椎海産動物: 気候条件による死亡率。鳥類・哺乳類: 種内要因

調節機構

種内要因: 競争competition、相互干渉mutual interference
外部要因・天敵 - monophagous, polyphagous + 捕食者、寄生者、病原生物
密度依存遅延過程 delayed density-dependent processes
密度非依存過程 density-independent processes 密度依存逆過程 inverse density-dependent processes or disturbing processes

環境抵抗 environmental resistance: 個体群増加抑制環境要因の総称

食物、生活空間、排出物、伝染病等

個体群変動 fluctuation: 変動を知る方法 - 出生率・死亡率・性比・年齢構成

= 個体群とそれを取囲む諸要素の総合化された形: 自然環境下 → 変動幅があり、その枠付けの働きをする過程を"条件付過程 conditioning processes"と呼び、"環境収容力environmental capacity"と密接な関係

生命表 life table (mortality table)

ある生物の生殖段階や最高寿命までの生存率を示したもの

時間別生命表 time specific life table: ある時間断面での生命表

コホート(同齢個体群、同時出生集団) cohort: ある特定期間に出生した個体の集まり → 生命表作成の基礎

齢別生命表 age specific life table ≡ コホートの生命表 cohort life table

生存曲線 survival curve
生命表をグラフ化したも → 発育に伴う生存個体数減少が視覚的にわかる
1974 Deevey. 1958 Bodenheimer: 3型区別

少産・初期死亡低いものは人間や脊椎動物の一部で当てはまる
curve

対数軸 → 死亡率一定なら直線となる

生理的寿命: 理想的条件下生存率
生態的寿命: 環境抵抗を受けた生存率(自然条件下生存率)

親による子の保護の進化方向

↑ A: 大形哺乳類等
↑ B: 野鳥等 → 死亡個体数一定
↑ C: 魚類、水生無脊椎動物等

期待余命(平均余命) life expectancies: x歳個体における予測される余命

平均寿命 average lifetime: 0歳個体の期待余命

機会的な個体群と平衡的な個体群

(Opportunistic and equilibrium populations)
r淘汰とK淘汰 (r-selection and K-selection)
r淘汰: 個体群成長率や生産力を高める方向に働く = 多産多死

r戦略 (r-strategy) - 不安定環境(撹乱)適応型

K淘汰: 資源利用効率を高める方向に働く = 小産小死

K戦略 (K-strategy) - 安定環境適応型

齢分布 (age distribution)

齢構成 age structure: 個体群を発育段階や年齢別区分し数や割合を示す
年齢ピラミッド age pyramid

____→ 個体数 →
curve
発展型 pyramid_________安定型 bell_________衰退型 pot

安定齢分布 stable age distribution
lx, mxのスケジュールが一定ならば個体群の大きさが増加、安定(固定齢分布)、減少いずれの場合でも結局安定齢分布を示す(Lotka 1922)
出生数が毎年同じで、同年に生まれた子供グループが常に同じ生存曲線で成長すれば、齢構成は生存曲線と一致し安定するが、個体群には経年変動があり出生数や死亡要因の種類と強さは毎年異なり、多くの個体群で齢構成は生存曲線とかなり異なる形になる
⇒ 齢構成形から、個体群未来予想可

発展型: 若齢層多いピラミッド型は、若齢個体発育と共に生殖可能個体が増え個体群は成長している
衰退型: 一方、若齢層少なく老齢層が多ければ個体群の急速衰退を示す
安定型: 老齢個体割合が若齢個体生存曲線からの予想割合とほぼ一致
日本

ゼロ純成長等高線 (zero net growth isocline, ZNGI): 生物(個体群)の成長が止まる資源量を表す曲線
資源抑制 resource control
数量生態学 numerical ecologyの手法によって広く研究される
resource h(t) = constant
dN/dt = r(1 – N/k)Nh
h* > rk/4 → カタストローフ
h* =rk/4

h(t), rete of harvesting

実際にはrの求め方が不明

Ex. 漁獲量算定はこの式から導けない
Ex. h = aEN (E: ボート数, a: 能力)
hの上限はrである

resource

増殖率が小さいとき dN/dt = F(n) – h。ここでh = aEN → カタストロフィックに起こる

(Saito et al. 2007)

餌資源と個体群動態
x1 = (1 + α1)xt-1 + α2At-1 + εt

x1: t年の個体数 (対数変換値)
α1: 密度効果係数
xt-1: t年の1年前の個体数 (対数変換値)
α2: 餌の効果係数
At-1: t年の1年前の餌量(数) (対数変換値)
εt: t年の誤差項

増殖 (breeding)


純増殖率および増殖価

R0: 総繁殖率Net reproductive rate
≡ ある平均的な新生個体が一生に生む0齢の子孫の平均個体数
1成体♀が次世代に残す成体♀

R0 = Σx=0lxmx or R0 = 0lxmxdx

lx (齢別生存率) < 1: 実数として10000以上欲しい
R0 > 1: 増加, R0 = 1: 安定, R0 < 1: 減少
クラッチサイズ clutch size: 産腹個数(一腹子数, 一腹の子) litter

繁殖価 vx (reproductive value)

i) R0 = 0   vx: 将来の子の齢別期待値 ⇒

vx = Σt=x(lt/lxmt or t=x(lt/lxmtdt

ii) R0 ≠ 0   vx: 将来の子の現時点での価値 ⇒

vx/v0 = (ert/lx)Σt=xert·lt·mt or (ert/lx)xert·lt·mtdt
vxを実験的に現在を将来のある時点で定量して導く場合

vx = mx + Σt=x+1w(lt/lx)mt

残存繁殖能力 residual reproductive value, vx* ≡ 右辺2項

vx* = (lx + 1)/lx·vx + 1

→ 生残と繁殖のスケジュール: 個体群ごとに異なる (vx curve)

内的自然増加率 intrinsic rate of natural increase ≡ r

単位(個体)当たり瞬間増殖率

r = bd  (b: 出生率 birth rate, d: 死亡率 death rate)

移入i, 移出eのある場合は r = (b + i) – (d + e)

r = 0: 安定個体群サイズ, r > 0: 増加, r < 0: 減少

実験的には Σxe-rxlxmx = 1 (R0 ≈ 1)

r ≈ ln(R0/T), T: 世代時間 - これより導く
R0 > 1 → r > 0, R0 = 1 → r = 0, R0 < 1 → r < 0
最適条件下でR0が最大となるときのrrmaxとする

密度依存と非依存 density dependence and indepencende

K = r/h    h: 一個体存在することにより低下する増加率

       K: 個体数がこれ以上増加しない個体数(飽和状態)

1953 Haldane: 密度-増殖率関係
平衡密度equilibrium density: 個体群が一定密度範囲で変動時の(平均)密度

dN/dt = rN·(KN)/K = rN - rN2/K

1. 密度非依存要因 density independent factor Ex. 撹乱・天変地異
dynamics 2. 密度依存要因 density dependent factor (ddf)
a. 正の密度依存要因 direct ddf

密度依存要因 (s.s.) – 種内競争、捕食者・寄生者・病原菌
密度上昇 → 死亡率増加・増殖力低下

b. 遅れの密度依存要因 delayed ddf

寄生者 ↔ 寄主 捕食者 → 飼種
dynamics

c. (逆の)密度依存要因 inverse ddf

低密度 - 集合効果

密度効果 density effect

Def. 個体群増殖率に及ぼす密度の影響

相互干渉 mutual interference +
生物的条件付け biological conditioning + α

Alee型密度効果: 中密度で最大増殖率 → 低(高)密度: 逆(正)依存

Ex.   |_____〇_____|    ×2|__〇_____〇__| ×2|_〇_〇_〇_〇_|
        |_____〇_____|  ×1/2|___〇___|        ×1/2|_〇_|
等しい密度効果を得られる時にのみ密度効果とする

密度効果およびそれに類似・関連する概念
1941 Uchida: Callosobruchus chinensisの条件付conditioning実験

種内競争 intraspecific competition 認める

卵   産卵数減少 – 成虫(p)の生理的活性低下

孵化率減少 – 卵死亡 (成虫と衝突、踏付)
孵化率: 低密度でも減少 → 交尾相手見つからず未受精卵多

幼虫・蛹  孵化虫数 ↔ 幼虫・蛹死亡率

全体ではロジスティック増殖率を示す個体群上でも各密度で要因異なる
dynamics 増殖密度効果の他の要因 → +: D (death) + E (emigration), –: B (birth) + I (immigration)
個体数変化 → 相変異 (Ex. バッタの渡り)

集合効果 effect of aggregation: 集合体の存在が、生存・発育に影響を与えること

Ex. ハバチ・チョウ・ガの幼虫: 集団サイズが小さいと生存できない場合が多く、成長率も下がることがある
表. Euproctis pseudoconspersaの集合効果 (水田 1960)

             死亡率                       幼虫期間  蛹体重
幼虫数  齢                               (日)          (mg)
/集合      1           2    3-6   7     ♀      ♂    ♀    ♂
      1       9.28     0      0    0     54      -   130   -
      2     100.0      -      -      -      -       -      -     -
      5       60.0   21.0   0    0     51    48  142  67
    10       44.0     7.1   0    0     46    44  126  68
    20       50.0     0      0    0     47    44  113  55
    40       15.0     0      0  20.6  50    47    89  57

集団サイズ小 → "噛み付く"や"喰い付き"できず1, 2齢の死亡率高

相変異 phase transformation (variation): 密度効果(集合効果)の一種
他個体が与える刺激量 → 個体群の相決定

刺激(接触刺激が多い)遮断 → 密度効果に関係なくある相示す

実験系(閉鎖環境系): 高密度諸効果 = 負要因に見える ⇔
開放系: 産卵数・個体重減少は飛翔能力増す等の正要因 Ex. 移動に有利
Ex. ワタリバッタ等の相転移・集団移動 (種により他の段階的型もある)

密度低 = 孤独相 phase solitaria ⇒ 高 = 群居相 phase gregaria

. ワタリバッタ相転移 (Krebs 1978)        

群居相    
あり

昼間




黄と黒
少/大型卵



♀ ≈ ♂    

孤独相    
なし

夜間




緑一色
多/小型卵



♀ > ♂    

____________
集合性
移動性
成虫飛翔
卵・孵化幼虫・
脂肪水分含有量
発育初期脂肪
発育速度
幼虫色彩
産卵数
頭部
前翅
後腿節
雌雄サイズ差  

____
行動


生理





形態


____

Iwao (1971): density effectは効果負、effect of aggregationは効果正とすれば用語廃止すべき

こみあわなさすぎ under-crowding (過疎)
こみあいすぎ over-crowding (過密)
適度のこみあい moderate crowding

低密度の影響: 閾値現象
高密度が常に悪影響を及ぼすとは限らない → 生物個体間の協力的相互作用(アリー効果)
密度低すぎると交尾相手が見つかりにくいために繁殖に支障が出ることもある。このような低密度の悪影響が現れているときの個体群動態式として

dx/dt = rx(xa)(1 – x/K) … (1.6)

If 0 < a < K → 平衡点 equilibrium point はdt/dt = 0から求まるよう3つ存在

dx/dt = rx(xa)(1 – x/K) = 0
x = 0,x = a, x = k

x = 0,x = kはともに安定平衡点、中間のx = aは平衡点である。低密度で生物が侵入しても増加できない(x < aのとき)。また、x = a以上で侵入すると個体数は安定点x = kに収束する。このような、侵入に伴う閾値現象は安定平衡点が2つある双安定なbistableモデルによって表される

low density
低密度の悪影響があるときのいき値現象。(a) r = 0.03, K = 100, a = 20。少数個体が侵入したのでは定着できないが、十分な数の個体から出発すると定着できる。(b)増加率と個体数の関数関係。3平衡点のうちx = 0とx = Kとは安定でx = aは不安定である

野外個体群あるいは自然個体群における密度
1950年代以降: 密度効果の自然個体群における重要性について激しい論争

論点: logistic curveは自然個体群で成立するか ⇒ 密度の平衡点が存在するか
dynamics
この振幅を平均と見れば平衡点(K)、見なせなければKではなく論争の的
自然個体群: 開放系・複雑な要因

1933, 1944 Nicholson: 平衡点有、密度効果重要

個体群平衡は個体群自己制御 self-adjustment, overshooting, and undershooting によってなされる。個体群の生活必須資源(特に食料)が自己制御の主要因
密度非依存要因は、密度変化に大きな影響を与えるが、それは自己制御によって平衡点を変えるには至らず、平衡を重視すべき

密度依存-密度非依存は明確に分けられる(現在否定)
個体群で生活必須資源が自己制御要因となる - 多くの例外
自己制御は群淘汰の一種と考えられている。群淘汰自体が異例であり、Nicholsonの主張は再考必要

1954 Andrewartha & Birch: 平衡レベル存在否定 + 密度効果重要ではない

密度依存(要因)、密度非依存(要因)の区別に意味ない → 密度変化要因は複雑で区別不明確なこと多
個体にとっての環境は(気象、食物、同種あるいは異種個体間関係、病原生物、棲み場所)などこれらの要因が複合して成立しているため、むしろその変動を重視すべきである

現在: 密度効果はあるとする。かつ、密度非依存効果も存在する。多くの個体群は、これらの相対的な重要度関係が異なることによって成立している

自己間引き self-thinning に関する規則

仮定: 資源 = 生息空間サイズによる制限 / 個体群(植物や固着性ベントス) = 初期密度高

→ 個体成長につれ種内競争↑ → 弱い個体死亡 → 密度↓

Law. -3/2乗則 3/2nd power law

自己間引生じる状態での個体群密度D-個体平均重w関係式

⇒ logw = -3/2·logD + k logw = -α·logD + k

k: 定数 → 植物個体群ではα ≈ 3/2が一般的 → -3/2乗則

3/2乗則が成立する生物学的理由

光等が成長制限要因 → 植物重量wより植物個体の占める面積(占有面積s)が密度効果に直接的に関与

wl3, l: 植物体長(樹高・葉長・直径等) → 等成長 isometry
sl2 → 等成長 ⇒ ws3/2
s-1 D, D: 個体密度 (個体密度100%被覆面積に達するとDsは反比例) ⇒ wd-3/2

  1. 植物個体は時間とともに平均サイズ増加
  2. 自己間引直線到達までは密度依存的死亡起こらない
  3. 個体死亡は、低密度個体群より高密度個体群でより早い時期に始まる
  4. 同じ平均サイズを持つ植物個体は、高密度個体群より低密度個体群の方がより若齢
  5. 最終的には、低密度・高密度個体群とも個体重増加と死亡釣り合う(α = -1)直線に達する
Ex. 一斉造林地 (上式を林学的に変形しただけ)

胸高直径断面積合計(A): A = constant
平均胸高直径(d)-密度(D): d = k·1/√D, k = constant
平均樹高(h) - 密度: h = k·1/√D

Law. 最終収量一定の法則 law of constant final yield (経験則)
仮定: 利用可能資源量一定 → 全資源を効率的に利用

→ 個体群現存量は密度に関わらず一定 → 密度 ∝-1 個体あたり現存量
wD = c, c: constant
→ logw = α·logD + k, α = -1

昆虫類の個体数変動と種内機構
種内密度が競争に関与 = 個体数密度調節に競争が重要な役割

→ 生活必要資源requisite resource供給量が需要量を下回ると密度の自己調節self-regulationを呼ぶ
種内調節機構としての昆虫(動物)の生理機構 Ex. 食糧不足等の混合いすぎにより過密over crowding、幼虫発育遅延、産卵数低下等

小哺乳類の個体数変動と種内機構

草食性小哺乳類やその捕食者の周期(規則)的変動 → 要因: 種内機構
Christian説: 個体間干渉 → 社会心理的ストレスsocio-psychological stress重視
Chitty説: 縄張・攻撃性に関連する遺伝的多型の存在とその自然淘汰

a) Socio-psychological stress hypothesis (Christian 1961)

stress hypothesis
Christian自身、社会心理圧力に対する反応が”脳下垂体-副腎系”という経路のみを通るとは考えていないが、中枢神経系自体のもつより多面的な機能に対する影響が重視されつつある(Myers et al. 1971)。

b) 遺伝的行動多型説(Chitty 1960)
  1. 空間占有性をもつ動物では密度増加と共に好適な住み場所が減り個体間相互干渉が増す
  2. この様な状況下では自然淘汰は主に攻撃性の強い遺伝子型をもつ個体を残すように作用し、その結果相互干渉は増し、増殖率は低下する。この様な過程が何回か繰り返されれば個体群を構成する個体の攻撃性のレベルは高まり密度は減少するであろう
  3. 攻撃性の強い個体の選択は恐らく一般的な生活力の低下を伴い、混み合い以外の環境要因に対する感受性を高めるから、気候条件悪化などの偶発要因によっても密度が低下する
  4. 密度が低下して個体間の干渉がなくなれば、攻撃性以外の属性に対して自然淘汰が働き、その場所の一般的な生息環境に適合した遺伝子型が増え、再び個体数の増加が始まる

増殖ポテンシャル (Chapman 1928)

1. 生存ポテンシャル biotic potential

a) 増殖ポテンシャル reproductive potential
b) 生残(栄養摂取, 保護)ポテンシャル survival (nutritive, or protective) potential

2. 環境抵抗 environmental resistance
→ この2つのバランスが個体数の多少を決定
1931 Zwoelfer
N2 = N1e·f/(f + m)·(1 – W/100)

N1, N2: 相続く2世代の個体群密度
e·f/(f + m): biotic potential
W: 環境抵抗力 environmental resistance W = 0 → ideal egg production
f/(f + m): sexual index (性比)
absolute biotic potential
⇑↓ W = 0のとき最も好適な状態
partial biotic potential

平衡種とオポチュニスト種
Equilibrium species and opportunistic species (MacArthur 1960)

平衡種 equilibrium species: 時間的に安定 ⇔ オポチュニスト種 opportunistic species: 変動を繰り返す
この2種のタイプがある
ri = 1/Ni(tdNi(t)/dt : 両辺積分
logNi(t) = logNi(0)+ 0tr(t)dt (logNi(0): 初期値)

繁殖戦術の進化 (evolution of reproductive tactics)
一生の間の繁殖成功度を最大化するように淘汰されてきた

一回繁殖 semelparity Ex. 一年生植物、昆虫、サケ
多数回繁殖 interoparity: 多年生植物、多くの脊椎動物

産乱数の違い: 多産 = アメリカスギ(数百万)、マンボウ。少産 = カシ類(数百-数千)
同一種内産乱数変化: 繁殖開始時期 - 早い繁殖開始 vs 繁殖開始の遅延

死亡率と老齢の進化 evolution of death and aging

1975 Medawar: 老衰の進化

1000本の試験管: うち100本を毎月破損し、100本を新しく供給する
900/1000の生存確率 → 安定分布になる

A. こわれやすい – 淘汰
B. 後らせる = 老衰 → 次世代に対する貢献度

有害な遺伝子発現を遅らせることは次世代に悪質な影響を及ぼす

寿命(老衰と死亡)
繁殖スケジュールと関係がある size

出生率高 → 死亡率高
出生率低 → 死亡率低
rmax ≅ ln(R0)/T
R0 = Σlxmx

大型化

利点: 捕食されにくい, 物理的環境の影響を受けにくいhigh tolerance
欠点: 物質-エネルギー要求量高い, 隠れ場所等得にくい, 大きくなるのに時間がかかる(定向進化*)

* 大型化(定向進化)の利点は不明確(議論中)

大発生 large outbreak

個体群周期 population cycle


Def. 変動量が偶然による期待値より小さい間隔で反復生起する現象

普通は、個体群密度は一定ではなく、季節や年により常に変動

Ex. 一腹子数が多い野ネズミ類個体群密度は、新生個体が現れる繁殖終了期に最大、次の繁殖期前に最低 ⇔ 一腹子数少ない動物や縄張りを作る動物は、個体群密度が一年を通じ比較的安定
個体群密度経年変動は、主に気候・気象条件変動に誘導される。密度効果により個体群成長を抑制しにくい種や、親による保護が余りなく早死型生存曲線を示す種ほど自然条件の影響受けやすく、個体群密度経年変動も大きくなる。その年の餌や天敵密度も、各生物種の個体群密度に影響し、豊作年・凶作年差が大きい木の実等を主な餌とする動物個体群密度は、しばしば大きな経年変動を示す (真の)周期と疑似周期: 短期間の調査では判断し難い

1916 寺田寅彦: みかけの周期(= 疑似周期)
1916 亀田豊治朗: 偶然による複数山(谷)の間隔分布 ☛ コレログラム

F = 3·(2k(k - 1)(k + 2))/(k + 3)!·Ft

F: 2つの隣合った山の間隔kの頻度
Ft: 間隔の総数(から1を引いたもの)

⇒ これからずれる間隔(周期)は偶然では説明できない

1937 藤原・高橋・増山: 乱数0-9 → 平均変動間隔 = 3

= 周期3 → 周期6, 11に拡張可 (疑似周期で説明できる可能性)

1951 Cole: 藤原らの結論を独立に発見 - Ecologyに報告

⇒ 偶然変動 = 非周期的変動 vs 非偶然変動 = 非周期的変動 + 周期的変動

Ex. 3.5-4年周期: ハタネズミ/タビネズミ + 捕食者 ⇒ 偶然変動も適応可

要因仮説
1. ストレス説 (Christian & Davis 1964)
病気説: 流行病 → (神経症徴候 ≈ ストレス) → 大発生終息

結果不明確: 複数病原体存在 - 周期性発生困難(病気説否定) ⇒

ストレス説: 個体群サイズピークから急減少の要因 = ストレス

Ex. ハタネズミ個体群: ストレス症候群 = ショック死

1937 Green & Larsen: 1933 カワリウサギ大発生 → 数年で大減少

原因: 非病原性ショック死 - 後に言う適応症候群

1950 Selye H: 1987に適応症候群学説(ストレス学説)研究開始

ネズミ: 障害性外因(Ex. 火傷、低温、打撲、感染) → 共通する反応

= 副腎皮質肥大、胸腺萎縮、伊・十二指腸出血性潰瘍

≡ ストレスに対する適応症候群

1950 Christian JJ: ネズミ類大発生 → 死亡病原様々 - ストレス説で説明可

大発生 → (冬-春 = 高密度、餌不足、厳冬) → 高ストレス → 激減

副腎重量 ∝ 密度 / 劣位個体ほど高重量

反論: Rattus, Mus - 副腎肥大 ⇔ Microtus, Lemmus - 肥大見られない

1957 Pitelka AA: Utqiaġvik (旧Barrow, AK)でタビネズミ4年周期大発生

個体数増 → 餌(草)不足/天敵増 → 社会ストレス

1957 Frank F: ハタネズミでPitelkaと似た結果
1966 Lidicker WZ Jr: CA無人島 - ハツカネズミ大発生

1958 高密度期終(300/acre) - 1959 繁殖完全に失敗 - 1960 絶滅

同時期にハタネズミ個体群増大 → 干渉(含ストレス) → 繁殖不成功

2. 気候説: 周期的な気候変動に個体数変動は一致
Ex. ハドソン湾のカワリウサギ(被食者)・オオヤマネコ・アカギツネ(捕食者)
1942 エルトン・ニコルソン: 周期的変動 (黒点数 11.125年周期)

太陽黒点数変化 // オオヤマネコ個体数 → 黒点数影響(50年代まで)
黒点数変化に伴う気候変化に対応しカワリウサギ個体数変動

10-11年周期: カワリウサギ、エゾオオライチョウ、Mustela vison、キレンジャク

⇒ 否定 ∵ 黒点数周期 ≠ 動物周期多、温帯以北に明確な気候周期なし

3. 食う-食われる仮説 predator-pray hypothesis ☛ Lotka-Volterra式
= 食物量制限仮説
捕食者に特定被食者あり → 捕食者-被食者間に一定周期の個体群密度変動

Ex. 実験: オレンジ食コウノシロハダニと捕食者カブリダニの一種を同じ飼育容器に入れる → カブリダニがハダニを食べ尽くし両者共に滅びる ⇔ 容器内にハダニしか入れない避難場所作ると、カブリダニ減少と共にハダニが再び増加し、両者個体群密度は一定のずれを持ち周期的変動
Ex. 自然群集: タビネズミ-ホッキョクギツネ

1959 伊藤: ノウサギ-オオヤマネコ・アカギツネ間 = 食う-食われる関係

オオヤマネコ: 10年周期(タイガ - 餌カワリウサギ)
アカギツネ: 4年周期(ツンドラ) → 10年周期(タイガ - 餌カワリウサギ)

Ex. リス個体数-モミ種子量関係: 種子量増加 → 食べるリスの個体数増加

リス増加に従い相対的に種子量減り、両者間に相関関係

寄生者-宿主: 捕食者-被食者関係と捉えることもある
Ex. 1931年: 岡山県。ニカメイガ大発生

寄生ハチの寄生率はニカメイガ大発生と共に上昇し、この上昇に続きニカメイガ個体群密度が激減
→ 寄生者(捕食者)のハチ個体群密度が宿主(被食者)のニカメイガ個体群密度の消長による影響を受けた

3. 栄養補償仮説 (Pitelka 1964; Schultz 1964, 1969)
タビネズミ → 食料(草) ⇒ 糞 → 植物成長 ∴ 周期に時間ラグ(lag)必要 →

高密度時の糞が分解 → 植物利用し成長 → 植物が食料となるまでタビネズミ個体群サイズ小 → 食料利用し個体群サイズ増す

1959 Southwick: 順位制がある個体群はない個体群より大きなサイズで安定

順位制が個体群サイズ(と周期)に関与

1966 Krebs 1966: ハタネズミ実験でこの仮説否定

給餌 → 個体群サイズ増に直接つながらない

4. 遺伝的制御仮説 (Gitty 1960, 1967)
cycle

K淘汰有利: 個体選択(繁殖力小) ↔ r淘汰有利: 個体選択(繁殖力大)

問題(不明): 振幅に付随し色々な現象が起こる ⇔ 現象に付随し振幅が起こる

海洋生態学

水界

季節変化に伴う環境変化に伴った変動
湖沼は、水量が海に比べ少なく、季節による水温変動がやや著しい。水密度は4°Cで最大で、夏季は水移動発生ぜず、深水層に多い栄養塩類は光量に恵まれ、表水層に少ない。秋季に表層水水温下がり、4°Cに近づくと深層水より重くなり、水移動生じ深水層の栄養塩類が表水層に押し上げられる。その結果、植物プランクトンは急速増殖し、光合成量も増大する。春季は表層水の冷水が温められ深水層の水密度に近づき水の対流が起こりやすくなる
Ex. ある湖での植物プランクトンと動物プランクトンの1種(甲殻類)の年変動

cycle
温度上昇 → 有機物合成↑↑↑ → 植物プランクトン↑↑↑
植物プランクトンを食物とする動物プランクトン↑↑↑
無機物↓↓↓ + 動物プランクトンの捕食 → 植物プランクトン↓↓↓
植物プランクトン↓↓↓ → 捕食者である動物プランクトン↓↓↓
無機物質↑↑↑ → 植物プランクトンが再び増加
低温 → 有機物質合成 ≈ 0 ⇒ 多くが枯死し再び植物プランクトン減少

異常発生
質的異常発生: 特定の発育ステージの大きな変化
量的異常発生: 発生量abundanceの異常 (社会的にはこちらのみ指すこと多)
時間パターン
  1. 潜在型 latent type: 常に低密度
  2. 散発型 temporary type: 個体数変動の激しいタイプ(これが最も問題) a) 規則的 periodic or 周期的 cyclic - 長期変動・短期変動
    b) 不規則的 irregular
  3. 常発型 permanent type: 常に比較的高い密度
空間パターン(Miyashita 1963)
地域同時型 scattered type + 蔓延型 spreading-out type ⇒ 多くは複合型
気候条件: 気候条件変化 → 大発生誘発 - 集団移動 mass migration

個体数変動に対する極地気候の影響

創始者効果 (始祖効果/入植者効果, founder effect)


個体群隔離 → 元の個体群と異なる遺伝子頻度の個体群を形成 (新個体群が小さい場合によく見られる) founder effect

ボトルネック効果(瓶首効果, bottle-neck effect)

集団の一部分が小集団に分かれたり、急激に減少すると遺伝子頻度は様々なものの入った壜の中から偏ったものが飛び出すように偶然機会で変動 Ex. 火山噴火
= 集団個体数激減 → 遺伝的浮動促進 → その子孫が繁殖 →

遺伝子頻度が元とは異なる均一性高い(遺伝的多様性低い)集団形成

Ex. Dobzhansky et al. (1957): Drosophilla pseudoobscura

AR/PR – 2遺伝子型
20個体(10 pairs)/4000個体(10 pairs) – 21世代飼育
20個体の方では15-48%のdrift → そのうち20-25%が淘汰に残る

Ex. Kerr & Wright (1954): D. melanogaster, ♂4, ♀4 – 96世代

遺伝的浮動: ホモ遺伝子を固定する傾向。ただし、どちらの対立遺伝子を固定するかはランダム
遺伝的浮動の働く条件:
1) population size – small
2) isolation
3) natural selection – free
→ この際に起こる可能性がある (ライト効果)

Ex. Cupressus イトスギ

200-300個体で2-3エーカー規模で1森林(1個体群)を形成し、それが数マイルづつ離れてパッチ状に存在。各々の個体群の形質(樹形、樹皮、球果)は、個体群内変異幅は小さいが個体群間変異は大きい
→ 遺伝的浮動による(推察)

群島効果 island-group effect

島が単一でなく群島となる → それぞれの島が隔離

島ごとに独自の進化が起きやすくなる Ex. ガラパゴスフィンチ

= 単独の海洋島よりも群島の方が多様な進化起こり易い現象

人口学 population theory


= 人口統計学 demography
  • 形式人口学 formal demography: 数学(統計学)応用分野として集合の大きさの変動と人口事象との関係を解析
  • 実体人口学 substantive demography: 経済・社会・政治・医・生物学等の諸科学研究対象としての集合の大きさ・人口事象・環境変数の間にある因果関係や相互連関に関して分析
Def. 人口 population: ある属性により分類した人間集団 → 量 = 集団サイズ

質(s.s): 人口学的属性により表現された集団の内容あるいは構造 Ex. 年齢、性別、配偶者有無
質(s.l.): 人口学的属性より細分化された集団の構造 Ex. 伸長、職業

ゼロサム社会 zero sum society = 人口論へ: 政治・社会要因を考慮する必要

パレート適性: 他を害さず自己を向上することが不可能になった状態
ハスの葉問題 (y = y02t): 人口増加の2種の様態
人口問題「個人の幸福観 ≠ 社会の幸福観」 → 付随問題(公共施設・要因・結婚等)は全人口問題と考える

  • 人口静態: ある時点で観察される人口の状態 = ストック概念
    人口静態統計 Ex. 国勢調査(総務省)、住民基本台帳(市町村)
  • 人口動態: 一定の期間に観察される人口の状態 = フロー概念
    人口動態統計 Ex. 人口動態統計(厚生労働省)、住民基本台帳人口移動報告(総務省)

人口動態 population dynamics

人口動態率: 分母集団と分子集団との間に発生関係の存在する比例数

= 人口事象数/人口, データは人口動態統計から
普通発生比例数 = ある人口全体で発生した人口動態上の事象全部/ある人口全体

普通(粗)人口動態率 = 人口動態事象数/総人口
Ex. 普通(粗)出生率 = 出生数/総人口

特殊発生比例数: 分母人口と分子人口動態上の事象発生人口が同一でないか、ある人口部分集団を分母におきその同一部分集団での発生人口動態事象を分子においた発生比例数

特殊人口動態率(部分人口)
Ex. 部分人口に対応する人口動態事象数/部分人口
年齢別(特殊)出生率(Ex. 20歳)
Ex. 20歳母親の出生数/20歳女性人口

対立比例数: 分母と分子とが異なる統計集団間の関係を表わす
Ex. 人口密度 = 人口/面積

特殊化と総合化

普通構造比例数の特殊化: 普通構造比例数の分母、分子中を分解し特殊構造比例数を導く

Ex. 普通有配偶率を男女別や年齢別の特殊有配偶率に分解

特殊構造比例数の総合化: 特殊構造比例数の分母、分子中を分解し普通構造比例数を導く

Ex. 合計特殊出生率,総再生産率

年齢構造係数: 総人口に対する何らかの年齢別人口

年少人口係数 = 0-14歳の人口/総人口
生産年齢人口係数 = 15-64歳の人口/総人口
老年人口係数 = 65歳以上の人口/総人口

年齢構造指数: 人口のある部分集団とある部分集団との比率

年少人口指数 = 0-14歳人口/生産年齢人口
老年人口指数 = 65歳以上人口/生産年齢人口
従属人口指数 = (0-14歳人口 + 65歳以上人口)/生産年齢人口 = 年少人口指数 + 老年人口指数
老年化指数 = 65歳以上人口/0-14歳人口

= 老年人口指数/年少人口指数 = 老年人口係数/年少人口係数

平均年齢: 人口に含まれる全員の年齢の平均
中位数年齢: 総人口を若い集団と老いた集団とに半分に分けた場合、その真中にいる人の年齢
性比: (男性/女性) × 100

人口方程式
Pt = Pt-1 + (dPt-1bPt-1) + (ie) = Pt-1 + Pn + Ps

(ある時点での)総人口 total population, Pt
自然増加 natural increase: survival rate, Pn = dPt-1bPt-1

死亡率 death rate, dPt-1
出生率 birth rate, bPt-1

社会増加 (人口移動 social movement), Ps = i + e

転入数, i
転出数, e
(解放生態系 - 推計難しい)

  • 理念人口 ideal or potential population: ある仮定に基づき理論上想定される人口

    封鎖人口 (閉鎖人口): i = 0, e = 0と仮定
    安定人口 (収束人口): 齢ピラミッドが変化しない人口
    静止人口 (定常人口): 安定人口中 d = bのケース

  • 実際人口 actual population: 現実に存在する人口

    現在人口(事実人口): 特定観察時刻の特定地域人口。一時現在人口を含み一時不在人口を含まない
    常住人口: 特定地域に普段住む人口。一時現在人口を含まず一時不在人口を含む
    法的人口: 法的関係に基づき特定の人々を特定地域に帰属させた人口 Ex. 本籍人口、有権者人口
    従業地人口: 従業地域毎の人口数 – 通学地域毎の通学者人口を含める場合もある
    出生地人口: 出生地に帰属させた人口
    施設人口: 何らかの施設に帰属させた人口 Ex. 老人ホーム、刑務所、学生寮

統計的種別人口: 目的により行われる(以下は例)

平均人口: 特定期間(例えば1年間)における人口の平均
中央人口: 特定期間中央時刻の人口 → 年中人口 期間が1年間の場合(= 7月1日)
昼間人口: 特定地域における昼間の特定時刻(Ex. 12時、午前6時-午後6時)の現在人口
夜間人口: 特定地域における夜間の特定時刻(Ex. 0時,午前6時-午後6時)の現在人口か常住人口

労働人口(就労人口) working population, Pw
生産年齢人口 production aged population (労働率 rate of labor force, RL)
Pr = Pw(Ap × RL), Pr: total population
動態統計 vital statistics
所得格差 income disparity - popular factor
従属人口 dependent population
再生産年齢人口 reproductive age population

人口移動分析
Nij = a0(Yi/Ni)a1·(Yj/Nj)a2 → gravity potential model
Nij = a0·(Nia1Nja2/Dija3)

D: 距離(移動時間)
N: 食糧等の潜在ポテンシャル

流動動分析 (Carruthers 1957): グラフ理論 (Boudeville 1966) - 機能地域

電話に基づくグラフ理論による機能地域の決定

重力分析 gravity model
_________● C
_________┃ •I___•H
_________┃/___ /
•━━●━━━━●
A___B___D \___G
_________E •━• F

              センターへの通話回数
              (× 1000回/日)
              A  B  C  D  E  F  G  H  I
センター  A     40    20
からの    B  10       60
通話回数  C           30             10
          D     60       40
          E           30    10
          F              20    10
          G           50          20
          H           20       30
          I        10 40

観察方法


3観察方法
  1. 同時観察: 一時点における各人口集団観察
  2. コーホート観察: コホート(Ex. 同年生)毎観察
  3. 年齢観察: 同一年齢の各コーホートを観察

____↗____↗____↗↑__ 4(齢)
__↗____↗____↗__↑__ 3 → 年齢観察
↗____↗____↗____↑__ 2
___↗____↗______↑__ 1
__コホート観察_同時観察
レキシスの図 Lexis diagram (ベッカーBeckerの図法)

性別分析: 男女の性別による分析

単性分析(性別分析s.s.): Ex. 生命表
複性分析: 単性分析結果を元に総合分析すること

Ex. 性比を重みとする加重平均

没性分析: 男女分離しない(できない)ため性別無視し男女総数分析
結婚表 marriage table
核家族 nuclear family (two generation family)

原子的(原理による)観察と分子的(原理による)観察

原子的観察: 個体を観察
分子的観察: 単位集団(世帯・家族・事業所等)にくくり観察

アクチュアル方式とユージュアル方式

アクチュアルactual方式: 経済活動人口調査で調査前特定短期間(Ex. 1週間)における経済活動状態調べる。 Ex. 労働力調査、戦後国勢調査
ユージュアルusual方式: 「平常」の経済活動状態調査 Ex. 就業構造基本調査、戦前国勢調査

死亡

標準化死亡率 standardized death rate

人口規模の違いに死亡率が影響されるので、その地域の死亡状況を全国同様と仮定し、実際の死亡数の程度を全国数値を100とし表したもの。主に小地域間比較に用いる

普通死亡率 crude death rate (粗死亡率)

1000人に対する死亡者数(日本: 国勢調査10月1日人口に対する割合)

乳児死亡率 infant death rate

1歳未満児死亡者数の同年出生数に対する割合

新生児死亡率 neonatal mortality rate

生後4週間未満の乳児死亡の新生児中の割合

周産期死亡率 perinatal mortality rate: 周産期死亡の割合

妊娠満22週(154日)以後の死産 + 生後1週未満早期新生児死亡


同種・同齢植物個体群(コホート)の密度効果

growth 2次元的に配列された植物個体群の相互作用
ρ = N/S … (1)

ρ: 個体密度, N: 個体数, S: 面積

y = ωρ … (2)

y: 個体群現存量, ω: 平均個体重

ω = ω(ρ, t) – 単純密度効果式 … (3)

t: 成育期間

ωρα = K = constant → 経験式(密度効果の巾乗式)
Def. α = C-D index
(1), (3)より: α-1 = K … (4) → tが十分であるとαは1に近づく
(3)の両辺のlog: logω = logKαlogρ
(4)およびα = 1とする
y = K = constant [最終収量一定の法則]

ρの大きさに無関係にtが十分に大 ⇒ α = 1 ∴ 現存量一定

(3)式は

1/ω = + B … (5) と書き直せる ⇒ reciprocal equation of competition-density effect (C-D effect)
1/y = B/ρ + A → reciprocal equation of yield-density effect (Y-D effect)

(5)式の誘導仮定(H)
H1. ω成長は一般ロジスティック曲線

1/ω·/dt = λ(t)(1 – ω/W(t)) or ω = eτ/(0t(eτ/W) + K), τ = 0tλ(t)dt

H2. 成長係数ωは密度ρに関係
H3. 最終収量一定の法則 Y(t) = W(t)ρ = constant
H4. 初期重ω0が密度ρに無関係に一定
以上4つの仮定よりω - rの関係式として(5)式が導かれる

ただし、A = e-τ(e-τ/Y)dt, B = e-τ/ω0

個体間の相互作用と個体数の動態
均等植えした個体群でも構成個体間の草丈の差が大きくなる (= 相互作用)
予測: 草丈の大小の散らばりが相互作用によるものであれば個体間の距離が近いほど相互作用が大きい
時期 t1t2にかけての草丈(l)の伸長率(rl)は個体重(wl)を求める
rl = (logl2 - logl1)/(t2 - t1)
rw = (logw2 - logw1)/(t2 - t1) = Δw

= log(w2/w1)/t

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